転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
大空に打ち上げられたネオアバンギャルド君がそのまま大地に叩きつけられる。
「いたた……ひっ!?」
頭をぶつけたのか、痛そうに頭を押さえるユズだったが、背後から聞こえてきた何かを踏みつけるような音に悲鳴をあげる。考えるまでもない、ダアトが倒れたネオアバンギャルド君の背中を踏みつけているのだ。
「ユズ!!何とか起きて!!」
「このままじゃやられちゃうよユズちゃん!?」
「そ、そそそうは言っても……!!」
皆の声が聞こえてくるが、操作方法なんてわからない。脳波でコントロールできるなんて言われたところで、そんなもの想像すらできないのだ。やがて、踏みつけるのに飽きたのかダアトはネオアバンギャルド君に向けて合わせた両手を勢いよく振り下ろす。
「きゃあああああ!!」
「おい、あれどうすんだよ!?」
「援護した方がいいんでしょうか……?」
『いいや、まだ終わらないさ!メカワニ君、応援ロボット君、出撃!』
「メカワニ……はともかく、応援ロボット……?」
万事休す、そう思われた次の瞬間だった。輸送船から投下された二体のロボット、片方はメカワニ、そしてもう片方は深緑のカラーリングを主体とした球体形の戦車ロボットが現れる。かつて、晄輪大祭で用いられた応援ロボットだったそれはメカワニと同様にこの鋼鉄大陸で大改修を受けて戦闘用ロボットとなったのだ。現れた二体は即座に物質の巨大化によって大きくなると、メカワニがミサイルを放ち、応援ロボットが機関銃を撃ち込んでダアトを攻撃する。
「うわっ、なんかまた出てきた」
「まあでも、大したことありませんね。所詮ダアトには及びません」
最初は警戒したように一旦距離を取るダアト。しかしすぐにメカワニと応援ロボットは脅威にならないと判断したのか再びファイティングポーズを構え直す。ユズもメカワニと応援ロボットの出現によってちょっとだけ心が落ち着いたのかなんとかネオアバンギャルド君を立ち上がらせるのだが、その装甲は既にベコベコになっており、若干火花が散り始めている。
「もうボロボロじゃねえか!?」
「リオ、ユズは大丈夫なの!?」
『まだ大丈夫よ。むしろ……ここからが本番だから』
『ユズ!これを見てくれ!』
「え?何って―――きゃああああ!?」
既に満身創痍にしか見えないネオアバンギャルド君。だが、ダアトは当然攻め手を緩めるわけがない。再びネオアバンギャルド君を殴り飛ばし、ネオアバンギャルド君が吹き飛んでいく。
「こっ、このままじゃ―――」
『ユズ!それを読んでください!早く!!』
「は、早くって……」
『ゲームの説明書みたいなものだから!』
コトリとマキの声がコクピットに響き、吹き飛ばされながらもユズは表示されていた文章を読んでいく。体が大きく揺さぶられながらも、その説明書を読んでいたユズは、ある機能に気付く。
『そろそろ把握したようね。ユズ、ネオアバンギャルド君の本当の力を見せてやりなさい』
「えっ、本当の力って……」
『ネオアバンギャルド君……リミッターオール解除。そして―――』
『ユズ専用コントローラーです!!』
『ユズ、あなたの力で世界を救って!』
それを読み終えたところで、リオの言葉とそれを遮るように嬉々とした声音で叫ぶコトリとヒビキの声が聞こえてくる。それと共に、ユズの目の前にあった、ロボットのコクピットにあるようなレバーなどが突然回転してしまわれ、目の前にアケコンが出現する。そして、
「―――」
瞬間。ユズの顔から表情が消える。アケコンへと指が伸ばされた次の瞬間、ネオアバンギャルド君へトドメを刺そうと拳を振り上げる。が、その拳を素早く左腕で弾き、右の拳を叩きつけてダアトを殴り飛ばす。
「えっ!?」
「な、何が!?」
『あ、あれ?動きが……』
「覚醒しました!!これこそがUZQueenの力です!!」
突然動きが変わったネオアバンギャルド君にダアトが驚いたような反応を見せる。しかし、ネオアバンギャルド君は間髪入れずに拳のラッシュをダアトへと叩きつけていく。
「ま、まずい!」
