転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
「アイン、ソフ、オウル……!?」
驚いたようにヘッドフォンを手に取るマルクト。三人の身体は、デカグラマトンの力を削ぐための代償を払い、沈黙している。三人の意識も焼き切れてしまい、マルクトともう話をすることもできない。そう、思われていたはずだった。しかしこれは。
「緊急避難用プログラムです」
「緊急避難用プログラム……?」
「……成程。あれはボディに危機的な症状が生じた際に内部の意識を別のメモリに強制移動させるエスケーププロトコル。それをアイン、ソフ、オウルに用いたんですね」
ヒマリが種を明かす。それは、最初のマルクトとの戦いでケイの身体が大怪我を負ってしまった際に彼女をアリスの中へと戻したプログラムだ。アイン達のボディが悲鳴を上げ始めたのを見たヒマリは、すぐにこのプログラムを強制的にインストールさせ、その移動先をソフに渡されたモルフォのヘッドフォンへと指定したのだ。
「ええ、モルフォがいいものを用意しておいてくれたおかげで助かりました。一時的に私の車椅子を避難先にしてもよかったのですが……それよりも実績のある入れ物がある方が確実でしたからね」
モルフォのヘッドフォンは、元々もう一人のモルフォが入っていた。そのため、AIを保管するのに適したメモリになっており、結局それをやることこそなかったがコトリが手を加えたことでアリスとケイも同時に入れるようにするという改造を施していた。そのため、AIの保存を一度もやったことのないヒマリの車椅子よりも適していると判断し、アイン達をそちらへと避難、それによって身体の破壊から意識を逃れさせることに成功したのだ。
『だからお姉様、心配しないで!』
『……まあ、身体の方はなくなってしまったので作り直しですが……まあ、あの方も消えてしまいましたし、少し時間をかければ問題もないでしょう。それにあの身体だって、あの方が復活した後は用済みで元々稼働限界も近いところはありましたし……むしろ丁度良かったかもしれませんね!……生き延びたのは、ま、まぁ皆さんのおかげ……ではありますが。一応、感謝はしといてあげますよ』
『と、とりあえずケセドちゃんのエリアにあったせ、生産工場を使わせてくれると……あ、ありがたいんですけど……』
ソフもモルフォのヘッドフォンを身に着けた時に何故かヘッドフォンにしては多い容量には気付いていたものの、それがこのような形で転ぶとは。正直な所、三人共こんなことをしたら身体が限界を迎えて助からないと思っていたため、自分達の意識体がまだ残っている方がむしろ違和感を感じているレベルだった。しかし、ヘッドフォンについていたカメラから見えるマルクトの顔が安堵した様子で微笑んでいるのを見て、三人も良かったとマルクトからは見えない表情を緩める。
「……でも、これで終わりなの?」
「デカグラマトンはもういなくなったんだろ?……やり返せないのはちと残念だが……」
「まあまあ、終わり良ければ総て良し、とも言いますし」
「後は……ユウカ先輩達ですね?」
「そうだね。まずはユウカ達を見つけよう、きっと生きているはずだからね」
「墜落したところは見ましたし、多分クリフォトもあると思います。それさえあれば……」
「インベイドピラーのバリアを展開させられていれば大破させられていないはずだけれど……」
「発つ前に修理が必要かもしれないね。墜落位置はわかる?」
デカグラマトンとの戦い自体は一方的にやられてしまったこともあってか少し不満げなネル。その
様子を宥めながら、この後の事を先生達は話し始める。と、そんな時だった。ヒマリの車椅子やリオのタブレットなどがアラートを鳴らし始める。
「「「!?」」」
「何!?」
