転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
光り輝くオーロラに見とれていたが、それもやがて消えてしまう。オーロラを見ていた一行だったが、それも消えたことで現実へと戻り始める。
「あーあ、折角いい景色だったのに」
「本当にね……」
「ふふ、確かにオーロラは素敵な自然現象ですが……実はかなり危険な信号なんですよ?磁場の乱れで無線が被害を受けますし」
「そんな性質が……」
「……仮に障害が発生しても、数時間で回復するからそこまで心配しなくても大丈夫よ」
オーロラと聞けば幻想的なイメージがあったが、思った以上に厄介な代物である。そう考えると今はさっさと消えてよかったと言えるのかもしれない。
「輸送船をこちらに呼んだわ。後15分程度でこちらに来るはずよ」
「わかりました。忘れ物とかしないようにしておかないといけませんね……皆ー」
リオの言葉を聞き、輸送船に戻る前の準備を始める。モルフォの声を合図にそれぞれ準備を始める。といってもほとんど車での移動だったため、そこまで準備をすることもないのだが。
『……』
その様子をぼーっと見ていたもう一人のモルフォ。そもそも彼女自身、明確な意図があって呼ばれたわけではなく、近づいたら目覚めかけていたから復活させることができて流れで置いていくわけにはいかないので連れてきたも同然の人物である。彼女自身、事態が事態なのもあって一緒に来ることを承諾してくれたが、どうしても疎外感が拭えない。そんなもう一人のモルフォを見て、先生が近づく。
「大丈夫かい?」
『あ……先生……その』
「ごめんね、こんな状況で起こしちゃって……」
『いえ、そこは……気にしてません。ただ……この世界の私って凄いなって』
トキやエイミに色々話を持ち掛けられ、対応したり、アリスとケイに何かを聞いたり、リオやヒマリに質問したりしているモルフォを見ながら、もう一人のモルフォは自分との違いに苦笑する。そんなもう一人のモルフォを見て、先生が優しく微笑みかける。
「そんなことはないよ。モルフォはずっと頑張ってきたんじゃないか」
『先生……』
「だからさ、この問題が解決したら……一緒に会いに行こう、皆に。それに……ここにはモルフォの事を知っている子もいる、一人じゃないよ」
『あ……A.R.O.N.A.……』
もう一人のモルフォの呟きに反応するようにシッテムの箱からプラナが現れる。プラナはもう一人のモルフォの前に立つも、残念ながらその姿は彼女には認識できない。だが、今のモルフォは千年の守護者の身体だ。そちらに直接言葉を届けることができれば、
『……残念ですが、今の私はプラナという名前です。アロナ先輩と……呼び方が一緒になってしまうので』
『……そっか。なんか、久しぶりに聞いた気がする。A.R.O.N.A.……ううん、プラナちゃんの声』
『私もです。モルフォさんの声は……やっぱりモルフォと同じでも、ちょっと違います。こちらの方が私は……安心します』
姿は見えずともこうして話し合うことができる。堪えるような、だが嬉しそうなプラナの表情を見て、先生とアロナも安心した表情を浮かべる。
「皆、輸送船が来たわ」
と、ここでリオが輸送船が来た事を告げるのだった。
★
翌朝。やることがなく、かといって眠ることもできずに暇を持て余した結果、目覚まし代わりに歌い始めたもう一人のモルフォの歌声で目を覚ました一行は地表に降りていた。そこは濃霧で包まれている場所であり、視界も不安定となっていた。空は霧のせいで暗く、まだ夜の様にも見えるが、既に残るタイムリミットは二日となっていた。
「ではモルフォ、お願いします」
「はい」
ショットガンハンマーで地面を突く。直後、音波が周囲に広がり、それを元としたソナーが判別した種施設などをヒマリが手に持つタブレットにマップとして表示させる。
「ふむ……こうなっているんですね」
「……通信が生きている内にこちらの状況をエリドゥとセミナーに送信したわ。とはいえ……向こうからの連絡が返ってきたとしてもそれを確認できるのは次に船に戻ってからでしょうけど……」
輸送船から降りてきたリオが告げる。この報告は保険だ。デカグラマトンとの戦い、鋼鉄大陸の侵食を止めること。それをこの戦力で行うことへの不安は今だに拭えないのだろう。だからこそ、もし自分達が駄目だった場合に後を託す。自分達が死ぬことになっても無駄死にはしない、いや、無駄死にせずに済むと思い込める。そんな、実利を兼ねた精神を安定させるための行動でしかない。だからこそ、ヒマリらも、自分達が失敗することを考えるな、とは言えなかった。
「「「……」」」
