転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
戦闘準備を整えた一行は、三手に分かれてホド、ケテル、ケセドの攻略作戦を同時に開始していた。その中でゲーム開発部はモルフォ、モモイ、ミドリ、ユズ、そしてモルフォと一緒に同行するもう一人のモルフォの合計五人でホドのエリアへ向かっていた。アリスとケイの姿がないが、ケイはクリフォトで待機しバックアップに入っており、アリスは武装からなる単体戦力の高さを踏まえ、エイミ、トキと組んでケテルの攻略に向かい、ネル達四人はケセド攻略戦に向かっている。
「ここが……ホドのいる場所?でも、ここって……」
「エリドゥっぽい?」
地上に降り、コントローラーを操縦桿代わりに設置した小型トラックを操作し、四人が入ったエリアは都市のような場所。当初は空中から輸送船による移動を考えていたが、空中を移動すればまた先程のような連携攻撃に晒されてしまう。よって、預言者達に狙われないギリギリの位置から降下し、その後は地上を使って移動することになっていた。そして辿り着いた都市は一見、エリドゥのようにも見えるが、実際の内装は大きく異なっている。
『確かに部分的にエリドゥに似ているわね。だけど、これは……』
『ホドはエリドゥのシステムを掌握しようとしていた。つまり……ホドが最大限の力を発揮できる場所はエリドゥのようなフィールドだったんだ』
『でもあの時はエリドゥに侵入される前に外に弾き出したから……』
『つまり、ある意味これが本気のホドってこと?』
が、ホドにとって大事なのはフィールドの方だろう。今、ホドにとって有利な都市部というフィールド。そこには、建物に混ざってインベイドピラーが次々と突き刺さっているのが確認できる。
「……インベイドピラーの性能は確か……ユズ、大丈夫?」
「う、うん……今の所、システムに問題はないかな」
『こっちでも異常は確認できてないよ!』
「ミドリ、ホドの位置は?」
トラックの荷台ではユズがマキと共にあるものを調べていた。モルフォは操縦に集中していたため、ミドリに聞くと、ミドリがレーダーを覗き込む。レーダーに表示されたホドの反応はまだ先だ。
『……そういえば、私達特異現象捜査部にとって、初めて交戦したのはビナーでしたが……全ての始まりはホドでしたね』
「そうなんですか?」
まだ接敵まで時間があることを確かめてから、ヒマリがデカグラマトンとの戦い、その中でもホドのことについて思い出す。
『ええ、ミレニアム自治区の通信ユニットAIであるハブがデカグラマトンにハッキング、感化された後に謎のテキストを残して消えてしまったんですね。改めて思い返すと……デカグラマトンの預言者はミレニアムに関連したものばかりですね……』
「……ああ。ケセドはミレニアム郊外にあった軍需工場。ゲブラの原型だった極地の無人探査機も、広義的には関係があると言えますからね。ティファレトの種子貯蔵庫だってどうもミレニアムが作ったものみたいですし」
『……やっぱり、デカグラマトンの預言者達もロボットだからかな?』
ミレニアムと関連のあるものばかり感化されて預言者になっている。とはいえ、この件に関してはデカグラマトンの感化のプロセスを考えるとある意味仕方がないことと言える。
『……ハブがなくなった後、一気に大変になってしまったのよね……通信インフラを設置する時間が、平均して68%も増えた。そのせいで余計な手間と費用が……』
通信の向こうからユウカの恨み節が若干籠った声が聞こえてくる。ブリッジでホドが消えたことに対する恨みつらみが零れ、それをBGMにしながら五人がホドのエリアを移動する。そしてある地点でトラックを止める。これ以上先はインベイドピラーが埋められている感覚が短くなっており、トラックでの移動に適さないようになっている。
「……ここからは徒歩で移動する必要がありそうだね」
「空から移動できたら楽なのに……」
「でも、あのポッドは……」
「ユズが考えたんでしょあれ……だからせめてジャイロ装置はつけろと……」
「だ、だって……面白そうだったしそもそも私が乗るとは思わなかったし……」
