転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
「……うん、特にセキュリティは問題ないかな」
「ありがとうございます、チヒロ先輩。急に来てもらっちゃって」
「ああ、気にしないで。私も一回見てみたいと思ってたから……それに、マキ達だと絶対別の方に夢中になるだろうし」
「あはは……」
その日、セーフハウスをチヒロが訪れていた。チヒロはパソコンを繋いでセキュリティを確認していたが問題ないと頷きつつ、マキ達が来るよりはマシだろうと言う。その言葉にモルフォは苦笑することしかできない。実際にマキ達が来たら来たでセキュリティのチェックはちゃんとしてくれるだろうが、その後遊ぶことの方がメインになっていただろう。
「でも、チヒロ先輩もたまには羽を伸ばしてもいいと思いますよ。マキやコタマ先輩達……はまぁ伸ばしすぎですけど」
「ありがとう。でも、私だって年中動きっぱなしってわけじゃないよ。こうやってゆっくりできる時間は大切にしているつもりだからね」
チェックが終わり、モルフォからコーヒーの缶を受け取るチヒロ。と、その視線が机の上に置かれたUSBメモリに向けられる。以前どこかで見たことがあるアニメのキャラクターのキーホルダーがついており、それを見てマキ達が話題に上げていたテルミットなんとかみたいな名前のキャラだったかとぼんやり考える。
「?どうしました?チヒロ先輩」
「ん……ああ、いくらセーフハウスだからってあんまりUSBメモリを出しっぱにはしない方がいいよ?」
「あ……すみません、今度収納用のケースとか買っておきますね」
「うん、そうした方がいい」
モルフォに声をかけられ、ついつい思考が脱線していたチヒロは本来気になっていたことを口にする。それを聞いたモルフォは言われてみればその通りだと頷き返すと、チヒロも微笑む。と、続けてチヒロはUSBの中身について問いかける。
「ちなみにこの中にもゲームが入ってるの?」
「そうですね、折角来てもらったんですし、やってみますか?」
「……そうだね、私も気にはなっていたことだし」
チヒロ自身はこういったゲームに触れる機会は残念ながら他のヴェリタスのメンバー程多くはない。しかし、気にならなかったかというとそういうわけではない。こうして機会が巡ってくれば彼女だって触れてみたいと思うのは当然のことだ。
「では、どうぞ」
「ちなみにこれはどういうゲームなの?」
「ジャンクエデンですね」
「……ジャンクエデン?」
先程外に出していたままだったUSBメモリをパソコンに挿し、その中にあるジャンクエデンと名付けられたデータを開くと、モノクロの背景の中を赤い目やコアを持つドット状のロボットのような何かが走り抜けるシーンから始まる。すると、どこかから通信が入ってくる。どうやらこの機体を駆る人物は傭兵か何かのようであり、どこかの組織へ所属しようとしているようであった場面が変わったかと思うと画面にHPやレーダー、ブーストゲージに使用できる武器などが表示され突然操作が可能になる。
「……ふむ、テストか。今のところそう難しい話ではなさそうね」
「このゲームのシナリオ自体は結構あっさりしていますからね」
ジャンクエデン。それは
「……け、結構難しい……」
そんな中、チヒロは操作に苦戦していた。このゲームは独特の操作性をしており、左右の移動はともかく、ジャンプとブーストが同じボタンで行われる。なので、ジャンプをしたくてもブーストになる、或いはその逆になるといった形で事故も起こり、さらに武器の換装も三つある武装を常に使えるというわけではなく、メインとなる二種の武装はミッションに交代しながら使うため、プレイヤーは戦闘中に適切な武器の交換などを余儀なくされることになる。そういった面では難易度が高いゲームと言えるだろう。
テストと称したオープニングステージが終了すると、主人公が売り込みをかけ所属しようとしていた艦から通信が入る。そんなジャンク品でよくやるものだと呆れ半分感心半分みたいなニュアンスの台詞と共にその声の主は、主人公にブラックというコードネームを与え母艦エデンへの搭乗を許可する。
エデンに乗艦したブラックは艦長である白髪の美女、ホワイトに出迎えられる。彼女はHMT-3AIロボ6号機と呼ばれるドラゴンのような、悪魔のようにも見えるロボットを渡すと、後の事はこいつに聞けとぶっきらぼうに言い去ってしまう。HMT-3に案内され自分の部屋に辿り着いたブラックはこの艦でのルールを教えられる。
