転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
「あなたは、オウル……!?」
「おや、不思議ですか?何もありえない話ではないでしょう?我々は意識体。まあ、敢えて人間達の言葉で表現するならば……AIが一番近いのだから」
「……」
ネットワークで対峙するリオとオウル。当然、リオも何かしらの妨害は用意されていてもおかしくないと思っていた。だが、まさかオウルが出てくるとは思わず、リオは冷や汗を浮かべる。
「まあ、こんな話も無駄でしょう。何せあなたはここで死ぬのですから!!」
オウルが手を掲げるとレイバーが出現し、弾丸を放つ。レイバーから放たれた弾丸がリオへと襲い掛かると、リオはその場から走って攻撃を避けていく。
「ほう?案外逃げ上手ですね。では、これはどうです?」
「足元が―――!?」
「ほらほら、どこまでも落ちてしまいますよ?」
そう言い、オウルが指を鳴らすと、突然地面が消えてしまう。空中に投げ出されたリオとオウル。リオはどんどん増していく落下スピードに表情を歪める中、オウルはオブジェに座ったまま落下しているのに平然としている。
「あなたはこの場所にまで、重力に基づいた地形構造を構築しました。ええ、まさにあなた達らしいです。人間にとっては、それが自然でしょうから」
「くっ……」
「ですが、私達はそんなものに囚われません。ソフの言葉を引用すると―――重力に魂まで束縛されたあなた達とは、発想そのものが違うんです……さて、こういうのはどうです?」
「!?」
オウルが手を横に振る。すると、それに連動するように今度はリオが右に落下していく。オウルは段々楽しくなってきたのか、左、上とリオを様々な方向に落下させていく。体と頭を掻き回す滅茶苦茶な落下の衝撃がリオの三半規管を攻撃していき、リオの表情が苦しそうに歪む。
「最後は慈悲をもって……下へ落としてあげますよ!勿論地面もつけてね!」
「!?」
再び地面が復活する。だが、それは今のリオにとっては最悪だった。オウルにいきなり地面に叩きつけられるリオ。激痛が全身へ走り、悲鳴をあげることもできなくなってしまう。体を震えさせて立ち上がることもできない彼女を見て、オウルも興醒めといった様子で溜息を吐くと、
「さて、そろそろ終わりにしましょうか。あなたも、私も。ここにいる間は実体は持ちません。再びソフの言葉を借りると、幽霊のような存在です。ですから、ここでどれほど傷を負っても、実際の肉体には影響しません。その代わり……精神そのものに作用するんです」
オウルが言葉を綴りながら再び指を鳴らす。すると、空に現れたリングから黒い怪物のようなロボットが現れる。どこかポリゴンチックな、蠍をベースとしたようにも見えるクリーチャーにも見えるロボット。その三つのアイカメラがリオを見据える。
「さて、ここでクイズを一つ。もしもここで死んでしまった場合―――現実のあなたの身には何が起こると思いますか?」
「……許容範囲を超えた電気ショックで、脳が丸ごと焼かれるでしょうね」
「おや、ご存じでしたか。少しだけ認めてあげます」
少しだけ痛みが治まり、なんとか立ち上がって銃を構えるリオ。しかし、目の前のロボットに対してはあまりにも貧弱な装備だ。今のリオでは、環境でも、戦力でも大幅に不利を取っているといい。今更リオが立ち上がったところで勝ち目などない。
「では―――」
『……ほ、本当に大丈夫、でしょうか?あの子に会ったら、いくらあの人達でも……し、死んで、しまいますよ……?』
『うん……まあ、そうだよね……私達は、まだ誰かを傷つけたことも、それを考えたこともなかったからね……』
「……ちっ」
手を上げ、ロボットに指令を下そうとしたオウルの脳裏にここに来る前に話した二人の言葉が蘇る。だが、自分はここにいる。例え目の前の命を奪ってでも、ここまで来てしまった外敵を葬る。その意志を示すかのように、ロボットを動かす。
「覚悟してください!調月リオ!!」
ロボットが勢いよく走り出し、リオに襲い掛かる。リオは何とか反応して走り、その突撃を回避していく。そのまま銃を撃ちこむが、ロボットの堅い外装はリオの撃ちこんだエネルギー弾を難なく弾いてしまう。
「無駄なんですよ!隙だらけのあなたにはねぇ!!」
