転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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幕間1
銀鏡イオリとドミノ


 

「おはようございます、先生」

「おはよう、モルフォ。今日もよろしくね」

 

あっという間だったアビドスの二日間。そして事後処理も終わり、元の日常へと戻ってきたモルフォは、いつも通りシャーレの当番のためにオフィスへとやってきていた。先生がモルフォを出迎え、仕事をしていると、オフィスのドアがノックされる。誰か来客だろうかとモルフォがドアの方に視線を移すと、なんと中へと入ってきたのはイオリだった。

 

「先生、シャーレの当番で来たけど……」

「うん、待ってたよイオリ。今日はよろしくね」

「ああ……あ」

 

先生と軽く挨拶をしていたイオリがここでモルフォに気付く。モルフォもといミレニアムの学生とは先日のアビドスで起こったこともあり、どう接していいかわかりかねていた部分があった。その当事者とまさか当番をすることになるとは思わず、イオリもどう声をかけようかと迷ってしまう。

 

「夢見モルフォです。今日は一緒に当番よろしくお願いしますね」

「あ、ああ……銀鏡イオリだ……今日は頼む、それとその……この前は、ごめん」

 

そんな中、モルフォの方もイオリに気付くと、優しく笑いかけながら自己紹介すると、イオリの方もぎこちなさそうに自己紹介しながら、先日の件について謝罪する。だが、それを聞いたモルフォは再び笑うと、

 

「気にしてないので大丈夫ですよ。というかそれを言い出したら問題を大きくしたのって私みたいなところありますし」

「そ、そうか……」

 

二人の様子を見ていた先生も、これなら間に入ったりフォローしたりする必要はなさそうだと安心する。と、ここで気になったことが出てきたのか、モルフォがイオリに質問する。

 

「そういえば……イオリさんはいつの間にシャーレの当番に?」

「あー……シャーレに対するお詫び、っていうか……」

 

それを聞いたイオリも答えづらそうに返す。アビドスの一件でシャーレに迷惑をかけたお詫びとして、風紀委員会の面々をシャーレに所属させることが決まったようだ。アビドスに対してはカイザーとの戦闘の後方支援で一応は片がついている、というところなのだろう。

 

(委員長はともかくアコちゃんが普通に許可するとは思わなかったけど……)

 

それに難を一番示しそうなアコがすんなり許可を出したのも、基本的にシャーレの仕事より自分達の案件を優先してよい、という方針を先生が取っているからだろう。それにより、ゲヘナの風紀委員会は部員を所属させているという形でシャーレに対して貢献しているとアピールしつつ、自分達の普段の業務に対しては悪影響を一切及ぼさないことが可能となる。それに何かシャーレで問題が起これば風紀委員会のメンバーがシャーレとして解決に当たることでよりシャーレに恩を売ることも可能になる。それらを考えた結果なのだろう。

 

尤も、シャーレにそのことを報告するために自ら出向いてきたアコの顔と声は死人のそれと言ってもいい状態であり、ゲヘナから出る前の時点でこっぴどくヒナに絞られたようだが。

 

「モルフォも、今までとは違ってこれからは当番を二人に増やしてやることにしたからよろしくね」

「わかりました」

 

最後に、これからの当番事情が先生からモルフォに伝えられ、三人は仕事を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ休憩しようか?」

「……ふう」

「思った以上に量があるな……毎日こんなのやってるのか……?」

 

時計の針が12を指したところで先生がお昼休憩の時間だと切り出す。書類は大分片付いてきたが、三人いてこの有様と考えると、一体シャーレはどうなっているんだとイオリも思わず思ってしまう。

 

「確かに、以前までより量が多いですね」

「あはは……この前の出張でいろんなところにシャーレの名前を知ってもらえたらしくてね……嬉しい悲鳴ではあるんだけど」

 

シャーレがアビドスに出張したこと自体は、シャーレに注目していた生徒や組織が爆発的に増える結果に繋がるわけではない。だが、その出張によってカイザーに大きな影響をもたらしたという一点に限れば、シャーレはまさにキヴォトス全体から注目される台風の目になりうる成果と言える。これで注目しないでくれ、という方が難しいだろう。結果として、シャーレに届く書類の山は出張前と比べてかなり多くなっていた。

