転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
三体の預言者を倒し、新たにホド、ケテル、ケセドの情報コアを取り込んだケイ。それにより、四体の守護者が占領していたエリアを取り戻し、全体の四割はこちらが占領したといっていいだろう。特にケセドの工場を抑えられたのは大きく、エンジニア部が格納庫の方で忙しく作業を行っている。
「さて、それではここからは後半戦ですね」
「まだ過半数残ってないか?」
「マルクトは別格なので完全に別枠です。イェソドは……ちょっと事故の危険性が高いので別で戦術を考えています。ネツァクはそもそも倒すという枠組みではないので、残る預言者は三体ですね」
そして、戻ってきたゲーム開発部達もブリッジに上がり、先程の戦闘での疲れを取るように寛いでいたが、その様子を見ながらヒマリが三つの画面を表示する。そこにはゲブラ、コクマー、ティファレトの三体が表示されていた。
「へぇ、随分イカついな。ティファレトは丸っこいけど」
「こちらに来てから交戦した三体ですね。ティファレト本体については戦闘能力は低めですが、ゲブラとコクマーの戦闘力は高いです。これまでと同じような感覚で戦闘を挑めば苦戦は必須でしょうね」
モルフォ達も、ティファレトとは戦闘したがゲブラやコクマーとは戦ったことがない。この中でこの二体とも戦ったことがあるのはトキとエイミだけだろう。
「また同じ組み合わせで大丈夫そう?」
「いえ、そこは調整するべきだと思うわ。特にティファレトとの戦いでは私達は戦わずして全滅しかけたのだから」
「あの時はしてやられましたね……」
ティファレトに催眠ガスをばら撒かれ、全滅しかけたことは記憶に新しい。あの時はアリスとケイ、そしてもう一人のモルフォと、どういう理由か目を覚ました先生のおかげでどうにかなったが、二度も通用するとは思えないだろう。となれば、専用の対策を取ることになる。
「それに気を付けなければならないのはゲブラとコクマーもですね。まずコクマーは鋼鉄大陸の外にある海に囲まれた火山の中に陣取っているのは確認できたのですが……火山の内部の構造が判明していません」
「調べられないの?」
「一応ドローンを出してはいるのだけど……」
リオが立体的な火山のマップを表示させる。そこは出入り口が一つだけになっており、そこを突入したドローンの映像が出てくる。だが、入ってすぐにコクマーのものと思われる火炎放射を喰らってしまい、ドローンがまとめて焼き尽くされてしまう。
「門前払いね」
「……いやこれだと私達も焼かれるだけじゃないか?」
「火薬がまとめて点火して使い物にならなくなりますね」
「そういう問題じゃないでしょ……?」
ドローンたちではこうやってコクマーに対処されてしまい、コクマーとの決戦の舞台の全容を知ることができない。そのため、直接乗り込む必要があるのだが、そうなればこちらが焼かれてしまうのではないかというカリンの心配も尤もだろう。だが、それに関する対処法としてリオが工場で生産しているあるものを見せる。
「その対策として、インベイドピラーを生産しているわ。インベイドピラーを火山の周りに打ち込むことで、内部に侵入するメンバーにバリアを貼ることで炎を防ぐわ」
「ただし、防げるのは直撃だけで普通に熱による攻撃は通用する点だけは注意してください」
「……え、あのインベイドピラー、作れるの?」
その方法とは、ホドが使っていたインベイドピラーをこちらが運用することであった。預言者が使っていた兵器をこちらも使えるのかとハレが驚愕していたが、ケイがそれに頷くと、
「ええ、ホドの情報コアを取り込んだ今、その情報を算出してインベイドピラーの完全解析ができるようになっています。ケセドの情報コアにはケセドの工場の詳細な情報についてもありますから、生産も可能です」
「そんなことが……ちなみに、作ったインベイドピラーはどうやって運ぶの?ドローンで空輸?」
「いえ、ケテルの武装にあったミサイル発射装備を改良し、インベイドピラーの射出台にします」
「……倒した預言者のあれこれがフル活用されている……」
(まるでロックマン……いや、あれは武器がって話だから微妙に違う?)