輸送船にはポッドによる降下機能が搭載されている。されているのだが、その方式はポッドの中に人や武装を詰め込んでそのまま降下させるというものだ。しかもこのポッド、モルフォが言うように姿勢制御するジャイロ装置すらついていない。しかもポッド自体は平気で空中で自由に回転するため、中に乗っている人はかなり厳しい状態だろう。イェソドの時は下手に空中に居続けると万が一叩き落とされると即死なので降下時間そのものを短くしていたのでそのデメリットが機能することはなかった。しかし、改めて考えてみるとこの機能は明らかにいらない。トキやエイミであれば平気だろうが、ゲーム開発部が乗っていたら普通に酔ってもおかしくない。
「コトリー!ポッドにジャイロ装置つけて中が回転しないように改良しといて!」
『あ、わかりました!ジャイロ装置でポッドの中も外も回転……面白そうです!皆が帰ってきたらやります!』
「姿勢制御はちゃんとしてるんだよね……?いやまぁ、どっちも動いてるとは言えるのか……」
『そういえば新しいシールドとショットガンハンマー、入ってなかったからBluetooth機能入れておいたけどどう?』
「そっちはまだあんまり使ってないかな……」
『自爆装置……』
『入れなくていいんですよそんなものは!』
「……まあ、入れたいなら帰った後でね……」
ネル達でも無事かもしれないが、正直これは使いたくないというのが本音だ。折角エンジニア部が来ているのだからと改良をお願いし、頭にデコピンを喰らって擦るユズを引きずりながらトラックに積んだある荷物の下に向かう。
「まあそれはそれとして。ホド討伐、始めますか」
「よーし!頑張ろう!」
「なんか弱点とかあればいいのにね」
『弱点……うーん……う、うーん……確かに属性噛み合ってはいるけど……いや今の姿だと……でもあんま参考にならないよね現実だし……』
「お前は何を言っているんだ」
『薄々察してたけどやっぱり通じないんだね私って』
もう一人のモルフォがモモイ、ミドリ、ユズを見ていけるか?みたいな雰囲気を出してすぐに首を傾げてしまう。この子何が見えてるんだろうな……こんな能力だからやっぱり変な電波受信したりしてるんじゃなかろうか、なんて思いながらモルフォはアンカーガンの調子を確認していく。
「というか私は私のことぶっちゃけ別人と見てるから」
「え、そうなの?いやまあ、同じ人と一緒にいるって割にはあんまり気にしてなさそうに見えたけど……」
「まあ、シロコさん達とか同一人物とはいえほぼ別人だし……というか私、こんなキャピキャピしてないし」
『あ、はは……ミレニアムの生徒になったから、やっぱりこういう感じになっちゃうのかな……?』
シールドの方を最終確認しながら、ちらともう一人の自分を見ながら言うモルフォ。確かにこの二人の格好は完全に方向性が正反対だ。もう一人のモルフォも苦笑していたが、モルフォはふぅ、と溜息を吐きながらライフルを手に持つ。そして準備が終わり、ユズが積み荷に乗り込み、残る三人もType.Sに乗り込む。
『では、発進お願いします!』
「花岡ユズ、アバンギャルド君Mk4!いきます!!」
トラックの扉が開き、そこからユズが乗り込んだアバンギャルド君が発進する。かつて、虚妄のサンクトゥム攻略戦の舞台の一つであったスランピアでユズが運用したアバンギャルド君Mk3。そこから動力部を交換したり、鋼鉄大陸到着前にミレニアムで行われた改造で更なるパワーアップを施されたアバンギャルド君Mk4に搭乗したユズに追従する形でモルフォ達も移動していく。
「……スランピアの時はアバンギャルド君が最高速度を出しちゃうと他の皆が付いてこれなくなっちゃうけど……」
「Type.Sのおかげで追いつけるようになったおかげで移動しやすくなったよね」
「でも、あの塔はどうするの?」
「それは勿論……これを使うんだよ」
アバンギャルド君mk4は、四本の腕にそれぞれ武装を持ち合わせている。大型のシールドを展開する装置。火力が強化された大型グレネードランチャー。そして残る二本の腕に装備されていたのは、ホド攻略の為に新造された大型ドリルであった。
「インベイドピラーを……これでへし折る!」
二本のドリルが目の前のインベイドピラーを貫き、次々とへし折っていく。インベイドピラーを破壊し通路をこじ開けながら、五人は進撃し続ける。だが、当然インベイドピラーを折り続けていればホドにも気付かれる。
『ホドが接近してくるよ!皆!!』
『しかもあれこれ……なんか投げてきますよ!?』
