転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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ヴェリタスと流星のロックマン

 

「……マキ、どうしたんだろ」

 

ヴェリタスの部室で、白髪の少女、小鈎ハレがぽつりと呟く。その声を聞いていた、プラチナブロンドの長髪に眼鏡をかけた少女、音瀬コタマが反応して視線を向ける。

 

「そういえば最近、妙な事を言うようになりましたね。腕にパソコン取り付けたデバイスないかなとか、普通に街中でも自由に動き回れるAIが現実にいたらいいなぁとか。本人は独り言のつもりですけど」

「……」

 

話題は、最近の後輩の怪しい言動だ。ハッカー集団ヴェリタスの一員であるマキが急にそのようなことを言いだした背景に何があったのか。急にこんなことを言いだすと先輩としてはちょっと気になってしまうところだ。

 

「腕にパソコンって重すぎません?結構昔にハンドヘルドコンピュータとかありましたけど、ああいうのを腕に付けるってことですか?」

「町中にでも自由に動き回れるAIは……AIがある程度の思考能力を持つのはいいと思うけど……ほとんど人と変わらずに考えて動けるのは……ちょっと。そもそもどういう発想でそこに辿り着いたのかもわからないし……」

「……うん、じゃあモルフォちゃん、また今夜もやらせてね。あ、それとさ、今度なんだけど―――」

「「!」」

 

二人で話をしていると、部室の外からマキの言葉が聞こえてくる。マキと話をしているのはモルフォという人物のようだ。モルフォ、そしてゲーム開発部の存在はヴェリタスの中ではちょっとした有名人だ。先日、カイザーコーポレーションを相手にC&Cと一緒に大立ち回りをしたという話は当然のように彼女たちの耳にも入ってきていた。

 

「そういえば、エンジニア部で作られてるあの謎のコマの元を作ったのがモルフォという話を……」

「他にも色々なおもちゃを作ってたり、C&Cとも交友があったりという噂も……」

 

そこまで話していたコタマがふと、何かを思い付いたように手を叩くのだった。

 

「……マキの最近の言動の出所、何となくですが分かった気がします」

 

 

 

 

 

 

 

「……あれ?マキは?」

 

夜。パソコンに向かい、ヘッドフォンを耳につけて何かを確認しているコタマと、その様子を見守っていたハレの下に一人の眼鏡をかけた少女が現れる。彼女は部屋の中にマキがいないことに気付き、二人にその行方を聞いてみる。

 

「あ、チヒロ先輩、お帰りなさい。マキは友達と遊んでるよ」

「そう?……で、コタマは何をしているの。また、盗聴でもしているの?」

 

チヒロと呼ばれた眼鏡の少女、各務チヒロが少し、厳しそうな声音でコタマに声をかける。その言葉にコタマは一瞬ビクッとなるも、それは違うと弁明するようにチヒロの顔を見る。

 

「ち、違います!これは様子のおかしいマキを調べるために必要な調査ですから!」

「……様子がおかしい?」

「副部長は最近部室に来てなかったから知らなかったっけ……マキが変なことを言うようになったんだよ」

「……アートとかに行き詰ったとかじゃなくて?」

「ちょっと違くて……」

 

二人の話を聞いたチヒロは首を傾げる。そして二人から最近のマキの話している内容を聞いたチヒロは少し考えていたが、

 

「うーん……腕に取り付けるデバイスはおいといて……AIが自由に動き回るっていう発想が出てくるのはちょっと気になるな」

「こういうのってAIが動くって言うよりロボットが動き回るっていう話になるはず」

「それに最近、ある同級生と一緒にいることも多くなったのでちょっと気になりまして。マキに盗聴器を付けておきました」

「コタマ?」

 

チヒロから睨み付けられ、悪寒を感じつつもコタマは慌てて盗聴器の音声をスピーカーを通してハレとチヒロに聞こえるようにする。

 