オウルから見て、リオはあまりにも弱すぎた。元々、リオは非戦闘員であったが、電子戦の適性の高さからこのネットワークにダイブしているのだ。だが、こと戦闘においては他の面々と比べて動きが明らかに鈍い。トキやエイミは勿論だが、ゲーム開発部とは雲泥の差。それこそオウル達から見た比較対象がヒマリになるレベルである。尤も彼女は車椅子で移動しているのでそれもまるで参考にならないが。
「しまっ―――」
ロボットの尻尾がリオに迫る。蠍型故に持つ巨大な尻尾の針によってリオの顔面を貫かれようとした、その時だった。突然リオの眼前にバリアが発生し、尻尾の鋭い攻撃が弾かれる。
「!?」
「何をぼーっとしているのですか?」
「……え?」
自分を守るように出現したバリアを呆けたように見るリオ。その目の前に、ヒマリを模したドットのアイコンが出現する。
「は……?」
「ヒマリ……!?」
一体何が。思わずリオがHMDを上げて現実の方を確認すると、そこには空を飛ぶ、車輪のない大型バイクに乗り、バイザーを上げるヒマリの姿があった。
「ふふっ……やはり、私の思った通りになりましたね。超天才病弱美少女ハッカーが助けに来てあげましたよ」
「……貴女、そのバイク」
「車椅子です」
「……いえ、どう見ても」
「く・る・ま・い・す、です」
「それはバイ―――」
車椅子なわけがないだろうと思わずツッコむリオ。しかし頑なにそれを車椅子だと言い張るヒマリだが、車体に跨ってハンドルを両手で握っている姿勢でこれは無理がある。
「無駄ですよ、車椅子だと言って聞かないので。今は天丼している暇はありません!さっさとネットワークに戻ってください二人とも!」
「私は基本、後方支援の担当です。ですが必要であれば、どこにでも車椅子に乗って駆けつけますよ。これぞまさに万能戦闘系美少女の姿。何より、この車椅子には隠された機能として―――」
「漫才しながらイチャついてないで戻りなさいよ!今、彼女一人で戦っているんですよ!他の皆だってやることやってるんですから!」
「待ってください漫才はギリギリ許容するにしてもイチャつくなんて鳥肌しか立たないようなことは……」
「一人?ケイ、でもあなたHMDは―――!?」
イラっとしてルミナスノヴァを頭上に発砲して無理矢理二人の視線を集めながら、声を上げる。二人はそこで、ケイが千年の守護者を加工した球体状の機体を持っていることに気付く。だがそこからは本来出現しているはずのホログラムは存在しない。それが何を意味しているのかを理解したリオと、既に彼女を送り込んでいたことを思い出したヒマリは慌ててバイザーを降ろして電脳空間へと戻る。
「「!!」」
ヒマリが出現させたバリアの中で守られていたリオ。彼女の安全面は確保されていたが、そのバリアの外で戦っていたのはなんと、もう一人のモルフォであった。
「あれは……」
「くっ……!?」
オウルがモルフォの重力を調整して様々な方向へと落下させている。だが、その効果は薄く、それを見ていたオウルの表情は苦々しく歪んでいた。それもそうだろう、空中に投げ出されたモルフォは青い光の羽を背中から生やすと、見事な空中制御を行いながら移動し、的確にスナイパーライフルのエネルギー弾を頭部や尻尾の付け根に当ててロボットを吹き飛ばしていく。相手がリオであれば操作する必要もないかと完全に遊ばせていたレイバーは既に破壊されており、残ってるのは蠍型のロボットだけとなっていた。
「あのモルフォはこの重力異常の中でも戦えるの?」
「おそらくですが……ナラム・シンの玉座を始めとし、彼女を見た空間では浮遊している状態が多かった。それ故に、オウルがやっているような重力方向操作の効き目はかなり薄いのでしょう」
スナイパーライフルの三連撃を尻尾の付け根に二発、頭部に一発撃ちこんでロボットをさらに力強く吹き飛ばすと、追撃の一発を叩き込む。この空間においてはどうやら彼女の銃はリロードの概念も存在しないようだ。一旦仕切り直すようにオウルがロボットを傍へと戻すと、モルフォもリオの傍へと近づいてくる。
「大丈夫ですか?リオさん」
「え、ええ……」
「……まさかここまでやるとは思いませんでした。とはいえ、ここはこのオウルが支配する空間……あなた達が勝つ可能性など、万に一つもないんです!」
そう言うと、地面が消滅し再びリオの身体がバリア諸共空中に投げ出される。ヒマリのアイコンも同じように振り回されてしまい、その表情が歪んでいく。あくまでアバターとしてこのアイコンが出てきているだけでリオと同じように精神をダイブしているも同然、その影響は強く受けてしまう。
