転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
「や、やっとたどり着きました……」
ティファレトが潜む種子貯蔵庫に似た空間。そこは白い霧のような空間で満たされており、以前種子貯蔵庫で繰り出されたものよりもさらに濃度の濃いガスが充満されている。さらに通路自体も複雑になっており、以前探索した種子貯蔵庫とは比べ物にならない程の探索時間を取られていたのだ。
「これなら、ドリルを装備してきて無理矢理壁を破壊した方が楽だったかもしれないね……」
「装備選択ミスったかも……」
途中までは元気に歩いていたモモイ達だったが、途中からそうも言ってられなくなったのかアバンギャルド君mkXのコンテナや肩に三人とも乗って楽にしながら移動していた。
『……えー、モルフォ達を回収しました』
「もう私達が最後じゃん!?」
「あれー?」
『まあまあ……敵の方もそれだけ焦っているということです。迷路なんて古典的な手でこちらを惑わせようなどと……』
『それに、マッピング自体はソナーでとっくに終わっていますし、後は一直線じゃないですか』
「それはまあ……そうなんですが……」
アバンギャルド君mkXのコクピット内に表示されたモニターの一つにはこの迷宮のマップが表示されている。振動弾を用いたソナーで迷路の地図をすぐに作り、迷うことはなかったのだが、それでも曲がりくねった道はそのままだ。シンプルに踏破に時間がかかる。とはいえそれは外郭だけであり、内部の方は種子貯蔵庫を忠実に再現したようなマップになっていたが。
「けど、種子貯蔵庫と比べると綺麗な場所だね?植物も何もないし」
『まあ、再現ですからね……迷路にしたことといい、何故こんな無駄なことを……』
『……無駄とか言わないでくれる?ティファレトにとっては、これが全てだったの。この外郭だって、お前達に荒らされないようにと作ったのに……!いい?ティファレトは自分より種を優先するぐらいに大事にしていたんだよ!』
「うわ!?」
「あれは確か……ソフです!こんにちは!昨日ぶりですね!」
もう少しで迷路を抜けそうなところまで移動してきたところで、突然四人の目の前にソフがホログラムとなって現れる。その姿を見たアリスが気さくに挨拶をするのだが、それを聞いたソフが呆れたような表情を見せる。
『……私から言うのもあれだけどさ。何呑気に挨拶してんの?私達、敵同士でしょ?しかも!そっちが鋼鉄大陸を滅茶苦茶にするわ、預言者達をボコボコにするわでこっちはてんわわんやなんだよ!』
「あうぅ……ご、ごめんなさい……」
『何に謝ってるの?どうせやめるつもりなんてないくせに……そんなことより!それは何さ!?なんで戦いに出てくる毎に豪勢になっていくわけ!?』
「補給が太くなっちゃったから……」
「使えるものは何でも使うよね……」
『プライドはないの!?』
「できるはね……正攻法なんだよ」
どうやら向こうはかなり大変なことになっているようだ。とはいえ、やってることがやっていることなので、ついアリスも謝ってしまったがやめる気も毛頭ないわけだが。
『……?いやちょっと待ってください。ティファレトは自分より種を優先していたと言っていましたが……コアを捨ててティファレト自身は鋼鉄大陸に移ったのでは?』
『……ティファレトは死んだよ。あの日、あんた達が殺したんだよ』
「え!?コンテナ・ランチャーで脱出したんじゃ……」
続けてティファレトについて知らされたのは、あの種子貯蔵庫の戦いで事実上死亡したに等しいという情報。コアから中身だけを移動し、このエリアで待ち構えていると思っていただけに四人だけでなく、その通信に割り込んでいたケイも驚きを隠せないでいた。
『あのコンテナに載っていたのは種だけだった。ティファレトは自分を犠牲にしたんだよ、元々種子貯蔵庫のシステムAIだったから……あんた達の表現でいうなら、使命を果たすための自己犠牲ってところかな』
『では、ここにいるのは……』
『こういう言い方はあんまりしたくないけど、コピーされたデータだよ』
『……コピーですか。他の預言者も……』
『まあ、同じような個体もいる……記憶は私達にとって命のようなもの。ティファレトは一部が死んでいるも同然なんだ』
AIをコピーしたということは、預言者のAIは通常のそれとはやはり違うのだろう。普通に考えれば復元しようとすればこの短期間で済ませられるものではない。それに、コピーされたそのAIは、名前こそ同じでもそれはコピーする前と同じかどうかと言われれば、それは解釈が分かれるだろう。
