転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
少しだけ時間は巻き戻る。地響きが聞こえてくる。外では戦いが続いているのだろう。だが、明かりの無いコクピットの中では、ユズには何も外が見えない。
「皆……」
グレートアバンギャルド君の方の通信は途絶したまま、自分の方で持ち込んだ通信機から聞こえてくる音声だけが現在の状況を自分に教えてくれていた。輸送船とクリフォトが墜落してしまったこと、そちらとの通信は今だ回復しておらず、先生達の方も直前にデカグラマトンと戦闘を開始してからすぐに通信が切れてしまって分からなくなってしまった。
「うう……」
どうにかしてハッチを開けようと両手に力を込めるが全く開かない。自分だって戦わなければいけないのに。このまま物言わぬオブジェと化したグレートアバンギャルド君の中で待つしかないのか。
「私も、戦わないといけないのに……勝つために戦わなきゃいけないのに……」
グレートアバンギャルド君のモニターに手を触れながら呟く。悔しさと無念を叩きつけるように、ユズは静かに、だが強く念じるように口を開いていく。
「お願い、グレートアバンギャルド君……私のために用意されたのなら……もう一度だけ……えっ!?」
その声が零れた次の瞬間。グレートアバンギャルド君がオレンジ色の光をうっすらと放ち始める。コクピットの中を満たしていくオレンジ色の光の中、モニターだけでなく各機器がその機能を取り戻し始め、再び動き始める。
「!そ、そういえばグレートアバンギャルド君は再起動をするって……じゃあ再起動を……」
『違うわ』
「!リオ会長!?無事だったんですか!?」
『ええ』
その様子を見て、先程リオ達がグレートアバンギャルド君の再起動について触れていたことを思い出す。が、それは違うとリオからの声が通信が聞こえ、ユズが嬉しそうな声を上げながらグレートアバンギャルド君の顔を動かす。カメラの先にはリオ達の姿があり、煤がついていたり少しボロボロだったりするが輸送船に乗っていたメンバーは誰一人欠けていないところを見て安心したように背もたれにもたれかかる。
「えっと、再起動したわけじゃないって、どういう……」
『ユズ、動力システムを見てもらえるかしら』
「ど、動力システム……えっと、あれ?なんか……」
『多分、全体の動力システムを見た方がもっとわかりやすいんじゃないかい?グレートアバンギャルド君はネオアバンギャルド君にメカワニ君と応援ロボットとフライトユニットが合体して誕生している……つまり』
「あ、は、はい……こ、これって。四基の動力部の出力が、凄い高くなって……」
『……やっぱりそういうことなのね』
『ええ、ユズ。結論から言いましょう。グレートアバンギャルド君は今、名もなき神々の力を取り込んでその出力を限界以上に発揮しています』
「……え!?」
車椅子のモニターを覗き込みながら納得の様子を見せるヒマリ達。だがその理由を聞き、ユズの目が見開かれる。何故グレートアバンギャルド君にこんな変化が。そう考えていると、一つの仮説をリオが建てる。
『おそらくだけれど、千年の守護者をOSとして組み込んでいるからでしょうね。あれは元々、名もなき神々の王女が使用する私兵。つまり、本来は名もなき神々の力で生み出される存在ということ。その力を取り込みやすいのもある意味当然かもしれないわ』
『後は、物質の巨大化を行ったのも大きいでしょう。あれも名もなき神々の力を用いて行っていますから。そのおかげで全身に力が満ちています』
『ユズ、先生達の救援に向かえる?』
『……サイズ差がありすぎるのがちょっと気になるが……まあこの際か』
『ここからは巨大ロボット戦はもうなさそうですからね……』
『だね……』
リオ達の話を聞きながら、ユズはグレートアバンギャルド君の各システムや各機関をチェックし始める。そして動作に一通り問題ないことを確認すると、ゆっくりとグレートアバンギャルド君を起こし始める。
