転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
「問題です。それは青色です。ですが別の人はそれを赤だと言います。また別の人は黒と、はたまた別の人は灰色と言うのです。ではそれとはなんでしょうか?」
「……えーと……?」
「……ぜ、全然わからない……」
ゲーム開発部の部室で、ミドリとユズの姿はモルフォの言葉に首を傾げる。三人しかいないゲーム開発部の部室でミドリとユズはモルフォの言おうとしているものが何なのかわからず、考え込んでしまう。
「えーと……質問していいんだよね?」
「そうだよ」
「じゃあ、えっと……それって生き物なの?」
「いいえ」
「生き物じゃないならえっと……無機物?」
「いいえ……いや、いいえであってるはず」
モルフォの示す答えを見つけるために、ユズとミドリが質問を重ねていく。そして出てきた情報を下に答えを考えていくが、まだこれだけではわからない。
「じゃあそれは……私達が知ってるものなの?」
「はい」
「じゃあ、この部屋にある?」
「いいえ」
「ミレニアムにある?」
「いいえ」
「キヴォトスにある?」
「いいえ、でもキヴォトスから確認はできます」
室内や学校にはない。しかしキヴォトスから確認することはできる。新たな情報を得たはいいが、ユズは未だに悩み込んでしまう。そんな中、ミドリは何か引っかかるものができた様子で手に入れた情報を呟き始める。
「青、赤、黒、灰で生き物でも無機物でもなくて、キヴォトスにはないけど見れるもの……あっ、わかった!」
「本当?」
「答えは、空だ!」
「!正解!」
そして、遂に答えを導いたのだろう。ミドリが出した答えに、モルフォは正解だと告げる。それを聞いたミドリは嬉しそうにガッツポーズを見せる。
「やった!」
「あー、そっか……空か……言われてみればそうだね」
「えへへ、答えがわかると気持ちいいね」
自分が正解を出したこともあって大きく喜ぶミドリ。その隣で合点がいったように頷くユズ。と、部室の扉が開かれモモイが入ってくる。
「ただいま!……ってあれ?三人とも何やってるの?」
「お帰り、お姉ちゃん。えーと、ウミガメのスープ?」
「う、ウミガメ?」
「水平思考クイズってやつだよ」
帰ってきたモモイは向き合ってゲームをするわけでもなく何かを楽しんでいる三人の様子にすぐに気付く。しかし、ミドリから帰ってきたウミガメのスープという言葉に困惑してしまう。
「す、スイベイ思考クイズって何?」
「水平思考クイズ。まあ要するに、問題文とヒントから答えを導き出すクイズだね」
水平思考クイズ。それは出題者が読み上げる問題に対して、回答者がいくつか質問を行う。それに対して、出題者は「はい」「いいえ」「わからない」のいずれかで答えていき、それらの回答を踏まえた上で状況を整理し、問題の答えを導き出すという形式のクイズである。
「へー、なんかミステリーっぽいね」
「まあ推理系だから近いといえば近いのかな?」
「でもなんでウミガメのスープ?」
「ウミガメのスープを使ったものがかなり衝撃的でね……かなーり端折って言っちゃうけど、あるお客さんがレストランでウミガメのスープを注文したんだけど、一口飲んだところでシェフに本当にウミガメのスープかどうか聞くんだよね。そしたら店主は間違いなくウミガメのスープだって答えるんだけど……それを聞いたその男の人はその後、ウミガメのスープに強いトラウマを持つようになってしまうの」
「え!?なんで!?」
元ネタのウミガメのスープではスープを飲んだ人は自殺してしまうのだが、わざわざそんな衝撃的な背景にする必要もないだろうとふんわり改変しておく。モモイ達は今日初めて触れるクイズなのだから変に苦手意識を持ってほしくない。
「亀が動物として大好きだったから?」
「えー?でもそれならわざわざ注文しなくない?」
「確かに……」
「どういうことなの?」
「その男の人は過去に海で漂流していて、食料が尽きて衰弱し、餓死しそうになっていたんだけど、そこで仲間たちが運良くウミガメを捕まえて作ったスープを食べさせたことで生き延びることができたんだよ。だけど、そのスープは……先に飢えで死んでしまった仲間たちから作られた……」
「え!?」
「ひぃ!?」
「ちょっ!?急にホラーになるじゃん!!」
死人から作られたスープをウミガメのスープと偽って食した男の人は、本物のウミガメのスープを食べたことで、その味の違いからかつて食べたそれが仲間の遺体であることに気付いたせいで強いトラウマを抱くようになってしまったのだ。マイルドにしたくてもここだけは話の根幹でもあるためどうしても弄れなかった。
「この問題文からなんでこんなグロテスクな方向に行くの!?」
「まあ、水平思考クイズの一例だよ。問題文だけじゃ予想もできないような答えに質問を重ねて辿り着く……それがこのクイズの面白さだよ!」
「……い、いやぁ、これは例題で出されて正解だったかも。これを問題で出されてたらちょっとやばかった……」
