転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
「「「……!!」」」
「どうかしましたか?」
その頃。アイン達三人は完全に固まってしまっていた。マルクトが心配したように三人の顔を見ていたが、アイン達が声を震わせながら、ついに見つけてしまったそれに衝撃を受けていた。
「あ、あれは、もしかして……!?」
「み、見間違いじゃないよね?」
「な、何故あの二人がここにいるのですか!?」
三人の目の前に映る映像。そこにはコントロールルームに向かう先生達の姿があった。だが、その中でアイン達が注目していたのはアリスとケイの二人。
「お、落ち着いて、まずは本物かどうか確かめよう」
「ま、間違いありません!!あ、あれは……」
「アリスと呼ばれている方は名もなき神々の王女、AL-1S……」
「その名前はあまり言わない方が……」
「そうでしたね……気を付けます。もう片方は何故かアリスとほぼ同じ姿をしていますが名もなき神々の鍵でしょう……これもあまり言いたくないですがね……」
「そ、そうだよね?」
アリスとケイ。二人の姿を見て、信じられないものを見たかのような反応を見せる三人。
「ど、どうして気付けなかったんでしょうか……才羽モモイに、才羽ミドリ、花岡ユズ、夢見モルフォ、夢見モルフォにそっくりのAI……全部把握していたはずなのに」
「……推測ですが、鍵……ケイと呼ばれていましたか。彼女の仕業でしょうね。私達が把握することもできなかったのも、あの力場を突破できたのも」
アインが頭を抱えてしまうが、オウルが冷静にこの二人がいたことであの力場による妨害を突破したのだろうと納得する。
「しかも、やられましたね。王女も鍵も禁じられた力を本来は行使できなくなっている。調月リオ……彼女が許可を入れることで行使が可能になるというワンクッションを入れられたことで、私達の探知に引っかかりにくい状態になってしまった。そこを鍵は利用して完全に隠蔽してみせた……どうします?作戦、練り直しますか?」
「そうだね……」
「ど、どうしましょう……何をすれば……」
何故ここまでアリス達に気付けなかったのか、その絡繰りを分析すると、うーんと悩みながら二人を見る。アインとソフも同様に悩んでいたが、ここでマルクトがティファレトから連絡が届いていることに気付く。
「ティファレトから支援要請が届いていますね。意見を求めていますが」
「て、ティファちゃんからですか?」
「現場の事は現場で判断してほしいんだけどな……」
「いえ、ティファレト自身はもう答えを出しているようです」
「それはどういう意味ですか……?」
「……まさか」
ティファレトが答えを出している。そう伝えたオウルに首を傾げるアイン。だがソフがティファレトが言わんとしていることを察する。そしてオウルはティファレトが求めているものに気付き、口を開く。
「ええ、今のティファレトが必要としているのは許可。即ち判断と激励……かと」
「……成程、じゃあ一旦整理しようっか?相手は生命体、私達やティファレトとは違う……そして、全ての生命体には限界がある。だったら……限界まで追い詰めればいいんだよ!」
ティファレトの求めているものを知り、ソフが状況を整理する。そして、ティファレトにやってもらう妙案を思い付き、それを二人に伝える。
「そ、その方法は……王女と鍵に通じますかね……」
「多分無傷じゃ済まないはず。状況が違うだろうしね」
「私達の表現で言えば、普段より出力が弱まっている、といったところですか。動けるのはあのAIのみでしょうし……見たところただの無名の守護者に放り込まれたAIでしかありません。何もできないでしょう……なんとかなるのでは?」
二人も、懸念する部分こそあるものの、悪い案ではないと納得したようだ。ここで、本当にこれで大丈夫かどうか、三人がマルクトを見る。