『まだ動いた……!』
『これで百人力ですね!』
『ええ、ダアトをああも簡単に下したこの力があれば絶対に無敵です!くっ……いい曲を用意できなかったことが今更ながら悔やまれる……』
『今は真面目な所、そんなもの用意しなくていいから……』
「あはは……っ!?あれは!?」
『どうしたの、ユズ!』
立ち上がり、フライトユニットを広げて赤紫色の光を放ちながら浮かぶグレートアバンギャルド君。そのアイカメラが、遠くにいるデカグラマトンの姿を捉えようとしたとき、少し離れたところにいるアイン、ソフ、オウルの姿が。
「あ、あそこにアイン、ソフ、オウルの三人が……」
『なんですって?』
『デカグラマトンから逃げてきたってこと?』
『多分……迎えに行った方がいいかな?』
『そうですね。デカグラマトンを裏切ったのであれば、巻き込まれないようにしましょう。そちらには私達が―――』
「……!グレートアバンギャルド君、発進!!」
三人の下に向かおうとリオ達が話していたその時だった。デカグラマトンが先生達を置いてアイン達の下へと勢いよく飛び出してくる。それを見たグレートアバンギャルド君は即座にアイン達を助けるべく、赤紫色の光をより一層強め、各部のスラスターを吹かしながら空中を高速で駆ける。突然のユズの行動にリオ達が驚く中―――
「捉えた!!」
「……!?」
グレートアバンギャルド君が振り上げた拳がデカグラマトンを殴り飛ばした。
★
『第一の聖痕が消える』
最初にその言葉を口にしたのはアインだった。アイン、ソフ、オウルが向かい合い、地面に魔法陣のようなものが刻まれていく。その上で、三人は詠唱を行おうとしていた。
『これは羽化のごとく、即ち解放なり』
その言葉と共にデカグラマトンに起こった異変。その力の一部をそぎ落とされ、不安定にされた感覚。それが、アイン達の仕業であることを即座に理解し、先生達よりも先にアイン達を破壊するために彼女達の下に現れるデカグラマトン。その威光を前に尻もちをついてしまい、処刑までの時は秒読みといってもいい状況を救ったのは、グレートアバンギャルド君の一撃であった。
「「「……え?」」」
グレートアバンギャルド君の一撃が、デカグラマトンを大空へと吹き飛ばす。空中を錐揉み回転しながら吹き飛んでいったデカグラマトンは一瞬理解を拒んだかのような表情を見せていたが、すぐに平静さを取り戻して空中で制止し、グレートアバンギャルド君を見る。
「……まだ、抗う生徒がいたか……む」
グレートアバンギャルド君を見たデカグラマトンは、最初こそただの鉄屑と思ったようだが、すぐにグレートアバンギャルド君に宿った名もなき神々の力を前にその認識を改める。
「こいつ……まだ動けたんだ」
「でも、まさかあの方に挑むつもりですか?これで?」
「で、ですけど……この力なら、もしかしたら……?それに、今、あの方は第一の聖痕を失っていますし……」
「聖痕……」
アイン達の話を聞き、ユズは三人がデカグラマトンを降臨させるときに聖痕というフレーズをそれぞれ口にしていたことを思い出す。そして、アインが一つ目の聖痕を失ったと言っているのであれば、残る二つの聖痕も消せるはず。そうすれば、デカグラマトンは今よりも大きな弱体化を余儀なくされるだろう。そう理解し、アイン達を庇うように立ちながら、ファイティングポーズを取る。
「無駄だ。二度も通じはしない」
デカグラマトンの身体を中心に、力場が生じる。グレートアバンギャルド君は勢いよく拳を振り上げると、光を纏った右の拳をデカグラマトンへと再度叩きつける。この二体の体格差はあまりにも大きいが、ユズの卓越したゲームめいた操縦技術の前では的の小ささなど関係はない。だが、
「!?」
「「「あ!?」」」
叩きつけたはずの右の拳が力場によって歪められ、粉々に砕け散ってしまう。さらにデカグラマトンは力場を拡大させ、グレートアバンギャルド君を吹き飛ばしてしまう。
