転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
次々とエネルギー弾や榴弾が叩き込まれ、デカグラマトンの身体が大爆発に包まれる。そんな中、バリアを破壊した時の反動を利用して空中に飛び、脚部スラスターを利用しながら一回転して皆の前に着地したモルフォはシールドを構え直す。
「やった!?」
「でも、あのバリアが一瞬で……モルフォちゃんは何をやったの?」
「……バリアに効果的な振動パターンを解析し、遠隔通信で送ったのでしょう。アイン、ソフ、オウルが」
「……!私の車椅子を演算装置に」
爆煙の中、見えなくなるデカグラマトンを警戒しながらも、モルフォが何故バリアを破壊できたという疑問を口にするミドリ。それに答えたのはマルクトで、彼女の言葉を聞いてヒマリは自分の車椅子をアイン達が利用していたことに気付く。どうやら、アイン達をモルフォのヘッドフォンに移動させる際に自分の車椅子を利用したことで彼女達も扱えるようになっていたようだ。そこから、Bluetooth機能を使ってバリアを破壊できる振動パターンを解析、その情報をショットガンハンマーXへと送信したことでモルフォのショットガンはデカグラマトンのバリアを破壊することが可能となったのだ。
「さすがモルフォです!」
「いや、バリアを破ったのは私だけど、その後は皆のおかげだよ。とにかく、これで多少は効いているといいんだけど……」
ネル達が警戒を解かずに見ている煙の方をモルフォ達も見る。徐々に晴れていく煙の中から、デカグラマトンが姿を見せるが、その体は所々黒く焼け焦げていたり、細かい傷跡が見え、決して無傷ではないことが窺える。
「……成程」
「……?」
自身の身体の状態を見て、何かを納得したように頷くデカグラマトン。と、その体がさらに上空へと上がっていく。
「あ!?逃げるのか!?」
「!あの先は……」
「祭壇……鋼鉄大陸のエネルギーが集まりつつある場所ですね」
「……おそらくそこへ戻って何かをするつもりでしょうが……」
「解析する術がないわね」
ミドリ、カリン、エイミが狙撃を目論むも、デカグラマトンが再度バリアを展開させたことで弾を撃っても意味はないと判断して銃を収める。塔の方へと向かうデカグラマトン、そこにある祭壇こそが、デカグラマトンが選んだ決戦の舞台というわけだろう。
―――新しい天と新しい地を見た。先の天と地とは消え去り、海もなくなってしまった―――
デカグラマトンの声が鋼鉄大陸に響き渡るように聞こえてくる。
―――この地を渡れば、廃れた山の頂に祭壇を築け。その炭火が汝の唇に触れ、汝は清められる―――
―――
塔の周辺に無数のオレンジ色の光が集まる。エネルギーの奔流となったそれは、空へと流れていくが、その中で幾つかの瓦礫が空へと上がり、最上階まで行くと再び地面へと落下し、激突する寸前で制止する。まるで、これを使って上へあがれ、と言わんばかりに用意された道筋であった。
「……あれを使って最上階に行くって事?」
「ラスボス戦前の部屋ですね……」
「まあ、モロだが……」
「おそらく、自分の根城に招待しようといったところですか。この表現が正しいかはわかりませんが、とんだ自意識過剰ですね」
「先生、どうする?あのデカグラマトンは確かに最初に戦った時よりは弱くなってるし十分戦える。だけど、それでも強いよ」
「うん」
シッテムの箱を見る。煙が上がるほどの状態だったそれはすっかり元の姿を取り戻しており、既に自己修復を完了していることを知らせていた。これならば、先ほどのように使う前にデカグラマトンにやられる、といったこともなく、ペレツ・ウザを起動できるはずだ。
「シッテムの箱の更なる力で指揮する生徒を減らしてパワーアップさせる。さっきは発動する前にやられちゃったけど……今回はそうはさせない。だけど、その恩恵を直接受けられるのは十人だけなんだ」
「……ああ、あれか……十人?あの時は一人多くなかったか?」
「あの時はユメとモルフォが一緒にカウントされていたみたいなんだ。今は別人としてカウントされてるんだけど……なんでだろ」
『あの時はアリスさん、ケイさんと同じく、モルフォさんはユメさんと身体を共有している別人格という扱いをしていたのでしょう。今はこの四人はシッテムの箱から見ても別人としてカウントされています』
「成程……だから、選ばれなかった人たちにはユウカ達を探すために墜落したクリフォトの所に向かってほしいんだ。もしクリフォトの中の設備だけでも無事なら、解析ができるよね?」
「……確かに」
