転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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The Guardian

時は数日前に遡る。

 

「プラズマエンジン、起動!!」

 

大きな音と共に巨大な動力部が稼働する。そこには三人の少女達が神妙な面持ちで見ていたが、やがてその動力が安定したのを見て、安堵の表情を浮かべると嬉しそうに抱き合う。

 

「来ました!来ましたよ!!」

「うん、まさかこんなぶっつけ本番で使うことになるとは思わなかったけど……でも、ずっと作ろうとしていた高出力プラズマエンジンは凄い……!」

「これも学園の設備だけでは開発にもっと時間も手間もかかっていたことだろう……だが、今は違う。元々煮詰めていたことに加え、大きな参考資料も手に入ったことだからね。ミレニアムの技術力を組み合わせればもっと安全な形に再構築することなど容易だったわけさ。まあ私達は元々彼女とは別方面にアプローチしていた雛形があったわけだが……」

「ウタハ先輩!それは言ったらまずいですよ!」

「おっとそうだった。だがね、プラズマ動力なんて作ったらどこかしら似るものなんだから仕方ないんだなぁこれが!!……いや、冗談でもなんでもなくね」

「それはそう」

 

嬉々とした表情で目の前の動力を見る。その巨大な動力が搭載された機体が徐々に動きを見せるかのように角度が少しずつ斜めに上がっていく。一方、舟のブリッジと思われる場所には、ミレニアムサイエンススクールの制服を着た少女達が作業を行っていた。

 

「各部チェック……オールオッケー!宇宙戦艦……もとい飛行戦艦、いつでもいけるよ!」

「積み荷の方も抜けはなし!搭乗員も全員乗っていますよ!」

「目的地は部長達から送信された情報の発信位置に固定。途中途中で追加の情報も来るからその都度目的地を更新していくね……でも探れるかな……さすがに近づいたら電波状況がどうなるかもわからないし」

「こっちから連絡はしちゃいけないの?」

「デカグラマトンのエンジニアってのがどういう奴らなのかわからないからこちらからの交信は控えるべきかもね」

 

ブリッジに乗る四人の少女が話し合う。その後ろでは三人の少女が座っていたが、その内一人の桃色のツインテールの少女は興味深そうにブリッジの中を見渡していた。

 

「向こうがどういう状況なのか詳細が分からない以上、もしかしたら潜伏している可能性もあるかもしれないし」

「……なんか不安ですね……というか、これだけの戦力でいいんですか?他の学園からも……」

「それは難しいと思いますよ?会長だけでなく先生も凍原地帯にいる以上、他の学園に救援をっていうのは難しいですし……そもそも物理的に移動の時間を取るわけにはいけませんし」

 

作業を進める四人の少女を見ていた三人の少女が話し合う。悩みながら頭を抱える少女と不安そうにしている少女へ難しそうな顔をしながらもう一人の少女がその疑問に答えていた。

 

「マスドライバー、角度調整完了!いつでもいけます!」

 

ドタバタとブリッジ、動力部で少女達が動き続ける中、巨大な都市からレールのようなものが地下から地上へと伸びていく。それが、ある方角へと伸ばされ固定、少女達が乗り込んだ巨大な飛行戦艦がレールの上に移動し、射出の準備が完了していく。

 

『各員、これより飛行戦艦……そういえば名前なかったわ。まあこれは追々決めればいいか……それよりも、皆さんシートベルトをしっかり締めてください。ウトナピシュティムの時は思った以上にエグかったので……舐めてると本当に舌を噛みますよ!!』

 

ブリッジから聞こえてきた本気の警告に、ブリッジには上がっておらず部屋の中で待機していた四人の少女も大人しく言う事を聞くことにして舌を嚙まないように注意する。いかに戦いに強くても不意に舌を噛んだらそれは死ぬほど痛いのだ。そして、

 

 

 

 

 

 

この日、要塞都市エリドゥから巨大な飛行船―――いや、戦艦が飛び立つのだった。

 

 

 

 

★

 

 

 

 

