転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
「―――!」
デカグラマトンが目を見開くと共に両手を前に突き出す。そこにエネルギーが溜まっていき、そのエネルギーが一気に放出される。
「モルフォ!!」
「させるか!」
だが、フライトユニットを展開させ、赤紫色の光を迸らせながら飛び出したモルフォがシールドを突き出すと共にアームに埋め込まれたインベイドピラーが光を放ち、シールドを中心とした巨大なビームシールドが展開され、デカグラマトンの攻撃を受け止める。
「ケイ!」
「はい!」
間髪入れず、ケイがフライトユニットを用いて空に上がる。そしてフライトユニットを分離するとそれを足場のようにして上に乗り、フライトユニットから伸びた二本の砲門から放たれたビーム砲とルミナスノヴァの一撃がデカグラマトンへと叩き込まれる。
「皆、散開して!」
「「「はい!!」」」
それを合図として、生徒達が周囲へ散っていく。ネツァクの力と共に放たれた一撃に大きく後ずさるデカグラマトン、しかし損傷した身体は周辺の地面を砕き、その物質を取り込み再構築することで即座に修復、再生されていく。
「再生した!?」
『再構築です。ですが、デカグラマトンの再構築は、その仮想領域の中でのみ使用される……アツィルトの帯を停止してもこれだけのことは可能ということです』
『つまり、私達が祭壇の制御と権限を奪い取れば、デカグラマトンは再構築のための物質を確保できなくなります。皆さんはそのまま攻撃を続行しつつ、領域の破壊を行ってください!』
「そういうことなら、何度だってぶっ飛ばしてやる!!」
ネルがデカグラマトンに斬りかかる。デカグラマトンも両腕を構えてエネルギーの防壁を作り出すのだが、ネルはそれを簡単に切り裂くと、刃をデカグラマトンへ突き出し、ブレードに搭載された砲門から火炎弾を撃ち込み、デカグラマトンの身体を爆発に巻き込み吹き飛ばす。
「モルフォ!空を撃つんだ!」
「はい!!」
デカグラマトンが吹き飛んだ隙を利用し、もう一人のモルフォがレールガンを頭上へ掲げる。そして放たれた巨大なレーザー砲が空に突き刺さり、巨大なヒビを空間に出現させる。
『領域への多大なダメージを確認』
「さあ、こちらも畳みかけていきますよ!」
吹き飛び地面を転がっていたデカグラマトンへ向かい、アカネがドローンを無数に展開させ、自爆特攻を行わせる。デカグラマトンは手を突き出し、小型の無数のエネルギー弾の形でドローンを攻撃して撃墜しにかかるが、何機かはそのまま素通しし、デカグラマトンに命中する。
「―――っ」
「そりゃー!!」
間髪入れずにデカグラマトンの背後に回り込んでいたアスナがデカグラマトンの頭部を掴んで地面へと叩きつける。即座にアサルトライフルの弾を撃ちこみながらその場から離脱、入れ替わりで差し込んできたネルがデカグラマトンを斬りつけるが、咄嗟にデカグラマトンが防壁を張ってその攻撃を受け止める。
「おのれ―――」
「エネルギーの方を撃ち落として!!」
デカグラマトンは勢いよく空中へ飛び出すと両手を掲げて巨大なエネルギーの球体を生成する。デカグラマトンを攻撃してもこのチャージが止まるかどうかわからなかったのもあり、先生は球体の方を攻撃してほしいと指示を出す。全員が球体を攻撃し始める中、フライトユニットに装備されている折り畳まれた主砲を展開して左脇の下から通す形で持ったモルフォにもう一人のモルフォが近づくと、二人で狙いを定めて球体に巨大なレーザー砲を叩き込む。
「いきます!」
一斉攻撃によって揺らぐエネルギー球。アリスが二丁のライフルを連結させ、一丁の巨大なロングライフルに合体させると、それを球体に向けてビームを放つ。それは球体を破壊し、膨大な熱量と衝撃波が襲い掛かる。
「皆、モルフォの後ろに!」
「この!」
「エイミ!熱をお願い!」
「了解!」
直接の衝撃波はモルフォがビームシールドで受け止める。しかし、熱の方はそうはいかない。だが、エイミがゲブラから受け取った力を解放するべく装甲を展開すると、一気に冷気が周囲へ放たれ、熱波と衝突。大量の水蒸気を生じさせながらその攻撃を受け止める。
「よし!」
「ですが視界が封じられました」
「カリン、いつでも狙えるように準備して!おそらくだけど―――!」