『このゲーム……なんか展開ハードすぎない?主人公も暗いし……』

『そういうゲームだからね……』

『でもやっぱ凄いよねこれ……主人公が父親死亡で不登校からスタートって……出てくる登場人物もさ……重い……重くない?ちょっと前の敵だった研究結果を上司に奪われたせいで人間不信になった宇田海って人さ……他人事じゃない感が……』

『ミレニアムでやったら上司が極刑コース待ったなしだよね』

「「「……」」」

 

聞こえてきたのはモルフォとマキの会話。それを聞いたハレとコタマは顔を見合わせる。

 

「……これ、何のゲーム?」

「聞いたことありませんね……うたがいって検索しても該当なしです」

「……もしかして、ゲーム開発部が開発しているゲームとか?」

「あー」

 

ふと、モルフォがゲーム開発部と仲良くしていることを思い出し、ゲーム開発部の次回作のテストプレイをやっているのかもしれないという発想に思い至る。それなら、同級生で仲の良いマキも巻き込まれていてもおかしくはないだろう。と、すると、マキの不思議な言動もそのゲームの内容に由来しているのかもしれない。そういうことであれば何となく納得がいくだろう。と、コタマの肩に突然チヒロの手が置かれる。

 

「い、痛い痛い!痛いです!!」

「機密情報だよね?何勝手に盗聴してんの?しかもマキに盗聴器を仕込むって」

 

ミシミシと音が鳴りかねない勢いでコタマの肩を掴むチヒロの顔は全く笑っていない。ヴェリタスは立場上、セミナーの情報の独占に反対する立場を担っているのだが、チヒロ本人はむしろホワイトハッカー側だ。こういうのは当然許せるわけがない。

 

「今すぐスピーカーを切って」

「は、はははいぃいい」

 

本当にそんなことができるわけではないが、それでもこのまま肩を握りつぶされそうな勢いにコタマも慌ててスピーカーを切ろうとした、その時だった。

 

『流星のロックマンだっけ?異世界のゲームって面白いねぇ』

『でしょー?話は重めだけど結構好きなんだよね』

 

スピーカーを切る直前に聞こえてきたマキの発言に、コタマの手が止まる。チヒロも手はそのままだったが、その表情が少し歪む。

 

「……今、異世界って」

「……どういうこと?」

「あ、あの副部長、手、手を……!」

 

懇願するコタマの肩から手を離し、顎に手を当てて考え始めるチヒロ。おそらくこの話において、あくまでマキはゲームをやりに来ているだけで実際にそのゲームの出所に関係しているのはモルフォなのだろう。どこからそんなものを手に入れたというのか。

 

「そういえば、ゲーム開発部の面々がアビドスから帰ってきた時、モルフォがリオと話をしていた……あの時は単純な状況説明とかそういうものだと思っていたけど……」

「別世界のゲーム……本当にそうなら、どうしてそんなものが?」

「キヴォトスの外のゲームならそういう言い方しますもんね……」

「……コタマ先輩、もうちょっとボリューム上げてもらって」

(……マキとあの子、変なことに巻き込まれてなければいいんだけど……)

 

ハレの言葉にコタマは無言でボリュームを上げていく。今度はチヒロも止めるようにとは言わなかった。とはいえ、少しでもやばそうだったらすぐにコタマを止められるように、しっかりとコタマの様子を見るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお……遂にスバル君が学校に!」

「長かったなぁ……」

 

自分達の声がヴェリタスに盗聴されているとは思わず、マキとモルフォはゲームに興じていた。マキがプレイしているのは流星のロックマンというゲーム。電波通信技術の急速な発達により、遥かに発展した文明世界が舞台となっている。宇宙飛行士だった父が行方不明になってしまったことにショックを受け、引きこもりになってしまった主人公、星河スバルはある日、ウォーロックという宇宙からやってきた電波生命体と出会う。その出会いを経てスバルはロックマンに電波変換することによりロックマンへと変身し、FM星人と呼ばれる宇宙人達と戦うことになるという、全体的に重めのストーリーが続く作品である。

 

「……ほんと長かったよね……え?今どれくらい?」

「大体中盤かな……」

「だってFM星人三体ぐらい倒してたよね?」

 