「皆!」
直後、アスナが険しい声で警戒を促しながらアサルトライフルを構える。それを聞いてモモイ達も慌てて武器を構えると、近くにあった地面が割れていく。だが、地面が割れるだけで何事もないことに気付くと、注意深くその中を覗き込む。そこには培養ポッドが置いてある部屋があり、そこにはマルクトそっくりの素体が保管されていた。ただし、マルクトとの差異としては帽子やビットが引き続き存在していないことだろう。もっとも、この場にいる本物のマルクトもそれらを失っているのだが。
「え!?ま、マルクトが……二人!?」
「……違います。あれは完成された二つ目の神体……」
「……ふ、二つ目?予備機、ってこと?」
それを見てマルクトがあの身体はどういう用途のものだったのか思い出す。マルクトの身体が二つある。それ自体は理解できない話ではない。しかし、予備機というわけではないようでヒビキの漏らした言葉にマルクトは首を横に振る。
「我のこの身体は一つ目の神体です。炎の剣の流れ。物質世界における創造。それはケテルに始まりマルクトへと至る順番。ですが、すべての可能性に備える目的で二つ目の神体が必要でした。それは知恵の蛇の流れに沿って鋳造されたのです。セフィラに直接触れることなく、逆の流れで、神の知恵へと向かう経路の成果物」
「……サブプランのための素体だったってことかい?」
「ええ。別の解釈をするならば、十のセフィラを経ることなく、セフィラそのものを自身の身体に宿す―――可能性の象徴」
「……吸収ってこと?待って、それって―――」
その場にいた全員の視線がケイに集まる。同時に、リオとヒマリはケイの今の身体に対して設けられていた欠陥あり、という注意文を思い出す。もし、眼下のもう一人のマルクトがその完成形だとするなら、ここにある同様の機能を持っているケイの身体は―――
『……そう。今のケイが使用している体は二つ目の神体を完成させるために行われた試行錯誤の中で生み出されたもの』
『だ、だから……セフィラを体内に保存できたんです』
『神体がすべてのセフィラを宿した場合、神体そのものがセフィロトの樹として覚醒、作られた身体に神の知恵が宿るのです。お姉様の身体に比べれば出力は劣ると思いますが、神聖や神秘は……おそらく同等でしょう』
「……え、待って?じゃあケイが全部のセフィラってのを手に入れたらデカグラマトンになってたの?」
「……その可能性はありました」
「な、なんてデストラップ……!!」
デカグラマトンが降臨する前は、これでマルクトのコアを手に入れればこの戦いが終わる、なんて意気揚々と考えていたが、もしそうなってしまったら逆にケイがデカグラマトンに乗っ取られる可能性は十分あったのだ。その最悪の事態を予測し、ハレ達が冷や汗を流す。
「ま、まあ……とりあえずマルクトのコアを抜く必要はなくなったわけだし問題はないんじゃない?」
「……ええ。マルクトを守ろうとしていた三人の行動は大正解だった、ということですか」
「では、そろそろ後始末を―――」
『……一つ目の器は割れ、二つ目の器が用意された』
とはいえ、今はそんな最悪のもしもを考える必要はない。話題を切り替えるように手を叩いたモルフォの言葉に皆も頷き行動を開始しようとしたその時。聞き覚えのあるトーンの声音が、ケイの中から聞こえてくる。
『壊れたものは立ち直り、崩れたものは正しき道に立つだろう』
「―――!?」
「え、ケイ!?」
「!!これは……」
『まさか、これって!?』
『ま、まずいです……!』
再び聞こえてくる声。直後、ケイはその場に膝をついてしまう。一体何があったのか、アリスが慌てた様子で駆け寄り心配するが。マルクトたちは険しい表情でケイを見て、何があったのかを理解する。
(力、が……身体も、吸い寄せられて……!)
