転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
ゲーム開発部と古今東西ゲーム
デカグラマトン。それはかつてヒマリとエイミが調査を行っていた存在であり、その正体は廃墟に存在する自販機に宿っていたAIである。調査の末、デカグラマトンは消滅したようだが、その最大の特徴であるAIの感化により、他のAIは変質、それによってそれぞれのパスに属するデカグラマトンの預言者となり、特異現象捜査部と度々交戦を行っていた。
今回の氷海調査前の時点で確認されていた預言者は、アビドス砂漠に存在する第三セフィラ、ビナー。廃墟を徘徊していた第一セフィラ、ケテル。ミレニアム近郊の兵器生産工場のAIがデカグラマトンに感化されたことで変質した第四セフィラ、ケセド。そして、ミレニアムの最先端技術が込められた通信ユニット、ハブが感化され、第八セフィラと化したホド。
この内、ケテルを除く三体の預言者、ビナー、ケセド、ホドとは色彩の影響を受けた別個体と思われる存在がプレナパテスの事件の際にそれぞれ対策委員会と便利屋68、C&Cと正義実現委員会とレッドウィンターからの増援、エリドゥとエリドゥに集められた戦力が交戦し撃退。それ以降、このキヴォトスでデカグラマトンやその予言者に関する痕跡はビナーを除いて殆ど観測されてはいなかった。
事態が動いたのは氷海地域と呼ばれる地にてデカグラマトンに類似した反応をヒマリがキャッチしたことによる。ヒマリは先生に協力を依頼、エイミからアビ・エシュフを運用できるトキも連れていくことを打診され、そのトキからリオにこのことが伝えられたことで不測の事態に備え氷海調査が中~長期的になるのを見越し、ベースキャンプ構築用のAMASを送り、さらにヘリなども持っていくことになる。
防寒着に身を包み寒そうにするヒマリや水着になってイキイキし出すエイミ、普段通りメイド服のトキと共に氷海に赴いた先生を待ち受けていたのは初の観測となる預言者、第五セフィラ、ゲブラであった。ゲブラはデカグラマトンのエンジニアと称される三人組、アイン、ソフ、オウルによって運用されており、先生達と交戦。一時はゲブラを撤退に追い込むものの、それは様子見だったらしく、さらにデカグラマトン陣営と思われるオートマタ達とも連携を取る、戦略を構築するなど明らかに動きの質が変わり始める。そのことから、かつてデカグラマトンから最後のセフィラ、マルクトが降臨することを予言されていたヒマリ達はマルクトの目覚めが近い事を予感、デカグラマトンの預言者達との戦いを予感し備えることになる。
その後、先生達は待ち構えていたゲブラとの交戦も制した後、名もなき神々の力の痕跡を追っていたリオからデカグラマトンが名もなき神々の力を利用しているという情報がもたらされる。その際に新たな預言者の情報を得た先生達が辿り着いたのは火山が確認できる凍原地帯。資源採掘が行われ、鉄道などの運搬設備も存在していた火山地帯の中でアイン達の手によって新たな預言者、第二セフィラ、コクマーがけしかけられるも、どうにか事態を打開。
その後、火山で手に入れられる手がかりがなくなったことで一旦撤退することになる。しかし、コクマーとの交戦時にヒマリがサンプルを採取、さらに凍原地帯に点在していたデカグラマトンの基地からもサンプルを採取したことで、かつてアリスとケイが使用した名も無き神々の王女の力と同質の物質再構築が確認される。ここら一帯に作られた施設、或いは預言者も名もなき神々の力による物質再構築で作られた可能性が浮上した矢先にさらに強力な預言者の信号をキャッチ。さらにその予言者はかつてアトラ・ハシースの箱舟を守っていた多次元バリアと同質のものを展開していることが判明する。同時に、その内側にこそデカグラマトンの本拠地があると推測されるも、当時のように大量の演算装置を用意して解析するというごり押しで突破することができない以上、別のアプローチを強いられることになる。
そこで先生達は一旦ベースキャンプに戻り、名もなき神々の力の痕跡を追って氷河に既に辿り着いていたリオと合流。その後、話し合いの末にゲーム開発部を招集することを決定。先生は情報提供だけとはいえゲーム開発部を巻き込むことにあまり肯定的ではなかったものの、多次元バリアについて一番知見のあるケイとアリスが来なければ多次元バリアを突破する術はないという発言を受け、先生もそれを受け入れるのだった。
★
「……でも、こんなガチガチに備えて何しにいくの?」