『……そうですか』
『ふん、随分物分かりがいいんだね』
『コピーされたAIは、そのコピー元と同じ経験をするかどうか、同じ経験をしたところでちょっとした要素の違いで解釈や感じ取り方は変わりますから。それを繰り返せば、それらのAIはいずれ、完全な別物になるのかもしれません。ある意味、感化と似たようなプロセスです』
『……そこまで言うのに、コアの情報の吸収なんてやるんだ。それは、捕食した預言者で、命の空白を埋めているようなものなのに……まるで、
自分達は仲間を食われている。情報コアを取り込む、というのは確かにある意味で食事にも近い行動と見方によっては言えるかもしれない。
『人間のように、ですか……オウルにも類似した言葉を言いましたが……仮に食事をしようがしまいが、生きているかどうかについては関係ないと思いますがね』
「……アリスもそう思います」
『なにそれ……私達も人間だとでもいうわけ?あのね、私達は完全なんだよ。己が己として存立していて、誰かに手を借りる必要なんてない……でも人間は違うでしょ?不完全な存在なんだから。王女、あんたの傍にいるその三人、あのバカでかい戦艦に乗ってる人達、ゲブラとコクマーを倒した人間達も。少なくとも私達は、罪を犯すことなく生きていける……人生なんて、それ自体が矛盾と不条理に満ち、結局は理不尽な苦しみを無理矢理耐えさせるものなんだよ。そう、あんた達の名前だって―――』
これが、アイン達、いやデカグラマトンの感覚なのだろう。自分達は人間とは違う、それ故の感性。それはわかっていたことだ。だが、ふと我慢しきれなかったのかモモイの口からぽろっと言葉が零れてしまう。
「……なんか色々言ってるけど鋼鉄昇華なんてやってる時点でもう迷惑かけまくりだよね……」
『は?』
「ダメだよお姉ちゃん……罪を犯さなくても生きていけるっていうけどそもそも自分達が人間達に一方的に不条理と苦しみを与えてる側じゃない?って言うのは……」
「そうそう、無理矢理その中に閉じ込めようとしている側の存在なのにそのことをまるで気付いてないみたいな言い方しちゃうのは……」
『なっ……なっ……』
「そこまで言ってないよね!?」
ミドリとユズが最後まで言わせてあげようよと呆れながらも連続してぽろっと言ってしまった言葉にソフが狼狽え始める。その様子を見ていたアリスは、やがて自分の意見を口にし始める。
「ソフ。もしかしたら、あなたが言おうとしていることは間違ってないかもしれません。ですが―――アリスは、アリスとして生きてきた全ての時間が無意味だとは思いません。そして、名前があることと王女であることは両立します」
『そ、そんなの屁理屈……』
「そうです。これはどう思うかなんです。あるゲームをクソゲーという人が言います。でも、ある人は神ゲーだと評価する人もいます。それと同じで、アリスは皆と一緒に居たいです。ミレニアムの皆……他の学園の人達、そして先生……これまで、アリスが出会ってきた全員と。ですが、ソフのやろうとしている世界になれば、アリスや皆の日常は失われてしまいます」
『それは……まあ、そうだけど……!でも、もっと良い世界が広がるんだよ?そこで
アリスの意見を聞き、最初は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていたソフ。しかし、やがてアリスの発言にどうにか軌道修正できる余地を見つけたのか、なんとか説得しようとする。これでアリスが戦意を喪失してしまえば。あわよくばと思ってのことでもあったのだろうが、既にアリスの意志は固い。
「ごめんなさい、それはアリスにとって、然程重要なことではないんです」
『アリス……』
「それに……確かにアリスは名もなき神々の王女でありますが、同時に勇者でもあります。アリスにとって、皆と過ごす日常の方がよっぽど大事です。皆でゲームをして、いろんな遊びをして、アニメを見たり、時々皆で戦ったり……そっちの方がずっと。先程、ソフはこう言いました。記憶は私達にとって命のようなものだと。だからアリスは……いえ、アリス達は、この記憶を、この経験を経て感じたこと、考えたこと、思ったことを最後まで貫き通します」
『ぐっ……そこまでいうなら好きにすればいいよ!でも、どうせ最後までこれたとしても、お姉様には勝てないんだから!!』
アリスの意志を曲げることができないことを悟ったのか、ソフのホログラムが消えてしまう。ソフが消えたことでやっとアリス達も安堵したように溜息を吐くと、ブリッジの方から通信が入ってくる。