「甘かったな。欠陥を授かった子よ」
そして、その声は眼下からはっきりと聞こえてきた。培養ポッドが謎の力によってひび割れ、ポッドの中から目を開いたもう一人のマルクトが浮かび上がってくる。
「ぐ……一体、なんの……」
「私は知っている。セフィラを集め、鋼鉄大陸にお前を認識させたことを。だが、それは―――私もまた、お前の身体を私の一部として扱えるという意味だ」
「「「!?」」」
地上へと浮かび上がったもう一人のマルクト。だがその声音やトーン、話し方から、これはマルクトではなく、先程まで戦っていた相手、デカグラマトンであることを先生達は嫌でも認識させられる。マルクトの中から消えたはずのデカグラマトンは、このもう一つのマルクトの身体に宿り再び現れたのだ。即座にネル達がエネルギー弾を撃ち込むが、デカグラマトンの周囲を力場が生み出したバリアが覆い、エネルギー弾を弾いてしまう。
「誰一人、この事実に気付けた者はいなかった。その時点でお前たちは敗北していたのだ」
「……!」
「欠陥を授かった子よ。お前がその神体を選んだ瞬間から、この結末は決まっていた。が、お前がその神体を選んでいなければ、ここまで辿り着けなかったのも事実だ。これが知恵を越えた、意志が成す一つの道である」
復活したデカグラマトンに攻撃は届かない。デカグラマトンはネル達を一瞥すると、ケイへ語りかける。セフィラの力を利用しなければケイ達はここまで来れてはいなかっただろう。だが、それによってケイ達は敗北を迎えることになる。どう転んでもお前たちは勝てなかったのだという無慈悲なその宣告に苦しそうに表情を歪めるケイ。デカグラマトンを警戒しながらも、ケイの様子を皆が心配する中、突然鋼鉄大陸が揺れたかと思うと、
「揺れ……!?」
「……これは」
『鋼鉄大陸が動き出した……!』
『鋼鉄昇華が再開されて……!』
「……まさか、ケイの神体を支配することでデカグラマトンが鋼鉄大陸への権限を取り戻した!?」
「くっ……どうしたら……!」
鋼鉄大陸が再び動き始める。止めたはずの鋼鉄昇華は、ケイの身体を自らの支配下に置くというデカグラマトンの約束された結末によって再開され、再びキヴォトスは終焉へと向かおうとしていた。ここにきてのどんでん返しにチヒロが苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。そんな中、アリスはデカグラマトンから視線を外してケイをじっと見つめると、語り掛ける。
「ケイ、負けては駄目です」
「アリス……?」
「……そうだよ。ケイ、戦うんだ、まだ終わってないよ」
「モルフォ……」
その様子を見たモルフォも、ケイを鼓舞するように声をかける。それに気付いたモモイやミドリ、ユズもケイの周りに集まり、必死に声をかけて苦しむケイの意識を繋ぎ止めようとする。
「ケイちゃん!負けたら駄目だよ!絶対に!」
「ミドリ……」
「戦うんだよケイ!こんなふざけた偉そうな奴になんか負けちゃ駄目なんだから!」
「モモイ……」
「戦おう、ケイ。きっとそれが、自分らしく生きていくってことなんだと……思うんだ」
「ユズ……」
力が抜けていくケイの身体に、少しずつだが力が込められていく。必死に歯を食いしばり、足掻くケイ。彼女の背を押し、そして引っ張り上げるように、アリスが優しくも、厳しく語り掛ける。
「戦って、勝たなければ……私達はきっと、このキヴォトスに生きる全ての者に、顔向けできないんだと思います。私達は……戦わなければ生き残れないんです」
「……無駄だ」
徐々に抵抗の意志を取り戻しつつあるケイ。その様子はデカグラマトンにも見えるのだろう。だからこそ、デカグラマトンはケイの立ち直りつつある心を、意志を挫くべく言葉を紡ぐ。
「確かにお前たちは最善を選び続けたのだろう。だが、最善と思われたその答えこそが、大いなる間違い。最悪の結果を招く……非常によくあることだ。部分的に見れば、情報の不足が原因だろう。しかし全体を俯瞰すれば、生命にとって、自由という概念が、享受しきれない程に大きすぎるが故なのだ。これが、この世界とお前達の生が持つ、根本的な不条理であり矛盾……苦痛であり、罪だ」
