転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
コクマーが存在する火山。輸送船から降下したC&Cとモルフォ達、エイミ。エイミは水中用の装備の調子を確かめるように火山の周囲に存在する海の中に飛び込んだり、トキはフロートパーツを装備して海上を移動できるようになったアビ・エシュフXを操作していた。モルフォはというと、
「……アリスはよくこんなの動かせていたなぁ……」
「……随分不安定そうだなそれ。くそ、見た目は良いのにな……」
新たに製造された、モルフォ専用のフライトユニットの試運転を行っていた。制御に関しては千年の守護者が勝手にやってくれているため、操作を間違えて墜落する、といったことはないのだが、空中で姿勢を保つのが思った以上に難しい。とはいえ、ここ以外でやれる場所もないのだ。何せここはコクマーのエリア。つまりゲブラによる妨害が行われない、火山の外にさえいれば安全な場所なのだから。
『どう?動かせそう?』
『モルフォの場合は単純に空を飛ぶのに慣れていないだけ、というのが大きいと思います。最悪の場合、千年の守護者に完全に操作を投げて防御にだけ集中するといった形でもいいかと』
「……何とかやってみる。コツとかないの?」
『こ、コツって言われても……こう……ふわってなって、バサバサって感じ?』
「私は感覚派じゃなくて論理派なんだ……後ついでに有翼じゃない」
もう一人のモルフォのアドバイスも受けつつ、どうにか慣れようとする。時間は短いが、ある程度形にしないと戦闘に支障を来すだろう。以前、混沌の領域で使ったものを再現して作られたのだ、仮にも自分が使ったのなら何とかなるはずだと気合を入れて乗りこなそうとする。
「というか作られたものだから別物とはいえ、これを別時間軸の私はどうやって使いこなしていたんだ……」
『それは本当にそう。どこからこのアームドギア出てきたの……?』
(……あれは原理も形状も元ネタらしきものが別々になっていそうなんだよねぇ……)
「……しかし。インベイドピラーはまだなのか?」
『今、発射角を調整しているところ』
ゲブラとの戦闘に臨む三人から視線を離し、カリンが空を見上げる。チヒロから短く報告を受けて頷くと、火山から鋼鉄大陸の方を見る。
「……こうしてここにいると全く実感が湧かないが、今も鋼鉄昇華は広がっているんだったな……」
『ああ、それについてですが……少し調べ直してみたのですが、鋼鉄昇華の速度が明らかに遅くなっているんです』
「あん?遅くなってる?もしかして……」
『ええ、預言者を倒して情報コアを手に入れたからね。預言者同士が緊密に繋がっているという仮説も、ある程度は証明されたといっていいでしょうね』
モルフォ達とC&Cが降りたことを確認し、輸送船はティファレトの領域の方へと移動する。今度はモルフォとケイを除くゲーム開発部の四人を連れて移動することになっているからだ。移動する輸送船の中から外の景色を見ていたアリスだったが、
『―――争いを止める道が彼方に与えられた場合、彼方はその道を選択しますか?』
「……?」
「アリス?どうしたの?」
「え?あ、いや今誰かの声が……まるで先生に似ていたような……?」
突然何かの声を聞く。突然その場に立ち尽くしてしまったアリスを心配したようにモモイ達が声をかける。アリスが先生に似たような声を聞いたというが、モモイ達はその声を聞いていないのか顔を見合わせて首を傾げてしまう。
『自分自身を探すのは大事なことです。それは―――彼方も』
「!?また……でも、アリスだけ?じゃあ……ケイ!ケイは何か聞こえませんでしたか!?」
『……いえ。まだ』
「ま、まだ?」
『ええ……ですが、アリスが何かを聞いたという事実だけは、なんとなく分かる気がします』
アリスはすぐにケイに通信を取り、今の声について聞く。ケイは少し考え込んでいたが、どこか曖昧な返事を返す。
『どんな内容だったか覚えていますか?』
「え、えっと……ごめんなさい。びっくりしていてよく覚えていないです……ただ、自分自身を探すのが大事だと、そんなことを言われたような」
『……成程。でしたら、私もまだはっきりと言えることはありません。次に何か聞こえたら、その時はちゃんと内容を覚えておいてください』
「は、はい」
『そして、何があろうと、これだけは胸に刻んでおいてください……アリスには、私がいます。先生がいます。他の皆さんがいます。私達は皆……いつまでも、アリスの味方です』
