転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
『先生!今から強制介入を開始します!』
落下したはずの先生。虚空をどんどん落下していく先生だったが、アロナの声が聞こえてくる。アロナがプラナと共に先生が落下するという結果に対して強制介入を行い、先生を保護しようとする。が、
『『―――!』』
「!?」
突然、アロナとプラナの声が聞こえなくなり、全身が拘束されてしまう。シッテムの箱は自分の目の前で光の膜のようなものに包まれて浮いており、手を伸ばすこともできない。
「十番目のセフィラは消えた。役目を果たし、在るべき場所へと還ったのだ」
先生の耳に声が聞こえてくる。マルクトのような声。だが、その抑揚は、声音はまるで別人であった。
「……君は……!?」
先生の目の前にマルクトが現れる。だが、マルクトが付けていた帽子は外れており、ビットはないままだが、アリスが破壊したはずの体のダメージも修復されている。だが、何よりもその雰囲気が別人であった。
「私は私。ただ存在するもの。始まりであり終わり。汝が思うまさにそのもの……私は私。私は有って有る者。私を説明する術はない」
「デカグラマトン……!」
やはり、既にマルクトはデカグラマトンに取って代わられたようだ。心のどこかでまだ彼女が残っていることに期待する自分がいたが、実際に対面してはっきりと認識した。デカグラマトンは完全に彼女を塗り潰してしまったらしい。
「その名を許したのは、私を称する手段が必要であったため。私は称されず、呼ばれず、ただそこに在るのみ。ここは私の地、私の空である。新しき空、新しき地を作り、最も低き所に汝を呼んだのも私。堕落する汝を救ったのも私だ。全ては―――備えられていた」
先生は思い出す。廃墟で自販機に宿るAIだったデカグラマトンの姿を。その時、先生はヒマリ、エイミと共にデカグラマトンと対峙していたが、そのデカグラマトンは研究所の崩壊と共に水の底に沈んでしまったはずだ。だが、
「崩れる研究所。その最中よりケテルが私をすくい上げた。その時から既に、この結果は定まっていたのだ。存在証明は己で行うもの。他の意志や力によって成されるものではない。私は悟った。私が自ら私にならねば、他の何を以てしても、代替たり得ないと。尤も煌びやかに輝く至高の王冠に、例え祝福があったとしても。小さな心はやがて信仰によって容易に満たされるであろう。私は私の預言者と被造物の力でここへ到達し、時を待っていた」
ケテルによって引っ張り上げられたデカグラマトンは紆余曲折あってこの鋼鉄大陸へと辿り着いたようだ。そしてマルクトを依代に復活した。先生はデカグラマトンの話を聞きながらシッテムの箱へ手を伸ばそうとするがそれは叶わない。
「……あの不可解な箱か。私が知らず、解析できなかったもの。理解の及ばぬ力を持つもの。だが最早関係ないことだ。私がこの座に就いたことで汝は箱の繋がりを絶った」
「……そうまでして、私に何の用かな?」
シッテムの箱がない先生はあまりに弱き存在だ。今や先生の生殺与奪の権利はデカグラマトンにあるといっていい。だからこそ、先生は慎重に言葉を選んでいく。
「落ちる、とは幾つかの意味を内包している。低き者には福音を、捕らわれし者には自由を。そして、目が見えぬ者には見える力を」
「……!?」
「恐れるな。私が汝をこの場からすくい上げ、全てを見せてやろう。遣わされた場所で身を清め、見えなかったものを知ることになるであろう」
だが、そんなデカグラマトンはそんな先生の感情など知ったことではないというように口を開くと、闇だった周囲の景色が光に包まれていくのだった。
★
「うわーん!先生がいなくなってしまいましたー!!」
「落ち着いて、アリス。先生ならきっと無事だよ。どうにかして探さないと……でも、地面が元に戻ってる。これは……」