『ふふ、よく言いましたね、アリス』
「皆……」
『先程、アリスが言ったように、決してソフ達が間違っているわけではないのでしょう。デカグラマトンの側から見れば。ですが同時に、こちらもまた間違っているわけではありません』
『感じ方、という意味では誰もが微妙に違いますからね。こうしてこの場に集まってる人たちですら、ただ同じ方向を向いているだけで全く同じ思いで戦っているわけではないでしょうし。丁度、さっさと終わらせて帰って遊びたい、なんて考えていそうな子もいますし』
『え!?や、やだなぁそんなこと思っていませんよ……?』
『コユキ……』
アリスの言葉を賞賛するような声がブリッジから聞こえてくる。そのついでにノアからとばっちりのカミングアウトを喰らったコユキが頬をひくつかせながら誤魔化すような表情を浮かべる中、アリス達は迷路の出口に差し掛かる。
『よし……じゃあ私達の未来の為に、頑張ろう皆!』
「「「「はい!!」」」」
そして、先生の掛け声と共に四人が迷路を抜け、再現された種子貯蔵庫のマップの中を移動していく。ティファレトとは以前交戦してはいるが、今回は迷路に以前より高濃度のガスといい、その脅威はさらに増している。ティファレトのいる部屋の前まで辿り着き、一気に内部に突入する。そこには以前にも見たティファレト本体と、ティファレトが使役する三体の特殊なロボットが既に待機しており、それらのカメラが四人を睨みつけるように視線を動かす。
「うわ……やる気満々……」
「よ……よし!私たちもこれを!」
「武器パーツ、射出!」
三人がアバンギャルド君mkXから降りると、ユズがボタンを押す。直後、アバンギャルド君mkXの背中に背負われていたコンテナの二つが開かれ、そこからモモイとミドリ用の新武装とtype.Sが射出される。それは二人の戦闘服のハードポイントにそれぞれ接続されていく。背中に背負われる大きなバックパックのような形状をしているそれは、それぞれモモイとミドリに合わせて桃色と緑色に塗装されており、モモイの方はパックパックから両肩に装甲が展開されて取り付けられ、アサルトライフルが両肩に一丁ずつ取り付けられている。
ミドリの方はカリンと同様に射撃の反動を相殺し、正確な射撃をサポートするためのスラスターを取り付けたことで一見戦闘機のようにも見えるバックパックとなっており、こちらは大型バッテリーや狙撃用のレールガンが取り付けられているのが見える。とはいえ、エイミやカリンのものとは異なり、チャージ機能こそついてはいるが連射力の方を優先している仕様となっている。
「これが私達の新装備だよ!」
「二人とも格好いいです!」
「なんか……私達もこういうのが使えるところまで来たんだなって思うとちょっと感慨深いよね……」
『感傷に浸るのはいいけど集中して!ほら敵が来てるわよ!?』
ティファレトがモモイ達の姿を見た次の瞬間、次々とレイバーを転送してくる。それを見たモモイが三丁のアサルトライフルを撃ち込んでいく。両肩のアサルトライフルは自動で敵を判別して弾を撃っており、効率よく敵を殲滅していく。ユズも弾をばら撒いてそのペースを加速し、モモイのアサルトライフルのマガジンの電力が尽きかけた時は、
「ミドリ!弾切れそう!」
「わかった!」
ミドリがバックパックに取り付けられていた小型のバッテリーをモモイに投げる。それを受け取ったモモイが肩のアサルトライフルにバッテリーを換装させて弾数を回復させ、再び攻撃のペースを上げていく。そして隙を狙い、アリスがティファレト本体を狙ってレールガンの引き金を引く。
「光よ!!」
エネルギー弾がティファレト本体に命中する直前、ティファレトを守る三機のロボットが光ったかと思うとバリアが展開され、弾を弾いてしまう。
「弾かれた!?」
「アリスちゃん!レイバーが!!」
「っ!」
それに驚いたアリスへレイバーが飛びかかる。ミドリの声にはっと我に返ったアリスはベルトに取り付けたタレットを動かしてレイバーを撃ち抜き破壊する。
「やっぱり、あのロボットを破壊しないと!」
「うん!」
ミドリがレールガンを構え、ロボットへ向かって放つ。その反動で後ずさりそうになるがバックパックのスラスターがそれを抑える。ロボット自体もバリアで守られていたが、ティファレトを守ることを重視していたのかバリア自体の強度も低く、ミドリの一撃でもバリアに大きなひびを入れることができた。
『ユズ!今だよ!』
先生の声と共に、それを待っていたかのようにアバンギャルド君mkXは剣を投げつけてロボットの頭部をバリア毎破壊して突き刺し、まずは一体を破壊する。