その声が、何を意味するのかはわからない。しかし、もしその声がまたアリスに語り掛けてきた時。それが何か変化を及ぼすとしても、自分達はずっと傍にいるのだと。その言葉を聞き、アリスは嬉しそうに笑みを浮かべる。
『……へー、ケイちゃんも良い事言うねぇ』
『……別にほじくり返さなくていいんです』
『えー?でも凄い臭い台詞だったじゃないですかー!』
『うるさいですよコユキ!!』
『バッチリ録音してますけど再生します!』
『今すぐ削除してください!あんまりからかうようならあれやりますよあれ!モルフォがあの……えっと……ミレニアムEXPOで悪事を働いた一応先輩の人にやったようなやつを!』
『あ、はは……』
が、それをブリッジで言っているのだから当然それは他の皆に聞かれているわけで。通信の向こうでギャーギャーと喚くケイ達の声を聞きながら、四人は苦笑しながら互いに顔を見合わせていると、
『インベイドピラーの射出準備ができたよ』
『着弾地点からC&Cは離れてください。対ゲブラを担当する部隊はその場に待機、ティファレトのエリアにゲーム開発部の四人を投下後、輸送を開始します』
『……まさか輸送船がもう一機欲しくなる時が来るとは正直思わなかったわ』
火山にインベイドピラーが射出される。火山周囲の地面にインベイドピラーが突き刺さると共にネル達四人をバリアが覆っていく。
「へー、これがバリアってやつか……今思ったんだが、こっちから撃った弾も防がれる、とか言わないよな?」
『その心配はありません。中から外にはいくらでも素通しします』
「……どんな理屈なんだそれは……?」
『説明していいならするけれど……』
「え、遠慮します……」
『説明しましょう!!』
「しなくていいんだよ、んなことする暇あったら寝てろ」
バリアで視界が少しぼやけたりするのかとも考えたが、意外と気にはならない。加えて弾もちゃんと通るとあれば期待は大きい。
「そんじゃあ……」
ニヤリと笑い、ネルが傍に停めてあったそれを見る。そこには四機の乗り物が用意されていた。
「こいつら、使っていいんだろ?」
『ええ、構いませんよ。思う存分使い倒してください』
「……私が改修機でリーダーができたてほやほやの新作なのは不公平ではないでしょうか。異議を申し立てます。しかもケイの分は消滅しました」
「いやお前はずっと使ってたんだから文句言うなよ」
『いや私の分はアリスが使ってるんですが……』
ネル達に用意された乗り物は、新たに新造されたアビ・エシュフXであった。それぞれ、より戦闘力が高くなっていく後の方で観測された預言者との戦いを見据えた特別装備であり、現在はトキのものと同様、バイクの姿をしている。当初はヒマリのバイクもとい車椅子のようにするべきではないかという案もあったのだが、実質操縦するように使う彼女の車椅子よりも、トキが実際に運用しているアビ・エシュフの方が適性は高いと判断されてこのような形になっている。
「おい、お前ら!準備はいいな!」
「いつでもいけるよー!」
「ああ、こちらも問題はない」
「不具合はなさそうですね……大丈夫ですよ」
ネルが使用しているのはトキが使用しているものにも似たバイク型のマシンだった。とはいえ、ネルのサイズに合わせた調整がされていたり、トキの場合は車体後部に積まれていた巨大な武装コンテナが小さくなっている代わりに車体の側面にブレードのようなものが装備されていたりといった差異がある。また、タイヤについてはコクマーとの戦いにおける悪路を想定したのかトキのバイクよりも大型の車輪のような形状になっている。
「いくぞ、C&C、出撃だ!!」
どこかワクワクした様子のネルの声に合わせ、三人もそれぞれのマシンを発進させる。三人のマシンもバイク型で統一されているが、それぞれ武装が異なっているようであり、見た目にそれぞれ差異が見える。
「っ、暑いな……!」
「来るぞ!!」
火山の中に入り込んだ一行に向かって火炎放射が早速飛んでくる。だがバリアがそれを弾き返してしまう。熱は完全には防げないものの、これぐらいなら支障はないと言わんばかりに四人は炎の中を突っ切っていく。やがて、コクマーの方も効果がないことを悟ったのだろう、炎の放出を止めるとそのまま後方へと下がっていく。
「……ここは」
やがて、大きな広間へと差し掛かる。
「あの背中……確かに船だな……」
