転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
「……う……」
「ケイ、大丈夫?」
輸送船に無事に戻り、格納庫で皆が見守る中、ビナーの情報コアを使用できるようにし、活性化させたケイ。取り込んだビナーの情報コアは格納庫に新造されたポッドの中に入れられる。そこまで確認したケイは体の痛みに耐えかねてその場でふらついてしまう。慌ててモルフォ達が駆け寄り、モルフォがケイの身体を支える。
「思った以上に眩暈がしますね……特に頭の左側が……」
「え、本当に大丈夫なの?」
「ベッドに移動しましょうか?」
『うん……続きはベッドの上で聞かせてもらった方が……』
「いえ……だ、大丈夫です」
名残惜しそうにモルフォから離れながら、ケイは先程よりは和らいだもののまだ痛む頭を押さえる。
「原因はやっぱり……」
「ええ、ビナーのコアを持ち帰って活性化させたことです。とはいえ、この身体がエネルギーの流れに慣れれば痛みも引いてくるでしょう」
リオに聞かれ、ケイもビナーのコアが原因だと断定する。しかし、ケイの顔は少し億劫そうにも見え、先生が心配した様子でケイの顔を覗き込む。
「本当に大丈夫なんだよね……?」
「心配しすぎですよ……まあ、毎回こうなるなら、どうにも気が重いですが……もしかしたら……」
ケイの今使っているボディが欠陥ありと評された理由がここにあるのかもしれない。少し経ってビナーを取り込んだ分の痛みは無事に引いたことに安堵しながら、ケイはもう大丈夫だと言うかのように皆を見る。
「……もし痛みが再び襲ってくるならその回数は残り九か十……仕方ないと割り切るとはいえ、気が重くなりますね」
「コアを活性化させた時の影響については何かしら対策を考えておきましょう。それより、これでビナーのコアの力を使えるようになるということですか?」
「はい。コアを活性化させれば、その度に輸送船の出力や機能を再設計できるはずです。そのエネルギーは私の身体と繋がっていて……まあ、結論から言えば私が制御できるはずです」
「……それってケイにかなりの負担がかかるんじゃ」
「少なくとも現状は問題はありませんよ。さっきの痛みがなんだったのかと思う程に安定していますから」
ユズの心配そうな表情にまた問題ないと頷くケイ。いずれにせよ、これで輸送船の強化をすれば戦闘を行う皆のサポートを行うことが可能になる。それにより、預言者を倒してコアを回収すれば回収するほどに戦闘を優位に進めることができるのだ。
「ってことは、弱い預言者から順番に倒していくってこと?」
「まあ、基本的には……」
「でも預言者の強さなんてわからないよ……」
ならば倒す順番は強さの序列で決めるべきだ。モモイの指摘に異論を唱える者は誰もいない。ヒマリがタブレットを操作しながら、これまで観測した預言者の情報を整理し直す。
「では、今後倒す予言者の順番についてですが……まず、ネツァクは除外、マルクトは最後。ここは確定ということでよろしいですね?」
ヒマリの発言に全員が頷く。
「その上で聞くのですが……ケイ。この鋼鉄大陸に存在する複製体は……オリジナルと同じ性能をしている、そう考えていいのですね?」
「はい。預言者の方はそう考えて間違いありません。とはいえ……あのエンジニア達が介入してくる可能性はありますが」
「そこは現状考慮しても仕方ありません。とにかく、これまで得た事情を元に順番を決めましょう。ただ、実際の強さに関してはあくまで参考程度にしかならない、という点は予め言っておきます」
ビナー、マルクト、ネツァクの三体を除く、残り七体の預言者達。それらの一覧を輸送船のディスプレイの方に表示させたヒマリは、まずケテルにフォーカスを合わせる。
「その上で言うなら……まあ、まずはケテルが最有力候補でしょう。単純な強さ、という意味もありますが……特にケテルは後に回してはいけない事情が存在します。で、強さについてですが……今回、情報コアを抜き取るという勝利方法を完遂するという意味ではケテルの最大の長所が潰れます」
「最大の長所……ですか?」
そこにいたのは、四本の脚が存在する多脚戦車だった。その機体上部には様々な武装を搭載しており、二基の機関砲とミサイルを装備している様子が見える。
「ええ、ここが後に回してはいけない理由なのですが……ケテルの最大の長所は機体上部を換装することで他の形態へと変化、それにより様々な戦局に対応できるようになるという点です。特にこの鋼鉄大陸における戦闘データをケテルが学習し続けた場合……最終的にその強さは常軌を逸したものになるでしょう」