『―――♪』

(……随分と豪華な目覚ましだ……自分と同じ声っていうのはちょっと違和感あるけど、こうして聞くと完全に声が別物すぎる……七色の喉を持ってるのは凄いもんだ……)

 

まあ私が持ってても使う機会ないんですがね、と内心呟きながら、船内に響くもう一人のモルフォの歌声を合図として目を覚ますモルフォ。体をほぐしながら、のそのそと起き出してきたケイ達を見る。さすがにこの状況で夜更かしなんてできるわけもなく、早めに眠ることになったモモイ達もちゃんと時間通りに目を覚ましたようだ。

 

「やあ、皆おはよう」

「おはようございます、先生……なんか顔色よくないです?」

「言われてみれば……」

「先生のHPが全回復しています!」

「徹夜とかしてないからね」

『なんで緊急事態の時の方が健康的な睡眠時間取れてるんでしょうか?』

『先生なので!』

 

全員が目を覚まし、歌い終えたもう一人のモルフォが合流し、ゲーム開発部と先生はロビーで朝食を取ってコクピットに上がる。そこでは既に朝食を食べ終え輸送船の操作などを行うリオ達の姿があった。

 

「おはよう、皆。どんな感じかな?」

「おはようございます、先生」

「移動に関しては今の所順調よ。ただ……着陸に関して少し懸念点が出てきたわ」

「というと?」

 

コクピットに上がった先生が話を聞くと、リオが難しい表情を返してくる。何か問題があったのだろうかと聞き返すと、トキがその理由を説明する。

 

「鋼鉄大陸の信号が徐々に強くなっています。そのせいで着陸地点を決めるのが難しくなってしまいました」

「え?着陸場所ってどこでもいいんじゃないの?」

「そういうわけにもいかんでしょ」

 

モモイの発言に呆れたようにモルフォがツッコむ。それに同意するようにユズも口を開く。

 

「確かに……もし防空システムを鋼鉄大陸が持っていたら、下手にそこに引っかかると大変なことに……」

「この輸送船って輸送と研究に重点を置いてるせいで防御力が少し低いんだよ」

「具体的にどれくらい?」

 

エイミもこの船を攻撃されたら絶体絶命だと指摘する。ミドリがどれくらい柔らかいのか聞くと、どう表現すべきか悩んでるエイミに変わってケイが説明する。

 

「アトラ・ハシースにウトナピシュティムで突っ込んだでしょう?それと同じことをこの船で行えば、こちらが潰されて全滅します」

「うわーん!この船のステータスが低すぎます!!」

「太古の超巨大演算装置のウトナピシュティムとただの輸送船を比較すること自体がナンセンスだと思うのだけれど……」

「それを言ってしまえばおしまいです。やれやれ、時間さえ許されるならエンジニア部が作っていたという戦艦を持ってくれば話が変わってきたのですが」

「え、そんなの作ってたの!?」

 

輸送船では怪しい。そう話していたところに戦艦を本当に作っているという話を聞いて先生が目を輝かせる。リオは何かを知っているのか気まずそうに視線を逸らすと、

 

「元々エンジニア部は宇宙戦艦を作ろうとしていたわ。とはいえスーパーノヴァを作っただけで予算はほぼ干上がってたけれど……」

「そういえばスーパーノヴァって元々宇宙戦艦の主砲でしたね……」

「普段のエリドゥは防衛都市ではなくミレニアムの生徒達が運用する実験都市という事になっていることは先生も知ってると思うのだけれど……エンジニア部はその名目を最大限に利用しているの。ウトナピシュティムやアトラ・ハシース、そして……まあ、色々参考となる資料はあるようだから。とはいえ、あの状況では肝心のエンジンがまだ完成してなくて、勿論運用試験すら行われていなかったし……時間的に呼べるわけもないから今回は見送らせてもらったのだけれど」

 

あまり触れないでほしいと先生に遠回しに言う。何かのっぴきならない理由があるんだろうということに気付いた先生はリオの発言の意図を汲んで黙っておくことにする。

 

