転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
『ゲブラの領域に到着を確認。メカワニを投下します』
コクマーの領域を発った輸送船がゲブラの領域に到着し、コンテナを投下する。それが水面に叩きつけられると、そこから巨大な機械のワニが出現する。外殻は強固な金属でできており、特に水中での高機動に長けた姿となっている。これこそが、エンジニア部が用意した対ゲブラ用の秘策。かつて海洋生物研究部の依頼を受けてエンジニア部が制作していた華道兼海洋レジャー用ロボットであり、ある事故によってミレニアムを脱出、とあるウォーターパークに現れてひと騒動を起こしたり、ミレニアムEXPOで暴走してネルとミカに叩き潰されるなど、割と散々な目に遭っている。
「……でもこの状況でメカワニってなるとなんか可愛いね」
「では、改名でもしますか?モルフォ、何かいい案は」
『……メタル・ウェポン・スピード・クロコダイルは?』
『えっ』
かつてメカワニを目撃したカンナやラブはメタル・ウェポン・スピード・クロコダイルと呼んでいた。もう一人のモルフォもそう呼ぶあたり、そういうセンスを持つ人はある程度いるのかもしれない。
「……長いよ……」
「普通にガブリゲーターとかクロコダインとかそんな感じのネーミングでいいと思うんだ」
『……変に名前が色々増えるぐらいならウタハ達を尊重してメカワニのままでいいと思いますよ』
水上に落下したメカワニの上にエイミとモルフォが着地する。トキもフロート装備を使って水上にうまく着地し、メカワニと共にゲブラの下へと向かう。
「それにしても懐かしい場所ですね。本物の預言者と初めて戦ったのはゲブラが最初でしたから」
「……懐かしいっていっても一週間ぐらい前の話なんだけどね」
「あー、そうなるのか。あの時戦ったケセドは本物じゃなかったわけだし……そうなると初めての預言者がティファレトになるのか私……初戦でいきなり催眠ハメしてくるボスとかクソみたいな難易度してるわ」
『途中参加した味方キャラがいきなりクソボスにぶち込まれるような状態ですね』
エイミは特異現象捜査部のメンバーとして多くの預言者と戦っているが、トキやモルフォが本物の預言者と交戦したのはこちらに来てからだ。特にトキからしてみればゲブラが初めての相手となるわけだから少し感慨深いものがあるらしい。
「ゲブラの元は極地研究基地に置いてあった無人探査機……らしいよ。例によってAIがデカグラマトンにハッキングされちゃってこうなった」
『あちら側の表現で言うならば感化、と言ったところですが』
「……しかし、コクマーの時にも思いましたが、元になる機械を考えると何故こんな変形をしたのか、というものも多いですね」
資料として見せてもらったゲブラは二脚の大きなロボットだった。だが、それだけではゲブラ自身を支えきれないのか、両腕が更なる二本の脚となって地面についており、上半身にはキャノン砲やミサイルランチャー、機銃と重武装が装備されていた。
「……無人探査機とは……恰好いいけどさ……」
『恰好いいよね……』
『先生、そこって同感するところじゃないと思いますけど……?』
『話はそこまでにして。ゲブラがこっちに近づいてきているわ』
「わかりました。ゲブラー、迎撃します!」
戦闘態勢に入ったかのようにモルフォのフライトユニットに接続された千年の守護者の目が一瞬光ったかと思うと、翼が開かれ、赤紫色のプラズマの光が迸る。シールドを左のアームに取り付け、右手にショットガンハンマーXを握り、モルフォが構えを見せると同時、海中から水しぶきを上げながらゲブラが出現する。
「この!」
ゲブラが浮上すると同時に手持ちの武装を全弾発射してくる。モルフォがメカワニ達の前に立ちはだかるように移動し、シールドを構えてキャノン砲を受け止める。その衝撃で後ろに押し出されそうになるも、モルフォの動きを予測しながら千年の守護者がフライトユニットを完璧に制御して空中での姿勢を維持する。
『エイミ!潜水してください!』
エイミはマスクを着け、メカワニを左手で掴みながら共に潜水し、モルフォが防ぎきれない攻撃を回避していく。メカワニ内に搭載された酸素ボンベから酸素を供給してもらって呼吸をしながら、メカワニの中に収納されていた水中用のアサルトライフルを取り出す。水中では地上のようにエネルギー弾を撃つ銃は使えない。そのため、水中用の弾丸を使う必要があるため、水中ではこの銃しか使用することができない。とはいえ、さすがにこれでダメージを与えられるとは思えず、これはほぼ持っているような状態だ。