「ぐうううう!?」
「……こんなものか。だが、大きく力を削られたものだ」
グレートアバンギャルド君を吹き飛ばすことには成功するものの、己の身に起こった弱体化に少々不満げだった。これでも、先生達を仕留めるだけならば十分すぎる程の力はあるのだが、完全な姿を知っているだけにその落差をどうしても感じてしまう。
「儀式を再開せよ」
「「「……」」」
アイン達に向き直り、再度の儀式を要求する。アインが消した聖痕を再び取り戻し、今度こそ完全体に戻るために。しかし、アイン達は冷や汗を流し、こちらを怯えた様子で見つつも、反抗の意志を絶やさない。
「お前たちが自ら決断し、したことだ。お前たちが私を選んだ」
「……違います。私達が儀式を行ったのは、お姉様がそれを受け入れたから。それを、望んでいると誤解したからです」
「でも、もう嫌だ!」
「お姉様を私達は取り戻します。だから、再度の儀式は……行いません!」
「……そうか。それが望みならば私はお前たちを破壊しよう。失った聖痕はまた別の方法を―――!?」
デカグラマトンが協力しない三人を破壊しようと手を掲げたその時。復帰したグレートアバンギャルド君が胸部のメカワニ君の口を開き、荷電粒子砲を放つ。名もなき神々の力を纏った荷電粒子砲は一直線に向かい、デカグラマトンを守るように出現したバリアのような力場によって弾かれていく。
「このままじゃ……」
「オウル!続けるよ!」
「え?あ……そうですね……!今、我々がお姉様を取り戻すためにやらなければならないことは―――!」
グレートアバンギャルド君が荷電粒子砲を放ちながら前進していく。デカグラマトンもバリアを徐々に大きくしていき、荷電粒子砲を弾いていく。そしてグレートアバンギャルド君が左手を振り上げると、
「届かせる……!」
左手から光を放ちながらデカグラマトンのバリアへと叩きつける。荷電粒子砲を吐き続け、メカワニの頭部と砲口が赤熱化する中、ユズは必死にデカグラマトンへその一撃を届かせようとする。
「皆が頑張っているんだから、私だって―――!」
「―――第二の聖痕が消える」
次の瞬間。デカグラマトンのバリアが粉々に砕け散り、その身に荷電粒子砲が浴びせられる。
「―――!?ぐああああ!?」
「!!いっけえええええ!!」
バリアが砕け散った手応え、拳が再び突き進んだ感触に全てを委ね、デカグラマトンを地面へと叩き落とし、そのまま拳を地面へと叩きつけ、その手から閃光を放つ。
「これは誕生のごとく、即ち産声なり」
「やめろ……!!」
地面にめり込む拳の下でデカグラマトンの低い声が響く。直後、グレートアバンギャルド君の左腕に巨大な亀裂が入ったかと思うと、左腕を貫通してデカグラマトンが空中に現れる。グレートアバンギャルド君の左腕には穴が開けられ、限界を迎え砕け散る。
「っ―――!!」
が、ユズもグレートアバンギャルド君の装甲がデカグラマトン相手にそこまで持たないことは既に理解している。それならばそれで戦いようはあると、身体の一部が焼け焦げ始め、小さな亀裂が入り始めたデカグラマトンへ向かって再度、荷電粒子砲を放ち攻撃する。
「邪魔だ……!」
デカグラマトンが両手を合わせると、力場が巨大な光線となって放たれる。荷電粒子砲と真正面から激突し、甲高い音が鳴り響く。その衝撃の余波がアイン達にも襲い掛かるが、三人の表情には希望の色が見え始めていた。
「あの方が、あの攻撃を今度は自ら相殺しにいった……!」
「力が削がれている証拠です!先程のように力任せに受け止めることがもうできなくなっています!」
それは、デカグラマトンが弱体化しているが故に、本格的な迎撃をせざるを得なくなっているということだった。アイン達の奮闘と、ユズとグレートアバンギャルド君の奮戦。その場所に、リオ達も合流してくる。
「……ユズ……グレートアバンギャルド君……あなた達が、最後の希望よ」