「……マルクトを超える?」
「……あまり想像したくはありませんが、武装次第では理論上。そこまでいくなら素直にマルクトがパワーアップした方が効率的でしょうが……まあ、そういうわけでまず狙うのはケテルでしょう」
ヒマリの説明を聞き、ケテルとの交戦経験があるエイミと先生はその時の事を思い出したのだろう、異論はないようだ。
「となると、まずは情報コアを確実に抜き取るための準備が必要ね。モルフォのアンカーガンを改良することと、二組に分かれて戦うことを考えてさらにもう一丁用意するべきね。そっちはエイミに……いえ、今のエイミは後方からの狙撃を担当しているから、別の担当を設けるべきね」
「で、あればアビ・エシュフに……」
だが、戦うのはケテルだけではない。ビナーはまず最初に倒さなければ始まらないからこそ全員で挑んだが、ここからは人数を分けて戦闘を行うことになる。ならば情報コアを抜き出すための装備は最低でも二人分必要になるだろう。そして、ヒマリも続く二面攻撃を行う他の預言者の候補を選び始める。
「うーむ……預言者の強さとしてはやはりこの氷海に来てから遭遇した個体は強さにおいても明確な差がありますね……となると、他の候補はケテルかホドになりそうですが―――!?」
そんな時だった。その場にいた面々の思考を打ち切るように警報が格納庫内に鳴り響いたのは。
「何!?」
「ね、熱源反応!?どこから!?」
「隣……ケテルのエリア!?何か来……!?」
直後、船外カメラがケテルの徘徊するミレニアムの廃墟を模して作られたかのような都市部エリアを捉えると同時、輸送船に大きな衝撃が襲い掛かり、船体が揺れる。
「皆、何かに掴まって!!」
そこには巨大なミサイルを背負ったケテルがおり、放たれたミサイルが輸送船に大きなダメージを与えていた。
「船体へのダメージは!?」
「被害甚大……!とにかくケテルの攻撃範囲外から逃れます!!」
「っ……アリスが外に出て戦います!ケテルを……」
「今から出たところで間に合いません!船体へのダメージが大きすぎる……!」
ケイが急いで輸送船を遠隔操作し、ケテルのエリアから逃れるように移動する。しかし、先程喰らった一撃が大分響いている。
「輸送船の損傷個所を再構築するのは!?」
「できます!できますが……っ!?」
「「「きゃあああ!!」」」
「Type.Sを使いなさい!」
再びケテルのミサイルが打ち込まれ、船体が大きく揺れる。その激しい揺れに全員が空中に投げ出されてしまう。格納庫に待機していたType.Sが次々と飛び出し、モルフォ達がそれぞれ掴むとType.Sが壁や床に爪を立てて固定していく。そして揺れが一瞬収まった隙を利用し、足を固定していく。
「……部長は!?」
「だ、大丈夫です……!」
そこで、Type.Sの恩恵を受けられない車椅子に乗るヒマリに気付き、エイミがはっとなって見渡す。だがヒマリはもう一人のモルフォを掴んだ状態で空中に投げ出されたままになっており、二機のType.Sが車椅子の車輪を左右から固定するような形で床に縛り付けた椅子に再び戻ると、シートベルトを締めて安心したように深く息を吐く。
「……さすがに今のはヒヤッとしましたね」
「でも、まだ危機は去ったわけではないわ……!エンジン部は!?」
「っ……エンジン部は船体の外装を強化していたおかげで中身はまだ無事です!ですが、今の一撃で……」
リオが言うように、今だケテルのミサイル攻撃は続いている。ケテルが次のミサイルを装填しているまでの間にケイが少しでも距離を取ろうと輸送船を動かそうとしていた、その時だった。
「!?このエリアに大量の敵機が……!?カメラ、出します!!」
「!?あれは……ゴリアテ!?しかも……嘘でしょ!?」
「ケセドの生産工場……!?」
さらにレーダーが大量の敵の反応を捉える。一体何事かとケイがカメラを起動し、その映像をディスプレイに表示させると、そこにいたのは大量の敵のパワードスーツ、ゴリアテ。簡易的なAIで動かすそれは、地面を埋め尽くすほどの個体がいつの間にか存在していた。いや、存在していたのではない。過去にケセドと戦闘した際にケセドに使役されていたゴリアテらを相手取っていたエイミとトキも思わず絶句していた。
「でも、どこから出てきたの!?」
「ケセドのエリアは反対側のはず……!?」
「いや、よく見て!!私達が占領しているエリアの境目を!!」