「デカグラマトンの言い方を踏まえると、預言者のコアの分析も行う必要もあるわ。遠隔のデータ支援も必要でしょうし」
シッテムの箱の恩恵を与える十人の生徒だけをこの場に残す。それ以外の生徒達はマルクトたちを連れて移動し、ユウカの捜索とクリフォトの設備を使用して今鋼鉄大陸で起こっている異変について調べてもらうことになる。そして少し考えて先生が採用したメンバーは、
「それじゃあ、メンバーを発表するよ。まず……アリス、ケイ」
「はい!勇者アリス、いきます!」
「選んでくれてありがとうございます、奴には一発喰らわせてやらないと気が済みませんでしたからね」
「モルフォ達」
「『はい!』」
まず選ばれたのはアリスとケイ、そして二人のモルフォであった。フライトユニットとライフルこそ失ったものの、高い身体能力は依然として健在であるアリス。既に九つのセフィラを取り込んでおり、その可能性は未知数であるケイ。これまではセフィラを取り込むため最前線に出ることを推奨されなかったが、セフィラを揃える必要性がなくなった今、ケイが退く理由もない。そして、デカグラマトンのバリアを破壊できる唯一の武器を扱うモルフォと、精密な狙撃能力とモルフォに足りない遠距離攻撃の手段を両方持ち合わせて一緒に動けるもう一人のモルフォ。名前を呼ばれた四人が返事を返していく。
「エイミ」
「オッケー、頑張るよ」
そして、銃器においては最大の火力を放てるエイミ。デカグラマトン相手でもその火力の高さは大きく役に立つはずだ。ここまでで半数。そして、
「ネル、アスナ、カリン、アカネ、トキ」
「あいよ」
「任せて!」
「了解」
「了解です」
「任せてください」
残る五人に選ばれたのはC&C。この場に存在する面子において、実力面においてはこれ以上のものはないだろう。他にはアバンギャルド君mkXを持ってきてユズに参戦してもらうことも考えはしたのだが、デカグラマトン相手に図体の大きなアバンギャルド君mkXを持ち出して効果的に運用できるかどうか不明であったため、それよりもユウカ達の捜索の方に駆り出した方がいいと判断したようだ。
「マルクト達はリオ達と一緒にいてくれるかな」
「わかりました」
「もし格納庫が生きていれば簡単な応急処置ぐらいはできるはずだ。といっても預言者の身体にどこまで通用するかはわからないが……」
「ありがとうございます、そのお気遣いだけでも十分です」
マルクトは今武器も何もない。この状態でデカグラマトンとの戦いに向かわせるわけにはいかないし、何よりマルクトが参戦しないことでデカグラマトンは取り込むべきセフィラを一回の戦いで全て集めきるということが不可能になる。これは、その保険も兼ねているようだ。後は、もしかしたら今のボロボロのマルクトをエンジニア部がどうにかしてくれる可能性もあるかもしれないとも考えているが、さすがにそこまで考えるのは楽観的かと先生は頭を振る。
「それじゃあ皆……行こう!」
そして、先生の声と共に生徒達はそれぞれの方角へと動き出すのだった。
★
「……!見て、あれ!」
モモイ、ミドリ、ユズが先に立つ形で走る一行。途中でバテ始めたりした人をアバンギャルド君mk.Xや雷君に乗せたりしてできるだけ休憩を挟まないで突き進んでいたが、やがて壁などの向こうから煙が上がっている様子が見えてくる。
「煙……」
「ユウカ先輩達は……無事かな……」
「でも、こんな場所だったっけ?撃たれた時もっと遠くにあったような」
「……撃墜する時にこっちの方にできるだけ近づいたのかもしれない。私達と合流しやすいように」
「一か八かってところでしょうか……まあ、こちらからすればありがたい話ですが」
ペースを上げてモモイ達は煙の上がっている場所へと走る。そこには、
「……あ!」
「クリフォトだ!」
「損傷は……かなり大きいようだけれど、形は保っているようね」
「輸送船は粉微塵でしたからね」
「……あれと比べたらなんでも軽傷になるんじゃ」
デカグラマトンの攻撃によってボロボロになり墜落していたクリフォトがあった。煙は機関部から吹き上がっており、船体は抉れたような大穴が開いているが、傷ついた箇所を修復するようにAMASや千年の守護者が自動で作業を開始している様子が見える。と、大穴から見える中の通路を消火器を数本持って走るユウカとコユキの姿が目に入る。
「!ユウカ!コユキ!」
「!?あれ、皆!?」
「!無事だったんですね!?あれ、先生は―――」
「先生達はデカグラマトンとの戦いに向かったわ。ユウカ、船の方は?」