目の前の施設を見ながら、自然と無言になっていく面々。リオが抱えている不安は、この場にいる全員が抱えていたのだから。しかしモルフォはふぅ、と溜息を吐く。
「んー、とりあえず行ってみてやれることをやってからにしましょうよ」
「モルフォ……?」
「明日もしかしたら死ぬかもとか、そういうのって実際にその時が来ないとわかんないじゃないですか。だったら……最後まで足掻くっきゃないでしょ。命があるなら、最後の一瞬まで諦めたくないし」
「モルフォ……ならあなたは、どうやっても駄目な時、どれだけ足掻いても敗北以外の可能性が存在しない時、どうするのかしら」
モルフォの言葉にその場にいた皆の視線が向けられる。そしてリオから投げかけられた言葉にモルフォはうーん、と考えると、
「まあ何をやってもゼロだってわかり切ってるならそれは割り切って終活でもしますよ。でも……ほんの少しでも可能性が残ってるのなら、分が悪くてもやってみる価値はある……そんなもんじゃないです?」
「はい!成功率とか、可能性なんてものはただの目安でしかありません!後は勇気で補えばいいんです!今回もきっと、なんとかなります!」
「なんとか……ね。そうね……実際にこれまでも何とかしてこれた」
モルフォなりの持論を口にする。それを聞いたアリスも嬉しそうに、モルフォの意見に同意するように自分の意見を口にする。それを聞き、リオが小さな笑みを零すと同時、他の面々も険しそうにしていた表情が柔らかくなっていく。と、
「……あ」
ユズの声が漏れる。話し合いながらも歩き続けていた一行は、霧が晴れ、青空が広がっていることに気付く。眩しい陽の光に照らされる中、先生は締め括るように言う。
「きっと、今回も何とかなるよ。そのために皆で頑張ろう」
先生の言葉に改めてその場にいた全員が頷く。そして明るくなった雪原を歩いた先で彼女達は、ある巨大な施設を発見する。
「これは……」
「……話には聞いていたけれど、こんなところにあったのね」
「知ってるんですか?リオ会長」
「世界の滅亡に備え、人類存続のために建てられた
「……シード・ボルト?」
「名前の通り、あらゆる種を貯蔵している施設です」
種子貯蔵庫。その名を聞いて首を傾げた先生にヒマリが説明する。
「ここに、手掛かりが……?」
「その可能性が高いでしょう」
「では、早速中を調べる準備をしましょう」
ここなら視界も良好だ。輸送船を下ろしてアビ・エシュフを外に出すこともできるだろう。リオはすぐに輸送船をここに呼び出すのだった。
★
場所は変わり、鋼鉄大陸内に存在する施設。そこでは、アイン達が難しそうな表情で目の前の反応を見ていた。
「つ、ついにティファちゃんのところに……」
「ティファレトには鋼鉄大陸への資源輸送とその管理を任せています。その位置がバレるということは……」
「ここ、鋼鉄大陸への手がかりを見つけられてしまったも同然だね」
彼女達は先生達がティファレトがいる場所、即ち種子貯蔵庫に辿り着いてしまったことを知ったことで、どうすべきか話し合っているところであった。そこで、ソフがティファレト自身の意思について確認する。
「ティファレトはなんか言ってた?」
「そそ、その、鋼鉄大陸への輸送は全て終わっているので、これからは預言者としての責務を果たすと……」
「敵を排除する、そして本来の目的を果たすためでしょうか」
「本来の目的、ねぇ……」
うーんと、三人が考え込んでいたその時だった。三人よりも身長の大きい、一人の女性が姿を現し、声をかける。
「それは、種子の保護……でしょうか?」
「ま、マルクトお姉様!?」
マルクト、そう呼ばれた少女は白い無機質な肌に黄色い目と白い長髪を揺らし、白と黒で彩られた衣服と大きな軍帽のような帽子を身に着けていた、その周囲にはビットのような物体が浮かんでおり、一見冷酷なようにも見えるが、素朴で温厚な喋り方をしていた。
「すみません、驚かせるつもりはなかったのですが……」
「ご、ごごごめんなさい!私達のせいで……」
「……ソフ、そろそろ状況をお姉さまに伝えてもいいのでは?」
「……そうだよね、ごめんなさい……お姉さまには心配をかけたくなかったんだけど……」
「……気にする必要はありません。妹たちの役に立てるのであれば。それに……これでようやく、姉の役割を果たせるのですから。大変な時は助け合う……姉妹とはそういうものでしょう?」
申し訳なさそうな表情をするアイン達を妹と呼び、マルクトは笑いかける。その言葉に三人は表情が嬉しさのあまり崩れてしまう。
「では、一度情報を整理しましょう。ティファレトの管理はオウルでしたね?」
「はい、ですが……少し込み入った事情がありまして」
「……続けてください」