(……さすがに心もとないな……やっぱり地上に誘導しないと……)
さらにゲブラも水中へと潜り、その巨体を利用してエイミ達に体当たりを仕掛けてくる。それをメカワニはどうにか寸でのところで回避し続けていく。すれ違いざまに弾を撃ちこんでみるものの、やはりかすり傷にしかならない。
『メカワニのOSも千年の守護者を移植したことで一気に戦闘用にアップデートされているから、なんとか反応できたね……』
『ですが、水中戦は圧倒的に不利ですね……地上から捉えられませんか!?』
「やっています!」
トキがゲブラを狙い、実弾を水中へ向かって撃ち込んでいく。しかしゲブラはそれを軽々と避けていき、まるでダメージが入らない。
「ダメですね……以前はまだ陸地があったので私達を仕留めるためにゲブラの方から陸地に上がってくれたのですが、これでは……」
「ゲブラーも水中にいる間は武装をほとんど使えないみたいだけど……先にエイミの酸素の方が尽きる……どうにかゲブラーを地上に追い出せれば……」
「釣りでもしますか?」
「……釣竿……になりそうなものはあるけど、餌がね……ゲブラーが食いつきそうな餌なんて」
『……私……』
「「え?」」
お前は何を言っているんだと言わんばかりの視線を悩むトキとモルフォが向ける。しかしもう一人のモルフォはかなり大真面目に自分が何をしようとしているのかを話し始める。最初はどうやってゲブラを釣る気なのかと困惑していた二人だったが、案外荒唐無稽でもなさそうなことに気付くと、早速エイミにモルフォは連絡を入れる。
(……なんだって?)
さすがにこれにはエイミも困惑した様子だが、話を聞くうちに納得したようだ。ブリッジの方からもサポートをするということで、エイミもまずはゲブラを最低でも海上に出さないと戦いにならないと考えて、ゲブラを避けながら移動していく。
(……確か、ここら辺のはずだけど……)
モルフォが空から見ていたことで明らかになった、指示された場所へと向かう。エイミが水面の方を見上げると、そこには大きな流氷が見えた。と、そこに何かが落下し、水中の中に人が落ちてくる。それは、モルフォだった。エイミはメカワニを軽く叩いて簡潔に指示を出すと、その場で宙返りするようにしてゲブラの突進を回避する。
「!!」
ゲブラはエイミ達……ではなく、目の前に落下してきたモルフォの方を見る。そして、エイミ達よりも機動力の低いモルフォを狙い、一気に突進してくる。だがモルフォにゲブラが命中する寸前、
「今だよ!!」
水中なのにはっきり聞こえる声でモルフォが喋ったかと思うと、その体が一気に水面の方に浮上していく。突然水面へと移動し始めたモルフォへ向かってゲブラが突進し始めるが、それこそが四人の狙い。
『今がチャンスだ!メカワニで攻撃を!』
「よし、魚雷発射!」
先生が指示を出す。それを受け、エイミがメカワニに魚雷を連続で発射させる。それは、ゲブラの背面に見える無防備な水中用のスクリューやスラスターへと次々命中し、爆発を引き起こすと同時にゲブラを水面へと打ち上げる。
「よし!!」
水上へと打ち上げられたゲブラは背面から黒煙を上げながら巨大な流氷に乗りあげる。ゲブラが視線を向けると、そこにはモルフォがいたが、一瞬その体が電子的に歪んだかと思うと、もう一人のモルフォの姿へと変化する。そして、その本体に巻き付いていたアンカーがトキの回転するガトリング砲の砲身を経由してモルフォのアンカーガンのリールに巻き取られる。
「釣りは成功したようですね」
「うん」
ブリッジの方から安堵した声が次々漏れる中、モルフォとトキは互いに顔を一瞬見合わせて笑う。この水中にもう一人のモルフォを落とし、ホログラムを弄って変装する。それにより、ゲブラからエイミより仕留めやすい相手だと誤認させてそちらに攻撃を誘導、そこをモルフォが絡ませたアンカーをトキが砲身を回転させて勢いよく巻き取って緊急脱出を行いつつ、ゲブラを可能な限り水面へと誘導。ここでメカワニに新たに装備されていた魚雷を発射してゲブラの水中戦に必要な機能を破壊し、流氷の上に押し上げる。その作戦が見事にハマったようだ。
「エイミ、体温は!」
「あ、全然平気。そっちは?」
「問題なし!」
「こちらも同様です。防寒性能はバッチリですので……やはり地上の方が安定して動けますね」
流氷の上に移動するメカワニと二人。メカワニの背中に取り付いていたType.Sが分離し、エイミがそれに足を乗せながらアサルトライフルを手放し、スナイパーライフルに持ち替える。
「さて、と。ここからが第二ラウンドだ!」
