転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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飛鳥馬トキとポケットモンスタールビー

 

「……創作は、人の心を揺り動かすものだ」

「そうですね」

「……だが、君の場合は殊更に、その色が強く出てくるような気がする」

「……というと?」

 

夢の中。起床時間を終えてセイアと再会したモルフォに彼女はそう語り始めた。創作が人の心を動かす。それはそうだ。ゲームやアニメを前にすれば感動するシーンでウルっと来ることだってあるし、熱い決戦でテンションを上げるのは当然のことだ。だが、セイアが言おうとしているのはそういうことではないのだろう。

 

「君自身は楽しんでほしい。満足してほしい。そういった感情なのだろう、そしてそれは素晴らしいことだと思うし、私はそれでいいと思っている。だが……そうだな。端的に言えば、君の見せる景色は、より強く刻まれると言うべきか。尤も、このキヴォトスに住まう者達からすれば未知だから、というのもあるがね」

 

セイアの指摘に成程、と納得する。この世界にないゲームは確かに人々をワクワクさせるのだろう。既存のゲームとは違い、モルフォが教えない限り事前情報抜きでやることになるので、心構えができるわけではない。そういったところに思い切り殴りつけてくるというわけだ。

 

「ただ、もしかしたら……君の能力の変化や成長、という側面もあるかもしれないね」

「成程……」

「といっても、私も君の能力の全容を知ってる人間じゃない。これもまた、話半分で聞いておけばいいさ」

 

気になる様子を見せるモルフォに、そうセイアは言って話を締めくくる。

 

「そういえば、私とセイアさんの夢が繋がっていることでの両者への影響ですが……」

「私も考えているがそこについては確実なことは言えないんだ。すまないね……とりあえず君も体には気を付けてくれ」

 

そして、リオが聞きたいと思っていたことについても答える。ここまで彼女なりに考えて出したのだろうが、これについてはセイアもわからないことが多く、いまいち要領を得ないものとなっていたが。

 

 

 

 

 

 

 

 

『……ということなんですが、どう思いますか?』

(ちょっと待ってちょうだい)

 

モモトークに表示されたモルフォからのメッセージにリオが頭を抱える。セイアから自分の能力に対する新たな知見を得たと聞いた時は表情が強張ったのだが、その内容を読んで、顔を顰めていた。モルフォの生み出すものが相手の精神に予想以上に作用する可能性がある。そう言われると警戒度が上がるようで、続けて投稿された、誰も知らないゲームをやらされればそうもなろう、という旨のモルフォの意見も理解が及ぶ。どう判断するべきか、悩んでいると。

 

「……リオ様。何かお悩みでしょうか」

「……トキ」

 

リオに声をかけるメイド服の少女の姿があった。その制服は。C&Cと同じもの。それを纏ったプラチナブロンドヘアに青い目をした少女が、リオの表情の変化を心配した様子を見せる。

 

「……少し、気になるものが出てきただけよ」

「……夢見モルフォ、ですか」

「ええ……彼女の能力の検証を行う必要があるのだけど……」

「であれば、私にお任せください」

 

もし、セイアが指摘したような効果があるのであれば、それは洗脳に似た効果ももたらしかねない。その検証を自分がやるのはリスクがある。かといってこの事実を把握しているのは今のところ、トキを含めれば四人だけ。本人であるモルフォは当然、夢の住人であるセイアは不適切。しかしリオ自身がそれを行うのは当然リスクも高く、他に人を巻き込むわけにもいかない。となれば、これを任せられるのはトキだけしかいない。そう判断したリオは頷くと、

 

「あなたに次の任務を与えるわ。あまり他の人にあなたの存在を知られるわけにはいかないのだけれど……致し方ないわ」

 

そう、トキに告げるのだった。

 

(……それに、明かせぬ秘密を持つ彼女なら……何かがあっても、それを共有するトキを……)

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここは」

 

翌日。リオから今のモルフォの能力についての検証をしたい、ということで待ち合わせ場所に向かう。そこには、一人の少女が待っていた。その少女は外套を被り、姿が見えないようにしていたが、モルフォの姿を確認すると、

 

「あなたがモルフォですね。こちらへ」

 

そう言い、彼女を引き連れてある場所へと向かう。そこの一室へと入ると、ある程度整った生活空間が目に入る。

 

