転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
聖地だった場所。気配がなくなったその場所に白い仮面のような顔をした、司祭のような姿をした存在がどこからともなく、三人現れる。
―――試みは失敗した―――
―――観測は失敗した―――
―――無から構築された人工の神聖が、太古の秘儀に接触できるかを試みた。だが、結局は無意味だった―――
―――当然の帰結だ。神聖は習得されるものではなく、呼び覚ますものである―――
―――王女が裏切った―――
―――鍵は消えた―――
司祭たちは言葉のようなものを発する。呟きにも似た小さな声。だがそれは、司祭たちだけに伝わる言葉であった。
―――自らの神聖を否定した者達が迎える結末は、ただひとつ―――
―――すべての次元、すべての世界、すべての可能性から。忘れられた神々を追放する―――
―――歪んだ世界に終焉を告げ、すべてをあるべき形に戻すのだ―――
―――彼らに我々と同じ運命を授けよう。名が無いために呼ばれず、呼ぶことができないが故に存在しない名もなき神のように―――
―――この世界は偽りである。繰り返し下した結論だ。その結論に揺らぎはない―――
―――崇めるには対象が必要だ。我々はただ崇めるのみ―――
―――観測されうるすべての
―――堕落した神秘を取り戻し、太古の秘儀へ―――
―――今や穢れてしまった言葉でしか表せない、忘れられた神々の産物に終焉を―――
司祭たちの言葉を聞いて、理解できるものは誰にもいないだろう。もしここに、まだデカグラマトンが生きていたのであればまた、司祭の言葉を聞き、別の形で違っていたかもしれないが。
―――シッテムの箱―――
―――シャーケードの杖―――
―――サンクトゥムタワー―――
シッテムの箱、それは先生が持つ不思議な力を持つタブレットだ。サンクトゥムタワー、それはキヴォトスに聳える、様々な影響をキヴォトスに与える巨大な塔だ。シャーケードの杖、司祭たちだけが知るその謎の道具。それが何を意味するのか。それはまだわからない。
―――すべての歪みの主たる先生に―――
―――然るべき、報いを―――
怨嗟のように漏らした声。司祭はその言葉を最後にどこからともなく消えてしまう。誰もいなくなった部屋。自販機の上に乗っていた一匹の光の蝶がどこかへと飛んでいく。
かくして、鋼鉄大陸は、大海に沈んでいく。鋼鉄昇華の終結を、戦いの終わりを告げるかのように。
★
数日後。エリドゥに着陸した巨大な戦艦、クリフォト。エリドゥの一角が変形して作られた巨大な地下格納庫の中に収納されたクリフォトから、一人、また一人と生徒達が降りてくる。
「やっと……帰ってきたー!!」
「つ、疲れた……」
旅の疲れを隠せない様子で次々と生徒達がエリドゥの大地を踏む。
「……把握はしていたけれど随分と立派な格納庫ができたものね」
「地下も自由に調整できたおかげさ。後はこいつをいずれ宇宙戦艦に改造すればついに……!」
「この出来栄えを見てしまうと、途中経過も見たかったですね」
格納庫を見渡しながら驚いたような表情を浮かべるリオ。リオだけでなく、ヒマリも興味津々といった様子で格納庫を見ており、先生に至っては疲労の色を浮かべながらもイメージそのまんまな格納庫を前に目を輝かせていた。
「あー……疲れたわ……」
「飛んで数日は殆ど休みっぱなしでしたけど、それはそれとして疲れはしますからね……」
「……水着じゃ駄目?」
「さすがに駄目では?」
とぼとぼと制服姿で降りてくるユウカと、少し無理をした様子で微笑みながらその隣を歩くノア。その後ろではエイミが不満そうに水着の入った袋を見ており、メイド服に着替え直したトキに窘められていた。
「疲れましたー」
「ずっと遊んでたくせに……」
「それでも着いた途端に疲れるものなんですよー」
「それはわかるけどね」
「……いやおめーは歩けよ」
疲れて歩く気力もなさそうなコユキを背負いながらモモイらと共にクリフォトを降りてくるモルフォ。その後ろから呆れた様子のネルを筆頭に、やっと帰ってきたことを安心したり笑ったりしているC&Cの様子があった。彼女達も他の面々と同じように普段通りの格好に戻っている。その後ろから脱いだパイロットスーツを手に持ちながら残念そうな表情のウタハ以外のエンジニア部、チヒロを筆頭にベッドを求めているかのようにふらふらと歩き始めるヴェリタスと続いてくる。
「……そういえばクリフォトの整備しなきゃ」
「まずはデカグラマトンを移動させて最終調整。ほらウタハ、行くよ」
「あっ待ってチーちゃん、ちょっと持ち出すものが……」