「いきます!」
トキが早速と言わんばかりにガトリングをゲブラに叩き込んでいく。しかしゲブラはバリア発生装置を使用し、それを受け止めてしまう。どうやらこのバリアシステムも水中では使えないという欠点を抱えていたようだ。
「む……受け止められてしまいましたか……」
「なら……バリアを貫通できる?」
『一点狙いでいくよ!』
もう一人のモルフォが三連続でエネルギー弾を放ち、一点集中でバリアを抜こうとする。だが、その攻撃でもバリアは破れず、弾かれてしまう。
『マノ……ええ!?』
「……前回よりバリアの強度高くない?」
『ですが、バリア発生装置にどうやら負荷がかかっているようですね。バリアへの攻撃は無駄ではなさそうです』
「では、一気に破るとしましょうか」
トキが実弾より火力のある背中のレーザー砲を使用してバリアを破ろうとする。しかしゲブラもただでやられるわけもなく、ミサイルランチャーから次々とミサイルを発射してくる。
「まずい!」
モルフォがシールドを構えて受け止めるも、止められるのは正面のものだけ。脇を通過してミサイルがエイミやトキへと迫ろうとしたのを見て、
「だったらこれでどうだ!」
モルフォはその場で左右に回転し、光の翼のプラズマとミサイルを直撃させて誘爆させ、撃墜させる。
「光の翼はこう使う!!」
『モルフォ……それそういう攻撃する装備じゃないんですが』
「なんだっていい!攻撃できるチャンス!!」
ミサイルをモルフォが相殺したことで逃げる必要がなくなったエイミはそのまま狙いを定めて最大チャージのエネルギー弾を放ち、ゲブラのバリアを撃ち抜く。それと同時にゲブラのバリア発生装置が爆発してバリアが消え、貫通した一撃がゲブラに命中、ゲブラの装甲が大爆発を引き起こす。
「よし……バリアを無力化した!」
「次は……」
「来る!後ろに!!」
まずは武装を一つ破壊したところで、ゲブラもこれ以上はやらせまいとキャノン砲から強烈な一撃を放つ。それをフライトユニットのアームで取り付けたシールドで受け止めつつ、二本のブーメランを取り出すと、それをゲブラのキャノン砲に向かって左右から投げつける。振動する刃がゲブラに迫るも、ゲブラはそれを下がって回避し、
『今だ!トキ!』
「武器を!」
「キャノン砲を破壊します!」
ゲブラの武装に向かってガトリング砲を叩き込む。だがゲブラはその攻撃を体を右に逸らすことで避けようとするが、その横からメカワニが体当たりを叩き込み、ゲブラを吹き飛ばしてしまう。ゲブラは水中では高速で移動できる反面、陸上ではバランスに難があるのか四本の脚で身体を支えている。そのバランス感覚の悪さを利用してメカワニがゲブラを押し倒すと、
「今がチャンスだ!」
「オッケー!」
エイミがキャノン砲を破壊する。ゲブラは武装が一つ一つ破壊されていくことに焦ったのか上に圧し掛かっているメカワニを体を回転させて投げ飛ばすと、装填され直したミサイルをメカワニへと放つ。
「まずい!水中に潜って!」
エイミの指示を聞いてメカワニが急いで水中の中に入る。ミサイルは水中の中へと入っていくと、ある程度潜ったところで爆発する。おそらくメカワニは無事だろう。
「ミサイルランチャーだ!!」
『今度こそ!!』
だが、メカワニにゲブラの意識が向けられてた瞬間を利用し、今度はもう一人のモルフォがゲブラのミサイルランチャーを撃ち抜き破壊、さらにトキも合わせるように一斉射撃を行い、武装を次々と破壊していく。
『いいペースだね』
『ええ、これで残っている武装は……あの機銃だけかしら?』
ゲブラが次に体を起こした時には残る武器は僅か、機銃だけになってしまっていた。ゲブラは機銃を乱射してくるが、それだけでは誰一人捉えることができない。
『ゲブラの足元を破壊してバランスを崩して!』
「はい!トキ、前脚を!」
「いきます!」
トキがレーザーを二本同時に発射し、ゲブラの足元を抉るように破壊する。それによってゲブラは自重を支えられず前のめりに倒れそうになる。
「トキ!私!残る足を!」
「いい加減倒れてよね!」
『これでどう!?』
ゲブラがなんとかバランスを保とうと残る二本の脚を使って踏ん張ろうとする。だが、エイミともう一人のモルフォがその脚を撃ったことで脚が後ろへ振り上げられる形で押し出され、ゲブラの巨体が前へと倒れ込む。
『モルフォ!コアの位置を!』
「はい!」
光の翼を広げ、ゲブラへと空から迫る。そしてハンマーを叩き込むと、振動がゲブラの全身に伝わり、コアの位置が判明する。
『情報コアの位置、確認しました!』
『モルフォ、位置情報を転送します!