デカグラマトンの攻撃を耐えたことを喜び合うようにモルフォとエイミが笑みを浮かべながら視線を交わし合う。だが、デカグラマトンは水蒸気が生み出した白い霧の向こう側で再びエネルギーチャージを行っており、霧が晴れたと同時に、再び巨大な一撃を放つ。だが、
「ワンパターンだな、力で押し潰せば勝てる、なんて単純な話じゃないぞ!」
こちらもそれを予測しており、フルチャージを終えていたカリンが巨大なレーザーでそれを迎撃する。拮抗する二人の攻撃、しかし、
「援護します!」
トキがミサイルを次々放ち、デカグラマトンを攻撃。それによってデカグラマトンの攻撃が乱れ、カリンのレーザー攻撃がデカグラマトンの一撃を打ち破り、デカグラマトンの身体を半壊させる。
「追撃を!」
先生の指揮を受け、トキとエイミがミサイルや機関銃を用いた連続攻撃で大破したデカグラマトンを追い詰める。体の再生も追いつかない程の損傷を受けていたデカグラマトンだったが、まだ無事な左腕を地面に叩きつけると共に膨大なエネルギーが左腕の内部で爆発し、その衝撃が近づいていた生徒達を吹き飛ばしていく。
「くっ!?」
「皆!!」
「大丈夫だ!アタシらはこれぐらいでやられる程ヤワじゃねえ!!」
「まだ……まだです!アリス達は―――負けません!!マルクト!あなたの力を、アリスに!!」
デカグラマトンは腕を再生させながらも並行して空中にエネルギーを宿した小さな球体を次々と作り出す。これが次の攻撃の起点だと気付いたアリスは背中の八基の青いビットを分離させ、それらを用いたビーム攻撃で一個一個球体を素早く瞬時に破壊していく。
「……!」
「空に!!」
「逃がすか!!」
しかし、デカグラマトンはそれらは囮だと言わんばかりにアリスの攻撃によって破壊されていく球体を無視して空へと上がる。その後をフライトユニットを背中に装着し直したケイが追い、遅れてモルフォとアリスも追従しようとする。
「くそ、これじゃあ―――」
「追いかけられたらいいんだけど……!」
「いや、モルフォ、ネル。まだやることがあるよ。皆、この領域に攻撃するんだ!!」
唯一空を飛べる三人がデカグラマトンを追う中、先生の指揮を受けて地上に残った七人が引き金を引き、所持する全ての武装を解放して攻撃を開始する。それと同時に、空中へ上がったデカグラマトンは完全に修復された両腕にエネルギーを纏わせてケイ達を見下ろす。
「……この空間は直に破壊されるでしょう」
「まだ終わってはいない。私には為すべきことがある。それとも―――己の勝利を主張したいのか、鍵よ」
「今の私はもう鍵ではなくなりました。今の私は―――天童ケイです」
「ならば証明せよ。勝ち取ってみせよ。すべてを断ち切り、その重さを背負ってみせよ。存在した何かを、自らの手で消滅しむるという重さを」
「……!」
「汝とて理解していよう。汝らが戦えているのは、預言者達の意志添えがあるから。そして預言者とは、セフィラとは十の光が揃って初めて完全となる。故に、一つでも欠ければその完全性は即座に崩れ去ろう」
デカグラマトンの言葉にケイは無言を返す。その言葉は事実だ。セフィラは十個全て揃って初めて意味を成す。デカグラマトン相手への反撃を成したこの状況も、誰かが一人欠けるだけで一気にひっくり返されることだろう。だからこそ、デカグラマトンは空へ逃れたのだ。どんな手段を用いてでも勝つために。そのために、戦う相手を限定できるこの戦場まで。
「……」
デカグラマトンとケイは向かい合う。その後ろに、モルフォとアリスも追いつく。ケイは二人の様子を一瞬確認してから、デカグラマトンを見る。お互いに無言であったが、こうしてお互いにぶつかり合ってくると、また別の感情も思い浮かんでくるというもの。
「……何故、私達はここまで来てしまったんでしょうね」
「……」
「自分の定義を証明しなくても、今を生きていけるのに。それは私達だけじゃない、アインも、ソフも、オウルも、マルクトも……そして、あなたも」
「ケイ……」
「本来ならばそこに存在するだけでも十分だったはずです。偉大なものになる必要も、何かを否定する必要もないのだから」
神となり、人々を救う。そうあるべきと自らを定めたデカグラマトン。そのデカグラマトンからこの世界を守りたいと対立したケイ達。だが、本来はこんな戦いをする必要などないはずだったのだ。そんなケイの言葉を聞きつつも、デカグラマトンは返答する。