先生は格納庫を見渡しつつ、クリフォトの昇降口の方から降りてくる生徒達が欠けていないことを確認していく。その面子も最後の方になり、アリス、ケイ、もう一人のモルフォが降り、その後をアイン、ソフ、オウル、マルクトの四人が続く。
「……ここでこの戦艦が作られたんですね……」
「ま、まさかこんな場所があったなんて……」
「……私達が言えることじゃないけど、本当にやりたい放題じゃない?」
「……まあ、技術が進めばある意味先祖返りすることになりますからねこのキヴォトスだと」
これがミレニアム脅威の技術力なのか、そんなニュアンスの言葉に、ある意味そうかもしれないと首を横に振り切れないケイ。アリスは格納庫の全容に目を輝かせており、もう一人のモルフォは完全に表情を引き攣らせていた。
(……今更だけどなんでエリドゥが残っててしかもミレニアムの生徒達が使えてるんだろう……ホドに一瞬で制圧されて難易度上がる流れは……)
ケイやアリスと共に賑やかに話すアイン、ソフ、オウルに対してマルクトは満足げな表情を浮かべていた。ミレニアムに戻る途中に見た、キヴォトスの街並みや景色を記録しており、彼女の知らない様々な景色、情報を手に入れたことから、この短い旅路だけでも楽しさを感じていたのだろう。
「そういえば……マルクト達についてだけれど」
「どうかしました?」
と、ここで思い出したように立ち止まり、マルクト達に振り向くリオ。マルクトが疑問を浮かべながらリオの顔を見ると、リオは少し考えるような素振りを見せてから、
「マルクト達にはミレニアムではなくエリドゥの方にいてもらうべきじゃないかしら」
「成程。我やアイン、ソフ、オウルは生徒ではありませんからね」
「じゃあ、転入の手続きをしたらどうかな?」
「……転入、ですか」
エリドゥの方にいてもらった方がいいのではないかと声をかける。その理由をマルクトは自分達がミレニアムの生徒ではないからなのだと解釈するが、それを聞いた先生がそれなら転入すれば解決するのではと即座に提案する。
「ありがたい申し出です。しかし……我は学園というものを名前しか知りません。ミレニアムサイエンススクール、トリニティ総合学園、ゲヘナ学園……他にも、様々な学園がこのキヴォトスには存在していますが、そのいずれも、名前という情報でしか知り得ません」
「私達もあんまりそこらへん詳しくないんだよね。一番警戒するべきならミレニアムかな?ってぐらいだったし、それもあそこに最初に来ていた人達だけだったし……」
「そっか……確かにそこは大事なところだね」
マルクトの言葉にソフが補足を入れる。今のまま、ミレニアムに転入するだけなら確かに簡単だ。しかし、マルクト達はこのキヴォトスの事を何も知らないのだ。その状態でじゃあ転入しよう、というわけにはさすがにいかない。
「そうですか……残念です。アリスは皆にゲーム開発部に入ってもらいたかったんですが」
「いや……百歩譲ってミレニアムに入ることになったとしても入りませんが?」
「でも!オウルも凄くゲームを楽しんでいました!」
「それとこれは話が別なんですよ!!」
「どうどう」
アリスに言い寄られ声を上げるオウル。鋼鉄大陸で戦っていた時のような、オウル側からの一方的な敵対心のようなものはそこにはなく、むしろ見ていて微笑ましい雰囲気すら感じ取れる。
「でも……ゲームも、凄く楽しかったですけど、他にも……楽しい事をしたり、綺麗なものを見たり、し、したいです……」
「ま……同感だね。私達の身体の事を考えると一番都合がいいのはミレニアムだってわかってるけど」
「……まあ、そこは否定しません。鋼鉄大陸がなくなった今、私達の身体に不調が起こったとき、緊急で対応できる場所はミレニアムぐらいですから」
とはいえ、ミレニアムに所属するメリットがでかいことについては四人とも重々承知だ。戦いが終わった今、預言者の身体を直したり、アイン達の身体を検査したりといったことを可能な設備などが揃っているのはミレニアムしかない。さすがに普通のオートマタのように、とはいかないだろう。
「ええ、だからエリドゥにその場所を用意しておく。そこを自由に使ってもらって構わないわ……デカグラマトンの預言者用の整備工房なんて、ミレニアムの構内に作るとどうしても目立つでしょうし……」
では四人のための設備をミレニアムに用意したらどうなるか。好奇心旺盛なミレニアムの生徒達だ、真っ当に調べたり興味を持ったりしてくれるだけならともかくちょっと弾けた人が出たらどうなるかわからない。
「好意に感謝します。ありがとうございます、調月リオ」
「ということは、エリドゥがマルクト達の家になるのかな?」
「……あ、そういうことになるのか」
「家、ですか……まあ、そういうことになってしまうんですね……」