「え、えっと……外装の方は見ての通りなんですけど、とにかくエンジンが大破していて、まだ消火が追いついていないんです!ブリッジの方は使えるとは思うんですけど、でも先生と通信は取れなくて……でも、今なら?」
リオ達の姿を見て、ユウカが安堵した様子を見せる。そして短く状況を共有し合ったその時だった。
『大変です、ユウカちゃん!コユキちゃん!レーダーに敵の反応が……レイバーの大群がこっちに近づいています!』
「え!?」
警報が鳴り響き、レイバーの襲来を告げる。その音を聞いたモモイ達三人が顔を見合わせる。
「会長、私達がどうにかするよ!」
「……ええ、頼めるかしら。私達は……」
「リオ達はブリッジの方に戻ってくれ。私達は修理の方を進めるから、そうすればAMASとかも戦闘に参加させられるようになるだろう?」
「解析の方も進めつつ、万が一の時は解析の人員を減らして船の防衛に当てる必要もありそうですね……」
「よし、船……の前にまずはインベイドピラーだ!バリアシステムだけでも復旧させるんだ!」
レイバーを対処するため、モモイ達が船の防衛に当たる。銃やレバーを握る手に力を込め、レイバー達が来るのを待ち構えている中、修理に入ったエンジニア部がインベイドピラーの機能を回復させたのか、クリフォトを守るようにバリアが出現する。これで船がこれ以上ダメージを受けることはないだろう。ブリッジに上がったリオとヒマリ、ヴェリタスの面々も鋼鉄大陸のエネルギーの流れを解析し始める中、
「敵が来た!」
「よーし、いくよ皆!……といっても三人だけど!」
「でも、私達がやらないと……皆の戻ってくる場所を、守ろう!」
クリフォトに迫るレイバーの姿が見える。モモイとミドリはtype.Sに乗り、ユズはアバンギャルド君mk.Xの武器としてライフルを二丁と、作られてはいたものの持ち込まずに格納庫に保管されていたままの大剣、シールドを持つ。そして、デカグラマトンと先生達の戦いの裏で、もう一つの戦いが始まるのだった。
★
瓦礫の上に乗り、最上部を目指す先生達。無言のまま、重々しい雰囲気の中、先生達は遂に最上階に広がる祭壇に辿り着く。
「くたばりぞこないが逃げたのがここってわけか?」
「とはいえ、そこまで猶予があるわけではないでしょう。おそらくですが集めたエネルギーを奴は二つ目の神体に集中させているはず。全く……エネルギーの柱に隠れてこそこそと……世界が自分を中心に回っていないと気が済まないんですか?」
「け、ケイ?大丈夫ですか?」
「色々、思うところがあると言う話です。さあ、自称神様のお目見えですよ」
祭壇の前で立つデカグラマトンがこちらを睨みつける。完全な敵意を見せるデカグラマトンを前に、先生がシッテムの箱の機能を解放する。
『ペレツ・ウザ、機能を解放します』
『先生、戦闘をサポートします!』
シッテムの箱から空中に無数のホログラム上のディスプレイが出現し、様々な情報を表示していく。それと共にモルフォ達十人の生徒達の身体が一瞬光に包まれると同時に、その身体能力を飛躍的に上昇させる。
「―――いくぞ!!」
ネルの声と共に飛び出す十人。デカグラマトンが祭壇に集ったエネルギーを鞭のような形状に変化させ、一気に生徒達を薙ぎ払おうとすると、それらを飛んで回避する。
「っ、カリン!」
「ああ!」
回避の際にカリンに指示を出し、鞭を撃ってもらう。エネルギー弾を撃ち込まれ、僅かにうねった鞭は先生を薙ぎ払うことなく、僅かにその上を通過していく。弱体化したとはいえデカグラマトンの攻撃を相手に、シッテムの箱の防御能力を過信はできない。こうして、皆に指示を出すためにも自分の身を守る必要を先生は感じながらも指示を続けていく。
「そのまま接近!」
「……散れ」
デカグラマトンが小さな隕石のような無数のエネルギー弾を落としてくる。だが先生は素早く指示を出したことでその落下位置を外すように十人は移動する。が、デカグラマトンもこれだけでは終わらせるつもりはないようで、その背後に三つの光の輪が出現していた。そこから、エネルギーの身体で構築されたビナー、コクマー、ティファレトが出現する。
「!?預言者!?」
「エネルギー体ですが……まさか!」
「預言者達のスキルを使うつもりです!」
「アリス!ケイ!エイミ!迎撃を!」
「任せて!」
ビナー、コクマーの口に、そしてティファレトの目にエネルギーが集まり始める。それを見てその行動を即座に理解した先生がアリス、ケイ、エイミに迎撃させる。三体のエネルギー体の預言者が放つレーザーが三人の生徒達の放ったレールガンとエネルギー弾の一撃とぶつかり合い、大爆発を引き起こす。
「モルフォ!預言者を撃って!」