そこで待ち受けていたのは、背中に船橋が確認できる、巨大な鋼鉄の怪獣であった。背中の船橋や、船首が再構築されたと思われる頭部といった形で船の面影を残しているものの、その怪獣のような両腕を見れば船とは中々気付けないだろう。下半身は溶岩の中にどっぷりと浸かっており、その全身がどんな姿をしているのかは見当もつかない。
『それがコクマーよ!』
『気を付けてください!コクマーは炎による攻撃を得意としています!先程の火炎放射以外にも複数の攻撃パターンが存在します!』
「おう!」
C&Cを見たコクマーが火炎弾を放ち攻撃してくる。それらをバイクを走らせて回避していくネル達だったが、それを見たコクマーは広場全体に滅茶苦茶に火炎弾を吐き出してくる。それは地面を抉っていき、悪路をどんどん酷いものへと変えていく。
「野郎!」
『!まずい!皆、決着を急いで!』
『温度が急上昇して……うわっ!溶岩だ!地面から溶岩が滲んでる!!』
「「「「!!」」」」
それだけではない。どうやらこの火山の中の地面は表面だけが冷えて固まっているようで、コクマーほどの力があれば簡単に大地を割ってその下にある溶岩を地表に見せることができる。当然溶岩の中に落下すれば生存は絶望的だ。
「……おいおい、殺す気はないとか言ってたのはなんだったんだ?思いっきり殺意しかねえじゃねえか?」
「それだけ、相手も本気ってことじゃない?」
「はっ、上等!!こっちも変形だ!!」
ネルの乗るバイクが変形し、ネルの四肢を装甲が覆っていく。そのデザインはトキが使用しているアビ・エシュフXと同一のものだが、武装は大きく異なっている。両腕の武装はバイクに取り付けられていた二本のブレードになっており、背中にはスラスターが取り付けられている等、より接近戦に特化した仕様へと変わったアビ・エシュフXになっている。
「おらぁ!!」
スラスターを吹かしながらコクマーに向かって飛び出したネルは、コクマーが放った火炎弾を左のブレードで切り裂きながら接近し、コクマーの肩に右のブレードを叩きつける。
「グォ!?」
コクマーの口から怪獣のような機械音による咆哮が漏れる。コクマーの肩の装甲が容易く切り裂かれ、内部の機械が傷口から露わとなる。
「グォオオオ!!」
「おっと!」
コクマーが怒ったかのように雄叫びを上げ腕でネルを薙ぎ払おうとする。しかしその前に肩を蹴って後方に下がりながらアームから腕を引き抜き、腰にマウントしていたサブマシンガンを連射しながら地面に着地する。
「はっ、良い切れ味じゃねえか!気に入ったぜ!」
「凄い凄い!じゃあ次私ね!」
その様子を見て気を良くしたのか、今度はアスナがアビ・エシュフXを装着する。アスナのアビ・エシュフXは武装面に関してはかなりシンプルであり、トキの使用している重武装型とは真逆であり、武装面はアビ・エシュフXでの運用を基本とした口径の大きなアサルトライフル一丁だけというシンプルなものだが、その分ターンピックやスラスター、ワイヤーなど機動力を確保するための機能が取り付けられている。所謂機動型に分類される設計となっている。
「よーし、いっくよー!」
コクマーが炎を天井へと放つ。天井が爆発し、落石が次々と落下してくる。ネルが石を薙ぎ払い、カリンとアカネがバイクを変形させないまま回避行動に移る中、アスナは奇想天外な動きで落石の中を掻い潜り、時には落石自体を蹴りながらコクマーへと接近すると、ネルが切りつけた傷跡にエネルギー弾を叩き込んでいく。
『さすがね、アスナ』
『確かにアスナ先輩のアビ・エシュフXには機動力をサポートする様々な機能を取り付けていますが……よく使いこなせていますね……』
『なんとなく、なんでしょう。アスナに言わせるならば』
機動型と言えば聞こえはいいが実際はピーキーすぎる性能だ。千年の守護者によるサポートがあっても常人、それも使い始めで扱える代物ではない。だが、それを使いこなせているのはさすがというべきか。
「合わせろ、アスナ!」
「わかった!」
ネルが傷をつけ、アスナがエネルギー弾を撃ち込んで内部に損傷を与える。これだけでもコクマーにとっては脅威な上、傷のせいでコクマーはもう溶岩の中に戻ることもできない。このまま溶岩の中に潜ってしまえば、傷ついた装甲から内部に溶岩が流れ込み、内部は熱で一気に破壊され尽くすことだろう。預言者という超精密機械と言ってもいい存在故の弱点といえる。
「っ、揺れが……それに、地面も!」
「どうやらコクマーも必死になり始めたようですね……」