そして敵となるFM星人も、ウォーロックとスバルのように、人間を電波変換して戦闘することになる。この時、利用される人間は心に闇や弱さを抱える人が多く、そこをFM星人に突かれる形でその体を利用される。一部例外を除き、倒された電波生命体は消滅し、利用されていた人間は解放されるのだが、同時にシナリオを通じてその心の闇を克服していく、という流れを経ている。

 

「それにしても、最初は左腕が生首ってどうなのかなって思ったけど、慣れてくると結構恰好いいね。それにこのトランサーっていう腕につけるコンピューターも結構格好いいよねぇ、今度エンジニア部に頼んで作ってもらおうかなぁ?」

「あはは、わかるわかる。でも自爆装置とかつけられそう」

 

流星のロックマンに出てくるロックマンは3でデザインがちょっと変わってしまう。どちらも格好いいのは当然だが、やはりそこは好みというものだろう。そして腕に付けるトランサーと呼ばれる情報端末も、出てくるのは実は1だけだったりする。腕に付けるごついデバイスというのもそれはそれで惹かれるものがあるのだが。

 

「負けイベからの強化フラグはお約束だけど、まだパワーアップはしないんだね……って、今度の敵は先生かぁ。そういえばシャーレの先生ってどんな人だった?」

「んー、結構優しい人で生徒皆に手を差し伸べてくれる人だったかな?」

「へー」

 

アフロが特徴的な教師との授業を終わらせながら、マキはそう言葉を漏らす。しかし悲しいかな、良い人ではあっても明らかなネームドのグラをしているせいで次の被害者枠なのだと理解してしまう。その後、平和な学校生活が続いていたが、

 

「うわぁ、今度もきつくない?」

「……まあ、普通だな!」

「普通って何だっけ?」

 

マキの言う通り、先生が次の敵となってしまったが。その理由も中々のもの。校長から解雇を迫られ、仕事を続けるために学習電波を使用することを強要されてしまったのだ。そして学習電波を使用することを葛藤しているところを次のFM星人に付け込まれ、乗っ取られてしまう。それによって生まれるのがリブラ・バランスであり、次のボスだ。

 

「って、おお!?これはかっこいい!」

 

リブラ・バランスを止めるべく、いくつかイベントを経てから変身し、追いかけるロックマン。そして、その道中でロックマンの姿が大きく変化する。

 

「これがスターフォース……やっば、かっこいいじゃん!」

「でしょー?」

 

緑を基調としたカラーリングのロックマン。龍のようなヘルメットと、何枚もの鱗が重なったかのようなアーマーを纏った姿、スターフォース・グリーンドラゴンと呼ばれる形態を手に入れたロックマンの圧倒的な力にマキのテンションも上がっていく。

 

「やっぱ形態変化はゲームの華だよね」

「わかる……いいよね」

 

緑を基調とした渋みの感じられるデザイン。そこに龍をモチーフとした要素が入り、格好よく仕上がっているのだから溜まらない。

 

「必殺技が竜巻ってのもいいね。派手でさ」

「うんうん、ドラゴンが一番好きなんだよね私」

 

バトルカードを手慣れた様子で選択しながら、カウンターを取ることで使用できる必殺技、エレメンタルサイクロンを叩き込む。流星のロックマンでは、バトルカードと呼ばれる武器を30枚用いて作ったフォルダを戦闘に使用する。その中には炎や水属性、或いは麻痺や凍結状態の付与といった状態異常の性質を持ったカードも存在しており、それらを組み合わせてバトルを有利に進めていくのだ。完璧な初陣イベントを終えたマキは、この調子でFM星人を倒してやると意気込みながら今回のボスであるリブラ・バランスへと挑んでいく。途中で属性を切り替えながら戦うトリッキーなリブラ・バランスの特性に最初は翻弄されつつも、無事、習得したばかりのスターフォースの力も合わせてリブラ・バランスを撃破するマキ。

 

「ふぅ、これでボスを倒したね」

 