「我は……部分最適と全体最適の狭間に、生命体は成り立っていると思います。生命体の間には生態系というシステムがあり、被食者は一方的に捕食されているように見えて、天敵と言う概念が無ければ生命全体のシステムが維持できなくなってしまうのだとか」
「天敵……生態系……私が生命体を嫌う理由の一つですね。存在に矛盾を抱えているのは好みではありません」
「そ、そうなんだ……」
「話を戻しましょうか。アイン、ソフ、オウル。次の手が決まったら、ティファレトに伝えてあげてください。ティファレトも自分なりの判断を終え、他の意見を参考にしたいと考えている頃でしょうから」
マルクトは、先生達が生命体であることを利用しようとしている三人に対して生命体について話す。そして脱線した話を元に戻すと、ティファレトにどうするべきか話す。
「それって、みんなで決めたことにしたい……んですかね?ティファレトは案外、賢いのかもしれません」
「いや、その解釈はひねくれすぎじゃないかな……」
「私は良いと思います……ティファちゃんの助けになれるって、ことですよね……?」
「ええ。少なくともあの方の名の下で―――私達は、既に一つなのですから」
三人の言葉を聞いたてマルクトは、そう自分達の事を告げて話を締め括るのだった。
★
謎の逆関節のロボット達を迎撃し、通路を進んでいく。鋼鉄の通路を抜け、壁や床から苔が生え始めた部屋に辿り着く。
「この部屋、所々に苔が生えてますね」
「森の中みたいな香りがして落ち着きますね……」
「森……森……?」
森の匂いってどんな感じだったっけと首を傾げるモルフォ。一方ヒマリは部屋の中を見て、この部屋が環境的によろしくないことに気付いて難しそうな表情を浮かべる。
「完全に外と隔離するのは難しかったようですね……種子を保存する環境としては、あまり望ましくないと思いますが」
「外が極寒と考えると……種が死なないようにしているはずの貯蔵庫が冷たい外気が入り込みやすくなっているってことですか?」
「ええ、幸い隔離されていたので保管場所からある程度の熱がこちらに来ていると思われますが」
「……あっちにドアがある。種を保管してるのかも」
部屋の中を見渡していたエイミが奥の方に部屋があることに気付く。この先に種子を保管している部屋があるのだろうか。この部屋の環境を考えてもその可能性は高いと判断し、何かがあるという直感に従い、トキはあることを提案する。
「……その前に少し休憩していきませんか?」
「賛成!歩き疲れちゃったよー!」
「アリス、知ってます!ボス戦前のセーブポイントですね!」
「そうだね。さっきのロボット達のことを考えるとこの先で戦闘になるかもしれないし、休もうっか」
トキの提案を受け、先生も一旦休むことに決定し、床の苔を掃除して休めるスペースを作る。そして数分後。
「「「「「「……」」」」」」
ゲーム開発部は肩を寄せ合って眠っていた。朝、輸送船から降りてずっと雪の中を歩きっぱなしで、そしてこの施設に入ってからの戦闘。そして極寒の環境から、種子の保管部屋が近いからか少しは暖かい環境になっているのも相まって休んだ途端に一気に眠気が襲い掛かってきたようだ。
『……』
「モルフォは寝なくていいの?」
『あ、なんか……眠気を全く感じなくて』
「……今は千年の守護者に入っているからかも」
『……その、ずっと聞こうと思っていたんだけど……エイミちゃん。千年の守護者って何……?無名の守護者じゃないの?』
「……」
もう一人のモルフォに寝ないかと聞いたエイミ。彼女に気になっていた千年の守護者とは何なのかという質問をぶつける。だがエイミは目を見開き、何故か数歩後ずさってしまう。
『え……な、なんで?』
「エイミは戸惑っているようです、仕方ありませんケイが寝ているので私が説明を……」
『あ、ありがとうトキちゃん……』
「……」
『ええー……?』
戸惑うエイミに代わりトキがどこか得意げな表情で説明を始めようとする。それを見てもう一人のモルフォが礼を言うと一転してトキの表情が無表情になり、黙り込んでしまう。
「……なんか、違和感が凄い」
「え、エイミ!」