倒した三体の預言者の力を使うことでそれが可能になることを告げる。これで、コクマーに関しては戦闘に際しての問題はないといえるだろう。
「……私、コクマー戦パスしていい?」
「ええ、エイミはゲブラ戦に参加してもらいます」
「それはよかった」
「では、話題に出たので丁度いいですし、次はゲブラについて説明しましょう。ゲブラは普段は海の中を移動していますが、こちらは侵入すればゲブラの方から出向いてくれるでしょう。そのための場所ですが……」
ゲブラとの戦いでは海中戦をやるわけにはいかない。ここは超低温の海だ。もし落下すれば途端に凍死の危険性が出てくる。この中で海の中に落とされてもまともに動けるのはそれこそエイミぐらいだ。
「使えそうなのはここぐらいでしょうね」
「……これだけ?」
そう言いながら、ヒマリが表示させたのは、海の中に浮かぶ巨大な流氷だった。しかし、この流氷は人から見れば巨大、というだけでゲブラから見れば容易く破壊できるような場所だろう。しかし、ゲブラとの戦いの舞台で使えるのはここだけだ。つまり、ゲブラとコクマーは圧倒的な地理の不利を背負って戦うことになる。
「海に落ちたら駄目ってことは……」
「アリスの出番ですね!」
「いえ、アリスにはティファレト戦に参加してもらいます。ティファレトの催眠ガスが通用しないのは通常ではアリスだけですので……そういえば、今のケイはどうなんでしょうか?」
「おそらく通用はしないはずですが……ただ、私は残った方がいいかと」
「ティファレトのことは気になるけど、一旦ゲブラの方に話を戻そうか」
先生の言葉にヒマリとケイも頷き、また話をゲブラに戻す。ゲブラとの戦いにおける障害はまだ多い。それを解決するにはどうすればいいか考える。
『……それなら、あれが使えるんじゃないかい?』
「あれ?」
と、ここで格納庫で作業をしながら話だけは聞いていたウタハがぽつりと呟く。会話には基本的に混ざらないつもりだったが、会議が行き詰っていた雰囲気もあってか助け舟を出すことにした。
『ミレニアムから持ち込んだあるものがあるんだが……こいつなら水中戦や海上戦もこなせるはずさ。まあ、水中戦をやったところで勝てるかどうかは怪しいが……』
「どうにかなるの?」
『ああ、足場にはなるはずだ』
「足場が用意できるなら話は大分変わってきそうね。後は魚雷も生産しておくべきかしら」
『そこら辺はまあ別途で用意しておく必要があるだろうね。まあ、纏まるまでは今やっている作業を優先させてもらうよ。そっちにもこの子は必要だからね』
一通り、ゲブラとの戦いはどうにかなることを話したウタハはここで通話を止める。ゲブラについての話は十分、そして残るやティファレトとなるが、
「では最後にティファレトですが……先ほども少し触れたように戦いでは催眠ガスを使われる可能性が高いです」
「催眠ガスをどうにかできるメンバーのみで戦うことになるわ」
ティファレトには催眠ガスという最大の難関がある。これを突破、対策できるメンバーで部隊を組む必要があったのだ。そのため、まずはアリスが選出されることになる。そして、
「残るメンバーは……モモイとミドリ、ユズはどうかな?」
「え?」
「私達?」
「えっと……確かにアバンギャルド君Mk4なら催眠ガスを防げそうですけど……」
「今の時点ではそういう対策は取れていませんが、アバンギャルド君のフィルターを改良するだけなら然程時間はないでしょう。少なくとも、一から対ガス用の装備を作るよりは手間がかかりませんし、内部が分からない火山や落水したら多少のホバー移動はできてもそれ以降は沈没するしかない氷海に使えない以上はこちらに出すしかありません」
「まあ……言い方が悪いけどアバンギャルド君mk4の適性を踏まえた消去法ですね」
「……致し方ない事情ね」
そこにゲーム開発部の三人が選出される。ユズはアバンギャルド君mk4を改良すれば運用可能……というかティファレト戦にしか出せない。そしてモモイとミドリは、あのヘルメットが役に立つということなのだろう。
「次にゲブラとの戦いですが……こちらにはエイミは確定として、他は……」
「モルフォもこちらに入ってもらっていいでしょうか」
「ケイ?なんかあるの?」
「ええ、ある追加装備を作っています。モルフォも覚えがあるはずですよ」
「覚え……あー、あれか……うん、わかった」
「では、後は私ですね。何かいい感じのものをください」
「……海上移動用のフロート装備は作れると思いますが、扱えますか?一応千年の守護者による補佐はしますが」
「問題ありません」