(……だけど、こちらは手を出される心配はない)
(オウルの優先度はモルフォに向いている。それもそうでしょう、私達はこうして重力を操作されるだけで動きを封じられる)
モルフォはロボットとの距離を一定に保ちながら攻撃を続けていく。その戦闘を観察しながら、リオはオウルに勝つ方法を考え始める。だが、ヒマリはまるで何かを待っているかのように無言でバリアを維持し続けていた。
「……なら、こういうのはどうです!!」
「!まずいわ……!」
「っ……まだですか……!?」
業を煮やしたオウルがロボットとモルフォにそれぞれに重力を設定する。それによってロボットとモルフォが引き合うように移動し合い、その距離が縮まっていく。このままではモルフォがロボットの攻撃を喰らってしまう。と、モルフォの周囲をバリアが覆い、尻尾が弾かれてしまう。
「な!?……くっ、調月リオ!?」
「……間に合ってよかったわ」
バリア諸共吹き飛ばされたモルフォだったが、何事もなかったかのように羽を広げて復帰する。その様子を見ながら、オウルはバリアをリオが作り上げたことに気付き顔を顰める。
「こちらから警戒を解いてくれて助かったわ。おかげで……色々やる余裕ができたわ」
『……皆、聞こえる?全部壊したよ』
と、そこに突然エイミの声が聞こえてくる。短い通信だったが、それだけで通信を切ったエイミ。一体何のことなのかとリオが少し調べて納得する中、オウルは現実で何をやろうと……と再び重力を設定し直そうとして、気付く。まるで操作ができないことに。
「……何故?シグナルが……え?今、全部壊したって……ま、まさか!?全て壊したんですか!?通信ハブのシステムを!?」
「……最も手っ取り早いクラッキングの方法ね……」
「こ、これだから人間は……!」
「……ごめんなさい」
「今更ではないですか?」
何をやったのか、それは単純。現実にある通信ハブを破壊したのだ。そのせいでオウルは通信が切られ、エイミの目の前には一部の人が見たら卒倒しそうなある意味グロ映像が広がっている。それを想像してしまったのだろう、リオもだが、ヒマリも僅かながらに罪悪感を滲ませた声音を漏らす。
「さて、これで対等な条件に……いえ、モルフォがいるこちらの方が圧倒的な有利ですね。ですが逃げるなら見逃してあげますが?」
「い、言わせておけば!!この子が負けるはずがないんです!現にそいつはこの子を倒せていない!」
オウルの干渉が封じられたことでリオ達が地上と重力を構築し直す。それにより、やっとリオは安定した重力を取り戻し、地に足を付けられたことに安堵し溜息を零す。オウルは自分の手で干渉が行えないことにイラついているようだが、同時に自分のロボットの優位性は崩れていないことを思い出して笑みを浮かべる。
「……でも、どうやって奴を倒せばいいのかしら。ここはネットワーク……オウルはあのロボットの構成データをかなり強固に設定しているわ。モルフォの攻撃も効き目が弱いようだし……ここはあのロボットに電子的な干渉をするしか……」
「……いえ、どうやらそこまでする必要もなさそうです。奴の尻尾と頭部に注目してください」
「……?あれは……」
ヒマリに言われ、リオは気付く。ロボットの頭部と尻尾の付け根に一ヶ所ずつ、弾痕が深く刻まれ凹んでいることに。
「……まさか、さっきから同じポイントを狙い撃ちしているの?」
「どうやらそのようですね。おかげで、物理的な攻撃は意味を成すことを示してくれました。つまり……」
「このネットワーク空間にもっと強力なデータ化した武装を持ち込めばいいということ……かといって私が持ち込めるのはこれだけだから正直―――」
リオが自分の銃を見る。先ほどの交戦で理解したがこの銃ではあのロボット相手に残念ながらあまり効果がない。モルフォが傷つけた箇所ならリオの銃でもダメージが入るかもしれないが、そこまでの技量は残念ながらリオにはない。
「……一つあるわね」
そう、リオにはだ。だがここにはそれを持つ人物がいる。ヒマリの顔アイコンへと向けられたその視線を受け、リオが示すものに気付いたヒマリは溜息を吐く。
「……なんか癪ですが、まあいいでしょう。あのエンジニアの鼻を明かすのも悪くはないですし。ですが、私だけならばアバターの再設定でどうとでもなりますが車椅子の方はデータ変換するには……」