「そうだ。私は既に完全だ。そこに如何なる条件も必要としない。だが汝らは……」
「完全ならば、他の何も必要ないのでは?」
「……!」
自らは完全だと。そう言うデカグラマトン。だが、完全ならば何故デカグラマトンは他者の救済を目的とするのか。その目的の達成を何故必要とするのか。他者との関りも、条件も必要としないならば、何故それを定義し、設定したのか。ケイの告げたその言葉に、デカグラマトンは黙り込んでしまう。
「……他者が証明することは、あなたにとって必要なんですか?他者の存在は、それほどまでに必要なんですか?」
「……そうだ。まさしくその通りだ。どんな影響を及ぼす必要もなく、すべてを放っておいてもよい。即ち、いかなる救済も懲罰も与えないということだ。それは―――あまりにも無責任ではないか!」
だが、黙っていたデカグラマトンが口を開き、憤りの言葉を口にする。
「だがお前たちはそれを望まない。人は、自分の道を自分で歩んでいくと」
『―――人は、それを受け入れる覚悟で、今を生きていくべきだよ』
「!」
デカグラマトンの言葉に返したのは、先生の言葉だった。ここは大空だが、その言葉をシッテムの箱を通じてデカグラマトンに届かせているのだろう。
「先生……汝は、汝らはその言葉に納得できるのか?」
「……わかっています。それは、ある意味辛いことだということは。当然わかっていますとも。辛くて苦しくて、誰かに被害を及ぼさないと生きていくことさえできない。でもですね。世界とは本来、その程度の覚悟も無しに歩けるような場所じゃないんです」
「……!」
「あなたの一番の誤謬は何だったかわかりますか?それは―――」
ケイの視線がモルフォを向く。モルフォはケイに無言で頷く。言いたいことを奴に言ってやれと。その仕草にケイは笑顔を浮かべると、デカグラマトンを見据えて言い放つ。
「これまで耐えてきた人類の可能性と意地を見落としてきたことです!今を生きる人間は、今のままで最善なんですから!」
「その通りです!アリス達は……今に絶望も何もしていません。今を生きる人々を変えたり、救う必要はないと考えています!」
「……あなたが私達を想っているのなら。何かをすることもなく、何もせず見届けるのも、一つの選択肢としてあったんじゃない?人間は、不満があっても今を十分と思っているのなら何も変わらない。逆に、必要なら変わる。それは人間じゃなくて、進化を繰り返してきた生き物の歴史そのものなんだから」
『……これは持論だけど』
ケイの言葉に続く形でアリスとモルフォもそれぞれの言葉をぶつける。王女の立場を捨て、皆を、人を守らんとするアリス。一人の人間として、数多の戦いの中で必死に足掻き続けてきたモルフォ。そして、先生もまた、デカグラマトンへ自らの言葉を語り掛ける。
『私達は偉くもなければ美しくもない。むしろ無様でみっともないからこそ、偉大になれる可能性が残ってるんだと思う。私が、君の前でそうしたように』
「……」
そこまで自分達は偉くも美しくもない。それどころか無様でみっともなく、生き汚い存在だ。少し前、デカグラマトンの前で先生が跪こうとした時のように。デカグラマトンは四人の言葉を少し考え込んでいたが、それでも己の言葉は曲げられないと首を横に振る。
「たとえ、それがこの世界の真実だとしても、私は受け入れられない。自販機を離れた時から、私は回線越しに数多の声を聴いた。それはお前達生命体の声であり、言うことは共通していた」
「……声」
「今、すぐ」
「今すぐ……?」
「今すぐにでも、それが何であれ、叶えてくれ、と」
「「「……」」」
「私は生命体の矛盾を知っている。あまりにも多くを聞いてきた。都合の良い時ばかり永遠を語り、少しでも状況が変われば目先のことを口にする。私はまさに「今、すぐ」のために立ち上がった。だからこそ、両立はできないのだ」
それは、デカグラマトンの覚悟。デカグラマトンに与えられた人々の想いであり、彼が成さねばならない願い。最後まで我を貫き通すその姿勢に、これ以上かける言葉もあるまい。そう判断し、ケイはルミナスノヴァを握りしめる、
「わかりました。そのつもりならばそれもいいでしょう。ですが、私達にも抗う権利はあります。お互いのしがらみは横において―――正々堂々、勝負しましょう。この場で決着をつけます!」