そしてゲブラとの戦いではエイミの他はモルフォとトキとなった。この二人に関しては装備面でゲブラとの戦闘に適性を持たせることが可能なようである。そして、コクマーとの戦いには残る四人、ネル、アスナ、カリン、アカネによるC&Cの四人が参加することとなる。
「それで、作戦開始時刻だけれど……」
「それなら……今が丁度12時前なので……13時までは休憩時間にするのはどうでしょうか?皆さんもお腹が空いているでしょう?」
そして次の攻撃を行う時間も決まり、一行は休憩時間を取ることにするのだった。
★
ロビーでインスタント食品を食べながら英気を養うゲーム開発部。その近くではマキやコタマ、コユキの姿もあり、皆がお昼を食べている様子を先生も見守りながら自分も食事を取っていた。現在ブリッジではノアやユウカ、ハレが万が一に備えて待機しており、エンジニア部は現在も作業中、リオとヒマリ、チヒロもすぐに食事を終えると、食事の機能がないことにぼやいていたケイと共にエンジニア部の方に合流していた。
「お姉ちゃん、そんながっつかなくても」
「で、でもなんか急にお腹減ってきちゃって……」
「まあ、気持ちはわかるけどさ……」
『……』
ガツガツと食事を食べるモモイ。なお、食欲が凄いのは別にモモイに限った話ではなく、他のゲーム開発部の部員も同様だ。その様子を無言のまま見つめていたもう一人のモルフォ、その表情がどこか羨ましそうに見えているのはおそらくは気のせいではないだろう。何せ彼女は今の状態では食事もできないのだから。
「……」
さすがに今すぐどうこうはできないだろうが、この戦いが終わったらきっと。そうすれば、彼女もシロコ*テラーやユメの下に、他のアビドスの生徒達の所に戻れるはずだろう。この戦いに勝たなければいけない理由がまた一つ増えていたことを先生が胸に誓っていると、もう一人のモルフォにコタマが近づいている様子が目に入る。
「……あなたが別時間軸のモルフォ、ですね?」
『え?あ、はい……どうしました?コタマさん』
「……うん、成程……やっぱり……」
『?』
「……一曲歌ってくれません?」
『……え?』
もう一人のモルフォにコタマは何を話すのかと思いきや、いきなり歌ってほしいという言葉にもう一人のモルフォも驚いたような表情を浮かべてしまう。だが、それを聞いたマキやコユキも興味深そうに近づいてくる。
「あ、それ私も聞きたい!モルフォちゃんってもう一人の自分の方がうますぎるせいで歌いたくないってあんまりそういうのやらないからさ!」
(この世界の曲のレパートリー少ないのもあるんだけどね。まあ自分が楽しむためなら全然やるけど歌の上手さで自信喪失したのは一応事実だし)
「というかその恰好寒くないんですか?」
『え?あ、でも寒さは感じないかな……この身体だし……』
質問を重ねられるもう一人のモルフォ。特にコタマは彼女の歌に強く興味を抱いているのだろう。あの時、聞いたもう一人のモルフォの歌。他にも、様々な事を質問されている彼女の様子を見ていたアカネが微笑みを浮かべる。
「ふふ、もう一人のモルフォちゃんも中々面白そうな子ですね」
「そうかぁ?いい奴だろうとは思うが……大人しすぎる気がしねえか?」
「そうかな?あの子らしくていいと思うけど」
ネルとしてはこの世界のモルフォとは別人であり、こういうものだとわかっていてもやはり違和感は少しあるのだろう。まあ、それはさっさと受け入れればいいかとネルは一人納得していたが、やがて色々話をしていたコタマ達はもう一人のモルフォが何を歌うのかについての話に入っていた。気付けばモルフォ以外のゲーム開発部の皆も同じようにその話に入っていた。
「モルフォはこの話に入らないのですか?」
「迂闊に入ると知らない歌出しそうだからちょっと待ち……あ、これ初めて見た商品だから買ってきた奴だけど美味しい」
「そうですか?ふむ……確かにこれは初めてみますね、後程飲ませてもらってもいいですか?」
モルフォだけはその話に入っていなかったが、彼女は彼女で食後に氷海に向かう時に買っておいたのはいいが今まで試すことができなかった新作のココアを試していた。トキがそれに興味を抱いてモルフォから袋を受け取って自分もココアを作っていると、もう一人のモルフォ達がモルフォの方を見ていることに気付く。
「ん?どうしたの?」
「もう一人のモルフォちゃんが何を歌おうか悩んでてね、だから……」
「モルフォが選んでよ!なんかいいの知ってるでしょ?」
「私達が知らないものでも全然いいですよ。良い曲だってのには聞く前から分かりますから」