「私が転送すればいいわ。あなたと違って容量には余裕があるから」
「ほぉ?私なんかよりも随分と詰まってそうな癖に……まあ、いいでしょう。人違いとはいえ可愛い後輩も同然の相手にばかり苦労をかけるわけにはいきませんから。この天才サイバー美少女ハッカーの華麗なる戦闘を見せて差し上げましょうか」
リオの物言いに少しだけ顔を顰めるヒマリ。しかしすぐに気持ちを切り替えると、ネットワーク空間に新たなゲートが開く。ヒマリの顔アイコンが消滅し、そこに車椅子に乗ったヒマリが現れる。
「っ、新手……ふん、バイクなんか持ち込んだところで!」
「車椅子です!!その違いが分からないデカグラマトンにエンジニアに教えてあげますよ!!これが戦闘用車椅子の神髄……変形です!!」
ヒマリの宣言と共にバイクもとい車椅子が動き出し、変形を開始する。丁度、ヒマリの跨っている部分が椅子になるような形で車体が変形。足が展開され、二脚となり、腕代わりの砲門が左右から伸びる。胴体部分はヒマリが座り込む搭乗スペースとなり、人型の搭乗型ロボットへの変形を完了させるとオウルとロボットの前に立つ。
「……はい!?」
「ふふ……これぞ完璧な車椅子!!本来は皆が出払って母艦が狙われた時に戦闘せざるを得ない時の奥の手でしたが……奥の手をいきなり使うのもまた一興!ふふ……乗り物が変形して鎧になるというのも乙なものですよ!!」
「……いやそれパワ「鎧であり車椅子です」ードスーツ……もうなんでもいいわ」
「……す、凄い……」
ヒマリの車椅子が変形したのを目の当たりにしてオウルが唖然となり、モルフォも驚きの表情を浮かべる。機能を話として聞いてはいたが、まさかこのネットワーク上でも使えるとは。
「処理能力……正常。ヒマリ、フルスペックで動かせるはずよ!」
「喰らいなさい!!」
ヒマリの声と共に人型車椅子の左右の砲門からビームが放たれる。元が大型のバイクだからこそのエネルギーの暴力がロボットに命中し、吹き飛んでいく。
「なっ……」
「さすがに持ち込むのに苦労した分だけはあるわね」
「ヒマリさん!狙えますか!!」
「勿論です!この車椅子には照準補正機能が搭載されているんですよ!」
「……雛形はアビ・エシュフにも搭載されていた未来予測シミュレーションシステムね。それを照準補正という一点に限定することで必要な計算を大幅に簡略化できるわ……とはいえヒマリのバイ……車椅子のように搭載できる人は限られるのだけれど……よくモルフォはそれなしで狙い撃ちできるわね」
続く一撃でロボットの尻尾の付け根が完全に吹き飛び、尻尾が千切れ飛ぶ。
「なっ!?」
「こいつでトドメです!!」
「モルフォ、奴の体内を撃ち抜いて!破損部分からなら通るはずよ!」
「はい!!」
そして、頭部にさらなる一撃が叩き込まれ、ロボットの頭部が砕け散る。そして丸見えとなった内部に向かってモルフォがエネルギー弾を叩き込む。その強烈な一撃が頭部と尻尾を失ったロボットを内部から爆散させ、ロボットは粉々に砕け散ると共にその体がデータの粒子となって消滅していく。さらにその爆発は偶然にもオウルのすぐ傍で起こったが故に、オウルは爆発の余波を受けて吹き飛ぶ。
「なっ、なっ、ななっ、ああああ!?」
地面を転がるオウル。やがてその回転が止まり、恨めしそうに顔を上げて三人を睨みつけると怒りの形相を浮かべて歯ぎしりをする。
「こ。これで勝ったと思わないでくださいね!!」
そして負け惜しみを口にすると、オウルは撤退するように光と共に消えてしまう。その様子を確認し終えた三人が現実空間に帰還すると、もう一人のモルフォのホログラムが再び現れ、先生が心配そうに駆け寄ってくる。
「三人とも、大丈夫!?」
「あら、先生。ここまで心配してくださるなんて。多少なり無理をした甲斐がありましたね御心配には及びませんよ。なんなら、毎回この手を使うのもありだと思うくらい」
「……私としてはあまり好ましくないのだけど」
「そうだよ……リオの言う通りだよ。モルフォは大丈夫だった?」
『はい……正直一人だともっと時間を持ってかれていた相手だったのでお二人の援護があって助かりました』
三人の無事を確認して安堵する先生。リオは疲労を隠し切れない様子を見せている一方、ヒマリはやたら活き活きとしているようにも見える。もう一人のモルフォは特に疲れたりといった様子は見せていないが、この三人の反応を見るとヒマリに何があったのだろうか。