「あ……ごめん。別人だってわかってるんだけど」
「……二人ともモルフォから呼び捨てにされていたから気になってしょうがないのでしょうね……」
『あ……ごめんなさい……私、アヤネちゃんもセリカちゃんもずっとこう呼んでたから……』
「まあ、環境が違うのですから仕方ありません。で……千年の守護者ですか」
モルフォともう一人のモルフォの呼び方の違いにエイミとトキが若干ダメージを受ける中、ヒマリが千年の守護者について説明を始めていく。アリスとケイが生み出し味方となった無名の守護者を区別をつけるためモデルチェンジしたのが千年の守護者であるということを。
「最近は解析も進んで、近いうちにエリドゥの設備で製造できるようになる予定よ」
『この世界のミレニアムやっぱりなんかおかしいよ!?』
「「?」」
もう一人のモルフォの冷静な声にそこまでおかしいことをしているのだろうかとリオとヒマリが顔を見合わせる。太古のテクノロジーを応用して何かを作ることなど、既にアビ・エシュフやエリドゥがそれなのだから今更である……というのが二人の認識なのだろう。が、それはもう一人のモルフォの知るミレニアムとは技術力が剥離しているのか、思わずツッコみの声を上げてしまう。直後、その声は途中から眠っていたはずのモルフォの口から放たれ、先生達は驚いてこの世界のモルフォの方を見る。
「「んぅ……」」
モルフォの口から飛び出した大声に、耳元で叫ばれたも同然のユズとミドリがうっすらと目を覚ます。それに連動する形でモモイ、アリス、ケイも起き始め、最後にモルフォが何が起こったのかと違和感を感じながら意識を取り戻す。
「あ……」
「……起きてしまいましたね。さて、そろそろ最後の部屋に行くとしましょうか?」
「……そうだね」
色々気になることは多いが、先生はそれを飲みこむ。この休憩は必要だから取っているが、自分達には時間が残っていないのだ。まずはこの施設の探索を進めようと号令をかけるのだった。
★
「……ここが最後の部屋かな?」
苔の生えていた部屋の奥に入ると、そこにはさらに大きな部屋が広がっていた。苔どころかツル、はたまた水たまりまであるなど、とても種を管理できる状況ではない。
「この状況……普通なら、とっくに閉鎖されているわね。これでは種が勝手に発芽してしまう……」
「見てください!壁全体が引き出しになっています!」
「そのようですね……おそらくここに種が……あら?種の保管状況が悪くない……?」
「本当ね……?」
壁には無数の引き出しがあり、その中には厳重に隔離された種の数々があった。部屋はボロボロであり、植物が自生できる環境だったため、種の保管状況も期待はしていなかっただけに、リオとヒマリは驚いていた。
「それにしてもこれ、雰囲気あるよね」
「確かに……人が近づかないように普段は隠されてる……神聖な森みたいな場所だよね」
「では種は宝物ということでしょうか?」
「雰囲気的には近い……?」
何の種かはわからないが、大事そうに仕舞われている種を見ながらゲーム開発部が話し合う。その様子から視線を外し、部屋を見渡しながらトキはこの部屋がどういう場所なのか理解する。
「ふむ……どうやらこの施設は三重の密閉構造になっていたようですね」
「ええ、部屋と貯蔵庫までの空間は壊れていたけれど……幸い、種子を保管するシェルターだけはまだ機能しているのね」
「キヴォトスに誇るミレニアムの技術力ですね」
「……それだけとは思えないわ。部屋、貯蔵庫までの空間、これらが壊れても種子の保管だけは最優先で続けていたようにしかみえない……一応、種子貯蔵庫には管理AIもあるけれど……!」
直後、リオの持つタブレットから音が鳴る。リオが急いでタブレットを確認すると、
「っ……やっぱり!この種子貯蔵庫の管理AI……既に感化されている!六番目の預言者……ティファレト!!」
リオの言葉にその場にいた全員に緊張が走る。モルフォ達は壁から離れ、先生達三人の周囲を取り囲む。