 

「……これでも戻ってきた時よりはマシなんだよね……結局ユウカとアコに手伝ってもらってやっとだったから……」

「おおう……それは……大変でしたね」

「だからアコちゃん帰ってきた時あんなことに……まあ、その……体には気をつけなよ」

 

これ以上の書類と言われ、二人も思わず先生の身を案じる台詞が出てきてしまう。もし自分達がその当事者だったらと思うと思わず寒気がしてきてしまう。

 

「うん、気を付けるよ。よし、お昼を食べたら一気に残りも片付けようか」

 

コンビニでお昼を購入し、お昼休憩を取った後は残りの書類を片付けていく。そして残りが僅かとなったところで、

 

「……あ、この書類はリンちゃんの所に持っていかなきゃいけないか……」

「それなら行ってきたらどうですか?残りの書類はここでできそうですし」

「代行か……それなら急ぎならやっておいた方がいいんじゃないか?」

「うん、そうさせてもらうよ。ちょっと席を外すね」

 

連邦生徒会の方に直接提出する書類が出てきた。ある程度期限も迫っているものであり、時間のあるうちに届けた方がいいだろうと判断し、この場を二人に任せて先生はオフィスから出ていく。先生がいなくなった後のオフィスで二人は作業を進めていたが、残っていた書類も残り少なかったこともあり、先生が戻ってくる前に片付いてしまった。

 

「これで最後か……」

「先生が戻ってくるまで待ちますか?」

「……そうするか」

 

書類が終わったことを先生に報告しようかと一瞬考えたイオリだったが、もしリンと話をしているところに連絡して連邦生徒会から何か言われたら、それこそ面倒だと考え、モルフォの言う通り、戻ってくるまで待つことにする。とはいえ、ただただ待っているのも暇な所だ。

 

「……?」

 

ふと、イオリがモルフォの様子を見ると、モルフォは小さな鞄の中に手を入れ始めていた。何かしらゲーム機でも持ってきていたりするのだろうか。そんなことを考えていると、モルフォが取り出したのは……

 

「ど、ドミノ?」

「……いやぁ、これはたまたまですよ」

「たまたまでいれるものかそれ……?」

「結構いろんなものはいれますね。トランプだったりなんだったり」

「そ、そうなのか……」

 

何故かドミノだった。ドミノなんて見たのはいつぶりだったか、思わず懐かしささえ覚えてしまう。

 

「……というかお前……ドミノ倒しなんてやるのか?」

「まあドミノ倒しもそれはそれで楽しいんですけど……一緒にドミノやります?」

「やめとく……ドミノ倒しとか私には無理だって」

「いや、ちゃんとしたドミノですよ」

「……は?」

 

ドミノに倒す以外の遊び方なんてあるのかと思わず目を丸くしてしまうイオリ。ドミノは0から6までの目が描かれたブロック2個ずつを組み合わせた合計28個のドミノ牌を使用するゲームであり、お互いに5枚の牌を持ち、お互いに牌を1つずつ場に出していく。この時、場に出せる牌は、必ず同じ数字の牌を繋げて出すことしかできず、もし場に1と2の牌が出された場合、1か2が入っている牌だけを繋げて出すことができる。それを繰り返していって最初に上がった人物が勝利となるのだ。

 

「……え、そんなルールあったの……初めて聞いた……」

 

モルフォからドミノのルールを聞かされ、困惑するイオリ。あの数字ってちゃんと意味があったんだ……と思わず呟いてしまう程にはドミノ=倒すものというイメージが刷り込まれていたようだ。他にも得点を集めるルールなどはあるが、二人でやるのなら単純なルールの方がいいだろうと黙っておくことにする。

 

「まあ、普通はドミノ倒しって考えちゃいますもんね……でも実際はこういう遊び方もあるんですよ」

「く、詳しいんだな……」

「まあ、ゲームとかはそれなりに?先生が戻ってくるまで暇ですし、一回やってみませんか?」

「……そ、そうだな」

 

倒さないドミノがどういうものなのかは、話を聞いている内にイオリも段々興味が湧いてきていた。折角なのでイオリもモルフォからドミノを受け取り、始めてみることにする。

 

「じゃあ、イオリさんが先手でどうぞ」

(……つっても、要するに毎回出していけばこっちの勝ちなんだろ?……結構単純だな?)