「ここは……」

『あなたの能力を検証するためにその場所を利用することにしたわ』

 

ふと、リオの声が聞こえてくる。どうやらリオは別の場所にいるようだが、彼女も忙しいのだろうと納得する。モルフォが納得している横で、リオの声を合図としたように、少女が外套を脱ぎ捨てる。その下から、メイド服のトキが姿を見せる。

 

「メイド服……?C&C?」

『ええ。だけど彼女の正体については他言無用でお願いするわ。この事はネル達も知らないのだから』

「飛鳥馬トキと申します。本日はよろしくお願いいたします」

「えっと、夢見モルフォです、今日はよろしくお願いします」

 

メイドとして可憐な所作を見せながら改めて挨拶するトキ。彼女と自己紹介を交わすのだが、何故彼女の存在は同じ組織であるC&Cにも秘密にされているのだろうか。そこまで考えたところで、おそらくリオにも色々考えがあるのだろうと悟り、一旦考えることを中断する。どのみち、迂闊に他人にばらせない秘密を持っているのは自分も同じなのだから。

 

「それでは……早速本題へ入りましょう。モルフォ、あなたの能力の検証を行うため、あなたの用意してきたゲームをプレイします」

「は、はぁ……でもそこまで固くならなくても大丈夫だとは思うんですけど……」

 

自己紹介もそこそこに、早速トキは目当てのものをモルフォに要求する。それを受け、モルフォが取り出したのは、

 

「……それは?」

「―――ポケットモンスタールビーです」

 

前世でも特に遊んでいたゲームの一つ。ポケットモンスターシリーズだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ポケットモンスタールビー。ゲームボーイアドバンスで発売されたポケットモンスターシリーズの一つであり、所謂第三世代と呼ばれるゲームである。ホウエン地方に引っ越してきた主人公はポケモンと出会い、一緒に旅をする中で各地に存在する八人のジムリーダーを倒し、その証であるバッジを入手することでポケモンリーグを目指すことになる。その途中、悪の組織であるマグマ団の騒動に巻き込まれ、そのマグマ団と敵対するアクア団と協力しながらマグマ団の野望を止めることになる、というゲームである。ちなみにルビーには対となるサファイアというバージョンが存在しており、そちらではマグマ団とアクア団の役割がそっくり入れ替わっている、という内容になっている。

 

「……これは、主人公がそのまま戦うのではないのですか?」

「うん、戦うのはポケモンだからね」

 

ふと、モルフォが学年を確認したところ、トキも一年だと判明したため、敬語を崩して話すようにしていた。引っ越し用のトラックから降りてきた主人公を操作するトキがイベントを進めていくと、ポケモンに襲われる博士を助けるために初めてのポケモンを入手するというイベントが入ってくる。

 

「……」

 

アチャモ、キモリ、ミズゴロウ。三匹のポケモンを見比べていたがトキはミズゴロウを選択する。

 

「案外迷わなかったけど、気に入ったの?」

「赤を選ぶのは何となく気に食わなかったので。残りなら……キモリよりはミズゴロウだっただけです」

(悲しいなぁ)

 

前世では本編で選ぶ御三家はくさポケモン派だったモルフォとしては悲しみを感じる。なんでやキモリ格好いいやろ!と思いつつも、アニメ補正が大きかったのでは?と言われるとそれも否定はできない。その後はストーリーを進めつつポケモンを捕まえたり育てたりしながら進めていく。

 

「……タイプの相性というものがあるんですね」

「あ、タイプ相性は……」

 

ポケモンではタイプ相性というものがあり、攻撃するわざのタイプと受けるポケモンのタイプによってダメージが倍になるか、半分になる。ポケモンの中には二つタイプを持っているポケモンもおり、そういったポケモンはわざによっては四倍のダメージを受けたり、四分の一のダメージになったり、また二つのタイプが互いの相性を補うことで本来弱点であるタイプのわざを等倍にしたりもできる。

 

「……成程。奥深さを感じます」

 

モルフォからポケモンのタイプ相性をレクチャーされ、理解して頷くトキ。無言のまま、プレイを進めるトキの姿を見つめていたモルフォだったが、捕まえたポケモンが増えてくると、トキの手持ちも徐々に揃っていく。タイプや見た目など、様々な要素を見つつ手持ちを周りが見えなくなっていそうなほどに集中して整えていく彼女の姿を見ると、モルフォも思わずにやけてしまう。