「……話を戻すわ。このまま行けば間違いなく七番目の預言者、ネツァクと交戦することになるわ。これまでの預言者の例からいってネツァクも私達の常識が通用しない可能性も高いわ」

「その通りです。実際、今は雲の中に隠れながら、可視光線や赤外線、レーダーぐらいは攪乱できるように飛行していますが……これも果たして通用しているかどうか」

「それどころか雲の中を飛んでるせいで私達の方が肉眼で鋼鉄大陸を視認できてないけどね」

「……かといって、ネツァクを感知するにはこちらから電波を発する必要がありますからね。今はまだこちらの居場所が感知されていない可能性が残っている状態でそれをするにはリスクが高い、ということですか。電波を発したら間違いなく逆探知されてしまうと」

 

本筋に戻り、鋼鉄大陸に着陸するための障害としてネツァクの存在があがる。ネツァクとの戦闘が避けられない以上、居場所なども知りたいところだが様々な問題からそれは困難を極めていた。しかも問題はそれだけではない。

 

「それに、信号が強すぎるせいで別の問題も起こってる。どんな信号を検知しても一つに収束しちゃうんだよ、もう分析する意味もないくらい」

「つまり……どうすればいいの?」

「「……」」

 

信号が強すぎる。これではネツァクのいる場所がわからない。その状態でもしネツァクの目の前に着陸してしまいました、となっては目も当てられない。この状況でどうすればいいのかという先生の問いかけに黙り込むリオとヒマリ。だが、

 

「うーん……考えてもわからないなら行くしかなくない?」

「いや、それでいいのお姉ちゃん!?」

「だって考えてもわからないことだらけだけどとりあえず鋼鉄大陸をどうにかしなきゃいけないのは事実じゃん!」

「……まあ、一理ありますね。モモイは考え無しですが本質だけはたまに見抜きます」

「酷い!?」

 

モモイの言い方はあんまりだが、実際問題これしか道はないのだ。残り時間のことも踏まえれば、既に退路は断たれているといってもいい。

 

「では、高度を下げます。皆さん注意を―――」

 

トキが輸送船の高度を下げようとする。直後、船内にアラームが鳴り響いたかと思うと、薄くなっていく雲の下から巨大な鋼鉄の腕が突き上げるように出現する。

 

「あ、あれは!?」

「信号分析、完了!九番目の守護者、イェソドです―――くっ!?」

「回避―――!!」

「やってます!!」

『イェソドってあんな姿してるの!?』

 

それは、雲の中にある飛行船を攻撃してくる。咄嗟にトキが旋回したことでその巨大な腕に叩き落とされるという大惨事こそ避けられたものの、イェソドの拳は輸送船後方の動力部に命中し、輸送船が大きく揺れる。

 

「くうううう!?」

「皆、何かに掴まって!!エイミ、被害状況は!?」

「エンジンに損傷!今はメインエンジンは出力を維持できているけど、サブエンジンは……!」

「エンジンから火災発生!消火システムを稼働します!」

「くそっ、空中戦じゃ分が悪いか……!」

「このままでは墜落します!」

 

慌ただしく被害状況を確認していく四人。だが、輸送船は落下が止まらない。どうにか火災を止めたり、墜落を防ぐためエンジンを逆噴射させることによる緊急着陸シーケンスを稼働させるなど、必死の対応の結果、一際巨大な衝撃と共に一行は地面に叩きつけられる。

 

「いっつ……うわっ!?」

『きゃあああ!?』

 

一人だけシートベルトを付けられず、コクピットの中を跳ねまわっていたもう一人のモルフォを左手で受け止めるように掴みながら、モルフォは周りを見る。シートベルトを付けても尚ぐわんぐわんに揺れまくって涙目のゲーム開発部が無事であることを確認して安堵しながらも、もう機体が動かなくなったことを確認してシートベルトを外す。

 

「ここは?」

「鋼鉄大陸の端……辛うじて残っていた土地のようね……」

 

どうやら輸送船はイェソドの攻撃によって不時着したようだ。しかも、状況はそれだけではない。

 