「……ここの管理AIがティファレトなら、管理AIは預言者と成ってからも種の管理を続けていることになります。まるでそれが使命であるかのように……だとするなら、これは一体、誰の意思なのでしょうか」
「……三人の意思か、或いは……預言者自身に自意識があるのか……?」
周囲を取り囲む一年生達に守りを任せ、今明らかになったティファレトについて考察を進めるリオとヒマリ。直後、リオは視界が歪み、身体から力が抜けてしまう。そのまま、意識を失ってしまうリオに続くようにヒマリ、エイミ、トキ、ゲーム開発部、先生が次々と倒れていく。
「リオ先輩、ヒマリ先輩!?」
「皆!?一体、何が―――く、なんですかこの臭いは……」
『……!も、もしかして、睡眠ガス……!?』
「っ……私達ともう一人のモルフォだけ動けているのはそういうことですか……!」
ケイが悔しそうに歯噛みする。だが、倒れた皆は中々目を覚まさない。
『どうすれば……どうすれば……私じゃ何もできないよ……歌う?でも、そんな力残ってる?というかガスに効くの……?』
『問題ありません。聞いてください、モルフォ。このガスは無色無臭……神経細胞に作用する低い毒性がありますが、危険度は低いです。今、先生が吸い込まないように介入しました。残る皆さんも命に別状はありません、安静にしていれば目を覚ますはずですが……長時間の吸引は推奨できません。どうにか対処を……』
だがここでプラナの声が聞こえ、アロナバリアってガスにも通用するんだ……と内心驚きながらも安心する。その表情を見て、何かがわかったのかとケイが質問する。
「何かわかったんですか?」
『えっと、プラナちゃんがこのガスは長い間吸引しなければ毒性は低いから大丈夫だって……それで、先生はガスを吸わないようにしたからもうじき目を覚ますって』
「……成程、そういう……」
「これはトラップですね……部屋に入ると起動する、時間制限がついているイベントです。こういう時はトラップを解除する方法が部屋の中にあるはずですが」
もう一人のモルフォの言葉にケイ達も安心し、アリスがガスを止める方法を提案する。それを受け、三人は部屋の調査を始めていく。
「……?これは」
「タッチパネルですか……うわっ!」
『え、これ大丈夫なのアリスちゃん?』
すると、部屋の中央にタッチパネルのようなものを見つける。それにアリスが触れてみると、画面が一瞬光ったかと思うと突然点滅を繰り返してしまう。
「……う、ここ、は……」
「あ、先生が目を覚ましました!」
ケイも手を当ててみるが反応は変わらない。と、ここで先生が目を覚ましたことに気付き三人が駆け寄る。
「先生、大丈夫ですか?」
「う、うん……皆は」
目を覚ました先生に今の状況を説明すると、先生にタッチパネルを押してもらうことになる。これでガスが止まればいいのだが、そう考えながら先生がタッチパネルに触れると、突然画面にレッドウィンターの校章が現れてしまう。
『えっ、なんでレッドウィンターが……?』
それは、この種子貯蔵庫がレッドウィンターのものであるということだ。滅亡について、この施設の関係者が残した音声が流れ始める。そのほとんどはあまり関係ないものであったが、最後の方にこの施設の防衛機構について気になるメッセージが流れ始める。
『―――この施設は防衛機構を備えています。また、最新の状態を保つために、試験稼働は省略しています。即ち、あなたが手を出したもの、あるいは手を出そうとしているものは我々ですら触れたことの無い代物です。稼働には、相応のお覚悟を』
「―――え?」
「はぁ!?設計者何を考えて―――!?」
試験運用すらされていない防衛機構。それでは文字通り何が起こるかわからない。その後、今いる第三区画の管理施設までは立ち入りを許可するが、この先の全体の七割を占める種が保管されている重要施設である第二貯蔵庫は指導委員会の手続きがなければ進めない、というメッセージも流れ、さらに滅亡について軽く扱っているかのような音声が続き、最終的にもう容量がないことに録音をしていた人物が驚いて終わるといういまいち締まらない終わり方をする。直後、突然明かりが消えたかと思うと、再びアイン達三人のホログラムが姿を現す。