『ダアトちゃん!バリアです!』
ユズが必殺の右ストレートを入力した瞬間、ダアトをバリアが覆ったことで右ストレートがバリアに命中し、弾かれてしまう。
「ああ!?」
「今だ!いけーっ!!」
カウンターと言わんばかりにダアトがミサイルを次々と発射し、ネオアバンギャルド君の脚部を破壊してしまう。
「ネオアバンギャルド君の足が!?」
『これで終わりです!』
「ネオアバンギャルド君が―――!」
『今よ、ユズ!』
「―――キャスト、オフ」
ダアトが勢いよく飛び上がり、強烈なボディプレスを放つ。このままではネオアバンギャルド君諸共ユズは潰されてしまう。が、ユズの呟きと共にネオアバンギャルド君の装甲が弾け飛び、ダアトに命中。装甲が命中したダアトはバランスを崩し、ボディプレスに失敗して落下し、地面に激突してしまう。
「こ、今度は何!?」
ソフとオウルが身構える中、バラバラに崩れ、吹き飛んだ装甲の中から現れたネオアバンギャルド君は、その姿を大きく変えていた。先ほどまでの四脚でマッシブなデザインからは一転、身軽そうな二脚でスマートな形状の人型ロボットへと姿を変えていた。
「……いや縮尺おかしくない!?さっきとサイズ比一緒じゃん!?」
『これも物質の巨大化のちょっとした応用よ』
「な、何でもありか……!!」
「……それに関してはこっちも相手の事言えない所は正直ありますが」
「オウルはどっちの味方なの!!」
「当然奴らの敵ですよ。それに、中身が出てスピードが増したようですが、余計に貧弱になっただけでは?やってしまいなさい、ダアト!今度こそ!」
ダアトが拳だけでなく機銃や尻尾も駆使し、怒涛の連続攻撃でアバンギャルド君へ襲い掛かる。しかし、覚醒したユズの前ではそんな攻撃などものの数ではない。そればかりかアバンギャルド君は逆にダアトに足払いを仕掛けて転ばせてしまうと、そのまま身軽な動きでメカワニと応援ロボットの下へと移動する。
「ぬぅ……」
「でも!攻撃力が足りない!」
「そ、ソフの言う通りです……アーマーをパージした今のネオアバンギャルド君ではユズの力があってもステータスが足りていません!」
『問題ない!何のためのメカワニ君と応援ロボットだと思っているんだ!』
『……本当にやるつもり?ぶっつけ本番なのに?』
『ぶっつけ本番だからやるんだよチーちゃん!これぞ……ロマンだ!!さあ……合体だ!!ユズ!!』
「「「合体!?」」」
合体。その言葉に三者三様の反応を見せる皆。ソフ達も混乱している中、ネオアバンギャルド君の中でユズが合体のためのコマンドを入力していく。
「……いく……!」
『今よ!インベイドピラーを射出して!』
『当然!合体を邪魔する無粋な奴は締め出させてもらうとも!』
『ふふ、楽しみ……』
ユズの音声認識と共に、休憩時間の間にクリフォトに装備され、さらに射出用として積み込まれたインベイドピラーの一本が射出され、ネオアバンギャルド君たちの近くに突き刺さる。それと共にバリアが展開され、バリアに押し出されるようにダアトが吹き飛んでいく。
『そして、最後のパーツはモルフォ、あなたよ』
「えっ!?」
「あなたのフライトユニットは……設計時の段階でこのための調整をしていたんです。この互換性のために、ネオアバンギャルド君らのハードポイントなどの規格を統一していたといっても過言ではありません。メカワニ君も、応援ロボットを大改修した際にもある共通の接続ポイントなどを取り付けました」
『つ、つまり!?』
「……いけー!フライトユニット!!」
モルフォの声と共にモルフォの背中に接続されていたフライトユニットが分離し、バリアの中へと巨大化しながら突っ込んでいく。そしてネオアバンギャルド君の周囲を三機の機体が取り囲む。
「ネオアバンギャルド君、究極合体!!」
ユズの声と共にネオアバンギャルド君が背中のスラスターを利用して空中に飛び上がる。そして両腕を畳んで背中側に回し、両脚も胴体の方へ半分程移動する。その足元にメカワニが入り込み、メカワニが半分に折り畳まれる形で変形して新たな下半身となり、ネオアバンギャルド君がそこに突き刺さり、接続されると共に蒸気が吹き上がる。