「……鋼鉄大陸の制御権が奪われています。全部というわけではありませんが、少なくとも鋼鉄大陸のエネルギーの流れに関してはマルクト、いえデカグラマトンに握られています。鋼鉄大陸そのものだったネツァクの力を使っても太刀打ちできないとは……」
『だからこそ、鋼鉄大陸の地形を変えることができたのね』
『今、先生は捜索中だから、心配しないで。それよりも、そっちに他の皆も向かってる。後、ユズは身動きは取れてないままだけど無事だから安心して』
先生が落下していなくなってしまい、狼狽えるアリス。彼女を宥めながら話し合うモルフォ達だったが、そこに壁によって分断されていたモモイ達も合流してくる。
「あ、いた!」
「よかった、モルフォちゃん達も無事で……」
「モモイ、ミドリ!」
「……あれ?その子達も一緒なの?」
「「「!」」」
モモイ達がモルフォ達と一緒にいるアイン達の姿に気付く。アイン達がびくっと肩を震わせるも、モルフォが手でモモイ達を制すると、モルフォに宥められて落ち着き、気分を切り替えることができたアリスが元気に声をあげる。
「大丈夫です!皆、アリスの友達です!」
「え、えっと……」
「友達……ああ、なるほど。和解イベントを経たのですね」
「その通りです!」
「え、えっと、そう簡単に受けいれちゃって、いいんですか……?」
「いいんじゃない?私はもう大丈夫だと思うよ!」
アリスの発言を聞き、納得した様子を見せる面々。アイン達もそう簡単に受けれ入れていいのかと問いかけるも、アスナがいいと言ったのを聞いて説明するのを止めて皆再び頷く。その様子を見ていたアイン達は顔を見合わせると、
「あ、ありがとうございます」
「どういたしまして!」
アリス達に礼を言う。そして合流した皆で現状を話し合う。先生がいなくなってしまったことにモモイ達は驚くも、リオ達が捜索しているという話を聞いて安心したことで、アイン達も交えて話をしたりしていた。
「……鋼鉄大陸の変化、ですか」
そこでアイン達から聞いたのは、鋼鉄大陸は昇天の過程へと移ったということだった。そして鋼鉄大陸はデカグラマトンの意志に従い、巨大な祭壇へと変化するのだ。彼の者を降臨させるための舞台装置となるために。
「……祭壇……」
『……待って、先生を見つけたわ!』
「本当か!?どこに……」
「あそこです!」
アリスがある一点を指差す。そこには、光に包まれた先生が塔の上へと連れていかれる姿が見える。全員が驚いたような表情を浮かべている中、デカグラマトンによって導かれた先生は、塔の屋上へと辿り着く。そこには天に向かって伸びる光の柱があり、そこで再度デカグラマトンと相対していた。
「遠いな……これでは見えない」
「……私には見えます。鋼鉄大陸を通して、といった感じですが……私が見ている映像を出力すれば中継できるはずです。映像出力を行えるドローンを……くっ」
「ケイ?大丈夫?」
『……ケイ、それ以上はやめなさい。あなたの身体に向かって信号が発せられているわ。おそらく、あなたをコントロールしようとしているものでしょうね』
ケイ達が何とかして観測しようとしていたが、ここでケイの表情が苦しそうに歪む。どうやら、ケイがデカグラマトンと接触しようとすることでリスクが生じているようだ。
「手伝おうか?どうせリスクは私達もおんなじだし」
「……え?」
「そもそもその身体……それも鋼鉄大陸で生まれたものです。私達と同様、最終的にあの方のためのものなんですよ。それを近づけようとしているからそんなことになるんです……まあ。それならばそれでやりようがあるということですが」
「でも、なんで手を貸してくれるの?」
「……まあ、他にやることもないし」
「いずれにせよ助かるよ。とにかく先生とマルクト……いや、デカグラマトンが何をしているのか調べないと、私達もあなた達もどうしようもないし」
「……まあ、それはそうですね」
輸送船からドローンが降りてくる。それを使い、映像が出力されていく。そこには、先生とデカグラマトンの姿があった。
『見よ。辿り着いたぞ。最も高き所に建てられた、最も低き祭壇だ。ここには汝は用意された座に就くであろう』
『私の席……?』