 

「……???あの、このジュプトルとかいうポケモン……わざの威力がおかしいのでは……?」

「……あー、そこは……」

 

そんなこんなで話を進めていたトキは、ライバルのハルカが使うジュプトルというくさタイプのポケモンにパーティを壊滅させられていた。ポケモンシリーズでは定期的にライバルとのポケモンバトルが発生する。その際、相手は主人公が選ばなかった最初の三匹のポケモンの内一匹を手持ちに入れてくるのだが、ルビーではライバルが選ぶポケモンはこちらが選んだポケモンと相性の良いポケモンを選んでくるのだ。

 

それだけならまだしも、トキが最初に選んだミズゴロウは既に進化してヌマクローになっている。だがそのタイプが問題だった。ヌマクローのタイプはみずとじめんの複合タイプ。そしてこの二つのタイプはどちらもくさタイプのわざが弱点になってしまっているのだ。つまり、ライバルが選んだ最初の一匹が進化したポケモンであるジュプトルとの相性は最悪。四倍弱点とタイプ一致によるわざの強化補正によって実に六倍の威力になった攻撃が襲い掛かるのだ。それに耐えようと思えばヌマクローのレベルを適正のものより引き上げる必要があるだろう。

 

「一匹のポケモンに経験値を集中させるとこんな感じになるんだよね……特にこのジュプトルの殺意はね……中々」

「……では、むしタイプとひこうタイプを持っているアゲハントの育成に入りましょう。こちらのお金を搾り取ってきたことを後悔させてやります」

「砂浜でサイコソーダを買ってもいいかもね。あれ値段安い上に何故かいいきずぐすりより回復量多いし」

「成程。いい話を聞けました」

 

モルフォのアドバイスを受け、今度こそライバルに勝つために手持ちポケモンの調整と物資の補充を行っていく。そして再戦が行われると、ジュプトルを倒すための新たな刺客として投入されたアゲハントが無事、その役目を完遂したことで敗北を喫したライバル戦を勝利する。

 

「完全勝利です」

「おめでとう、トキ」

 

ドヤ顔をしながらトキがモルフォの方を見る。ここまで順調だった中でいきなりの敗北を喫したのはかなりの衝撃だったのだろう。しかし、その相手を乗り越えたという事実に大きな達成感を感じているようだ。

 

「このゲーム、確かに手持ちのポケモンは六匹まで持つことができますが……成程。ちゃんと複数体持つ意味はあるのですね。てっきりダブルバトルとひでんわざを使う必要があるから連れ歩く必要があるのかと」

(ひでんわざ要員については否定しにくい!)

 

最初に手に入るポケモンに経験値が集中するプレイスタイルも、確かに十分ありではある。だが手持ちを整え、複数のポケモン達を使って進行していくというスタイルにも十分面白さがあるものだ。ここで気付きを得たトキはこれまで経験値を集中させることが多かったヌマクロー以外の手持ちにも経験値を分配しながらゲームを進めていく。

 

ジムバッジを集め、マグマ団やアクア団とのイベントに遭遇しながらも物語を進めていく。トキの手持ちには進化したポケモンたちが集まり始め、最終進化体のラグラージやひでんわざ要員と化したマッスグマを筆頭とした強力なポケモンたちが集まっていく。そして遂に悪の組織マグマ団を壊滅させることに成功するが、伝説のポケモン、グラードンが眠りから目を覚ましてしまう。グラードンを目覚めさせてしまったマグマ団ボスは、災厄を目覚めさせてしまったことをここで初めて後悔するのだが、既に目を覚ましてしまったグラードンがもたらした異常な日照りは止まらない。

 

「……ふむ……このままでは大変なことになってしまいますね。迂闊にこういうのを目覚めさせてしまうから……まあ仕方ありません。さっさと倒してしまいましょう。ゲームならできるでしょう」

「捕まえなくていいの?倒したら消えちゃうけど」

「……可能なんですか?」

「当然ポケモンなんだからできるよ。世界をどうこうするやばいやつだってポケモンなんだから止めようはいくらでもあるし、何ならどこにでもいる普通のポケモンと同じくボールで捕まえられちゃう。まあ伝説のポケモンだから格は違うんだけどね」

 