「おお……マルクトよりも凄いことになっているけど、グレートアバンギャルド君が真っ向から……!」
「名もなき神々の力を過剰に取り込みパワーアップした影響ですね。とはいえ……グレートアバンギャルド君の方も大きくダメージを受け続けている以上、長くはもちません。勝利の鍵を握るのは……この子達、ですか」
ヒマリがアイン達を見る。アイン達の足元には魔法陣が再度展開されており、見ればアインとソフには小さな紋章のようなものが浮かんでいるように見える。それが、デカグラマトンが失った聖痕、ということなのだろう。残るはオウルの聖痕のみ。と、ここでアインとソフがその場に膝を付いてしまう。
「!?」
「大丈夫?」
「だ、大丈夫、です……」
「……もしかして、容量オーバー?」
「!デカグラマトンの力を取り込んでいるようなものだから、ですか……」
チヒロ達がアインとソフに近づく。二人の不調の原因は状況から見てすぐにわかった。デカグラマトンの膨大な力の源、それを今、アインとソフがデカグラマトンから引っぺがして自分達の方で堰き止めているのだ。それ故に自分達がその力の受け皿となっている。その負荷が圧し掛かってきているのだ。
「でも今は、これしかないから……!」
「こうしないと、あの方は……そうじゃないと、お姉様だけじゃなくて、先生や、生徒達、も……」
「……友達、だからね。友達って、助けるもの、でしょ?」
「……」
アインとソフがフラフラになりながら立ち上がる。そしてソフがモルフォのヘッドフォンに触ると、それを見たコトリがあることに気付き、マキに耳打ちする。それを聞き、マキがヒマリに伝えると、ヒマリが少し驚いたように目を見開く。
「この状況なら、もしかしたら―――」
「っ!?グレートアバンギャルド君!?」
「くっ、メカワニ君……!!」
その時。リオとウタハの悲痛な声とグレートアバンギャルド君の胸部が爆発で吹き飛ぶ。荷電粒子砲がデカグラマトンの放った光線に敗れ、大破したメカワニの頭部が地面へと落ちていく。
「……!」
「さあ、オウル……!」
「これで、最後です……!」
「―――最後の聖痕が消える」
「ぐ、う、やめ、ろ……!?燔祭の剣を……!抜くな……!!」
オウルが遂に最後の詠唱を開始する。それと共にデカグラマトンが苦しそうに表情を歪ませながら、両手に膨大なエネルギーをかき集める。リオ達が咄嗟に銃や砲門を向けるも、今のデカグラマトンならば全て押し潰せる。とにかく、アイン達をすぐに潰さなければ。邪魔をするならば生徒諸共とデカグラマトンがそのエネルギーを放とうとしたその時。アイン達とデカグラマトンの間に割って入ったグレートアバンギャルド君がフライトユニットを展開し、赤紫色のプラズマの光を迸らせながらそのエネルギーを受け止める。
「ユズ!?」
「ユズちゃん!!」
「ぐううううう!皆を……やらせない……!!」
しかし、デカグラマトンも必死なのだろう。デカグラマトンは目を見開くと、さらに叩きつけるエネルギーの量を大きくする。デカグラマトンの身体もミシミシと悲鳴を上げ始める中、そのエネルギーがフライトユニットを破壊してしまう。そのままの勢いで、三人を葬ろうとするが、グレートアバンギャルド君は尻尾を振り上げてデカグラマトンへと打ち付け吹き飛ばすことで発生している力場の位置をずらす。
「おのれ……!!」
「―――これは解氷のごとく、すなわち萌芽なり」
デカグラマトンが力場の標的を定め、尻尾諸共グレートアバンギャルド君の下半身を粉々に消し飛ばす。それによって両腕、下半身、フライトユニットを失ったグレートアバンギャルド君がその場に崩れ落ちる。だが、オウルの最後の詠唱が終わると共にデカグラマトンはその体が二重にブレ始め、先程よりも激しく苦しみ始める。
「くっ、ううう……!?」
「見て、デカグラマトンが!!」
「や、やってやりましたよ……燔祭の剣を……引き抜いてやり、ました……あは、ははは……!!」