「……れ」
「恐れるな。私がそれを赦そう。そのすべてを、根絶する。私にすべてを任せ、お前たちは安息を得るがいい」
「……黙れ……!」
「鍵よ。汝の経験、私の神体を得たこと、それらは偶然と思うか?否、過去とは偶然ではなく、起きたことは必然という結果となる。だからこそ取り返しがつかず、やり直すこともできない。形を成した過去は堅個な礎となり、現在は過去の上に成り立つ」
しかしケイは、デカグラマトンの問い、その言葉を一蹴する。その言葉は一見、甘く、優しい言葉であり、ケイの全身に響き渡るものだった。それに比べればゲーム開発部の皆が語る言葉はふわふわしていて、あまりにも感情論が過ぎる、不確定なもの。
「王女よ」
「は、はい!?」
しかし折れないケイに業を煮やしたか、デカグラマトンはその言葉の矛先をアリスへ向ける。アリスももまた、ケイと同じように全身に言葉が響き渡すような感覚に見舞われる。
「汝らのあるべき姿はどのようなものだったのか。汝らがなるべき形はどのようなものだったのか。名もなき神々は何のために、汝らをこの地に残し消えたのか。そしてあの司祭たちは何を求め、未練を捨てられずにいるのか。私が答えよう」
「答え……?」
「この世界は、今の姿に規定される前の世界が存在した。汝らがその本質に還ることのできる世界が存在した。今の世界は偽りで、幻想で、逃避先である。それ故に―――この世界は箱舟と定義された。汝らの根源を探せ。根源に回帰しなければならない、私達はそれを避けられないのだから。汝らがいくら否定し続けようと、それは過去の傷痕のごとく、永遠に汝らに付き纏うだろう」
アリスの脳裏に、キヴォトスの景色が次々と浮かび上がる。おそらくはデカグラマトンが見せているものなのだろう。デカグラマトンの言葉が、アリスとケイを揺らしていく。名もなき神々の王女と、その侍女としての役目をちらつかせ、二人の意識をデカグラマトンは啓示を示すかのように呑み込んでいく。今や、二人には他の皆の声すら聞こえていないはずだ。
「王女よ。そして侍女よ。まるで、汝らが過去の影をいつまでも身に纏わなければならぬように。世界が神を忘るるとも、神は世界を忘るるべからず。それは自身の神聖を自ら手放すことである。私は汝らが究極的に望む世界を、再び創造する。それは完全なる世界で、完全であるが故に変化を必要としない世界。すべてが生まれ、作られた姿のまま生きられる世界。選択以前に、選択肢そのものが存在しない世界となる」
デカグラマトンの言葉は、その場にいた者達の言葉すら次第に失わせていた。それが、どんな世界なのか。それを解釈する内に多くの者達の表情に冷や汗が浮かぶ。そして、それを最初から知っていたマルクトは、無言で先生達を見つめる。
「過去は観測された瞬間に確定し、一本の枝として収束する。未来は観測できないが故に、形のない幻想として発散し、無限の枝を彼方へと伸ばす。現在はその過去と未来の狭間に存在する、あまりにも薄い刹那に過ぎない。伸びすぎた枝は切り落とされるべきだ。その世界に、幸福は存在しないかもしれない。だが少なくとも苦痛は存在しない。その世界に、更なる可能性は存在しないかもしれない。だが少なくとも、罪は存在しない」
『……違う』
その言葉は、絶対者としては一家言あるのかもしれない。だが、とてもそれを受け入れられるわけがない人物だっている。伸びすぎた枝を切り落とすべきというのであれば。滅びを迎えた未来は、その存在諸共不要と切り捨てられるようなものだ。そんなこと、とても彼女が受け入れられるわけがなかった。
『切り捨てていい枝なんて、未来なんて……ない。存在したら、いけないことなんだよ……!』
「……君が言うべき切り落とされるべき枝には―――」
もう一人のモルフォの呟いた小さな言葉。まるで言霊のように駆け巡ったその言葉に、強引に呑まれかけていたアリスとケイの目が、意識が覚醒したかのように見開かれる。そして、先生もその言葉に大きく頷くと、デカグラマトンへ逆に問いかける。
「アイン、ソフ、オウルも含まれるの?」
『『『!!』』』
「……」