「ティファちゃんは元々、人間が建設した無人の種子貯蔵庫の管理AIでした」
「ティファレトに初めて福音を伝播したとき、受け取ったとは言っていたけど……自分の使命でもある種子の保管もやり遂げたいって」
「ですがそれは……人間に与えられた偽物の使命、いずれ私達の真理と衝突してしまうのではないかという懸念がありました……」
ティファレトについて気まずそうに話す三人。それは、ティファレトには二つの成すべき使命があるということに由来していた。と、ここでオウルが気まずそうにソフを見ると、ソフも観念したように溜息を吐く。
「ティファレトの意志を尊重しようと言ったのは私なんだ。たしかに偽物の使命だし、オウルに言わせればティファレトが自分でどうにかしないといけない問題なんだけど……私達の福音を受け取った上で自分の意志を貫くって決めたなら、やらせてあげるべきかなって」
「成程、自由意志のせいで問題が生じていると……」
「お姉さま……?」
ソフの説明を聞き、理解したように頷くマルクト。そして、彼女なりの持論を展開していく。
「何も知らず、ただ命令を遂行するだけだった子に、自由意志があったとは言えません。そのような状態で責任を問うのも難しいでしょう……自覚すら持てないまま、悲しみの中で放置されていたとも言えます。ですが、福音を受け取り、全てを知った上で己の本分を尽くすと決めたなら。自ら選んだことならば、尊重して良いのではないかと」
「ですが……自由意志は錯覚に過ぎないという意見もありますが」
ティファレトのやりたいようにやらせてあげよう。そんなマルクトの言葉にオウルは首を傾げる。その意見を聞いたマルクトは首を横に振ると、
「例えそうだとしても、尊重することに意味があります。自由意志があったからこそ、我とあなた達の今があるのですから」
「「「!?」」」
「あの方が、ただ命令通りに動くだけのコマを望まれていたのなら……我はアインやソフ、オウルと出会い、話をする機会もなかったのではないでしょうか?」
「そ、そんなの嫌です……!」
自分には自由意志があったからこそこうして三人と一緒に会話することができているのだと。それを聞いたアインが、もし自分達がただ与えられた命令だけを遂行し、それ以外をすることのできない存在だったら、このような機会すらなかったのではないかと想像し、首を横に振る。それを見て、マルクトはアインの頭を撫でると、
「ええ、我もです。ですから、アイン、ソフ、オウル。ティファレト達預言者の選択も、大切にしてあげてください。ひいては、それがあの方の意にも沿うことになるでしょうから」
「「「は~い!」」」
そう三人を諭す。その言葉に三人が元気に答えると、マルクトは再び口を開く。
「夜明けが訪れています。霧は晴れ、朝焼けが闇夜を払うでしょう。眠らずにいるのは……未だその到来が分からないから。我は信じています。預言者、我自身、そして……大切な妹を。万が一のことがあった時は……姉として、あなた達を助けましょう」
「「「こ、光栄です……」」」
マルクトの言葉を恍惚として聞き入る三人。マルクトはくすりと笑うと、これからやることを口にするのだった。
「心配せずとも、我々は既に完全体です。これ以上、進化も、変化も必要ありません。何故なら―――私達はそのように創造されているのですから。では、ティファレトが見ている世界を、同じ目線で眺めてみましょう」
「「「はい!!」」」
★
「ずっと、同じ通路が続いてるような……」
「そう感じるのも無理はないわ。構造上、致し方ないの。でも、あと少しでコントロールルームに着くはずよ」
長い通路を歩く先生達。モルフォとトキが前を歩き、エイミが殿を務める形で警戒しながら進んでいた中、リオが目的地は近いと言う。
「?なんで会長わかるんですか?」
「この建物……何故かミレニアムの貯蔵庫によく似てるのよ」
「……あ、言われてみれば確かに……」
リオの言葉に、モルフォやエイミも妙に引っかかっていた部分が解消される。いうなれば典型的なミレニアム式とも言うべき種子貯蔵庫。しかし、リオは首を傾げる。
「ただ……私が知る限り、ミレニアムが保有している施設リストにここは存在していないの」
「?どういうこと?」
「おそらくですが……学外からの依頼を受けて建設だけミレニアムが請負ったのでしょう」
「でも、何のために……?」
先生の疑問の声にヒマリが答える。予想交じりの答えだが、同じ意見だとリオは頷くと、何の理由でこの建物を作ったのか疑問を抱くミドリにその答えを口にする。
「世界の危機に瀕した時、生き残った人類に生存の道を残すべく建てられた施設、とされているわ。つまり終末に備えるための貯蔵庫よ」
(……ノアの箱舟?)