さらに応援ロボットがスラスターによって飛び上がったかと思うと左右に開かれ、ネオアバンギャルド君の上から胴体へと降下。ネオアバンギャルド君の上半身に接続されて固定され、肩部となった応援ロボットのパーツから腕が下へと伸びていく。
続けて巨大化されたフライトユニットが背中に接続され、アームが移動して腕パーツの先端に接続、それによって新たなネオアバンギャルド君の両手首から先を構成するパーツとなる。
最後に応援ロボットの強固な装甲が胸部へ移動したメカワニの頭部を左右から挟み込む形で固定し、ネオアバンギャルド君の頭部にヘルムを装着すると、それを待っていたかのようにネオアバンギャルド君の赤い瞳が強く輝く。
「グレート!アバンギャルド君!!」
両腕をぶつけ合い、高らかに声を響かせながらユズが合体完了と共にその名を呼ぶ。直後、全身から蒸気が吹き上がり、インベイドピラーが生み出したバリアが砕け散ると共にその姿を降臨させる。
「グレート……!?」
「アバンギャルド……!?」
『君……!?』
「……勇者です。これぞ……勇者ロボです!!ついに、ついにユズは勇者になったのですね……勇者ロボを駆る、勇気ある者に……!」
「あ、アリスちゃんが泣いている……!!」
「感激のあまり泣き出しそうになってる!?」
「……畜生、アバンギャルド君なのに格好いいと思っちまった……」
折り畳まれ一つになったことでマッシブに、そしてがっしりとした脚部。メカワニの巨大な尻尾。応援ロボットのものと思われる深緑色の渋みのある肩や上半身。漆黒の翼、そしてアバンギャルド君のご尊顔。
『……これぞ、最強のアバンギャルド君……叡智の末に辿り着いた、究極の姿……私達が辿り着いた、名もなき神々の遺産によって誕生した、真の勇者……まさしくこれこそが、グレートアバンギャルド君よ!!』
『こんなもの叡智と認めたくは―――もが』
「……いや合体とかそんなのありですか!?ダアトは最初から一つにしたのに!そっちの方が合理的なのに!!」
『ええ、確かに最初から合体後でデザインするのは合理的よ。だけど、分割してそれぞれが独立していると相手に思わせられれば……分離して後に合体する機構も合理的じゃないかしら』
「うぎぎぎぎ……!!」
『つまりはロマンだ!やるんだー!』
グレートアバンギャルド君の右ストレートが起き上がり、こちらへダッシュしてくるダアトに突き刺さる。ダアトは先程とは一転して強烈な一撃を受け大きく狼狽えてしまい、その隙を逃さずユズは追撃を仕掛ける。しかしダアトも二度目は喰らわないと言わんばかりにバリアを展開する。
「またバリアが!?」
「いや……腕がこれなら!」
ユズが声を上げながらバリアに勢いよく両手を押し当てる。直後、両手の掌底からビームが放たれる。先程、モルフォが使用したものとは桁違いの威力が発揮され、バリアを破壊する。
「な!?」
さらに鋭い手刀を叩き込み、ダアトのバリア発生装置を破壊してしまう。バリア発生装置を破壊され、そのまま押し倒されたダアトに馬乗りになり、グレートアバンギャルド君は何度も何度も殴りつける。ダアトは両腕を組んでそれを受け止めていたが、ここで胸のコクマーの口を開くと、そこからビナーの口が出現し、そこから巨大な熱線をグレートアバンギャルド君へと放つ。
「あれはビナーの!?」
「いえ、ゲブラの武器を使えていたのでビナーもどこかにあるかと予想はしていましたが……!」
『合体の影響で熱には強くなっているけど、長時間は受けられないわ!』
『ユズ!』
リオだけでなくウタハが叫ぶとほぼ同時にユズはさらなるコマンドを入力する。直後、グレートアバンギャルド君の胸部のメカワニ君の口が開かれると共に、そこから砲口が姿を現す。
『荷電粒子砲だ!!』
メカワニ君の口から放たれたビームがビナーの熱線と激突、直後熱線を貫き、その口内を焼き尽くす。グレートアバンギャルド君は背中のウィングを広げ、赤紫色の光を迸らせながら、荷電粒子砲の発射による反動を利用する形でダアトと距離を取る。ダアトはコクマーの口内のビナーを溶かしながらも素早く立ち上がると、ミサイルを次々と放つ。
『次が来たよ、ユズちゃん!!』