「っ、レーダーに敵性反応多数!?これは!」

 

輸送船の周囲を大量のレイバーが取り囲む。このまま襲われればひとたまりもない。モルフォは立ち上がると、

 

「皆、迎撃するしかない!リオ会長、輸送船の修理の方をお願いします!」

「わ、わかった!」

「はい!輸送船の防衛ミッションです!」

「格納庫が無事ならアビ・エシュフは使えるはず……!私は一度格納庫へ向かいます!アビ・エシュフさえあればレイバー程度!」

「皆……!」

 

ゲーム開発部が外へと飛び出す。先生は一旦制止しようとするが、ゲーム開発部の実力ならば大丈夫だろうと判断してリオ達に向き直る。

 

「リオ達は輸送船の修理をお願い!」

「わかったわ。AMASと千年の守護者を総動員させて修理作業を行うわ、トキとエイミは万が一に備えて格納庫に待機して」

「了解です。モルフォ達ならそう簡単にはやられないでしょう」

「わかった」

 

それぞれが準備をし、レイバーを迎撃したり輸送船の修理を行っていく。モモイとケイが取り囲むレイバーを一気に蹴散らしていき、厄介な遠距離での砲撃を行う個体をミドリやユズ、アリスが仕留めていく。それでも輸送船に取り付こうと、モモイとケイの弾幕をすり抜けて入り込もうとする個体がいるがそれはモルフォのシールドで受け止められ、ハンマーで殴り飛ばされる。やがてそれを繰り返していくと、レイバーたちも分が悪いと判断したのか撤退し始める。

 

「!撤退し始めました!」

『皆、聞こえるかしら?エンジンの緊急修理が完了したわ。一旦空に出ましょう、地上にいればまたレイバーの襲撃を受けるわ』

 

同時にエンジンの修理も完了し、ゲーム開発部を再び乗せて輸送船が飛び上がる。だがダメージは深刻であり、これ以上損傷すれば船は完全に機能を停止してしまうだろう。

 

「……それにしても」

 

空に飛び上がる飛行船。その船外カメラに映る映像を見て、先生が険しい表情を浮かべる。そこにあったのは城壁かと見間違うほどに巨大な壁。あらゆる侵入者を阻む絶対の城壁、それが鋼鉄大陸と外界を隔てるように建っている。

 

「……あのレイバー、こちらを倒そうとしているというよりも輸送船を取り込もうとしているように見えたわ」

「ええ、あれはティファレトとの戦いで見た個体とは異なり、周囲の無機物を鋼鉄大陸へと変換……即ち鋼鉄昇華を行っていた作業者とも言えます」

「そして鋼鉄大陸の再整備……建造物の建築や損傷個所の修復もこなしているのでしょうね」

「……丁度さっき千年の守護者とAMASがやってたことと同じ?」

「作業という意味では共通しているわね。こちらは鋼鉄昇華なんて物騒な能力はないけれど」

 

再び高度を稼ぎながら、倒してきたレイバーを回収、解析して分かったことを伝えるリオとヒマリ。その働きを聞いて指摘したモモイの言葉にリオも頷くと、エイミがうーんと呟きながら首を傾げる。

 

「それで、結局どうすればいいの?」

「……言うだけならば簡単ですが。イェソドを突破する必要がありますね」

「……やっぱり」

 

ある程度予想はしていたが、エイミはこのまま戦うしかないのだと溜息を吐く。先生も複雑な表情を浮かべたまま、リオ達の話の続きを聞くことにする。

 

「……おそらくだけど。イェソドは鋼鉄大陸がある程度構築された後に作られた、原形のない預言者だと思われるわ。そうでなければあれほど巨大なイェソドの信号を今まで把握できなかった説明がつかないわ」

「そして、それを真と置くならば……イェソドはとても純粋である、ということになります。目的のためだけに作られた、最適化された預言者……」

「おそらくは……あの巨大さと威力も最適化の結果でしょうね」

「質量の暴力……」

『……聞いているだけでも勝ち目がない気がするよ……』

 