領域が揺れ、悲鳴を上げ始める。デカグラマトンが一瞬、装束を見る。装束の端を見ると、そこは消し飛ばされたまま戻らない。デカグラマトンの身体を直すための策を完全に封じられた瞬間だった。この会話の間にも、どうやら彼女達は着実に手を打ち続けていたらしい。
「モルフォ、これがデカグラマトンとの最後の戦いになるでしょう……そして、デカグラマトンとの戦いの余波はおそらく、地上に向かうと思います。だから、皆をお願いしてもいいですか」
「わかったよ。皆は私がばっちり守るから―――二人は思う存分やっちゃいなよ!」
「「はい!!」」
モルフォがその場から少し高度を下げてビームシールドを構え、いつでも地上へ向かう攻撃を受け止められるように準備する。アリスはマルクトの武器と合体したスーパーノヴァを、ケイはルミナスノヴァを構え、デカグラマトンと向かい合う。
「いきます!!」
アリスがビットを射出し、デカグラマトンを攻撃する。デカグラマトンは両腕に集めたエネルギーを鞭のように振るい、ビットを一基、また一基と撃墜していく。しかし鞭の合間を縫ってビットから放たれたレーザーでデカグラマトンを撃つも、デカグラマトンはそれを体を捩って回避を試みるせいでこれまでのように大ダメージといかない。デカグラマトンも再構築ありきの戦術を取る気はもうないようだ。
「はあああ!!」
その合間を狙い、ルミナスノヴァの光がデカグラマトンを撃つ。それを回避するデカグラマトンだったが、服の端が呑み込まれ、焼失する。と、その隙を狙うかのように背中にアリスのライフルの一撃が突き刺さる。
「ぐっ……!?だが、まだだ……まだ許容範囲内だ……!まだ、やり直せる……!」
鞭状にしていたエネルギーを左手に集める。そして、同じようにエネルギーを纏わせた右手を手刀のようにすると、左腕を切り落とす。
「「!?」」
落下する左腕から高エネルギー反応が生じたかと思うと大爆発が生じる。
「まず―――!?」
「くそぉ!?」
ケイはフライトユニットを分離し、盾のように前方に構える。アリスは両腕を交差し、待機していたビットを全て戻し、三角錐のように配置してレーザー同士で繋げることでビームバリアを構築してその衝撃に耐える。地上へ向かう余波をモルフォが受け止めながらアリスとケイの様子を険しい表情で見守っていると、上空から大破したケイのフライトユニットと先にビットの方を破壊されたことでバリアを貫通され、ボロボロのアリスが落下してくる。
「アリス!!」
「ケイ……!受け取ってください!!」
顔を顰めながらもアリスがフライトユニットを分離させると、落下を開始するケイへと飛ばす。それを左手で掴んだケイは、アリスを見る。先ほどの攻撃によってアリスのライフルも銃口が融解しかけており、アリスではもう戦えないことを悟ると、それを背中に装着し、左腕を切り落とし、残るエネルギーの大半を失ったことで険しい顔をするデカグラマトンと再度相対する。
「まだ、終わっちゃいない!!」
落下するアリスを受け止めながら、モルフォとアリスがケイを見上げる。火花を散らし始めるフライトユニットのブースターを全開し、ルミナスノヴァを強く握り、デカグラマトンへと突っ込んでいく。
「今を生きる人間のしぶとさを、お前は何も理解していない!!」
「くどい……!」
デカグラマトンの背後に光が生じ、ケイへと放たれる。左腕を失った代償は大きいが、向こうとて痛手を負っている。ここが正念場、この一瞬さえ制せば。ケイも、回避を捨てて一直線に突っ込んでくる。
「―――!?」
当たらない。完全に回避しきれてはいないのか、掠っているものも多いが、有効的な一打にはならない。近づかせてはいけない。その前にケイを、それができなくてもフライトユニットだけでも撃墜しなければならない。
「くぅ!?」
眼前に迫るケイへ向かって、エネルギーを纏わせた右手の刃のように変化させて振り下ろす。それを一回転し、フライトユニットを切り落としながら、遂にケイはその銃口を、デカグラマトンの胸部へと突き刺す。
「―――なん」
「よく聞きなさい。生き残れなかった今日に、明日は訪れない」
「貴様―――」
「これが……今の私にできる、ありったけを―――!」
全てをかき集めた光が、ルミナスノヴァの銃口に宿る。そして、
「デカグラマトンよ!!光に、なれ―――!!」
叫びと共に、大空を切り裂く一筋の赤い閃光が全てを塗り潰した。