『……いえ、ユズなら撃ち落とせます!』
「……バルカン」
ユズの呟きと共に両肩から機銃、もといバルカンが展開され、それが飛んでくるミサイルを全て叩き落としていく。だが、ダアトもスラスターを吹かしながらミサイルを盾に接近し、勢いよく殴りつけてくる。だがユズが冷静にそれを拳で受け止めようとするとダアトは寸前で急旋回してグレートアバンギャルド君の背後へ回り込む。直接取っ組み合うのは先程バリアを破壊した攻撃を見て危険と判断したのか。だが、
「後ろを取られた!?」
「いや、グレートアバンギャルド君には……!」
グレートアバンギャルド君の尻尾が高速で回転し始め、ドリルとなってそのまま振り上げられる。その攻撃はダアトの腹部を殴りつけ、ダアトはよろめきながら半回転する。しかし、そのままダアトも尻尾を同じようにグレートアバンギャルド君へと叩きつけようとし、お互いに尻尾をそれぞれの武器のようにぶつけ合う。やがて、二体とも振り向きながらその回転を加えた勢いで尻尾を叩きつけ、お互いにその衝撃で吹き飛ばされていく。
「今だ!」
「ユズー!!」
しかし背中のウィングを広げて強引に姿勢制御を行うと、後方へと吹き飛んだダアトへ一気に距離を詰めていき、右、左、右と連続攻撃を叩き込んでいく。そして一気にダアトを殴り飛ばすと、
『ユズ!必殺技ですよ!あなたの思い描く技を……今なら使えるはずです!!』
『ユズ、ダアトの中にあるコアの解析が終わったわ。ダアトの中には……ネツァクの情報コアがある!位置情報を送るわ!!』
「!!」
『そうか……!ゲブラとコクマー、ビナーの情報コアは抜いてあるはずなのにあれはなんで預言者として動いているかと思えば……あくまでゲブラとコクマーの残骸とその要素を主としつつもその核としてネツァクのものを使用していたからだ……!』
輸送船のブリッジからヒマリ、リオ、チヒロの言葉が届く。それを聞いたユズはグレートアバンギャルド君の両手を開くと、そこにエネルギーを充填していく。直後、両手が真っ赤に光り輝いたかと思うとそれを合わせて前方へ突き出すと共に背中のウィングを再度広げ、赤紫色の巨大な光を迸らせながら推進力を得てダアトへと突進していく。
『「「ダアト!!」」』
やられる。アイン、ソフ、オウルがそう思い、咄嗟に口をついた叫び。それに呼応するかのようにダアトの四つの目が光り輝き、融解しかかっているコクマーの口が開かれると膨大な熱量が集まり、グレートアバンギャルド君の拳と激突する。
「「「!!!」」」
激しい衝撃が二体を中心に広がっていく。踏みとどまりながらモルフォ達が二体の激突する様子を見守っていると、徐々にだがグレートアバンギャルド君の拳がコクマーの放とうとした膨大な熱エネルギーの中に突っ込まれていき、熱エネルギーが霧散していく。そして、
「はああああああ!!」
気合と共に、コクマーの口を破壊しながら体内に突き刺し、その中からネツァクのものと思われる巨大な情報コアを抉り出し、掲げる。そして情報コアを抜かれたダアトはその場に崩れ落ちると共に大爆発を起こし、爆散する。
「……う、嘘、です……こんなの、あ、あり得ません……!」
「どうして……どうすれば、いいの……!?このままじゃ計画が……」
ダアトがやられてしまい、狼狽えるソフとオウル。このダアトは、まさしく彼女達にとって起死回生の一手だったのだろう。だが、それは倒されてしまった。後はマルクトを残すのみ。そう思われた次の瞬間だった。グレートアバンギャルド君がその場に倒れ込んでしまい、その手に握っていた情報コアが零れ落ちてしまう。
「ユズ!?」
急いでtype.Sを駆り、グレートアバンギャルド君の下へ向かい、情報コアに触れて取り込むケイ。もう慣れた頭痛に一瞬顔を顰めながらもグレートアバンギャルド君を見ると、
「……エネルギー切れですね」
「はぁ!?エネルギー切れって」
『……やっぱり長期戦は向かなかったわね……だからこそ、こういう状況にならない限りは合体を控えていたんだけど……』
『……つまりどうなるの!?』
『残念ながら鉄屑ですね今のままだと……』