「散開!」
予言者との戦闘を一番最初に開始したのはモルフォ達。そのため、他の二部隊にも注意を割きつつもクリフォトにいた面々はモルフォ達の戦闘のバックアップに集中することになるが、真っ先にマキとコユキの焦った声が聞こえてくる。即座にモルフォの指示を受け、散開する五人。直後、五人のいた位置にインベイドピラーが突き刺さる。
「これは……!」
『気を付けてください!ホドの奴……インベイドピラーを攻撃に使っています!!』
「ユズはインベイドピラーを破壊して行動範囲を確保して!隙を見てホドを攻撃!モモイとミドリは私と一緒にホドの相手!」
インベイドピラーを破壊し、回避しながら、遠目に見えるホドの前へと向かう。そしてホドと相対した五人。目の前まで接近を許したホドは、触手の一本一本でインベイドピラーを掴み、それで薙ぎ払ったり突き刺したりしてくる。
『インベイドピラーってこんなものじゃないはずなのに……!』
もう一人のモルフォが触手を狙い撃ち、切り落としていく。それを見たミドリが負けじとさらにもう一本の触手を破壊する。
「やった!」
「いや、待って!?あれ」
しかし、触手を切り落とした傍からそこから足を無数に絡めたレイバーが次々と接続していき、新たな触手となる。
「はい!?」
「レイバーが、あんなに……!?」
「レイバーを接続するとは厄介な!」
『こんな挙動するんだ!?』
モモイが周囲を見渡しながらアサルトライフルを構える。そこには確かに無数のレイバーがいた。だが、そのレイバーはこれまで見たどのタイプとも異なり、武装を持っていないのか頭部が大分低い。おそらくは、ここから各種タイプへと変わっていく素体のようなものなのだろう。そのレイバー達が次々とホドに接続していくと、さらに何本もの触手の代わりになっていく。そして、その触手の一本一歩がインベイドピラーを掴む。
「うわああああ!?」
「というかこいつ、どこからこれだけのインベイドピラーを!?」
『ホドの後ろです!こいつ、鋼鉄大陸からインベイドピラーを直接生成しています!!』
インベイドピラーを振り下ろし、投げつけ、叩きつけるホド。塔の巨大な質量で行われる攻撃はそれだけで人間には大きなダメージになる。モモイもミドリも回避を最優先にし、ユズも二人より巨体故に回避しきれない分を盾で受け止めてどうにか耐えていく。モルフォもインベイドピラーを受けながす形で直撃を避けていく。モモイとミドリも合間合間で攻撃を加えていくが、触手を盾にして攻撃を受け止めていき、千切れたところからレイバーを繋げて修復していく。これでは決定打にならない。
『ホド……鋼鉄大陸の環境下でここまで厄介になってしまうとは』
『本当に前回がホドにとってアウェーだったのね……』
『それで、どうするつもり?攻め手が足りないけど』
『アバンギャルド君に装備されたグレネード弾なら……ただ、ガードされてはいけないから、そのためにあのレイバーの触手をどうにかして体に直接叩き込む必要があるけれど……』
『……アバンギャルド君そのものをぶつければその衝撃でどうにかできないかな』
「衝撃で……そうか!皆、よく聞いて!」
先生の呟きを聞いたモルフォがある案を思い付く。それを聞いた四人は一瞬困惑するも、
『そうですね……それなら、今からどう置くかを指示するので、その通りに積んでくれますか?』
『まあ、機構自体は簡単そうだし、案外何とかなるんじゃないかしら?』
その話を聞いたノアとユウカからサポートをもらえることになる。それを受け、五人はインベイドピラーを開始しながら、突き刺さったインベイドピラーをへし折っていき、アバンギャルド君がそれを積み重ねていく。
『中央部は他に使えるものがないのでType.Sで固定してください!』
それはテコのような形になっていく。そのままだと不安定なままだったが、ケイの指示を受けて三人のType.Sとアバンギャルド君Mk4の頭部にちゃっかり乗っていたユズ用のType.Sが脚を組み合って支点を固定する。
「できたけど、使えるのは一回だけ……」
『……今の所、動ける部分を確保しているような動きを皆さん取っているおかげで、ホドにはまるで警戒されていないはずです。ですが、この一回が失敗すれば……二回目は積ませてくれないでしょう。失敗は許されません!』
「なら、決めてみせる!ユズ!」
「いっけー!!」