だが、この量をどうやってケセドは。その疑問は、すぐに解消された。自分達が占領しているエリアの外、そのギリギリの部分にある地面から、次々とゴリアテが地面から再構築される形で出現していたのだ。
「生産はケセドが、そして再構築と言う名の事実上の転送はネツァクが……!?」
「この船、大丈夫なの!?」
「あの数は無理です……!!」
ゴリアテから無数の砲撃が放たれ、輸送船へと襲い掛かる。いかに輸送船が強化されていたとしても、ここまでゴリアテに攻撃されると、ケテルの攻撃で大ダメージを受けているこの船ではさすがに持たない。
「一旦船の高度を下げて、身を隠せるところを……ミサイルが飛び込まない場所を探すしかないわ!」
「リオ会長、ゴリアテを一掃することを提案します。そうすれば高度も安全に下げれるはずです」
「……先生」
「うん、まずはゴリアテを破壊しよう。皆、出れるね!」
先生の声に、その場にいた全員が頷く。格納庫のハッチを開き、Type.Sが降下準備を始めていこうとした、その時だった。
「待ってください!飛翔体がこちらに飛んできます!!」
「飛翔体!?」
「こ、今度はどこから……」
「特定したわ、反応は……ホドのエリア!?まずいわ!!船の高度を上げて!!」
「え!?なんで!?」
「くっ―――!!」
モモイの困惑する声を尻目に、リオの指示の意図を理解し、ケイがケテルのミサイルの脅威に晒されるリスクを込みで、格納庫を閉じながら輸送船の高度を上げる。そして数秒後、ゴリアテらがわざとスペースを空けた部分に、ホドが所有する塔、インベイドピラーが突き刺さり、その効果を広げていく。ゴリアテ達が次々とバリアに包まれていき、相手からの攻撃をシャットアウトできるようになってしまうと同時に、インベイドピラーが放つ妨害効果が、輸送船を無力化しようと迫る。
「……なんとか、範囲からは逃れられたようですね……」
「だけど―――あうっ……!!」
なんとかインベイドピラーの効果から輸送船は逃れられた。だが高度を上げたことで、ケテルのミサイルが再び輸送船を直撃する。さらに、地上からもゴリアテの砲撃が迫る。高度を上げたことでそちらの方は命中しないものもあるが、全部は避けきれない。
「インベイドピラーにバリア機能までついていたなんて……まさか、エリドゥの時より強化されている!?」
「いえ、元々あったんです……!あの時はインベイドピラーの範囲内に色彩側の兵がいなかったから腐ってた機能だっただけで!!」
「ケイ!船を作り直しましょう!そうすれば……」
「アリス!無から有は作れないんです!!度重なる攻撃で変換するべき素材は減っている……その状態で再構築を続けても、船がどんどんグレードダウンするだけ……ジリ貧になるだけです!!」
ケテル、ホド、ケセド。三体の預言者による連携攻撃に完全に輸送船は、ケイ達は追い込まれていた。このままでは輸送船は確実に落ちる。目の前に迫る致命的な危機を回避すればまた次の危機に晒される。そしてこの危機の連続に耐えれる程、この船は強くはない。
(……もう、駄目なのか……!?大人のカードなら、どうにかできるんじゃないのか……!?)
先生は懐にしまってある大人のカードに意識を向ける。プレナパテス、もう一人の自分が元の世界でどのようにこのカードを使ったのかは全く分からない。何せ先生は一度も大人のカードを使ったことがないからだ。だが、この状況をどうにかするにはこのカードを使うぐらいしか思いつかない。
(……駄目だ)
だが、懐に手を入れて大人のカードに触れた先生は即座に理解する。大人のカードの力は、この状況を打開できるものではないと。あのゴリアテを一掃することはできるかもしれないが、それだけだ。根本的な解決にはならない。
「ここから生き延びるには……船を捨てて地上に逃れるしか、だけど……」
「母艦を失っては武器の補給もままならない……そうなれば、勝ちの目は、もう……」
船に残ればこのままやられてしまうだろう。大怪我で済むかもしれないが、これほどの激しい攻撃に晒されて船まで壊されたら死も見えてくるだろう。かといって船を捨てれば、一戦二戦はこなせるかもしれないが、マルクトとの戦いまでは絶対に持たない。
『そんな……預言者が集まるとこうなってしまうの……!?』
「万事休すか……!?」
モルフォ達が悔しそうに表情を歪ませ、冷や汗が流れるのと同時、再度の爆発が船体を揺らすのだった。
★
「ふはははは!!いいです!いいですよ皆!!」