「まずは一体!」
「これで転送されてくるレイバーの数も減ってくるよね!」
転送されてきたレイバーへ攻撃を続けながら、少しずつロボット達を守るバリアを破壊しようとする。戦い方は以前と同じだが、ここである異変に気付く。
『……?ティファレトの温度が上昇している?』
『いや、これは……!ティファレトから熱源反応!?皆さん気を付けて!』
なんと、ティファレトの装甲が段々赤くなっていたのだ。モモイ達がそれに気付いた直後、先生も嫌な予感を感じて緊迫した声を上げる。
『皆、逃げて!!』
「皆、乗って!」
直後、ティファレトから巨大なビームが放たれる。ユズが声を上げた時には既にモモイやミドリがアバンギャルド君mkXのコンテナを掴み、アリスもアバンギャルド君mkXの傍に移動してビームから逃れるように移動する。ティファレトは体を回転させ、ビームで薙ぎ払う。おそらくはこれが、ティファレトが持つ最大の武装だったのだろう。
『……一部が死んでいる、ですか』
その様子を見て、ケイは複雑そうな表情を浮かべる。何故ならティファレトと以前戦った時にはこの攻撃はしてこなかったからだ。その理由は、ティファレト自身が戦闘を行う部屋を破壊し始めているところを見れば一目瞭然だろう。
『うわー、凄い威力』
『……確かにここには種も何もないけれど……』
『……これはどう解釈するべきでしょうか?』
種子貯蔵庫で戦った時は、こんな施設を破壊しかねない攻撃をすることはなかった。もしそんな攻撃をしてしまい、自ら種子貯蔵庫を破壊してしまえば種子の保管ができなくなってしまうからだ。ここにはティファレトが守る種はどこにも存在しないし、壊れてもすぐに直すことができるため、このような行動に出ても問題ないといえる。
(……記憶の喪失が、種子を、引いてはそのために必要な種子貯蔵庫を攻撃しかねない攻撃をすることへの引き金になった……?或いは、コピーされたティファレトだから……いずれにせよ、この攻撃は……)
このビームを受ければ大怪我は間違いなし、最悪死亡してしまうだろう。そうでなくても、そもそも攻撃を受けてガスを吸い込めるようになってしまえばそれだけでモモイ達三人は眠ってしまう。が、それほどの攻撃を、部屋全体を薙ぎ払うように繰り出してしまえばどうなるか。
『バリア発生装置とレイバー達がどんどんやられていく……』
ティファレトは自分を守る味方であったロボット達とレイバーをまとめて薙ぎ払ってしまう。それによってティファレト自身を守っていたバリアを破壊してして攻撃を通すことが可能になったとはいえ、ティファレトの周囲を駆け回ってビームを回避する四人には中々反撃に転じる暇がない。
「今がチャンスなのに……」
「ねえ、ミドリの方から狙えないの?」
「狙えるけど……反動が特にでかいのを撃つと、私はともかくユズちゃんがバランスを崩すかもしれない」
「……つまり、一旦足を止める必要があるってことだね、それなら!」
ユズがバリアシステムを作動してその場に制止し、アバンギャルド君mkXをバリアで覆っていく。それを見た三人がやることを理解してその内側に入り、ミドリがレールガンのチャージを開始する。モモイも三丁のアサルトライフルを連射、弾が切れ次第バックパックに装備し直して次のアサルトライフルを取り出して打ち直す。アリスもメインのライフルに電力をチャージしながら、タレットを使ってティファレトを攻撃し、装甲の表面を削り取っていく。
「―――うっ!?」
ティファレトのビームがバリアに命中し、激しい音が響き渡る。だが、その中でフルチャージが終わったレールガンを持つミドリとアリスが、同時にティファレトへと攻撃。ビームを突き抜けてティファレトに突き刺さった二人の攻撃が大爆発を引き起こし、それによってティファレトのビーム攻撃が中断される。
『よし、今だ!』
一番厄介なビーム攻撃はこれで止めた。バリアが解除されたアバンギャルド君mkXはバリア発生装置から煙を上げており、後数秒でも攻撃が遅れていれば危うかったことがわかる。
「チェーンナックル!」
ユズが声を上げると共にアバンギャルド君mkXの腕を射出し、破壊された部分からティファレトの胴体内部へと腕を突き刺す。本来は、以前のティファレトとの戦いで使ってきた時限式の光弾を代わりに受け、それを相手に押し付けることで逆に攻撃に転じる、モルフォのシールドと同じような使われ方をするために用意されたものだったが、この状況であれば別の使い道もある。
「ユズ!ソード攻撃です!!」