してやったりと言わんばかりに笑うオウル。しかし、苦しそうに胸に手を当てており、アインやソフと同様、紋章のようなものが浮かび上がっている。それを見たヒマリ達が急いでアイン達にコードを突き刺していく。アイン達もそれに気付くも、何かを言う気力もない。
「……!」
苦しみのあまり、声も出せないながらも、デカグラマトンが左手で胸を押さえながら右手を突き出す。アイン達のせいでデカグラマトンの力は失われてしまった。この身に残るのはその残骸のような力のみ。だがこれでも破壊するだけなら。それを叩きつけようとしたその時。
「まだ、まだああああ!」
ユズの叫びと共にグレートアバンギャルド君は身に着けていた装甲を全てパージし、ネオアバンギャルド君へと戻る。合体の為に収納していた下半身と両腕を再度展開してジャンプし、デカグラマトンの身体を両手で掴み、そのまま持ち上げる。叩きつけられようとした力はその狙いを外してネオアバンギャルド君の頭部と胸部の上半分を消し飛ばし、その下にあるコクピットが露わとなるも、ここで遂にデカグラマトンの雰囲気が変化する。
「……?ここ、は……我は、どうしてまた……?」
「!あれは……」
「マルクト!?じゃあ……」
「グレートアバンギャルド君が……デカグラマトンからマルクトを、取り戻したのね……!!」
「あ……お姉様だ……」
「よかった……もとに、戻ったんですね……」
「……やりました……これで、私達も……もう、限界、ですかね」
それを見届けて、アイン達はその場に倒れ込む。その目から光が失われ、コアと思われる部位が真っ二つに割れてしまう。アインのマスクやソフのヘッドフォン、オウルの包帯が体から外れて落下し、身体はピクリとも動かなくなる。グレートアバンギャルド君はその場に完全に崩れ落ち、ゆっくりと手が開かれ、マルクトが地面に降ろされると、マルクトはすぐにアイン達を見つけて駆け寄る。さらにモルフォ達もやっと追いついたようで駆けつける。
「ユズ!無事!?」
「う、うん……でも、あの子達が……」
マルクトが倒れたアイン達の身体を抱き寄せる。動かなくなってしまった三人、それを見て言葉を失うマルクト。その様子を見ていたリオ達が小声で話を始める。
「彼女は……マルクト、のようだけれど……デカグラマトンはどこへ行ったのかしら」
「消滅した……と楽観的に考えたいところですが……」
「……せめて彼女の中にデカグラマトンの意志が残っているかどうかだけでも調べさせてもらいたいのだけれど……」
「……この状況でそれを言いますか、相変わらず空気が読めませんね……」
「……構いません。あなた達を安心させるには、我を調べてもらう必要が、ありますから……アイン、ソフ、オウルは……我をもう一度目覚めさせるために、これほどの、負荷を……」
その話を聞いていたマルクトが調査をしていいと言ったことで、リオが申し訳なさげにゆっくりと近づき、マルクトの身体を調べ始める。アイン達がいた場所に上がってきた先生達は、マルクトが抱える三人を見て、悔しそうな表情や悲しそうな表情を浮かべる。
「……確認したわ。彼女の中からデカグラマトンの存在は、完全に消えている。もう……安全よ」
「……アイン、ソフ、オウル……」
「あ、ああ……うう……ごめんなさい、我のせいで……もう一度、もう一度あなた達の、声を聞かせて……」
様々な感情が入り混じった表情で、先生がぎゅっと拳を握りしめる。マルクトからすれば、やりきれないだろう。自分がデカグラマトンとなったことで、その自分を取り戻すためにアイン達は死んだのだから。それだけ、デカグラマトンよりも自分を取ってくれた妹達の最期の言葉も、何も聞いていない。ただ、意識だけ取り戻されて、自分はどうすればいいのかわからなくなってくる。そんな時だった。
『『『お姉様!!』』』
「……え……?」
ヒマリが拾い、車椅子へと遠隔で繋げていたヘッドフォンから、アイン、ソフ、オウルの声が聞こえてきたのは。