それはどうやら、曲のリクエストのようだ。この世界で目覚めてから、確かに歌ったことはあるが、これまではまだ人数が少なかったこともあり、そもそももう一人のモルフォ自身に歌をリクエストされることもなかったから歌う時は本人も自由に歌っていたのだろう。しかし、いざ求められるとどういうのを歌えばいいか迷ってしまう。ならばこの世界の自分に皆が好きそうな曲をリクエストしてもらうのがいいと思ったのだろう。それを聞いて少しだけ考えたモルフォは、向こうの自分も確実に知っていそうな曲をリクエストするのだった。
★
「ウタハ先輩、来ました」
「よく来てくれたね」
大体三十分ぐらい経過した頃、昼食も食べ終え、軽く休憩して英気を養ったモルフォ達はウタハに呼ばれて格納庫に訪れていた。そこではウタハがチヒロやリオ、ヒマリと共に集まっており、ネル達に何かの説明を行っていた。ネル達の傍にはそれぞれマシンのようなものがあり、それらの使い方をレクチャーしているようだ。また、コトリやヒビキも作業を進めているようだが、どこか疲労を隠せない様子でいた。
「かなり疲れてない?」
「まあ、かなりタスクが多かったからね……」
「で、ですがその分色々やれましたよ……ふふ」
「……この後休憩時間取った方がいいんじゃない?」
「検討しておこうか……」
疲労が溜まっているのか、どこか怪しい笑みを浮かべるコトリ。ヒビキがアリスに二門の小型のタレットのようなものが左右に取り付けられたベルトを巻いていた。
「……アリスがなんかどんどん近づいている気がする」
『何に……?』
「モルフォにはこれを」
ケイがモルフォに黒いフライトユニットを差し出す。そこにはフライトユニットだけでなく腕のような形をしたアームのような武装も追加されている。これは以前一度だけ使ったあの装備に似ていた。
『……これって、百花繚乱の私が使ってた百蓮に似て……』
「ええ、あれを独自に解釈して作り上げたものになります。サポートAIとして千年の守護者を搭載しているので、とにかく落水には気を付けて戦ってくださいね」
「わかった。ありがとう、ケイ」
「ねえねえ、私達にはないの?」
「ええ、ありますよ」
モルフォやC&Cにも新しい武器が追加されているのなら、自分達にはないのかとモモイが声をあげる。だが、そちらについてもちゃんと用意をしていたようで、モモイとミドリ用にコンテナが二つ用意されていた。それは、新たな姿となっていたユズが搭乗するアバンギャルド君に、元から積まれている分と合わせて三つ積まれる形になっていた。
「これをアバンギャルド君MkXに搭載します」
「なんて?」
「説明しましょう!アバンギャルド君MkX……フィルター周りの改良も考えましたが、ここはもうナンバリング全員揃えた方がいいかなということで作り直されたイレギュラーナンバーですね!対ティファレト戦を念頭においたフィルター、そして仲間達の装備を搭載するためのコンテナには武装を放棄することで戦闘中、催眠ガスの被害を受けた仲間を回収することができるようになっています。また、四本の腕にはインベイドピラーを解析することによって作り上げたバリアシールド生成装置やビームアサルトライフルや振動刃による実体剣、以前のティファレトとの戦闘を分析して作り上げた対策用のチェーンナックルがあります!これらの複雑な操作に関してはユズにアケコンを用いた操作を行わせることで対策でき、さらにさらにOSに関しては千年の守護者を搭載してメモリなどを確保して―――」
『よ、よく聞けるね……』
コトリの説明をモルフォが聞いている様子を見て、よく聞いていられるなぁ、わかってるのかなぁとちんぷんかんぷんになりながら呟くもう一人のモルフォ。もう一人のモルフォが視線を動かすと、トキが海上戦用のフロート装備を取り付け、銃もエネルギー弾から以前の実弾のガトリング砲に換装したアビ・エシュフXについての説明をリオから受けており、エイミもおそらくは落水した時に使うであろう水中スクーターの説明をヒマリから受けていた。
「インベイドピラーの方は準備が終わってる。他の大型機の準備もできているから、いつでも動かせるよ」
「では先生、私達はブリッジの方に移動しましょうか」
「うん、皆怪我しないように気を付けてね」
「任せてください」
「よし、それでは後はこの応援ロボットの最終調整を……」
「だから休みなさいよ」
『応援ロボットって戦……あれ何に使うんだろう……?』
そして、チヒロから他の方も準備が終わっていることを告げられ、先生はケイに言われて出撃しない面々を連れてブリッジの方へと上がる。そして、モルフォ達はこの日四度目となる出撃の瞬間を待つのだった。