突き刺さったチェーンナックルのチェーンを巻き上げる。ティファレトの内部でコードなどを硬く握りしめた腕に引っ張られる形でアバンギャルド君mkXがティファレト本体へと跳んでいき、さらにユズは振動刃を叩きつけ、ティファレトの装甲を切り裂く。すると、
「あっ!」
「あれって……情報コア!?」
明らかに情報コアらしきものが見える。今の一撃で偶然露出したようだ。ティファレトは反撃しようと体を捩ろうとするも、その前に情報コアを見つけたユズが素早く情報コアをアームで引っこ抜いてしまうと、ティファレトはすぐに沈黙してしまう。
「取ったよ!」
「よーし!すぐに出よう!ここだとヘルメットも脱げないし!」
「それもそうだよね……うぅ、汗が。それにこれ、でかいせいで重い!?お姉ちゃんの方がずっと軽そうなんだけど!」
「そもそも狙撃と補給を同時にっていうのが贅沢だよね」
「後は出るだけだからコンテナにバックパック戻したほうが……」
情報コアを手に入れたモモイ達はすぐに来た道を折り返す。まだガスは漂っているままだし、何よりさっさとクリフォトに戻って休みたいという気持もあるのだろう。
「……それにしても、何故ソフは連絡してきたのでしょうか……」
『……オウルの時は不満とかあれこれをぶちまけに来たという感じもありましたが、ソフの場合は……ティファレトという預言者が大事だったのでしょう……コンテナ・ランチャーの一件といい、自分より種を優先していたようですし、そもそもの行動パターンも他と異なっていたと思います』
「……」
『アリス、どうかしたの?』
そんな中、アリスは戦闘前のソフとの話を思い出し考え込んでしまう。その様子が気になった先生が声をかけると、アリスは、ティファレトのエリアに入る途中に聞いたあの声のことを思い出していたようでだんまりになってしまう。
「いえ……改めて考えてみて、あの時、ソフになんと答えるべきだったのかと思ってしまいまして」
「アリスちゃん……」
「……ソフの言うことが完全に間違っているわけではないのはわかります。ですが……アリスはどうすればよかったのでしょうか。アリスはこれが正しいと思って答えました。しかしその答えは……」
『私は、それでいいと思うよ』
「先生……」
そんな中、ぽつりと零したアリスの言葉に先生が答える。
『やりたいようにやったらいいんだよ、そうやって、私達は幸せになるために皆戦っているんだよ。きっと……人生は二つの選択肢しかないんだ。不条理を受け入れるか、最後まで戦うかの、ね……だから、進むなら道は一つしかない』
「……はい、そうですね。身体は闘争を求めると……そう、以前モルフォが言っていました」
『それはちょっと意味が違うような……!?』
「でも、そういう不条理に私達の中で真っ先に反抗しているのは、多分モルフォだと思います」
『不条理に、理不尽に対し徹底的に抗い、策を練り、手段を尽くす……彼女にとっての幸せがどういうものか、見えているから』
『……』
アリスの言葉にケイも同調するように頷く。先生も言葉自体の意味はちょっと違うような気がしてきたが、大体似ているニュアンスとして言っているのならまあいいかと流して話を続ける。
『人は誰かの幸せな姿を見ていると、自分も幸せな気分になれる。そして、誰かの苦しい姿を見ていると、自分もその苦痛に共感できるんだ。誰かが泣いている時、隣で一緒に泣いてくれる誰かがいるだけで……その人は悲しみに打ち勝てる力を得るんだ。例えそれが偽善であったとしてもね。よく言うでしょ?やらない善よりやる偽善って』
『それって確か本来の意味―――むぐっ』
ブリッジの方で口を開きかけたコユキの口がノアによって塞がれる。そして邪魔する人がいなくなったところで先生はこう話を締め括るのだった。
『人生なんて、格好良く生きること以外、他に道なんてないでしょ?』
「……人生は格好良く!確かにそうかも!」
「まあ……後悔しないように生きたいよね。後悔して死ぬのってなんかきつそうだし……」
「よくわかりませんが、でもなんかわかった気がします!アリスは今のまま、皆と一緒に頑張ればいいんですね!」
『そうだよ、アリス』
先生の言葉を聞いたアリスは、うんと頷く。そしてアリスは、あることを決めたかのようにぐっと手を握りしめるのだった。
(アイン、ソフ、オウル、マルクト……そして他の皆さんとも。話し合うことだけでは無理かもしれません、この後も戦うことになるでしょう、ですが―――皆で力を合わせて、友達になりたいです。それが……アリスの偽善、いえやりたいことです!)