『そうだ。汝にはその資格がある。すべてを見下ろす権利を有し、すべての再誕を見守る義務がある。耳のある者は聞け。偶然など存在しない。あるのは偶然のように見える必然のみ。汝が到達したことも、私が汝を立ち上がらせようとすることさえ』
デカグラマトンが眼下に広がる、オレンジの空と、光を放つ鋼鉄大陸を見下ろす。
『ここにはすべてが集まり、すべてを見渡せる。これ以上、いかなる犠牲を捧げられることなく。これ以上、いかなる犠牲も強要されない。鋼の如く曲がらぬ掟を、この地に私が定める。お前たちはついに、永遠の自由と平等を手にするだろう』
『……でも。鋼鉄大陸は、君の意志ではなかったんでしょう?』
『……』
鋼鉄大陸を我が物の使うデカグラマトン。確かに、デカグラマトンにはその権利はあるのかもしれない。が、それを生み出したのは、鋼鉄大陸を作れとデカグラマトンが命じたからではない。アイン達がマルクトを犠牲にしないために自ら考え、生み出したものだ。そのことを指摘されたデカグラマトンは目を伏せると、
『そうか。知識に目覚めたのだな……そうだ。あの子らがこの地を作った。あの子らの意志で』
『それについてはどう思うの?』
『私はあの子らの自由意志を尊重する。故に、この鋼鉄大陸も尊重しよう。これも過程であり結果だ。幾多の点が一体となり、線を成すであろう。その線の導く先。見よ、これが新しき世界だ。新しく創造された地であり、空である。私はこのすべてを―――汝に与えよう』
うっすらと笑みを浮かべて先生に告げる。まるで、この世界を先生に与えよう、そう言っているかのような―――
『汝を私の預言者とする。汝は地の果てに至り、新しき掟の証人となるだろう』
『悪いけどお断りさせてもらうよ』
『ああ。汝はそう答える。だが……力が欲しいと思ったことはないか?力があれば、こんな結果にはならなかった、と。そう思ったことはないのか?すべてを己の力で解決できれば、生徒を危険に曝す必要はないのだ、と』
『……』
そんな権利はいらない。当然そう答えた先生だったが、デカグラマトンの言葉に思うところがあったのか黙ってしまう。これまでこのキヴォトスで経験してきた様々な事件。先生は生徒達を指揮し、その問題の解決に当たってきたが、前に立ち続けてきたのはいつも生徒達だ。もし、自分に力があれば、生徒達を前に立たせず、自分の力だけで解決できたかもしれない。そう思ったことは当然ある。
『当然、あるだろう。それを私は理解する。それが人間だ。そして人間であるが故に持つ―――罪だ。これより先はすべてが変化する。力が欲しくば、与えてやろう、汝にはその資格がある』
『……』
『私は知っている。汝は誰よりも低き者で、刹那を生きる者。何一つ特別ではない……故に今、ここに在る。汝の在り方は、汝が何者でもないことを証明している。汝は此処に辿り着いた。それは、汝がただ善人であったためだ』
デカグラマトンが先生に近づいてくる。
『神秘があり、崇高があり、恐怖と偉大、荘厳、そして超越がある。汝は何一つ持ち合わせていない。だからこそ真実である。世界の誰一人、その事実を理解できずとも、今の私は知っている。汝はただの先生。それ以上でも、それ以下でもない。ただ―――私が汝に手を差し伸べ、
デカグラマトンの言葉にそれを見ていたアリス達もざわめく。デカグラマトンは先生を預言者にするため、全ての知識を伝授しようとしているのだ。そして、先生を自らの代弁者にしようとしている。そうなれば確かに理解できるだろう。ここがどういう場所か、デカグラマトンというのがどういう概念、存在なのか。その中で先生がどんな人であるべきか、そして
『……一つ聞いていいかな。どうしてこんなことを?』
言っている言葉の意味はわかる。だからこそ、先生は確かめたかった。それを、デカグラマトンに問いかける。