「ケテルちゃんとホドちゃんとケセドちゃんの共同作業、ですね……!」
「……うん、元々ゲブラとコクマーには採掘と護衛の関係で一緒に動いてもらってたこともあったから、預言者同士の連携も可能ではあったけど……いや凄いね」
先生達が一気に追い詰められていくその様子は、アイン達にも確認できていた。特に、先程リオ達にぼこぼこにされていたオウルは特に上機嫌な様子を見せており、満面の笑みを浮かべていた。
「ふん、人間の癖に調子に乗るからこうなるんです!ですが……ビナーがやられたことを受けて他の預言者達にも注意喚起しておいた甲斐がありましたね」
「まあ、あいつらとんでもないことしてきたからね……まさか情報コアを抜き取って、しかも吸収するなんて……!!」
だが、そんなオウルもソフの憤る表情に同意するように苦々しい顔色を浮かべる。情報コアは、複製された預言者達の本体に等しい。極端な話、身体をどれだけ破壊されても情報コア一つあれば、預言者達はまた時間をかければ体を作り直せる。が、ケイ達がやったのは、その情報コアを自分達のものにするという手段だ。こうなればビナーの情報コアは元の姿を取り戻すことはないだろう。そんなことを言われてしまえば、預言者達も危機感を覚えることだろう。
「預言者はそれぞれのエリアから動けません……ですがケテルちゃんはエリアを越えて攻撃できるミサイル砲を新造して装備することで、ケセドちゃんは生産した兵隊をネツァクちゃんに協力してもらって別のエリアに転送することで、そしてホドちゃんはインベイドピラーを打ち込むことでEMP攻撃と味方の援護をしてくれています……えへへ」
「他の預言者からの援護は?」
「機能的に難しいかなぁ……コクマー、ゲブラ、ティファレト、イェソドにはこの三体みたいに他のエリアに向かって……っていうことができないから……」
「まあ、それでも十分ですよ」
欲を言えば残る四体の預言者の援護も欲しかったところだが、前者三体の預言者と異なり単体での戦闘力の高さこそ目を見張るものがあるがその分他の預言者に対する援護能力はどうしても低くなってしまっている。とはいえ、この状況では誤差でしかないだろう。
「これで、私達の勝ちです」
オウルがニヤニヤと笑いながら、ケテルのミサイルをさらに喰らい、船体の装甲が吹き飛んで大穴を開ける輸送船を見る。直後、輸送船が一瞬光を帯びたかと思うと元通りに修復されるのだが、吹き飛んだ装甲分の質量は戻らない。これを繰り返していけば船はいずれ一撃も耐えられなくなるだろう。その時までこちらは待てばいい。
「……?」
「……どうかしました?アイン」
そんな中、アインが何かに気付く。一瞬見間違いかと慌てて目を擦り、再び映像を見る。だが、そこにははっきりと、徐々にこちらに近づいてくる何かがあった。
「あ、あれなんでしょうか……?」
「……?そういえば……何あの生き物?あんなでかい生き物、このキヴォトスにいたっけ?」
「……いや、あれは生き物じゃないですけど!?」
遠くから鋼鉄大陸へ向かって飛来してくる巨大な何か。アインとソフはそれを生き物に見えない生き物なのかと思ったが、それも無理もない事だろう。リオ達が乗る輸送船のように鋼鉄昇華対策を取らなければ、全ての無機物はこの鋼鉄大陸に近づいた瞬間に鋼鉄大陸と同化してしまう。あの謎の物体も無機物であれば既に消えているはずだ。だからこそ、気付くのが遅れた。
「……嘘だ!?だって、王女や鍵がいるわけじゃないはず!!」
「そ、そうですよね!?で、でも、あれは―――」
「……まさか……増援!?」
そこに存在する、輸送船がちっぽけに見える程に巨大な、鋼鉄の船の存在に。
★
身を削りながらの再構築を続ける輸送船。絶えず続く砲撃に万事休すかと思われたその瞬間だった。
「皆、今だよ!!」
「!?」
上空から、聞き慣れた少女の声と共に四つの人影がパラシュートと共に降下してくる。内一人が大量の爆薬を投下してインベイドピラーを破壊。さらにもう一人が飛来するミサイルを撃つことで機動を逸らし、もう一人がそのミサイルに追いついて蹴り、バリアが消えたゴリアテの群れへと突っ込ませる。地上が大爆発を起こし、ゴリアテを一掃したかと思うと、四人はそのまま輸送船の船体の上に飛び乗ってくる。
「ゴリアテ達を、ミサイルを誘導して破壊した!?」
「……嘘、まさか彼女達が……」
カメラが船体に立つ四人の姿を捉える。するとそこには、内部に防寒用のインナーを着用したメイド服の四人組……C&Cの姿と、上空に浮かぶ巨大な戦艦が映るのだった。