「一応、預言者と戦闘する可能性が予想されるので念のためだそうです」
「戦闘するならC&Cとかに頼めば……ってそういえば出張中だっけ。戻るの今夜だったような……」
エリドゥで整備されていたトレーラー。その中にはスーパーノヴァがついていないアビ・エシュフ、そして氷海で破壊されたことで補充分のAMASや千年の守護者らが積み込まれていた。他にもトレーラー内では数日間の生活を視野に入れた就寝用のスペースや小さいながらもまとまって過ごす居住スペースも完備していた。そんな大型のトレーラーではモルフォは助手席に座るケイが見ている中、座席を調節していた。
キヴォトスでは車両を運転する子供など決して珍しくもない。だが、意外なことにゲーム開発部が車両を運転する機会は殆どなかった。とはいえミレニアムにいる以上、突発的に車を運転する機会の一つや二つあってもおかしくない。そのため、アトラ・ハシース攻略戦の終了後から合間を見ながら車両の運転についても一通りモルフォは覚えていたのだ。普通の車ならともかくこの状況で大型車両の操縦方法まで覚えることになるとはモルフォ自身思ってもいなかったが。
「うーむ、こんな感じでいいか……」
「そこまで気張らなくてもいいですよ。目的地までは自動運連で行けるようにしているようなので」
とはいえ、今回は自動運転で現地まで向かうことになる。あくまで何かしらのアクシデントが起こったときのためである。まあ、そんなことも少なくとも車両の方が原因で起こることはないだろうと、自動運転プログラムの調整が終わって暇になったのかトレーラー内の無機質な壁に絵を描き始めるマキを見ながら考える。
「あれは放置していいんですか?」
「いいんじゃない?レイアウト変更用に壁紙は取り外しやすくしてるとか言ってたし……見てて退屈しないなら。あっ、マキー!換気はちゃんとしてよー!」
「わかってるー!」
窓を全開にして彩をもたらしているマキに改めて注意した後にモルフォはケイの方を見る。
「まあそれはそれとして、氷海って滅茶苦茶遠い所じゃん。そんなところに行くことになるなんてね。しかもデカグラマトンって」
「デカグラマトン……ヒマリ先輩とエイミが追っていた存在でしたか。しかし、デカグラマトンにもエンジニアに該当する者達がいて、アトラ・ハシースの多次元バリアを利用しているとは……」
「結構大事じゃない?」
「とはいえデカグラマトンはきちんと設備を整えれば十分相手取れますからね。エリドゥがホドを撃退したように……そもそも普通に戦ったら手持ち銃器の火力が弱すぎて武器で負けるんです、今だから言いますがビナーやケセドにアビ・エシュフとか抜きで生徒が勝つ方がおかしいんですよ」
「でもセトは……」
「あれはシッテムの箱がおかしいので……そもそもモルフォも色々やってたじゃないですか」
「クリティカル補正乗せまくったらまあ、ああなるか……」
外ではアリス達が騒いでいる声が聞こえてくる。色々準備などを進めているがモルフォとケイもそこまで大変そうに考えてはいなかった。あくまで、物資の補給などをする必要があり、ついでにケイやアリスの知見も得たいから呼ばれただけだ。戦闘に関しては補充したAMASや千年の守護者らに任せることになり、ゲーム開発部はこのままミレニアムに帰ることになる。そうリオ達は話していた。ならばついでに氷海の写真やらなんやらを撮って後にゲーム開発の資料として使えればいうことなし、ぐらいの感じだ。
「モルフォ、荷物の積み込みは終わりましたよー」
「ありがとうコトリ」
「それにしてもデカグラマトンの預言者なんて……私も見てみたいですよ、そして解体してどんなものか是非とも調べてみたいです」
「……こうやって自分達から首を突っ込んでくるから私達だけに来いと言ったんでしょうね」
ケイと雑談していると、トレーラーの中にコトリが乗ってきて荷物の積み込みが終わったことを伝えてくる。しかしコトリの興味は完全に予言者達に向けられており、エンジニア部の性からか是非ともその構造などを調べたいと思っているようだ。これでは多次元バリアのことも込みとはいえゲーム開発部が呼ばれるのはある意味当然だろう。
「そういえばヒビキとウタハ先輩は?」
「ウタハ先輩はやっとエンジンがそろそろできるって最終調整中ですね。ヒビキは細かいレイアウトの調整とか色々ですねぇ……はぁ、なんかこう、戦力が必要!みたいになりません?」
「なったらなったでC&Cが呼ばれるだけでしょうに」
「ぐぬぬ……」
「まあ帰ってきたら色々話すし、リオ会長たちが戻ってきたらその時の資料とかエンジニア部が見れるようにならないか聞いておくからさ」