思わず冷や汗を流しながら呟いたモモイにミドリ達も無言で頷く。とはいえ、この例題のおかげで水平思考クイズがどういうものかはよくわかったことだろう。両手を叩いて切り替えながら、モルフォが次の問題を出す。
「というわけで早速本題やってみよう!問題です!何者かに襲われた少女がいます。その少女はその場に倒れて動かなくなってしまいました。ですがその少女には外傷などはなく、30分後には自力で立ち上がりました。一体なぜでしょう?」
「え?回復したからじゃない?」
「違うよ」
「回復って……そんなC&Cじゃないんだから」
さすがに例外を持ち出すのは無しだろう。というより元々それは答えではない。だがそういえばキヴォトスだと普通にそうなるな……と言われてみると気付いてしまう。これは問題の出し方がちょっと下手だったか?と、ちょっとだけ後悔しながら次の質問を待つ。
「襲ってきたのは魔物だったとか?」
「いいえ」
「……その女の子は人間?……って少女って言ってたから人間か」
「はい、人間です」
「襲ってきたのはロボットとか!?」
「いいえ」
「……そもそも襲ってきたのって生き物なの?」
「いいえ」
連続でぶつけられた質問。その中で襲撃者が生き物ではないという情報に三人は悩み始める。答えには確実に近づいてはいるのだが、それが何なのか全く見えてこない。
「人間じゃないなら何に襲われたんだろう……罠に引っかかった?」
「いいえ」
「狙撃……は人だから違うか……」
「30分後に起きたって大事な所?」
「いいえ、別に30分後っていう時間が関係あるわけじゃないかな」
「それってもしかして、私達も襲われる?」
「はい」
「えっ」
さらに情報を得ようとして、モモイがかけた質問にモルフォがはいと答えたことで表情が軽く引きつり始める。自分達も襲われるやばい何かがあるというのか。しかもそれは生物でもなければ、罠ではないということは兵器の類でもないのだろう。とすれば、考えられる脅威は。
「……そもそも、襲ってきたものって見れるもの?」
「いいえ」
「見えない何かに襲われてるの!?」
「……はっ、襲ってきたのは病気?」
「いいえ」
「えー、病気じゃないの……?」
脳裏に浮かんだその答えに確信を得ていたのだろう。ミドリが自信満々で答えるも、そうではないと否定されてしまう。完全に手詰まりになってしまった。三人が悩んでいると。
「ふぁ……昨日夜更かししてたからちょっと眠気が……あ?」
「「……」」
突然あくびをしだしたモモイに2人の視線が突き刺さる。はっとなった様子の二人を見て、モモイがどうしたのかとオロオロしながらミドリとユズの顔を見ていると、モモイの様子を見て答えを理解したであろうミドリとユズは顔を見合わせ、頷き合う。
「せーの」
「「少女は眠気に襲われて少しの間眠っていた!」」
「正解!」
「……えええええええ!?」
同時に宣言された答えにモモイが驚きの声を上げる。そしてすぐに、言われてみれば確かに……!と気付きを得る。言われてみれば眠気は確かに襲うものである。そして人によっては確かに三十分程度で起きるのも珍しくない。寝落ちしてしまった時とかは大体それぐらいの時間で目を覚ますものだろう。
「やった、正解した……!」
「そっかぁ、そういうことなんだ」
「うぅーん、確かにすっきりするけどなんかもやもやする!」
とはいえモモイとしては少し不満げな様子だ。全員分からない状態から誰かが答えを出したならまだしも、今の答えについては少し違う。そんな思いがあった。こういうのは自分で導き出して正解を勝ち取りたいものなのだから。
「くそぉ、次の問題だよ!なんかいいのない!?」
「じゃあ……こういうのはどうかな?問題です。出題された四択問題に、Cと答えた少女がいました。その回答は正解だったのですが、恥をかいてしまったのです。一体なぜでしょう?」
やる気十分といった様子のモモイの様子を見て、次の問題を出す。その内容を聞いた三人は考え込む。
「四択で間違ったわけじゃないのに?」
「えーと……問題の回答はABCD?」
「いいえ」
「これってテスト?」
「いいえ」
「「「……?」」」
アルファベットが回答じゃないのはまだわかる。しかしテストではないのなら何の選択問題なのか。とはいえ、さっきの眠気の話といい、そもそも今自分達がアタリをつけているものが前提から崩れるというのも十分考えられる。決めつけると逆に正解から遠のいてしまうだろうと、一旦そのことは置いておくことにする。
「答えてる少女は特別な人とか?」
「いいえ、答えてる人が誰かは関係ないかな」
「答えてる場所は関係ある?」
「いいえ、場所も関係ないかな?」
「……それって本当にCなの?」
「いいえ」
「「「え?」」」
完全に混乱してしまう三人。これはドツボにはまっているなとモルフォが苦笑しながら次の質問を待っていると、どうにか次の質問を捻りだしてきたモモイが口を開く。
「なんかこう……ほら、なんか別のものをCって読んでるだけとか?当て字とか……」
「はい。でも当て字ではないかな?そう見えるってだけで」
「Cっぽく見える四択あるクイズ……?」
「……ヘイロークイズ?」
「いいえ」