「正直、あのバイ……車椅子の変形に伴う戦闘形態の使用はあまりやってほしくないのだけど……今回は電子戦という特殊な環境だったとはいえ、今輸送船には誰も残っていないのだから」
「えっ、まって変形?」
「先生……そこに食いつくんですか?まあそれは後にしてもらって……三人が無事でよかったです。それで……あっ」
変形する車椅子と聞いて先生の好奇心が刺激される中、大穴の下からアリスが情報コアを持って上がってくる。
「ケイ!コアを発見しました!」
「これが……情報コア?」
ビナーとの戦闘中は輸送船にいたため、初めて情報コアを見た先生。コアと聞くと球体を想像するが、そこにあったビナーの情報コアは白い立方体になっていた。
「あれ……アンカーを打ち込まれてなかったっけ?」
「情報コア自体が修復されているようですね。おそらくは不測の事態でコアが傷ついた時のための措置なのでしょうが……」
「これは好都合ね……コアは傷つけてもいいのかどうかわからなかったから、できるだけ慎重に抜き出すべきかと思ってたのだけど……アンカーを突き刺す程度の損傷ならば問題ないのならもっと様々なパターンが考えられるようになるわ」
アリスから情報コアを受け取ったケイ。大穴の下から直接上がってきたアリスと異なり、地上を移動するしかない他の生徒達はまだ戻るのに時間がかかるようだ。
「それで、ケイ。これはどうすればいいんですか?」
「そうですね。地面に置いてください」
「?はい」
コアを地面に置いてほしい。その指示に困惑しつつも言われたとおりにするアリス。するとケイは目を閉じて小さく、呪文めいた言葉を呟き始めていたが、やがて目を開いて頷く。
「確認しました。これは間違いなくビナーのコアですね」
「……そういうことね。この穴の付近は、もう私達の占領下にあるから、地面にコアを置くことで照合もできるのね」
「それに加えて、ここは鋼鉄大陸のネットワークにとって玄関口のような場所です。これくらいはどうとでもなりますよ。とはいえ、ある意味これは生きているようなものです。次回以降は皆さんが持ち帰る時の事を考えて専用の保管ケースを作った方がよさそうですね……」
「さすがケイです!」
アリスの言葉に満更ではない様子を見せつつも、ケイはビナーのコアを見ながらある情報を口にする。
「そして、預言者のコアに関して新しく分かったことがあります」
「なんでしょうか?」
ケイは予言者のコアを吸収、即ちその情報をインストールすることができる。それによって、ネットワークの上位権限と神威、即ち各セフィラの位格を、私が継承するということ。それだけではない、
「……預言者のコアを組み込んで応用すれば、輸送船そのものを強化することができるかもしれません」
「それは……どんな風に?」
「そうですね……ビナーのコアを輸送船に組み込めば、ビナーの能力、出力の一部を使用できるようになるでしょう。他の預言者のコアも同様に」
『じゃあ、それを他の武装に反映させることはできないの?例えばビナーのあの熱線を武器にするとか……』
「……それをするには、やはり素材が足りません。しかも、ビナーレベルの出力ともなれば大型の武器に……」
『じゃあビナーを使えばいいんじゃないの?いい感じに剥ぎ取っちゃってさ』
『……いや、そういうゲームあるけど実際に言われると大分……』
『え!?これ私が悪いの!?』
予言者のコアを組み込むことで船をパワーアップ。ならば武器だってと提案するモルフォ。その素材について、モモイが先程倒したビナーをそのまま素材に使えばいいのではと提案したのを受けてその場にいた全員がビナーが倒れていた場所を見ると、
「……あれ!?」
「ビナーの身体がない……?」
そこにいたはずのビナーが消滅していた。あんな巨体がなくなるわけがないと思ってしまうが、ケイはその理由を話す。
「……情報コアを抜いてしまったからですね。それによって、ビナーの身体はビナーと認識されなくなり……ネツァクに取り込まれてしまったのでしょう」
「……倒した預言者は情報コア以外は使えない、ということですか……」
『うまくいきませんね……』
それは、鋼鉄大陸がビナーを吸収してしまったからだった。情報コアこそ入手したものの、追加で武器が作れる、といったうまい話ばかりではないようだ。とはいえ、まずは一体預言者を倒したのも事実。その事実を喜び合うかのように、先生達は戻ってくる他の皆を出迎えるのだった。