「カラー……ああ、通貨ね。払えないとゲームオーバーと」
(実は払えなくてもゲームオーバーにはならないんだけど……まあ、そういうのが嫌いな人もいるからね)
四週に一度、定められた額の
「修理とかは自分でやる必要はないと」
「そうですね。うっかり準備せずに出撃、みたいなことはありません」
修理費用や弾薬費はミッションの報酬から勝手に引かれる仕様になっているため。プレイヤーがそこら辺を気にする必要はなくなっている。それらのチュートリアルが終わると、自由に操作ができるようになる。画面の下の方にはEventと表示され、そこに白や赤といった色の四角のマークが表示されているのを見て、この艦にはブラックやホワイトのように他の人達も色をコードネームとしており、イベントがある場合はその色に対応したアイコンが表示されるようになっているようだ。
艦の中には正義感溢れる青年レッド、エンジニアを担当している少女イエロー、眠たそうにしている、頭に花を付けたミステリアスな少女グリーン、青いポニーテールのツンツンとした少女ブルーといったネームドがいる。一通り乗艦している面々と話をした後、イエローの下で機体のカスタマイズなどを行っていく。
「……ふむ」
メイン武装、サブ武装、肩武装、頭部、腕、胴、脚部、ブースター、ジェネレーター、オプションパーツの合計10個のパーツを組み立て機体は構成される。重量制限や
「……」
「困ったらカスタマイズはとりあえず詰まってから考える、でもいいと思いますよ。お試しに関してはシミュレーションもありますし、とりあえず武装を持ち込んで使用感を確かめる、でも十分問題ないと思います」
「ふむ……」
様々なミッションを進めながら、時に武装や装備を購入し試していく。
(メイン武装なのはいいけどライフルだと火力も速度も控えめすぎる……ハイバズーカはまだマシだけど、リングレーザーの単発の速さもいや、フィンガーも捨てがたい……肩武装はミサイルも悪くないけど素直なスラッグガンの方は今は丁度いい?サブ武装は……シールドとかより段数制限のないブレード系にしておこう。胴体とかは……今は資金もないし、耐久力が追いつかなくなってからでいいか……)
ミッションにも様々な種類がある。単純に敵を倒すことを主とした討伐ミッションもあれば、建造物の破壊を主としたミッションが存在している。最初は操作に慣れないのもあり、弾をばら撒くスラッグガンやフィンガーなどの威力よりも相手への命中率を取る武装をメインに使っていく。それによりちょっとずつミッションをクリアしていく。
「……ああ、なるほど壁を擦ることでENが節約できるのか。後は壁を蹴ることで加速と……それにブレードは連続でダメージが入るから……」
徐々に操作性にも慣れてきたのか、チヒロのプレイングも洗練し始める。このゲームの特性である三つある敵の属性にも注意しながらカスタマイズをしていくことで、ミッションを有利に進めていき、ミッションやシチュエーションに適したテンプレートをも出来上がっていく。
(属性はある程度ごり押しできたりもするけどチヒロ先輩はちゃんと属性をばらけさせてるな……)
このゲームには赤、緑、青の三つの属性が存在しており、武器や機体にはその属性が割り当てられている。同じ属性だとダメージが入りにくくなるため、他の属性の攻撃をぶつける必要があるのだ。
「あ……このホバータイプ、滑って癖が強いけどこの機動力は面白いな……特にブレードを咬み合わせると横方面の機動力はずば抜ける」
「ブレードの多段ヒットが本当に強いんですよねこのゲーム。さすが近接武器なだけあります」
「……いやでも癖が強すぎて扱いにくい!?」
このゲームに登場するパーツの中でも脚部は特に重要だ。この脚部パーツ一つで積載できるパーツの総重量が決まるのだから。それだけでなく、重量ごとに決められた二脚や逆関節、戦車型のタンクに加え、滑るような横への高機動を確保できるホバーなど種類は様々。特にホバーはブレードと合わせることでとんでもない横への機動力を確保できるのだが、最初はその速さに魅力を感じていたチヒロもすぐにこれは難易度が高すぎると素直に二脚に戻してしまう。こういった試行錯誤もカスタムの魅力と言えるだろう。そんな中、