ダアトを倒したのはいいものの、目から光を失い、倒れてしまったままのグレートアバンギャルド君。エネルギーを補給しなければもう動くことはできないだろう。しかも、
「……どうしよう、外に出れない……!!」
中にいたユズは、自力で出ることもできない有様であった。とりあえずコクピット部分を頑張ってこじ開けようと一人、また一人と近づこうとした、その時だった。
『!?た、大変です先生!!』
「ユウカ?何が……」
『工場のあるエリアが襲撃を受けています!ああ、発射設備が一瞬で!?』
『どういうこと!?』
ユウカから切羽詰まったような連絡が届く。それは、ケセドのエリアに作られていたインベイドピラーとミサイルを発射して戦闘の援護を行うための設備が襲われ、一瞬で破壊されてしまったという内容であった。
「でも、一体誰が―――!?」
『!?急速でこちらに来る信号が……これはまさか!?』
「……お、お待たせしました……もう大丈夫です!最終調整、終わりました!これでフルパワーです!」
さらに、その主はとんでもない速度でこちらへと近づいているというのだ。すぐさまヒマリがその反応を調べていると、ソフ達の下にアインが現れる。直後、
「「お姉様!!」」
「ごめんなさい。アイン、ソフ、オウル。少し掃除をしていました……ですが、ここからは、我に任せてください」
空から飛来してきたマルクトが、ソフ達の前に現れる。
「!」
「あれが、マルクト……」
「……他の預言者とは確かに、全然違う……」
「小さいねー」
「ですが、その戦闘力は桁違いです」
警戒した様子でネル達は武器を構える。マルクトはちらとグレートアバンギャルド君を見たと同時にビットを数本飛ばし、指一本すら動くことのできないエネルギー切れとなったグレートアバンギャルド君の周囲を旋回させる。しかし、フルパワーで出撃できるようになったとはいえエネルギーの消耗は押さえたいという思いがあったのだろうか、既に動けないスクラップを倒す必要もないと判断してビットを戻すと、先生達の方を見る。
「ごめんなさい、お姉様……」
「私達が、無力なあまり……」
「大丈夫です。アイン、ソフ、オウル。妹たちが苦しむ時は、姉である我が出ます。とはいえ容易い相手には見えません……預言者は再び起こせば良いのですが―――そのためには、彼の者達を越える必要がありそうです」
静かに闘志を見せるマルクト。マルクトの実力を一度目の当たりにしているモルフォ達の背中顔に冷や汗が浮かぶ。
「は、はい!」
「まさか、お姉様を頼ることになるなんて……できれば、出撃しないでほしかったのに……!」
「大丈夫です。まだ取り戻せます。今はまだ……!」
「……?」
だが、そんなマルクトを見る三人の顔色は何故か浮かない。まるで、マルクトが戦っていることを嫌がっているような―――
「初めてお会いする皆さんに。王女と、鍵……改めまして、正式にご挨拶申し上げます。我は御旗の下に創造されし一つの意志。世界の果てに到達せし王国の巡礼者―――マルクトです」
「て、天童アリスです……」
「……天童ケイです」
突然、戦闘前というのに自己紹介を始めるマルクト。それを聞いたついアリスが自己紹介を返すと、ケイも自らの名を名乗る。それを聞いたマルクトは、どこか微笑ましそうにケイとアリスを見る。
「結局、その名を選んだのですね。アリス、ケイ。自由意志は常に我々を導くもの……例えそれが、高度化された錯覚に過ぎないとしても」
マルクトの周囲に浮かぶビットが、一つ一つ光を帯びて起動し始める。
「お、お姉様と……ここ、ネツァクちゃんが作ってくれた
「至高の
「聖地。そして、ゾーハルの依代が残っている限り!」
「ええ。我々はいつでも全てをやり直すことができ―――いつでも、全てを作り直すことができます。ですので……ここでは姉である我がいきます。アイン、ソフ、オウルは、しばらく身を隠してください」
「「「はい!!」」」
マルクトの静かな声と共に三人が走り出す。その間、目を閉じていたマルクトがゆっくりと目を開くと同時、マルクトの周囲を浮遊していた四基の浮遊ユニットと巨大なランス状の武器を携え、大空へと飛び上がるのだった。