イェソドの威力は身に染みて味わっている。輸送船ですら直撃せずともこの有様だ。生身で攻撃を受けてしまえばどうなってしまうのかわからない。しかも、他の守護者と比較しても巨大な姿、コアを抉るのも一苦労である。

 

「うう、ゴルディオンハンマーかジェイアーク、後はザ・パワーさえあれば……」

(どうしよう作中内ゲームって全くやってないから全然ついていけない……)

「……まあ、ないものは仕方ない。こういうのって巨大故の弱点みたいなものがあったりしない?」

「あー……あるかも」

 

モルフォの指摘にエイミはそういえばと思い出す。

 

「あの腕……腕だけで巨大だったけど、逆を言えばあんな腕で自由に動くのは無理じゃないかな?」

「……そうね。腕自体が重すぎるからあれを支える下半身はより強固で馬力が必要になるけど……一つだけそれを解決する方法はあるわ。イェソド自体を壁に固定するのよ。多次元バリアに資源を輸送するための道、そこだけを守る番人としての役割として安置させれば……」

「動けないデメリットは気にならないということですか」

 

イェソドの腕は巨大だ。もし自由に動けるなら飛行船を撃墜させた後、追撃してくるはずだ。そして輸送船を今度こそ叩き潰してしまえばそこで終わるのだから。その後でレイバーを差し向ければいいのにそうしなかったということは、やはりイェソドは動けないと見て間違いない。

 

「他にも問題はあるわ。速度と耐久性ね」

「質量の大きい物を動かすには相応のエネルギーが必要ですが、素早く動かせば動くより先に耐久性に限界がくるでしょう。無論強度や耐久性については不可解なことが多いのですが……物質である以上限界があるでしょう。イェソドの攻撃には、動きに制約があると予想できます」

「……つまり、陽動を用いた短期決戦」

 

リオが少し厳しい声音を漏らすとヒマリも頷く。イェソドの攻撃は脅威そのもの。とはいえ、質量に見合った速度であるならそれは遅い。回避に専念すればチャンスを作れるはずだ。

 

「大きさに物を言わせた面への影響力は一旦無視します。少なくとも、数回イェソドの注意を逸らすには十分かと。そして、その隙に本隊は輸送船で移動し、壁の上からイェソドを奇襲します」

「……ただ、陽動の安全は保障できない。それだけでなく、イェソドを必ず仕留められる確証もないわ」

「だったら……囮役はもちろん私が行く」

「モルフォ!?」

 

が、それはあまりにも危険な役割だ。しかし、それに真っ先に手を挙げたのはモルフォ。確かにモルフォは普段から盾役として皆を守る役割を担っている。しかし、今回のそれはいつもとは話が違う。先生はモルフォの発言に苦々しい表情を浮かべる。

 

「モルフォ、さすがに今回のは……賛成できないよ。これは……危険すぎる。盾役とかそういう話じゃないと思うんだ。何か他に安全な案はないの?」

「まあ言いたいことはわかりますけど……誰が陽動をやるかってなったらそりゃ私が適任ですし。それに……」

 

モルフォはもう一人のモルフォを見る。わかってるよね?と言わんばかりのモルフォの視線を受け、もう一人のモルフォも頷く。どんな形であれ死を経験した二人。だからこそ、

 

「ねだるな、勝ち取れ。さすれば与えられん……なんて言葉もありますし?」

『……それ、求めよ、さらば与えられん。尋ねよ、さらば見出さん。門を叩け、さらば開かれん、じゃなかった……?』

「モルフォ……?」

「えっ、なんでそっち知ってるの」

『ふふ、そういうのは詳しいよ?』

(……神話の教科書がカードゲームなこっちとは偉い違いだ……本当に同一人物かー?)