『……似たような話を聞いた気が……』
「……こうして実際に目にするまではただの噂話だと思ってましたが……終末を想定して備えるだなんて、とんだ変わり者がいたものです」
「……でも、エリドゥは役に立ったから……」
「本当に役に立つとは思いませんでしたがね」
終末に備えるという気持ちは実際にエリドゥを作り上げたリオならば人一倍よくわかるのだろう。しかし、備えるにしては少々この種子貯蔵庫は違和感があった。
「施設を作った理念は理解できますが……その位置を公にせず、管理はAI任せ。これではいざという時に誰も辿り着けません」
「前は線路とかがあった可能性はありません?」
「ふむ……もしくはそこまで考えていなかったという可能性もありますね。或いは気まぐれかも」
それは、実際に終末が訪れた際にこの施設を利用できないという点だ。エリドゥであれば場所は判明していたし、通路だって整備されていた。しかし、この種子貯蔵庫はアクセス面が非常に悪い。
「……もしかしたら、誰かに見つけてもらう日を待っていたのかもしれませんね」
ケイが呟いたその時だった。通路の照明が落ち、一行は視界を塞がれる。咄嗟にモルフォ達は懐中電灯を点け、周囲を警戒する。
「周囲に警戒を!何かいます!」
「うわ、沢山出てきた!」
「先生の保護を最優先に!」
直後、通路の奥からゾロゾロと謎のロボット達が現れる。六本の蜘蛛のような足を持ち、中心に黒や白といった長方形のボディを持つ謎のロボット達。黒い個体や、頭部に砲塔を背負った白い個体、一番大型の白い直方体のボディをしたタンクを担う個体が入り混じって襲い掛かってくる。
「迎撃します!」
『スナイパーライフルがあれば私も戦えるのに……』
「あなたは光源になってください!―――光よ!!」
『えっ?』
先生、リオ、ヒマリを間に追い込み、残る面々で通路の前後をカバーしていく。黒いロボットと砲塔を持つ白いロボット達が弾丸を撃ち込んでいく。それをモルフォが、スーパーノヴァを下手に撃って通路を破壊する可能性を考慮して撃てないアリスがそれぞれシールドとスーパーノヴァを盾にして受け止めていく。その間にケイがもう一人のモルフォのホログラムを一旦消すと、そのまま天井部分まで千年の守護者を飛ばして発光させ、周囲を照らしていく。
『ええ!?こんなのあり!?』
「見やすくなった!」
「これで狙いやすくなりました」
「さて、と。それじゃあ一気に仕留めちゃおっか」
視界を確保できたことでモモイ達とトキ、エイミが一気に攻勢に出る。幸い、謎のロボット達はそこまで強度がないのかそれぞれ的確に弾丸を叩き込むことで破壊できるようであり、瞬く間に数を減らしていく。そして敵をある程度倒していくと、残ったロボット達が仲間の亡骸を回収して撤収した直後、照明が復活する。発光していた千年の守護者が明かりを消し、もう一人のモルフォのホログラムを出現させる。
「終わったみたいね……」
『なんか、変な気分……自分の体が光るなんて。それにしてもケイちゃんって凄いんだね……』
「私が凄いわけじゃありませんよ」
「皆、無事?アリス、スーパーノヴァは大丈夫そう?」
「はい!まだまだ耐久値には余裕があります!」
モルフォとアリスがそれぞれシールドとスーパーノヴァを確認し、損傷具合は問題ないことを確かめる。
「それにしても気持ち悪い敵だったね……」
「蜘蛛の足かぁ……逆向きにして逆関節っぽくすると独特の機動性があるんだけど……」
「ふむ……機体の破片があれば、持ち帰って分析したいのですが」
「残念だけど、一つ残らず持ってかれちゃった」
謎のロボットについての感想を言い合い、解析ができないことを惜しむヒマリ。トキも手応えを感じておらず、つまらなさそうな様子を見せていた。
「それにしても、逃げるまでワンセット……まるでイベント戦をしていた気分です」
「獲得経験値が少なかったのも、ドロップアイテムがなかったのもそのせいだったのですね」
「……ちょっと違う気がするのだけど……」
「どっちかっていうと……相手の出方を見るための初手みたいな感じがしますね。撤退の手際が良すぎます」
「私も同意見ですね……」
先程の集団について話していたが、モルフォの指摘にケイも頷き、それに続く形で他の皆もそれが一番納得できると頷くと、
「……気を付けた方がいいわ。種子貯蔵庫にも管理AIがあったはず……あのロボット達がエンジニア達の妨害というだけならいいのだけど、管理AIの方が感化されていたとしたら、それも新たな預言者に……」
新たな預言者の可能性も考え、また襲われる前にコントロールルームへ歩き始めるのだった。