『フライトユニットのコア摘出機能を!』
「フライトユニット、モードチェンジ!」
事前に言われたコードを入力する。シールドが左のアームから外れ、左右のアームがモルフォの両腕に取り付けられる形で一体化される。そして開かれた左右のアームの掌底には発射口のようなものが取り付いており、そこからエネルギーが迸り、両手を覆っていく。
「これは……」
「これがモルフォの……!」
そしてモルフォは判明したコアの位置に向かって勢いよく突進、したかと思うとそのまま左右に交差させるように手刀でゲブラの装甲を切り裂く。そのまま両手を貫手の形でゲブラの装甲の中に突き刺すと、右のアームで情報コアを掴み、左のアームの掌底から内部にプラズマを一気に放出。それと同時に情報コアを引き抜くとゲブラを蹴って空中へと飛び上がる。
『……なんか思ってたのと違いますね……』
『ど、どういうのを期待していたの……?』
「しかしねぇ……ウィングを見てもこの形はどう見ても運命なのだから……」
情報コアを確保し、ケースに収めるモルフォ。その様子を確認しながら、どうもヘル・アンド・ヘブンのようなモーションを期待していたらしいケイはちょっとだけ落胆の言葉を漏らす。モルフォにからすればこの形状でこの武装とくればこうもなろう、としか言いようがないのだが。
「……あっ」
情報コアを抜かれたゲブラの巨体がそのまま海中へと落下し、沈んでいく。その様子を見ていた四人だったが、ここで流氷に次々とヒビが入り、砕けていく。
「た、退避!」
慌ててモルフォがエイミを抱きかかえて空へ飛ぶ。トキも水上に移動すると、完全に流氷が砕け散り、燃えるゲブラの残骸が海水に沈んでいく。
「……ゲブラ、強敵でしたね」
『……いや結構圧倒してなかった?』
「そんなこともない、一瞬のミスが命取りだったよ。それに、預言者って文字通り体がでかいから普通に攻撃が当たると痛いんだよ……こんな状況だから下手に怪我なんてすればその後の戦闘に参加できなくなるし」
「というかゲブラーとの戦いで怪我したり落水したりすればすぐに凍死が見えてくるから、常に即死の危険性があったんだよね……イェソドもそうだけど、ノーダメか即死かの凄く大味なバランスになってる気がする……」
「私だって水に落ちるだけなら平気だけど怪我したり装備壊されたりして泳げなくなったらそのまま溺死するからね」
結果だけ見れば預言者の攻撃に的確に対処し、有利に戦いを進めノーダメで終わらせたといえるだろう。が、実際は薄氷の勝利をミレニアムは続けているのが実態だ。最初に戦った四体の預言者はその後の強力な預言者との戦いを見据え、できるだけ損傷なく。そして続くコクマーとゲブラに至っては下手に攻撃を受けたり、地形の脅威にハマると死が見えてくるという、常に死の危険が隣り合うという状態になっている。
『でも皆が怪我しないことが一番大事だよ』
『ええ、まだ戦いは続くのだから』
『ひとまず、皆さんはメカワニに乗って待機してください。C&Cを回収した輸送船をそのまま向かわせますので』
ノアの声に反応するように水中から無事にミサイルを避けきったメカワニが浮上する。その背中に四人は降り立つと、ここでエイミがやっと、気にはなっていたけど通じはするしわざわざ突っ込むまでもないなと思っていたことがやっぱり気になって口を開くのだった。
「そういえばモルフォ、ゲブラのこと、ゲブラーって呼んでるけど別に伸ばす必要ないよ」
「そうなの!?いや、なんか皆発音がちょっと違うなって思ってはいたけど特に指摘はなかったからこれでもいいのかと……」