その後、無事正気を取り戻した教師は今回の事件の責任を取って教師を辞めようとするのだが、教え子たちの願いもあって、再び教師へと戻り、校長が強要していた方針も撤回させられたことで事件は丸く収まる。そしてスバルをもう一度動かせるようになってセーブしたマキは、休憩するように一旦DSを置くと軽く腕を伸ばす。

 

「ふぃー、カロリー高かったなぁ相変わらず。この後もこんな感じのが続くんでしょ?まだ中盤って言ってたし」

「そうだね……」

 

この先、スバルは親に望まぬ進路を決められそうになっている女の子との戦いや、赤子の時にゴミ集積所に捨てられ、両親への憎しみから生まれた人格を宿す二重人格の少年との戦いを経て、最終決戦に臨むことになるのだが、それをマキがやるのはもう少し先になりそうである。と、突然部屋のインターホンが鳴る。

 

「あれ?誰だろ」

「ちょっと出てくるね」

 

そうマキに言い、玄関を開けるとそこにはネルの姿があった。

 

「よう、元気そうだな」

「はい、皆さんのおかげで。ネル先輩は何か用ですか?」

「いや、帰る途中でたまたま近くまで来たから様子見に来ただけだ。帰ってから一回も姿見てなかったしな」

「心配してくれてありがとうございます」

「ば……たまたまだっつの」

 

アビドスから帰った後、ネルの予定も相まって実はまだ一回も会えていなかった。それもあってモルフォの様子は大丈夫かどうか確認しに来たのだろう。そこそこの時間だったため、もし寝てるならそのまま帰るつもりだったのだろうが、部屋の明かりがついているのが見えため、まだ起きてるなら問題ないかとインターホンを鳴らしたようだ。

 

「モルフォちゃん?誰か来た……え?なんでネル先輩がここに?」

「あ?お前は確かヴェリタスの……ああそうか、そういうことか……ん?」

 

二人で話していると部屋の奥からマキが出てくる。一瞬、呆気にとられたような表情でマキを見ていたネルだったが、すぐに彼女もモルフォの能力の事を知っていると気付いたようだった。しかしすぐに、ある違和感に気付いてネルは首を傾げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ちょっとやってみたくなりましたね」

「ゲーム映像だけでいいから見てみたい……」

「……あの子の事、ネルも知ってるの?」

 

一方。ヴェリタスの部室ではマキがプレイしていたゲームについてコタマとハレが盛り上がっていた。チヒロもゲームの方に興味こそ抱いたが、それ以上にネルがモルフォの事を知っていたという事実に驚いていた。

 

「まあ、とりあえず置いといて……コタマ、もうそろそろいいんじゃないの。あんまりやりすぎると……」

「え?でもまだ先の展開が気になって―――」

『……よお、ヴェリタス。聞こえてんだろ?』

「「!?」」

 

とはいえ、他人の生活風景を盗聴など許されるわけがない。異世界のゲームという不可思議なワードを聞いて、もしこの二人が変なことに巻き込まれていたらと危惧していたため、コタマの盗聴を一旦許したが、ネルも知っているなら問題はないのだろう。そう判断し盗聴を止めようとした、その時だった。コタマとハレの体が、盗聴器越しに聞こえてきたネルの声に跳ね上がったのは。そう、マキを一目見てある違和感に気付いたネルは、すぐに彼女に仕掛けられた盗聴器を見つけ出したのだ。

 

『……え!?こ、コタマ先輩!?なんで盗聴器を私に!?じゃ、じゃあ私達の話……』

『……なるほどな、こりゃモルフォの奴が話す相手を選ぶわけだ……うし、ちょっと待ってろ。今すぐ行ってやるからよ……覚悟しとけよ?』

「……はぁ」

 

それだけ言い残し、ネルと思われる足音が遠ざかっていく。わざと聞かせるかのように大きく足音を鳴らしながら去っていくネルの足音を聞いたコタマとハレは冷や汗を流しながら顔を見合わせる。その様子を見て、チヒロは溜息を漏らしながら、ネルへのモモトークに「お手柔らかに」と書き込む。そしてそれからしばらくして。

 

ヴェリタスの部室から二名の悲鳴が上がるのだった。

 

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