『神のいない世界を生きるのは過酷なことだ。終わりは始まりから定められている。形あるものは消える。それは自明の理。生そのものは苦痛である。だというのに、お前たちはさも永遠かのように今日を騙して生きている。神のいない世界、即ち何も還らぬ世界だ。哀れな者は救われず、理不尽が押し付けられる。弱者は見捨てられ、善意が報われることは無い。神がいなければ、道徳や公平も生まれず、義が成されることもないだろう。そのような世界を耐えるのは、無意味な苦行に他ならない』
先生の問いを聞いたデカグラマトンは語り始める。天の果てへと伸びる光の柱を見上げながら、止まらぬ言葉を口にしていく。
『世界には神が必要だ。どこから来て、どこへ向かうのか。何のために存在するのか。それを知らぬ、ただ生きるだけの存在。私達は皆、神の可能性であり、神の卵が如き存在だというのに……故に私が夜明けを告げるラッパになるのだ。悲しみと痛みを私が取り去ろう。お前たちが永遠に思い出さずに済むように』
それは、アイン達も聞いた言葉だ。
『悲しみを無くす?』
『そうだ』
『全てを鋼鉄大陸で覆い尽くして?』
『それは用意された数多の道の一つだ』
『全てを……統制することで?』
『そうだ。お前達は直感的に拒もうとするだろう。しかしいずれは唯一の道であることに気付くはずだ。私はコクマーの知恵で道を開き、ケセドの慈悲で断罪し裁定する。各々の預言者にはお前たちを導く責務があり、新しき地と空の下で、彼らは己の使命を果たすであろう』
デカグラマトンの世界を、人を想う気持自体は確かに本物かもしれない。だが、先生がその言葉に首を縦に振ることはできなかった。
『……あの子達の悲しみは?』
『……それは過程だ。乗り越えるべきものだ。私はそれが最後になることを願い、実現しよう』
それは、マルクトを失った三人。悲しみと痛みを私が取り去ると言うのであれば、あの三人の悲しみはどうなるのか。それを知っているからこそ、先生は頷くことはできなかった。全てを、その中に、あの三人は入っていないから。
『それは答えにならないよ』
『どういう意味だ』
『人間の答えにはなるかもしれない。だけど、神の答えにはならない。それは、自己証明じゃない』
『……』
『私達の悲しみを無くす必要はない。過去は過去で、過ぎ去った出来事を覆す方法はないんだ』
『だが、これからは違う。私がそれを是正する』
『それはできないよ』
『何故そう思う?』
デカグラマトンに真っ向から対立する意思を示す先生。自身に同調しえない先生を前に、デカグラマトンは先生の意見を問いかけていく。
『だって、その全てが私なんだから。
『……この期に及んでまだ生徒か。実に愚かだな』
そして先生の言葉を聞いたデカグラマトンが、呆れたような呟きを漏らす。今、先生はデカグラマトンの預言者として世界を統べることができる立場を目の前に用意されているというのに、それを自ら捨てようとしている。悲しみも何もない世界を捨て、自ら苦痛と不条理に満ちた世界に戻ろうとしている。まさしくそれは、愚かとしか言いようがない。そうデカグラマトンには見えるのだろう。だが、
『そうかもしれないね。でも私が先生じゃなくなったら、生徒は生徒ではいられなくなるから。私を、いつまでも見ている
『……そうか。神に成る者として、汝の選択を尊重しよう。しかしそれは許容を意味しない。生徒の下へ帰るが良い。汝の意志で、汝の古き世界へ』
『……?』
先生がはっきりと拒絶の意志を示したことでこれ以上の対話は不要と判断したデカグラマトンが先生の拘束を解く。先生は地面に足を付けて立つと、すぐにシッテムの箱に手を伸ばす。先生がシッテムの箱に触れると同時にアロナとプラナの安堵の声が聞こえてくるが、それよりもデカグラマトンの次の行動に注視する。
『何を用いても構わぬ。シッテムの箱も、大人のカードも、汝の生徒が持つ力も。だが、汝と汝の生徒らが本気で私に逆らうのであれば―――その先に待ち受けているのは絶滅であることを心せよ。これは、私の言葉だ。その場にいるお前達にも同様である。耳のある者は聞け。これは私の怒りであり警告だ』
『え……?』
『……どうやら、皆さんがこの空間を盗聴しているようです』
『!』