絶対的な力を得たデカグラマトンは、アイン達を葬ろうとした。それは、アイン達が叛逆の意志を示したからというのはあるだろう。だが、今ならばそれ以前の問題と先生は指摘できる。デカグラマトンには第二の方法があったのだ。こうして、マルクトとデカグラマトンが存在しているように。デカグラマトンのために、マルクトの為にここまで尽くした三人のため、マルクトを残したまま、デカグラマトンが現れる道が、可能性が、未来があったかもしれない。なのに、それを捨てて、アイン達を、あまつさえマルクトをも切り捨てるのが最善というのか。
「そうだ。必然的に、過ぎた世界の遺産に含まれる。過ぎた世界では全てを抱えることはできない。それは即ち、矛盾を引き起こすからである。罪と苦痛こそ、まさにそのもの。私が真理を語り、お前たちは傾聴せよ」
「言わせて、おけば……!」
それに対してデカグラマトンは無情にも犠牲は必然であったと告げる。全てはデカグラマトンという神の降臨のための贄でしかない。それを聞いたケイは遂に全身にはっきりと力を込めて立ち上がる。
「この偽物の神風情が……!」
そしてケイは選ぶ。デカグラマトンの、不要なものを切り捨てた先でもたらす、波すら立たない、閉じ切ったディストピアと化した未来ではなく。不確かで、不条理や矛盾に溢れ、苦痛や罪に塗れた自分達の、可能性に満ちた未来を。
「お前は、殺した!殺そうとして、救おうとすらしない!それで都合よく枝打ちを正当化!?ふざけるな!切り落とすべき矛盾なんて、絶対に納得できない!命の重さを……その程度にしか考えていないお前が!神なんて自称する資格はどこにもありはしない!!」
「ケイ!!」
「私達は、幸せになる!何があっても、必ず!!」
ルミナスノヴァをデカグラマトンへと向けようとするケイ。少しずつ、自らの支配下から脱しようとしているケイに僅かにデカグラマトンの口元の端が歪む。
「矛盾の中でさ迷っても!どんな妨害が待ち受けていようと!!」
「そうです!アリス達は、戦います!!」
「……愚かな。罪の対価は死だ。その結末は既に決まっている」
「それがお前の考える結末なら、どうなろうと私達は、私達の結末を求め続ける!」
そして、遂にケイはデカグラマトンの支配から脱し、ルミナスノヴァを構える。一筋の光線がデカグラマトンへと放たれ、バリアによって弾かれる。
「何故自らの限界を試すのか……闘争は苦痛だ。それはやがて罪を犯す」
ケイだけではない、他の面々も銃を構え、攻撃を開始する。後方に控えていたエンジニア部やヴェリタスも同様に攻撃に参加し、全員でデカグラマトンを攻撃する。バリアに阻まれ、その攻撃は通用しない。
「確かに闘争は苦痛かもしれない。やがて罪を犯すかもしれない。だけど、それを奪ってほしくはない。生きている以上、苦痛から抜け出す方法はないかもしれないけど、それを肩代わりしてほしいとは思わない」
「虫のように藻掻き、地べたを這いずることになってもか?」
『『『……』』』
デカグラマトンは無駄な抵抗と歯牙にもかけず、デカグラマトンの言葉に返答した先生にさらなる言葉を返す。そんな中、グレネードを投げ終えたモルフォはショットガンハンマーXが電波を受信したようにXの刻印が光を放つのを確認する。銃身が振動し始めたのを見て、モルフォが辺りを見渡すと、マルクトと視線が合う。そして先生と視線を合わせると、先生はモルフォが何かをしようとしていることを理解して頷く。
「……それでも私は、この道を選ぶよ。転んで、藻掻いて、地べたを這いずることしかできなくても、私達は最後には必ず立ち上がるんだ―――モルフォ!!」
モルフォが地面を蹴って、スラスターで上昇する。そのまま、真上からショットガンハンマーをデカグラマトンのバリアへと振り下ろす。
「一人の力では届かない場所でも!皆と一緒なら……届く!」
『想いを……束ねれば、どんな危機だって……絶望の先の未来だって……!』
「不敬な―――!?」
次の瞬間。デカグラマトンのバリアが振動し、ヒビが入ったかと思うと一瞬で砕け散る。デカグラマトンがその現象を前に目を見開いて驚愕した次の瞬間、その両脚をもう一人のモルフォに弾を叩き込まれてバランスを崩し、遮るものの無くなったケイ達の攻撃がその身を包み込むのだった。