このままでは海が干上がってしまい、ホウエン地方は水のない枯れ果てた土地になってしまう。そこまで時間が残されていないという危機的な状況。グラードンを止めるべく、主人公はグラードンが待つめざめのほこらへと向かう。そこでグラードンを止めるべく戦うのだが、モルフォの言葉通りならば、このグラードンをゲットしてしまえばむしろこちらは大きな戦力を手に入れることになる。これは逃すわけにはいかないと、ボールを見ていると。

 

「……ふむ」

 

少し前に入手した、全てのポケモンを必ず手に入れることが可能となるマスターボールが目に入る。伝説のポケモンと言うのならばここが使いどころだろうと、トキは躊躇なく最強のボールを投げ、グラードンをゲットする。

 

「伝説のポケモンを入手しました。これで世界は救われ、私が最強です」

「グラードンのひでりは次のジムがみずジムだから結構役に立つんだよねぇ……問題はラグラージのなみのりも半減されるってところか……」

「どのみちみずタイプのジムで使うわざじゃないので心配はありませんね」

 

グラードンがゲットされたことで元に戻るホウエン地方。最後のジムリーダーを撃破し、遂に八個のバッジを揃えたことでポケモンリーグへと挑戦する。長いチャンピオンロードを乗り越え、遂に始まる四天王との戦い。グラードンが加入し、完璧なものとなった手持ちのポケモン達で四天王を倒し、ラスボスとなるホウエン地方のチャンピオンとのバトルにも勝利。遂に殿堂入りという名のエンディングへとたどり着くのだった。

 

「……ふぅ」

 

最初からエンディングまで一気に進めたのもあってか、多少疲れがあるようで溜息を吐く。しかし、その満足感はかなりのものだったようで、名残惜しさを感じるような、そんな寂しそうな表情が浮かんでいた。

 

「どうだった?面白かった?」

「ええ、とても。これで終わりなのが残念です」

 

後発のポケモンシリーズと比べると、まだまだあっさりめなシナリオだが、むしろあっさりとしたシナリオだからこそ、ポケモンという作品を心行くまで楽しめたのかもしれない。見たところ、トキは元々あまりゲームにも触れていないようにも見受けられる。ポケモンと似たゲームもやって来なかったのだろう。完全にハマってしまっているようだ。

 

「……これが任務でなければ、もう少しやっていたいと、思ってしまうほどに」

「ならやればいいのでは?」

「え?」

「一応私の能力の検証でやってもらってるだけだし、問題ないならやり続けていても問題ないと思うけど」

「……しかし、それは……」

『……構わないわ』

 

トキが申し訳なさそうにモルフォを見ていると、リオの声が聞こえてくる。その声にトキが驚いたように顔を上げる。おそらく、その視線の先にスピーカーがあるのだろう。

 

「良いのですか?」

『……今のところは問題ないと判断できたけど、経過観察が必要な面もある。任務としては完了だけど、その後は定期的に様子を確認させてもらうわ』

「……わ、わかりました」

「よかったじゃん、トキ」

 

まさかこんなことを言われると思わなかったのだろう。リオの音声が途切れると、モルフォが楽しそうに声をかける。

 

「……まさか、あのようなことを言われるとは思いませんでした」

「リオ会長の優しさじゃない?」

「優しさ……」

「うん、私はああいう人も結構好きだよ。助けてもらったし」

 

リオの言動などは確かに好き嫌いが分かれる人が多いのもわかる。勘違いされることが多いのも理解できる。しかし、モルフォからすれば思惑はあれど問題行動を起こした自分達を助けるためにあそこまで手を打ってくれた恩人である。それに、

 

(まあ……言葉なんていくらでも取り繕ったりとかもできるだろうしなぁ)

 

そこまで長生きした人間というわけではないが、現実、創作に限らずいろんなキャラクターや人間を見ていれば言葉と行動で多少なりとも思うところが出てくるものである。それとして前世の価値観を引きずって上があれでも現場レベルならまともだろうと決めつけるのはよくない、という教訓はちゃんと覚える必要があるが。

 

「だからさ、素直に喜んでいいんじゃないかな?まあ、他の人に姿を見せられないみたいだから、ちょっと難しいかもしれないけど、機会があったら他のゲームもやってみない?」

「……そうですね。その機会があったら是非」

 

モルフォからかけられた言葉に、トキは嬉しそうに笑みを浮かべるのだった。

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