そしてアバンギャルド君Mk4が脚部に装着されたスラスターを吹かしホバーで機体を浮かせる。ホドがアバンギャルド君mk4の不穏な行動に気付き、インベイドピラーを叩きつけようとするが、それをミドリともう一人のモルフォが触手を攻撃、破壊することでインベイドピラーを落下させていく。即座に戦術を変更し、ホドがレイバーを雨のように降らせて妨害してくる。
「この!」
モモイが弾をばら撒いてアバンギャルド君mk4に当たりそうな分を全て撃ち落としていく。モモイが落としきれない分はモルフォがブーメランを投擲して両断していく。四人がユズの補佐を行い、高度を稼いだユズはそのままアバンギャルド君mk4を落下。インベイドピラーの上に落下したことで反対側に横向きに積まれたインベイドピラーがホドに向かって打ち上げられる。ホドはそれを叩き落とそうとするも触手を破壊されていたことでまともに喰らってしまい、その威力に怯んだのか一時的に動きを止めてしまう。
「今!!」
そのチャンスを逃さず、ユズが大型グレネード弾を放つ。それはホドが触手を動かしてガードする前にホドの胴体へと命中し、大爆発を引き起こす。
「「やった!!」」
『今ですよモルフォ!情報コアの位置を割り出してください!!』
「はい!!」
大爆発で繋がってたレイバー達がまとめて吹き飛び、ヒビが入った胴体。そこに向かって跳んだモルフォがショットガンハンマーを叩きつける。ホドの全身に振動が広がっていき、クリフォトの方では程の全身のデータと情報コアの位置が表示される。
『情報コアの位置、判明しました!』
「よし!!」
「装甲をこれで破壊する!モルフォ!」
「了解!」
ユズの声と共に瞬発力を引き上げながらホドの胴体を蹴って空中へと飛び上がる。そのままモルフォが後ろへ一回転しながら姿勢を整えるのと同時、アバンギャルド君mk4から射出された高速回転する二本のドリルがホドの胴体へと突き刺さり、装甲が砕け散る。そして露わとなった情報コアに向かって、モルフォは接近しながらアンカーを打ち込む。
「モルフォちゃん!」
『危ない!!』
情報コアを抜こうとするモルフォの行動を何としても阻止しようとホドは復活させた触手を次々と叩きつけようとする。レイバーを破壊された傷跡を埋めるように這わせてなんとしても情報コアを守ろうとするのだが、ミドリ達がモルフォを援護するように触手を撃ち落としていく。モルフォはアンカーが完全に埋まってしまったレイバーで作られた薄い装甲を見ていたが、
「その程度で止まるか!!」
「任せて!」
アバンギャルド君mk4から放たれた、再装填されたグレネードがレイバー達を吹き飛ばしていく。即座にモルフォはビナーの時よりも改良され、深く打ち込まれるようになったアンカーを引っこ抜く。ブチブチと情報コアに接続されたコードが引き千切られていき、やがてホドの身体から情報コアが引き抜かれると。ホドの身体がその場に崩れ落ちていく。
「「や、やった!!」」
その場に倒れたホドや建てられたインベイドピラーが鋼鉄大陸の中へ同化して消えていく。モルフォはアンカーが突き刺さり、アンカーガンの銃口にくっついたような形になっている情報コアを見ながらゆっくりと降下していく。その様子を確認し、ホドにモルフォ達が勝ったことに安堵しながら、ケイ達はホドのエリアが占領され、こちらの支配下になったことを無事に確認する。
『ホドのエリア、占領を確認しました。これでそちらのエリアは安全が確保されましたね』
「ふう……なんとか勝ててよかったね」
「ホドってこんな強かったんだ……よく勝てたねケイ達……」
『あの時は……いえ、あの時が多分例外だったんだとつくづく思い知らされますね……いやまあ、鋼鉄大陸という環境を考えると今回も例外なんでしょうが……』
『いずれにせよ、他の預言者も前回のようにはいかないと考えた方が良さそうね』
『はい、エイミ、ネル、聞こえますか?あなた達が相手しようとしているケテルとケセドは以前よりも厄介になっていると考えてください』
情報コアをケースの中に保管するモルフォ。これで、クリフォトにいるケイも遠隔で情報コアに対して解析や抽出が行えるようになっている。ケイがそのための準備を進める中、モルフォ達を回収するために輸送船を向かわせつつ、今回の戦闘で判明した敵の厄介さをヒマリは他の皆へと伝えるのだった。