不満そうな様子を見せるコトリを苦笑しながら宥める。そんなことをしていると、扉が開いてモモイ達が大量の袋を持って入ってくる。モモイの手には大量のお菓子やらジュースやらを入れた袋があり、ミドリの手には皆の防寒具やら着替えやらをしまった袋が握られていた。そしてアリスの手には色々なゲームが入っている袋があった。明らかに道中を楽しむ気満々である。入った彼女達はマキが絵を描いているのに気付いて汚れないように袋を遠ざけた位置に一旦置いていく。
「うわっ、広い!!」
「こんなに広いなら色々遊べそうです!」
「氷海ってすっごい遠い所にあるだろうし、何かしら遊ぶ機会はありそうだよね」
「……別にここまで楽観的になれとは言ってませんが!?」
「ま、まあ氷海に入ってからは少しは気を引き締めてほしいけどそれまでは別にね……?」
「……私もちゃっかりついていっちゃ駄目ですかね?」
「いいんじゃない?ウタハ先輩が許可してくれるならだけど……ついでにマキもくるー?」
「寒そうだし何もなさそうだしいいやー!」
「私も無理ですね……今は皆さんのためにこっちに来ていますけど、モルフォ達が出て行ったら私もウタハ先輩の方に戻って作業の再開ですし……もう数日待ちません?新作が完成しますよ?」
「トキ達を待たせちゃうのはねぇ」
そんな雰囲気に当てられたのか同行しようかなんて一瞬考えて、エンジニア部の作業が残っているのに行くわけにはいかないとモルフォの言葉に首を横に振る。そしてモモイ達の元へ向かい、持ち込んだものについてツッコミを入れ始めるケイを見ながらくっちゃべていく。
「そういえばケイの体はどうするんですか?一応耐久性の方は問題ないところまで来ていますが」
「氷海って言うともう人の気配もないだろうしいいんじゃない?ていうかそろそろ別にいいんじゃ……」
「それはそうなんですが……ただやっぱり機能的にはエンジニア部としては胸を張って外には出せないというか。だから今回のような状況ならともかく……後一押しなんですよね……やっぱりその、充電が……」
「ああ……アリスみたいに、ってのはまだまだ難しいのね……色々遊んではいるから忘れそうにはなるけども。ま、そこは追々か。わかった」
「まあ、戻る頃には是非とも例のあれを完成させておきますので安心してください!」
そういい、満面の笑みを浮かべるコトリを見てモルフォも笑みを浮かべるのだった。
★
ミレニアムを出発し、氷海を目指すことになった一行。日中は自動運転でトレーラーが走り、その間トレーラーの中でゴロゴロしていたり遊んだり。そして夜になり、辺りが暗くなると視認性から来る安全面の問題も考慮して駐車するように設定されている。一応、トレーラーの駐車位置は場所次第ではある程度手動で移動させたりもする。そして今日、ゲーム開発部が休む場所は夕暮れ時になって偶然見つけた巨大な湖の近くとなっていた。
「なんかいいところだね、アリスちゃん」
「はい!空が綺麗です!星があんなはっきり見えますよ!」
「まあ都市部から離れてるからね」
それっぽく太い枝などを集めて焚火をして、全員でレトルトのカレーを調理し、そこにチーズだの福神漬けだのソースだの、思い思いの調味料やトッピングを付けて食べる。なんちゃってキャンプ風の食事に解放感のある景色を見て楽しみながら、モルフォたちは火の明るさを前にあるゲームをしていた。
「ハムカツ」
「ハム!」
「えーと……レタス!」
「と、トマト……」
「タマゴです!」
「ツナ?」
一人一人、食材について口にしていく。その間に次の発言者以外が手拍子でリズムを取り、リズムに乗って言い合っていく。ゲーム開発部がやっていたのは古今東西ゲームであった。
「とんかつ」
「チーズ!」
「きゅうり!」
「えっと……あ、キャベツ!」
「タマネギはどうでしょうか……?」
「ぽ、ポテトサラダ!」
古今東西ゲームではお題を定め、そのお題に該当する答えを参加者が順番に言う。ゲーム開始時に全員で掛け声をしたり、回答の合間に手拍子を取り、解答者はリズムに乗ってお題に沿った答えを言う。既に出た答えを言ったり、お題に適さない答えを出したり、大きくリズムから外れてしまった人は敗者となる。それだけのシンプルなゲームだ。
「魚のフライ」
「他……あっ、ゆで卵!」
「ベーコンって言ってなかったよね?」
「目玉焼き……はあるよね」
「温泉卵です!」
「温泉卵……?あ、いや卵焼き……いやなんですかその顔は!?卵ならありでしょ!?」