「あっ、あっ……あっ!?」
チヒロはあるミッションで大苦戦を強いられていた。そのミッションの名は襲撃者殲滅。今作ではDランクから始まり、ミッションをクリアしていくことで最終的にSランクにまで上がっていくことを目的としているのだが、最後のDランクにあたるこのミッションでチヒロは何度も撃墜させられていた。その原因となっていたのは雑魚敵の群れが原因ではない。バトルアリーナという闘技場での戦闘を除けば初めてとなる対OA戦、その相手の持つスラッグガンや火炎放射といった近接武器の瞬間火力の高さが原因だ。
「……つ、強い……」
(やっぱりここ初心者皆詰まるんだな……懐かしい)
「ここはどうするべき……?いや、これは立ち回りでまだどうにかなるレベル?いや……ダメージを確実に蓄積していくことを考えたら、とにかく弾数が多いマシンガンを採用して……?」
色々構成を考えたり、トライ&エラーで相手の動きを掴みながら少しずつ前線善戦していき、遂にミッションをクリアする。これによって見事Cランクになったことで次のミッションが解放される。
「随分ギリギリだったけど……これでCってことはまだBとAもあるってこと?」
「はい、まだまだ先はありますよ」
ミッションをクリアしたり、パーツを購入したりすることで仲間達の好感度を稼ぎ、会話を重ねていく。その中でもいろんなパーツを買うことで好感度が上がるイエローとの仲は誰よりも深まることになり、彼女を僚機としてミッションに同行できるようになる。当然、同行できるのはイエローだけではない。他のキャラも同様だ。
「ここからは仲間と一緒にミッションに出れるわけね」
「単純にミッションも難しくなっていくので一緒に戦ってくれる仲間は大分心強いんですよね」
イエローの場合はタイタンと呼ばれる四脚の機体で、タレットをばら撒いて囮などをこなしてくれる優秀な機体となっている。大量のタレットをばらまくことでミサイルや弾をばら撒き、着実に敵にダメージを与えたりしてくれるのだ。
ホワイトの機体はマクスウェル。ホバー型にハイメガレーザーや追尾レーザーなど、速度と火力を両立した攻撃を相手に押し付ける殲滅力の高い機体だ。特に防衛ミッションなどの耐久戦でその強さを発揮してくれると言える。
レッドが乗るのはイフリート。軽量の二脚で機動力を確保し、ガトリングやブレードで遠近両方に対応した素直でバランスのいい機体となっている。ただしブレードによるダメージを確保する都合上接近率が高く、そのせいで被弾が嵩み長期戦にはあまり向かない所はある。
ブルーが駆るのはウンディーネ。逆関節脚を採用したジャンプ力に長けた機体であり、遠くからの攻撃も得意とする機体……なのだが、残念ながら機体が遠すぎるせいで相手のヘイトがプレイヤーや護衛対象などに向いてしまうため、お世辞にも僚機としてはお勧めできなくなってしまっている。
グリーンが登場するのはマンドラゴラ。タンクの機体でレーザーライフルやレーザーボールを用いた耐久性に優れた機体。しかし、グレネードを使うというちょっと気を付けるポイントがあり、このグレネードに巻き込まれると主人公も大ダメージを受けてしまうのでそこを気を付ける必要がでてくる。
HMT-3もまた僚機として同行できるのだが、彼が使用する機体は自分の手でカスタマイズすることになる。しかし僚機に何を求めるかなどはまだチヒロには思いつかなかったために一旦放置される。
そんなこんなで僚機の使い心地などを確かめながらCランクのミッションを進めていく。Cランク最後のミッションであるOA三機を相手とした連続勝ち抜き戦もDランク最後に戦った敵機と比べればそこまで強いわけでもなかったために弾薬こそ消耗しつつもクリア、それによってCランクからBランクへと上がり、さらに難しいミッションに臨むことになる。ここまでくると機体構成も固定になりつつあり、マシンガンとブレードは絶対に外せない装備になりつつあった。
が、そうもいかなくなってくるのがAランクのミッション。ここからはテンプレート構築ではまともに突破できなくなり、チヒロはそのミッション毎に合わせた僚機や機体を選ぶことになる。
「護衛任務はとにかく長期戦に優れた形にして、巨大兵器の破壊には機動力を確保しつつ火力も両立……」
「お金が足りなくなってきたらバトルアリーナや過去のミッションで稼ぎ直すのも手ですよ」
「確かにね。無理そうなら稼ぎをするのもありか……」