「……!」
『こ、こんにちは……皆さん、先生。また会いましたね……えへへ』
『まあほとんど寝ちゃっているけどね』
『いっそ全て諦めてしまえば楽になれるというのに』
「それはできないよ。先生として、生徒を諦めるわけにはいかないからね」
『へー、じゃあ私達も生徒だ!って言ったら?』
降伏しろと遠回しに告げるアイン達。だが先生達が諦める理由はない。ここで諦めてしまえば鋼鉄昇華は止まらないのだから。そんな先生に意地悪そうに質問するソフ。それに対して先生は笑う。
「もちろん。編入書類は用意してあるから、いつでも連絡してね」
『……うわぁ、冗談通じないの?』
『こ、こういうのをダメ人間というのでしょうか……』
『申し訳ありませんが、私達は一切興味がないので……そもそも編入も所詮人間が作ったシステムですし……まあ、そんなどうでもいい話をするつもりはありません。非建設的ですから』
『そう。とにかく私達が言いたいことは、ここを越えたらもう取り返しがつかないってこと。だからあんた達を特別に諦めさせるためにちょっと話をしに来たの』
そんな先生の軽口をさっさと流して、警告するソフ。一線を越える、つまりこの先に鋼鉄大陸があり、この種子貯蔵庫を越えてしまえば本気で始末しにかかるということ。ここで大人しく引き返すのならば、これ以上攻撃はしない、ということなのだろう。だがそれは何の意味もない。それがわかっているからこそ、ケイはそっけなく答える。
「……話になりませんね。ここで退くということはキヴォトスが鋼鉄昇華されるだけでこちらの敗北が確定するだけです。それとも命があるだけマシとでもいうつもりですか?」
『……まあいいでしょう。ついでですし聞いておきましょうか。あの力場をこじ開けたのはあなたの仕業ですか?まあ鍵一人では無理だと思いますが、王女も一緒でしたからね……』
「!」
そんなケイに今度はオウルが確認をする。といっても半ば確信はしているようなものだが。
『しかしまぁ、残念ですね王女……これではまるで自身の根源を忘れてしまった意識体です。根源を使う権利を人間に委ねたも同然とは……ソフに言わせれば生殺与奪の権利を与えているかのようなもの。今のあなたは平凡な生命体ではありませんか』
「?どういうことですか?」
『その、つまり……生まれる前の記憶がある生命体は、いませんよね……?』
『えっと、その……凄く言いづらいけどあるけど……』
「……あなたは色々特殊なので……彼女達の定義に則るなら今は意識体に生まれ変わったようなものですが元は生命体なので。まぁ意識体になるときにプレナパテスと共に歩み、もう一人のシロコさん、ユメさんを助けるという使命を帯びて生まれ直したも同然ということになりますがね」
『生命体から意識体……え、何ですかそれ?そんな、そんなこと……』
(前世の記憶……一応本当にあるんだよね……まあ、ただの女子学生でしかなかったんだけど……)
オウルの予定としては、自分達は生まれる前から役目、根源を与えられている。最初からそうなるべくして生まれた存在であり、その使命こそが栄光。何もない状態で生まれる生命体とは違うのだと。そう言って自慢しようとしていたのだが、それに気付いたケイがモルフォが生命体から意識体に変化したことやその行動を踏まえ一気にねじ伏せてしまう。
『……』
『ふーん……そういうこともあるんだ。でも、それならよかったんじゃないの?だって生きるって呪いから解放されたってことじゃん』
「呪い……?」
『考えてみてよ。生まれたばかりの赤ん坊はなんで泣くと思う?答えは苦しいから。いきなり自分の肺で呼吸することになって、周りは聞いたことのないノイズでいっぱい……生まれた瞬間から、絶え間ない苦痛の中で生きる羽目になる』
『……ふふ、望んだわけでもないのに勝手に苦痛を与えられるわけです。残酷で、世界の不条理だと思いません?』