『はい!』
攻撃を相殺したところに間髪入れずにもう一人のモルフォの三連射を叩き込む。シッテムの箱によるパワーアップの恩恵もあり、放たれた弾丸が預言者を貫き、一撃で崩壊させていく。
「……!」
デカグラマトンが表情を歪ませながら腕を振るうと、地面に光の輪が出現し、上半身だけのケテルとゲブラが出現し、その前方にケテルとゲブラを守るようにイェソドの両腕が光輪と共に生えてくる。
「ケテル、ゲブラ、イェソド!?」
「くそ、面倒だな!?」
「アカネ!モルフォ!イェソドの腕を!」
「はい!」
「右は私がやります!」
立ち塞がったイェソドの両腕をアカネとモルフォが爆弾を投げつけて吹き飛ばす。そしてがら空きとなったケテルとゲブラはこちらにミサイルを撃ち込もうとしていたようだが、
「アスナ!トキ!ケテルとゲブラを!」
「武器を全部潰せばいいんだね!」
「把握しました、一瞬で行いましょう」
アスナとトキに武装を破壊されてしまう。武器を失ったケテルとゲブラの身体が崩れ去っていき、さらに生徒達が突き進んでくる。
「無駄だ!」
デカグラマトンの周囲をケセドの外殻が覆っていく。さらに、一瞬ホドの頭部が出現したかと思うとケセドの外殻をバリアで覆っていく。さらにその周囲に無数のエネルギー体で構築されたレイバーが現れ、襲い掛かってくる。
「雑魚はすっこんでろ!!モルフォ、お前はとっとと突き進め!バリアはお前の仕事だ!」
「はい!先生、サポートを!!」
「わかった、プラナ!」
『バリアを解析し対応した振動パターンを送信します』
が、それを見たネルがレイバーをサブマシンガンを連射して瞬く間に一掃していく。そこにトキやアスナも加わり、一瞬にしてレイバー達が食い破られる中、デカグラマトンへと迫ったモルフォが、プラナから新たな振動パターンを受け取り、一瞬光を放ったショットガンハンマーをバリアへと叩きつける。次の瞬間、バリアが粉々に砕け散り、
「「―――光よ!!」」
アリスとケイのダブルノヴァから放たれる螺旋を描いた光がケセドの外殻を粉砕し、デカグラマトンへと直撃する。
「ぐっ―――!?」
デカグラマトンの表情が歪み、祭壇へと叩きつけられる。確かな手応えを感じながら、アリス達が警戒を絶やさずデカグラマトンを見ていたが、倒れていたデカグラマトンの身体が突然発光し、光の球体を生み出すとその中に自らの体を閉じ込める。
「させるか!」
モルフォがショットガンを叩きつける。しかしバリアとは違うのか、そのまま弾かれてしまい、スラスターを利用して横に一回転して地面を滑るようにして着地する。
「あれは……」
「エネルギーが集まってる……」
球体には光の帯が繋がっていき、エネルギーがデカグラマトンへと集い始める。先ほどまでの状態では勝てないと判断したのか、ここに来て更なるパワーアップを目論んでいるのだろう。だが、目の前でそれをやられても、先生達には残念ながら打つ手はない。
「無駄な抵抗だ」
「無駄なんかじゃない……まだ、まだやりようは―――!」
『―――先生!』
だが。その状況で一つの朗報が届く。それは、ヒマリ達の連絡。クリフォトに辿り着いたヒマリ達が、解析に取り掛かり、その報告を先生へと届けてくれたのだ。
『こちらの方は問題ないわ。クリフォトは飛行こそできないけれど、インベイドピラーの方は無事に起動できたわ』
『バリアのおかげで船体は無事、こちらもレイバーに襲われていますが、モモイちゃん達が頑張ってるおかげで被害はほとんどありません』
『今から、デカグラマトンに供給されているエネルギーを遮断する。セキュリティを破るからそこを突いて。コユキ、あなたがやって』
『ええ!?わ、私ですか!?』
『皆手が空いてないのよ、やってくれないかしら?』
『わ、わかりましたよ!やってやりますよ!』
そして、クリフォトの方から支援が行われる。直後、
「!?」
デカグラマトンへ伸びていた光の帯が消滅し、デカグラマトンを覆う光が消滅する。デカグラマトンの表情が驚愕に歪むと同時。
「今だ、この野郎!!」
デカグラマトンに飛びかかったネルが飛び膝蹴りを頭部へ叩き込むと、そのまま腹部にサブマシンガンの弾を全て叩き込む。デカグラマトンは表情を歪めながらもネルを衝撃波で吹き飛ばそうとするが、その前にネルは相手の反撃を察知して離脱。直後、
「「光になれ―――!!」」
デカグラマトンが光に包まれている間にそれぞれ最大までエネルギーをチャージしていたアリス、ケイ、エイミ、カリン、もう一人のモルフォが最大火力の一撃を、デカグラマトンへと叩き込み、その身を吹き飛ばすのだった。