ミッションに合わせた装備を整えながら攻略する傍ら、好感度が上がる仲間達との交流も続いていく……のだが。段々おかしくなってくる人が増えてくる。ブラックの散り様を望むホワイトやら、やたらブラックに改造を勧めてくるイエロー、正義のため仲間達のために戦ってるレッドがバグり始めたりブラックに執着し始め病み始めるブルー、相対的にマシだが世界に花を埋め尽くしたい自分の花を咲かせてほしいとブラックに言い始めるグリーンなど、精神的にイカれ始めてる部分が徐々に出てくる。
「ふぅ……Aランクのミッションになってから随分難しくなってきた……って、あ」
「月末のカラーが払えなくなっちゃいましたね」
「……これ、ゲームオーバーになるんじゃ」
「違いますよ……おっ、一発で引いた」
そんなわけでミッション失敗も増えており、その度に弾薬費などは持ってかれるため赤字になっていくというループに陥ってしまう。その果てに月末に支払う分のカラーも尽きてしまい、ゲームオーバーになるかと思われたその時。画面にイエローが現れ、払えないカラーを立て替えてくれたかと思うと、ブラックのプロフィールに見慣れない四文字が出現する。
「……合成人間……えっ?」
「えーと……」
合成人間、その名が示す事実はただ一つ。ブラックはイエローに改造されてしまったのだ。とはいえ、合成人間になることのデメリットは何一つない。むしろ改造されれば改造される程、ENの回復力が1.5倍になったり、敵の索敵範囲を画面上に表示されたり、ブレードを使うと衝撃波が飛んだりするなど、パワーアップするだけで何のデメリットもないのだ。
「なので合成人間自体はむしろ攻略に役立つんですよね……ただ、肩代わりするキャラって必ずしもイエローが出てくるってわけじゃないのでそこは運になっちゃうんですが」
「つまりわざと破産し続けるのもありってこと?」
「まあ、そうですね」
「……まあ、それはやめておこうかな。なんかわざと破産していくのは違う気がするし」
そんな感じで頼りになる能力を得つつミッションを進めていき、遂に最後のミッションであるエデン防衛線というミッションが現れる。このエデン防衛線は、パープルと呼ばれるこれまでのミッションで度々依頼を出していた謎の人物が、エデンがミッションを次々と成功させたことで大きくなりすぎたと告げ、エデンを葬ろうと襲撃をかけてきたのだ。
途中で補給を入れつつもどうにかパープルを退けると、今度はパープルの本拠地であるヘルにエデンのメンバーは乗り込むことになる。ここでは僚機を同行させることはできないが、ミッションを開始すると好感度が高い三機の僚機が同行することになる。そのメンバーはイエロー、ホワイト、グリーンというラインナップ。それが、エリアを一つずつ突破する度にそのエリアを自分に任せて先に行けといい一人ずつ離脱していき、最終的にブラックだけとなる。
「……これ、イエローが一番好感度高いってことになるの?」
「まあ一緒にミッションに行けば確かに好感度は上がりますが、イエローに関してはそれだけでなく買い物でも好感度上がりますから。それにイエローって普通に僚機として強いので……」
自分で機体を作れるHMT-3は例外としておくとして、普通に設置物などがデコイとなる、耐久力も僚機の中ではトップクラスで囮に使いやすいと普通に使ってて便利なキャラなのだ。その便利さを知ってしまえば味方の中ではミッションに連れ回す回数も自然と多くなるだろう。
そんなこんなで最後のエリア。ブラックはヘルを自爆させ撃墜。これによりパープルは自身の命を含めた全てを失うことになる。そして流れるエンディングを見ながら、チヒロは達成感と共に溜息を吐く。
「……なるほどね。確かに難しかったけど……うん、中々面白いね。最初は操作の癖とかが気になったけど慣れたら気にならないし。序盤は火力不足に悩むところもあったけど少ししたらもう解決したし……こういうさっくりやれるゲームなら時々はいいね」
「まだクリア後もありますし、持っていってみますか?」
「いいの?」
エンディングを見るまで大体六時間程度だろうか。クリアするまで長いゲームともなればチヒロも忙しさもあって積んだり積まなかったりしてしまうが、半日程度でクリアできるような中編であれば無理なく楽しめる。久しぶりに夢中になって楽しめたと、チヒロは笑いながらUSBを受け取るのだった。