モルフォ、モモイ、ミドリ、ユズ、アリス、ケイの順番で答えていく今回のお題は、サンドイッチの具材と言えば。そんな中、途中で要審議の回答が出た場合は一旦中断して審議に入る。今回はケイの卵焼きが該当しているようだ。
「いや、卵焼きってあんまり聞かないし挟んでるイメージないから……」
「合うか合わないかならまぁ合わない理由の方がないけど……とりあえずいいんじゃない?卵ではあるし」
「今度卵焼きを作ってサンドイッチにしてみましょう!」
「うーん……なんかイメージにはないけど、まぁいっか!……それにここで見逃しておけば後々私が怪しいの出しちゃっても見過ごされそうだし」
「それとこれとは話が別ですけどねモモイ」
「ひどっ!?」
そして審議の結果、ケイの答えはお題に適したものだと判定が下り、古今東西ゲームは三周目になる。
「コロッケ」
「モルフォ、さっきから揚げ物しか言ってなくない?えっと……あっ、そうだ生クリーム!」
「リンゴ」
「イチゴ」
「バナナです!」
「パイナップル」
「なんで皆一気に果物に群がるのさ!?」
「モモイがフルーツサンド方面を開拓し始めたからかな……?」
三周目、ここでモモイがこの古今東西ゲームに新たなブレイクスルーをもたらす。その結果、モモイの前に解答していたモルフォ以外の全員が一気にフルーツに群がり始める。そんな感じで時折中断したり審議に入ったりしてリズムに乗れない人が敗者になるルールが形骸化しつつも六人のどこか緩い古今東西ゲームは続くのだった。
★
数時間後。焚火の後処理をちゃんとしたり、シャワーを浴びたり、就寝前に少しゲームをしたり談笑したりして、全員が寝床に入る。普段夜が更けるまでは平然と起きているモモイ達を実感していないだけで移動の疲れも溜まっているから早めに寝なさいとモルフォとケイが無理矢理ベッドに押し込み、目覚ましのタイマーもしっかり確認してモルフォとケイもベッドに入る。そして夜中。
「……ケイ、ケイ……」
「……なんですか……アリス……」
アリスがケイのパジャマを掴み、揺らしてくる。ケイが眠たそうに目元を擦りながら体を起こす。小さな水の流れる音が聞こえているので、おそらくアリスはトイレのために起きたのだろう。では、何故ケイを起こしたのか。疑問そうにアリスを見ていたケイだったが、アリスはケイにだけ聞き取れる小さな声で、
「その……何かを感じませんか?」
「何かを……?」
そう呟く。それを聞いたケイは困惑しつつもアリスの感じる何かを察知しようと意識を集中させる。すると、
「……確かに、うっすらとですが気配を感じますね」
「はい……昼間は全く気付かなかったのですが、何なのでしょうか?それも、全く知らない、というわけでもない気がします」
「確かに……初めてという気はしませんね……」
確かにそれについて感じ取ることができた。しかし、感じ取れたといってもほんの一瞬、それも限りなく薄く、小さい。本当に言われてみれば、というレベルだ。だが、気付いてしまえばどうしても気になってしまう。二人は皆に聞こえないようにトレーラーの外に出てその気配を感じようとするのだが、外に出ても特に変化があるわけでもない。
「……もしかしたら……」
「何かわかったんですか?」
「仮説でしかありませんが……もし、その通りならこのまま旅を続ければわかります。今は、明日に備えて寝ましょうか。明日も早いですからね」
「はい……ふふ、アリスはこんな大きなトレーラーで皆で寝るのは楽しいです。こんな機会、滅多にありませんから」
「それもそうですね」
結局、この感覚についてはその答えを得られないまま、二人はトレーラーの中へと戻っていく。だが、ベッドに入ろうと就寝用の共用スペースに入った二人は、そこであるものを目撃する。
「「……!?」」
眠るモルフォのベッド。その脇に浮かび上がる半透明な光。パジャマではなく制服、それもアビドスの制服を着ていた一人の少女が無言のまま、まるで歌を歌っているかのように口を動かしながら壁に寄りかかっていたのだった。
デカグラマトン編の時系列は原作では最終編終了後のどこかは明確には示されていませんでしたが、今作ではオラトリオ編の後ということにしています
時系列がこうなったのは単純にデカグラマトン編が終わらないと内容が書けないので終わったタイミングを時系列として組み込むのが安牌だと考えていたのが大きな原因でした。そのため、完結したのがオラトリオ編終了後だからその時期に設定されただけとなります(五周年で来るとは予想していましたが、万が一来なかった場合に備えての措置でもありました)