コクマーが再び火炎放射を放つ。それによってネル達は視界を封じられるも、バリアがネル達を守る。だが、コクマーの狙いはそれではなく、火炎放射によってネル達の視界を封じている間に両腕を勢いよく振り下ろし、地面を破壊し始める。
『まずいわ!コクマーが地面を破壊している!このままでは……』
『行動範囲が狭くなる!そこまで時間をかけちゃ駄目だ!』
「だとすれば、一気にダメージを与える必要がありますがこの中だと……!」
「カリン!」
コクマーは四人が立つフィールドを破壊するつもりのようだ。そうなれば四人は足場を失い、戦闘の続行が不可能になる。まさかの盤外戦術を前に、ネル達は短期決戦を強いられることになるが、ネルは慌てずにカリンに指示を出す。
「……よし!!」
カリンのアビ・エシュフXの武器で特に目立つのは背中に背負われた巨大なスナイパーライフルのような形をしたビーム砲、そして折り畳まれた四枚の背面スラスターだろう。後はアンテナがヘッドギアに装着されていたり、万が一懐に潜り込まれた時用のナイフやハンドガン、隠蔽用のホログラム発生装置といった、エイミよりも威力のある狙撃ができるようにカスタマイズが施されている。とはいえ、コクマーを相手にわざわざ狙撃するだけの距離を取る意義はないため、この場においては大出力の射撃役を担うことになる。
「エネルギーフルチャージ……いくぞ!」
背中から肩の上を通って前方へ向けられた巨大なライフルから放たれた一筋の光が、炎を突き破ってコクマーの口に突き刺さる。反動も凄まじいが、背面から四枚のスラスターが斜めに四枚展開され、カリンの姿勢を支えることで大出力射撃を可能としており、その威力は凄まじくコクマーの身体が大きく仰け反り、溶岩の中に上半身が沈んでしまう。かと思うとコクマーは慌てた様子で勢いよく地上に飛び出し、まるで人間がグロッキーになったかのように地上に上半身を突っ伏した様子で倒れ込んでしまう。
「……よし!」
「アカネ!吹っ飛ばしてやれ!」
視線の先にいるコクマーはネルが刻んだ傷跡からバチバチと火花を散らしており、その傷跡を中心に装甲が溶解している様子すら見える。今の溶岩への落下はコクマー自身に多大なダメージを与えていたようだ。
「ええ、それではこの新装備の力、見せてもらいましょうか!」
アカネもアビ・エシュフXを装備する。アカネのアビ・エシュフXは他の四人よりもさらに大型の武装となっており、背中に背負われていたコンテナが左右に展開してコートのようになる。しかし、そのコートの中は全て小型ミサイルのランチャーとなっており、コートに穴が次々と開かれ、ミサイルが次々と放たれていく。コクマーの全身に着弾し、更なる爆発が傷跡を広げるように装甲を引き剥がしていく。
「リーダー!あそこ!!」
「あそこか!!」
完全にコクマーが消沈し、溶岩の中に沈もうとする。だがその前にアスナが示した部分に向かってネルがブレードを交差させるように斬りつけると、情報コアが中から露わになる。その周囲のコードを素早く切り裂いて情報コアを素早く取り出したネルは、ケースを取り出して手を振っているアカネに投げ渡す。
「確保しました!」
「よし、さっさとずらかるぞ!」
「っ……地面の揺れも酷くなってる。もうじき崩れてもおかしくない……!」
「っていうかもうそろそろまずいかも」
「はぁ!?さっさと行くぞ!!」
再びバイクに瞬間変形したアビ・エシュフXに乗り、急いで火山から脱出する。直後、火山の内部で何かが崩れ落ちる大きな音が鳴り響いたかと思うと、火山が噴火、溶岩が一気に外に流れ出していく。
「うわ、噴火だー!」
「なんかでかいものが吹き飛んで……まさか、コクマーの残骸か?」
「溶岩の中に沈んだ後、火山口まで移動させられちゃったんですね……」
「それよりも……もうここあたしらのエリアなんだろ!?噴火をどうにかできないのか!?」
『……噴火は短時間で収まります。インベイドピラーのバリアで溶岩を防ぐようにするので、その内側に避難して輸送船を待ってください。今、反対側のゲブラのエリアにモルフォ達を降ろし終えたタイミングですので』
溶岩から逃れるように四人は埋められたインベイドピラーの下へと移動を開始する。インベイドピラーの周囲もバリアで守られており、ちゃんと溶岩の侵入を防いでいることを、その中に移動した四人は確認し、火山が収まるのを待ちながら、この戦いで使用したマシンを見るのだった。