 

モルフォが言っているのは交響詩篇エウレカセブンに出てくる名言、そしてもう一人のモルフォが言っているのはマタイによる福音書、第7章第7節にあるフレーズだ。モルフォも元ネタという意味でもう一人のモルフォが言っている言葉も知ってはいたが、よくすんなり出てきたなと困惑しながら見つめる。まあいいやと流すと、

 

「ここは、挑戦するべき時だと私は思います。そして生きて帰って……いや、無傷で帰ってきます。それに……他の皆が私が怪我する前にイェソドを倒してしまえば何の問題もない。違いますか?」

「「「……」」」

 

にっと笑いながらその場にいた面々を見る。リオ、ヒマリ、先生はモルフォの発言に言葉を失っていたが、

 

「……モルフォは死にさえしなければ問題ないと考えていませんか?」

「うーん、0か100、かな?まあ私の場合の100って尽くすだけ尽くしてもう駄目って場合だけど。それに先生だって知ってるはずですよ。私、マジでどうしようもない場合以外は怪我しませんから。後はもう一人の私にも索敵をやってもらいます。目が四つになればその分回避もしやすくなりますから。後はリオ会長達も言ったように短期決戦です。先生の腕の見せ所ですよ」

「モルフォ、千年の守護者Type.S(Spider)を使ってください。種子貯蔵庫で回収したレイバーの脚部を元に改造した、鋼鉄大陸内で対預言者の連戦を見越して運用する予定だった高速機動ユニットです。本来なら試験運用もしたかったところですが……これを使えば回避運動も取りやすいでしょう」

「ありがとう、ケイ。助かるよ」

「なら、私も一緒に陽動やるよ」

「エイミ!?」

 

無論、ただで陽動をやるつもりもない。できる限り、被弾のリスクは抑える。できるだけのことはして、時間は稼ぐ。だから後は先生次第。先生の力を信じているともとれるその発言に、先生も黙り込む。そこで口を開いたのはエイミであった。

 

「私も頑丈だし、結構早いんだよね。それにモルフォに負けないぐらい現場に慣れてるし」

「エイミ、ありがと」

「うん。私たち二人でいけば、まあ大丈夫でしょ。それにモルフォも言っていたけど、先生のこと信じてるから」

 

そう言いながらモルフォの肩に腕を回すエイミ。そして二人で顔を見合わせて頷くと、

 

「モルフォ!エイミ!」

「先生!今は時間がない!」

『先生……私達を信じて!何かあったら私がどうにかするから!』

「先生は私達を助けたいって思ってくれてるし、それが当たり前だって思ってくれてるなら、生徒が先生の力になりたいって思うのも当然じゃない?まあでも……私達に何かあったら、思いっきり先生の事恨むから。責任取ってもらうからね」

 

有無を言わさず格納庫の方へと走っていく。その後ろ姿を見ながら、トキも口を開くが、

 

「……なら私も囮に」

「駄目よ。アビ・エシュフを使えるトキとケイ、スーパーノヴァを持つアリスはイェソド本体の対処よ。今回の作戦……陽動も大事だけどイェソドを撃破できるかどうかはあなた達次第といっていいわ」

「はい。二人を帰還させるためにも、確実にイェソドを倒してもらいます」

 

リオに即座に止められる。そして続けられた言葉にトキは即座に切り替えてケイ、アリスと共に頷くと、先生を見る。

 

「先生、指揮を」

「お願いします。モルフォが陽動の方にいる以上、後方から先生の指揮がなければ効率の良い戦いは行えません」

「先生!皆の力で乗り越えましょう!」

 

アリス達だけではない。モモイも、ミドリも、ユズも。皆が先生を信じて見てくる。イェソド、鋼鉄大陸への番人、それを突破しなければ鋼鉄大陸への道はない。先生は深く頷くと、

 

「わかった、皆、持ち場に」

 

そう指示を出し、格納庫で準備が進められる。モルフォ、エイミが千年の守護者Type.S、トキ、ケイがアビ・エシュフと共に降下用のポッドに搭乗。アリスとユズも同様に搭乗し、リオは現場指揮のためイェソド攻略組へと参加。ヒマリ、モモイ、ミドリは輸送船に残り、万が一に備えて予備戦力として運用されることになるのだった。

 

「それじゃ―――作戦開始!!」

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