「え、ヘイロー?ヘイローってCなの?」
と、そんな中で突然口走ったミドリの言葉に三人が視線を向ける。とはいえミドリ自身ないだろうなぁと思いつつ質問していたようであまり焦ったりしている様子はない。
「いや、シャーレの先生がヘイローには一人一人違う形状があるって言っていたっていう噂が……その噂によると、ヘイローって皆輪っかになってるらしくて」
「だとしても、それを知らないモルフォが答えにするかなぁ?」
「だよねぇ」
「というかヘイローって個人差あるんだ……」
キヴォトスの外から来たという先生にはわかるのかもしれない。キヴォトスの外から来たのが条件なら自分も見えそうだが、ヘイローを持っているとヘイローを認識できない、みたいな特性でもあったりするのだろうか?等と脱線した考えを一瞬展開させるも、どうでもいいことを考えても仕方ないだろうとすぐに思考の隅に追いやる。
「まあヘイローは全く無関係だよ、私もその話は初めて聞いたし」
「と、なると……うーん?」
「ゲーム開発部の皆さん、いますか?」
そしてまたクイズの答えを三人が探していると、突然部室の扉がノックされる。
「誰だろう?」
「この声、ノア先輩じゃない?」
「確かに……はい、いますよ」
その声の主がノアだと気付き、ミドリが招き入れる。その姿を見てびくっと肩を震わせるユズだったが、本人も多少は図太くなったのかすぐに隠れるほどではなくなっていた。部室の中に入ってきたノアは四人の姿を見つけると優しく笑いかける。
「皆いてくれてよかったです。ちょっとお知らせがあって」
「お知らせ?」
「ミレニアムの部活動における重要事項の変更が決まりました。なので、部長会議のお知らせをメールでも送っているんですが……」
「ユズ?」
「……あ、本当だ……ごめん、気付かなかった」
ノアから聞いた言葉にユズが慌ててスマホを開く。確かにそこにはノアがセミナーから送ったメールが届いており、日時と場所の指定がされていた。
「それぞれの部活動の代表者には出席してもらいたいんです。今後の部活動にも関わってきますから。メールが届いても気付かなそうなところにこうやって直接連絡しに来たのですが……正解だったようです」
「ぁぅ……」
「えっと、こ、これは水平しぼうクイズをやってただけで……」
「水平思考クイズだよ、全部間違えてるじゃん」
実際、部活動によってはメールを送っても気付かないところもある。だからセミナーがこうして直接伝えに来ているのだろう。
(そういえばユウカ先輩、今日はシャーレの当番だっけ。だからノア先輩が)
「水平思考クイズ?」
「えっと……水平思考クイズは……」
聞き覚えのないクイズを聞き、疑問を抱くノアにミドリが説明していく。その説明を聞いていたノアは少し考えると、
「成程、面白そうなクイズですね」
「じゃあノア先輩もやってみますか?」
「では一問だけ。あまり長い時間はいれませんからね」
「ノア先輩が参加してくれるならもう楽勝だよね!」
そう微笑み、参加の意思を表明する。そして今の問題と、モモイ達がしてきた質問の内容を合わせて聞いたノアが頷くと、
「成程……その問題の答えは視力検査、ですね」
「……あ!?」
「た、確かに……」
「Cだ……!」
「正解です!」
見事に正解を引き当てて見せる。この問題の答えは視力検査。四択問題というのは上下左右を意味しており、本来右と答える記号は、Cと同じ形状をしている。だからこそ、それを右ではなくCと言ってしまい、少女は正解ではあったものの恥をかいてしまうという結果になってしまったのだ。
「ノア先輩すごーい……あっという間に正解しちゃった」
「ふふ、確かにこれは面白いですね。問題文からは一見繋がらない答えですが、いざその答えを言われると納得してしまう……今度、ユウカちゃんに出してみても面白そうですね。と、これ以上はまずいので私はこれで。それではユズちゃん、お願いしますね」
「は、はい……!」
最後にもう一度、部屋に入ってきた目的を念押ししてノアは去っていく。扉が閉まる音を聞きながら、ユズはモモイの方を見る。
「え、えっと、モモイ……これなんだけど……」
「やっぱりきつい?まあそういうことなら、ユズの代わりに私が出るよ!」
あくまで部活動の代表者となっているのであれば、部長が何らかの理由で出席できない場合は代理人を立てることも可能だ。モモイがユズの代わりに出席しようということなのだろう。
「それはそれとして、やっぱり廃部の話も持ち上がってるし……モルフォ!部活動はいってよ!そうすれば続くんだから!」
「逃げるな逃げるな。ゲーム開発部なんだからちゃんとゲーム開発しなよ」
「モルフォにフラれたー!!」
「まあ……コンクールはまだ先とはいえ、少しでも手を付けた方がいいかもね……アビドスの人たちにも啖呵切っちゃったわけだし」
「うん……」
それとして、そろそろ本気でゲームを作り始めなければまずいかもしれない。そう、ゲーム開発部は思うのだった。
だがまだ四人は知らない。本来まだ時間があると思ってたゲーム作りが、思った以上に時間が残ってない事態に陥ってしまうことなんて。