と、ここでソフの言葉に気を持ち直したのか再びオウルが参戦してくる。しかしアリスは急に語り出しましたね……と言わんばかりに遠い目をし始めており、ケイもどこか白けたような目で見ている。だが先生だけが三人が何を言わんとしているのかを知ろうと集中して聞いている様子を見て気を良くしたのか、オウルはさらに言葉を続けていく。
『それならせめてこの苦しみを誰かにわかってもらいたい、理解してもらいたい……そう願っても、他者の理解を得ることも、他者を理解することも容易ではありません。誰にも理解されず、ただ己の苦痛を抱き続けるしかない……まさに生きることは罪。ならば罰とは何か?そう……声明は生き延びるために、他の生命を害する必要があります。即ち、罪を犯さなければ生きていけない……皮肉なものです』
『生命体は例外なく全部同じだからね。あ、植物も一緒だからね?だから、生命が罪を犯さず、罰を受けなくて済むように……私達は生きるという呪いから解放してあげたいんだよ。ちょうど、そこのあなたも一つの形だね……まあ、これはさすがに予想外だったけど』
そう締め括り、ソフ達がもう一人のモルフォを見る。それを聞いていたもう一人のモルフォは少しむっとした表情を浮かべる。
『……私は、生きているのが呪いとか、苦痛だとか、そんなことは思ったことないよ……思ってたら、私はここにいないから。それに、皆が目覚めさせてくれてまた、生きられるって思った時、凄く嬉しかった。だから……あなた達の言っていることって、ただの押し付けでしかないと思うかな……』
『な……!』
「全くですよ、さっきから調子よくあれこれ喚いてると思えば乱数一つ作れないくせに……大体生命体なしじゃ生まれることすらできない存在じゃないですかあなた達」
生命体から意識体になるような経緯を経たのならば自分達に同調する部分もあるだろう。そう思っていたところで盛大に梯子を外された挙句、ケイにマジレスをかまされソフ達の顔が歪む。
「大体、何故ティファレトに種の管理をさせているのか……生きてるのが苦痛とか呪いとか言いながら、滅亡を避けるために作られた種子保管庫でその生命を生み出す種子を大切に保管って矛盾の塊じゃないですか」
『ぬぐっ……でもあんた達よりマシ!私達は欲望じゃなくて合理に基づいて動いて―――』
「欲望のない意識は意識と呼べるとでも?大体欲望だの合理だの……誰が定義するのか。あなた達の主観ではないといいんですがね、結局自分勝手な意識体だったと思いたくありませんから」
『……』
「規則とは自分自身で定めるもの。自分で定めた規則だからこそ、守ろうと思えるものなのです。もちろん、その過程がやや難解で、非効率的なのはわかりますが……」
『だ、だからこそ私達による管理が……そうすれば、種の根本的な間違いによる滅びを……』
「いきなり理論を飛躍させないでください。大体、完全に管理された世界に滅びが訪れないなんて明確な根拠も成果もないじゃないですか」
『ですがこのまま生命の自由にさせたところで未来は―――』
「かつてキヴォトスが滅びそうになりましたが、生命体は見事それを乗り越えましたよ?つまり生命体は明確な滅びを回避し、乗り越えたという一つの証明があるわけです。では意識体のあなた達の導く閉ざされた管理世界……それが正しいという明確な証拠はあるのですかね?」
『『『ぐはぁ!?』』』
ケイがレスバモードに!?と隣でアリスが小さな声で悲鳴をあげ始める中、遂にケイはアイン達を完全に言い負かせてしまう。実現すらされてない机上の空論が過去の事実に勝てるかの一言で一蹴された三人は体を震わせながら、
『は、はん!口で勝ったからって調子乗らないでよ!時間稼ぎは終わったんだから!!』
『そうですとも!ええ、こうなったら……ここまでコケにされたんですから痛い目を見てもらわないと釣り合いが取れません!泣いて謝ったって遅いんですからね!!』
そう言い、通信を切ってしまう。直後、
『「「「!?」」」』
部屋の中に六本脚のロボット達が次々となだれ込んでくるのだった。