 

早速、適当な牌を出すと、モルフォもそれに繋げるように別の牌を出す。そしてイオリも二枚目を出し、モルフォが二枚目を出したところで、

 

「あれ……出せるやつがない……というか今見えてるの全部6……」

「じゃあ出せるのが来るまで山から引いてくださいね」

「え……じゃあこれ、もしお互い出せなくなったらどうなるんだ?」

「その時は残ってる牌が少ない方が勝ちですね」

 

多分、そう内心で呟きながら、渋々といった様子で牌を引いていくイオリを見る。一枚、二枚、三枚と中々引けず、四枚目になってようやく、今見えてるものにくっつけることが可能な唯一の数字、4の目が二つ入った牌を引いてくる。

 

「……なんかめちゃくちゃ引いたんだけど……」

「ちょっと偏っちゃってるのかもしれませんね。じゃあ私はこの4のダブルにくっつけちゃいましょう」

「……四枚目か」

 

4の目が入っている牌は五枚。4に0から4までがそれぞれついている牌が存在しており、その内の四枚が場に出ていることを考えると、残っているのは後一枚だけということになる。残りはまだ山に残っているのか、そんなことを考えながら、大量に引いてきた中の一枚を場に置く。すると、

 

「これで四枚目ですね」

「……うげ」

 

モルフォが四枚目の牌を場に置いてしまう。モルフォが抱えている牌は一体何の数字なのか。その内の二つを予想しなければならない。もしも、それが0と0みたいな同じ数字の組み合わせなら多少はブロックもしやすいのだが、果たして何を出すべきか。

 

(……いや、確か4ってもう一枚しかないなら気にする必要なくないか?)

 

自分の持っている牌と、既に場に出された牌の中でまだ数が残ってそうな数字っぽいのを埋めることにする。というか、四連続で牌をポンポン出されているのだ、そろそろ限界が来てもおかしくないだろうとも考えながら、どこか祈るように恐る恐る選んだ牌を置く。

 

「……じゃあ、これでどうだ?」

 

これでどうにかならないか。そう期待するようにモルフォを見る。

 

「……4・0でフィニッシュですね」

「結局4かよ!?」

 

だが実際はモルフォが最後の4を抱えていたようだ。これではイオリがいくら頑張ったところでモルフォの勝ちは揺るがないではないか。若干抗議するような視線を向けるも、運がよかったですと言ってのけるモルフォ。とはいえ、モルフォの手牌も4が多すぎてちょっとどうなのかと思うところはあったため、そういう意味では幸運だったと言えるだろう。

 

「く……な、なんか納得いかない……!」

「次やります?」

「……ああ、このまま負けっぱなしで終われるか!」

 

運が悪かったと言えばそれまでではあるが、それでも負けは負けだ。だが、このままでは引き下がれないと負けん気を発揮したイオリがリベンジを持ちかける。その言葉を聞けたモルフォも再びイオリとの勝負を開始する。

 

(……微妙な手牌なのかなこれは。というかドミノは麻雀とかよりも全然やらないから同じ数字が被りすぎると何となくやばいなって事ぐらいしかわからないんだけど)

(これ、結局いいのかどうか全然わからないんだけど……)

 

だが、先ほどはモルフォも運勝ちできただけで、ドミノ自体は素人も良いところ。同じく素人のイオリと手探り状態になりつつも、雰囲気でドミノを楽しみながら先生が戻ってくるのを待つのだった。

 

ちなみに戻ってきた先生も一緒にドミノに参加して三人で遊ぶことになるのだがそれはまた別の話。

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