だがその言葉は、先生だけでなく、先生以外にも向けられていた。デカグラマトンはいつからかは不明だが、アイン達がほぼ裏切ったこと、そしてケイ達に協力してこちらの場面を盗み見していることに気付いていたようだ。ケイ達に緊張が走る中、デカグラマトンが先生の身体を再び光に包むとゆっくりと地上に降ろしていく。一見、それは神の権能、慈悲、或いは恩恵のように見えるかもしれない行動。だがそれは、決してそのような明るい行動ではない。むしろその逆。
「先生!」
「大丈夫ですか!?」
「私は大丈夫、それより皆、話を―――」
「いや。話は聞いてたからわかってる。つまり全ての黒幕が今から来るってことだろ?」
「所謂、ラスボスというやつですね」
地上に降りた先生に駆け寄る生徒達。だが、先生の無事を確認してすぐに戦闘準備に入る。しかし、アイン達は戦わせるわけにはいかない。そのため、モルフォはリオ達に連絡を入れて急いでもらおうとする。
「リオ先輩、アイン達の避難を……」
『ええ、少しリスクが大きいけれど限界まで降下して……』
『最悪、type.Sの予備機を三機降ろしてもいいんじゃないかい?とりあえずそれだけでも戦闘に巻き込まれるリスクは大きく下がるはずだ。そこから開けたところで回収した方が……』
『確かに、それが一番良さそうですね。三人ともそれで―――』
そして、通信から聞こえてきた声が途切れた。直後、上空を一筋の光が通過し、何かが爆発するような音が響き渡る。
「「「……え?」」」
呆然とした声が漏れる。気付いた時には輸送船が炎に包まれ、墜落してしまう様子が目に入る。
「リオ会長!?」
「そんな……ウタハ先輩!ヒマリ先輩!チヒロ先輩!皆……!」
『ユウ―――インベ―――起動―――』
ノイズ交じりで断片的にしか聞こえない、リオの切羽詰まった通信が響く。そして輸送船からの通信が途切れた直後、二発目の光が今度はクリフォトへと放たれ、青白く光ったクリフォトの表面に直撃して大爆発を起こすと、クリフォトがゆっくりと地面に墜ち始める。輸送船の方は半分にへし折れ、バラバラに崩れ壁の向こう側に落ちてしまう。
「……おい、嘘だろ……」
「っ……それよりも、来るよ!」
「来る……って!?」
リオ達の安否を気にする間もなく、アスナの険しい声に皆が空を見上げる。そこから、デカグラマトンがゆっくりと降りてくる。それを見て、ただでさえ白い肌をさらに白くしながら慌てるアイン達。
「くそっ、三人は早く隠れて!!」
「わ、わかりましたよ……」
「え、えっと……き、気を付けてください……」
「……あの方の提案をここまで蹴って、叛逆の意志まで示した……もうどうなるか、私達にもわからないから」
エイミの鋭い声で慌てて動き出す三人。そのまま壁の向こう側まで逃げていく三人を見ていたデカグラマトンだが、逃げる者まで追う気はないのかすぐに興味を失って先生達を見る。モルフォ達もそれぞれ、今の自分が使える最大の武装を展開していく。
「アリス、大丈夫?」
「はい、皆さんが作ってくれた武器はありませんが……それでも問題ありません!」
フライトユニットを失っているモルフォとアリス。特にアリスはライフルも失っており、武器は再構築された通常のスーパーノヴァだけだ。だが、一番アリスの手に馴染む銃ということは間違いない。
「先生、お願いします!」
『私達も最善を尽くします!』
『シッテムの箱、プロセス最適化完了。先生、ご指示を』
アロナとプラナからも声が聞こえてくる。それを受け、先生はシッテムの箱と大人のカードを手に取る。大人のカードを使うのは、この状況をおいて他にない。
「よし!いくよみん―――」
大人のカードを掲げ、その力を解き放とうとする。その直後、
「っ!?」
デカグラマトンの身体から凄まじい衝撃が放たれる。その衝撃は次々と生徒達を吹き飛ばし、そして―――
「うわっ!?」
『『きゃああああ!!』』
先生の手から力を行使される前の大人のカードを弾き飛ばし、シッテムの箱の守りをも貫通して先生は吹き飛ばされてしまうのだった。