エリドゥに四人の生活拠点を置く。確かにエリドゥならば基本的に事情を知る人しか来ないだろうからあまり問題にはならないだろう。マルクト達の今後も定まり、新たな生活の準備も進められることになる中、もう一人のモルフォを見ながらこっちも進めないといけないなと考えながらシャーレのある方向を見るのだった。
★
砂嵐一つない快晴。アビドス高等学校の教室に、七人の生徒達が座っていた。そして黒板の前には先生が立っており、七人は先生から先日あった鋼鉄大陸での話を聞かされていた。最初は興味津々に聞いていたが、段々セリカを筆頭に、首を傾げる生徒が増え始める。
「え、えっと……先生?」
「あ……どうかした?セリカ」
「いや、その……確かに凄いことがあったんだなってことはわかるんだけど……」
「ん……ミレニアムの皆が大きな戦いをしていたのを知っても……なんでこの話をしたの?」
それは、アビドスの皆からすれば関係のない戦いだということ。もし、鋼鉄昇華が進めばアビドスはおろか、キヴォトスの全住人が関わる大きな問題には発展していたが、今回はそれを未然に防ぎ、あくまでミレニアムだけで対応できる範疇で解決へ導いた。なので、この鋼鉄大陸の戦いを参加者以外で知っているのは、鋼鉄大陸周りの異変を察知していたのもあり、諸々の顛末を報告する必要があったために伝えたリンぐらいのものだ。
だが、アビドスの面々には本来なら伝える必要は全くないはずだ。確かに知っている人物らが参戦した戦いではあるが、それなら他の学園の人達だって該当しているはずだ。
「んー……先生、なんか隠してるね~?」
「あはは……まあね」
だが、先生の話は、わざとある部分を省いている。この後のために必要な溜めとして言っているのだが、その不自然さはさすがにホシノなどには分かってしまうようだ。
「実はね……この鋼鉄大陸での戦いには……皆に言っていないもう一人の参加者がいたんだ」
「もう一人?」
「うん。その人は皆に会ってもらおうと思っていてね。特に……シロコとユメに」
「え?」
「わ、私達?」
突然話を振られて、困惑するシロコ*テラーとユメ。二人は顔を見合わせるが全く心当たりがないようで首を傾げる。会わせたい人とは一体誰なのかとアヤネ達も話し合い始めるが、全くその可能性に思い至らない。厳密には一人、彼女以外にいるのか?という人物が浮上してはいるのだが、それはないだろう……という思いの方がどちらかというと強い。そう思ってしまうのも先生が肝心な部分をわざと省いているせいなのだが。
「……それじゃあ、そろそろ入ってきてもらっていいかな?」
そう言い、先生が扉の方に目を向ける。それを合図としたかのように扉がゆっくりと開かれる。
「「……!!」」
そこから、一人の、アビドスの制服を着た少女が現れる。目や髪の色は確かに一緒だ。顔つきも似ている。だが、腰まで髪が伸びており、ヘッドフォンではなく青いカチューシャが見える。そして、先生からは青い蝶と円のヘイローが確認できる。その少女は―――
「モルフォ!?」
「モルフォちゃん!?」
ユメやシロコ*テラーと同じ世界から現れた夢見モルフォ。彼女の姿を見たユメとシロコ*テラーは驚いたように席から立ちあがり、次第に目から涙が零れ始める。
「……モルフォちゃん……なんだね……?」
「……はい。えっと、その……色々あって、身体を取り戻せました……その、また会えて……嬉しいです」
モルフォの方も、泣きそうな表情を浮かべながらも涙を堪え、抱き着いてきたユメ、シロコ*テラーを抱き返す。その様子を見て、残っていた面々も嬉しそうにしたり貰い泣きしそうになりながらも先生の話を思い返し納得した様子を見せる。
「このモルフォちゃんって……まさか、別の時間軸の?」
「先生の話の不自然さってそういうことだったんだねぇ」
「……ユメ先輩も、シロコちゃんも……よかったですね……モルフォちゃんも、目を覚まして……」
「……でも、どうやって?」
「うん……本当はね」
ここでどうやってモルフォが復活したのかを説明していく。鋼鉄大陸に近づくにつれ、名もなき神々の力に呼応するように回復が進んでいたモルフォの意識が目を覚ましたこと。そこから、千年の守護者の方に意識を移し替えて鋼鉄大陸での戦いに参加してくれたこと。そして、アリスとケイの行使した力によってこの身体を作り出したこと。改めて全てを聞いた七人は驚いたような表情になっていたが、
「……あれ?じゃあ、今のモルフォの身体って……ロボットってこと?」
「「え?」」
「……あー……そこって、どうなんでしょうか?いえ、別にロボットだからどうってことではありませんが……」
復活の流れを聞いてふと浮上した疑問をシロコが聞く。ユメ達がさらに驚いたようにモルフォを見ると、モルフォはそういう受け取り方になっちゃうんですねと言わんばかりの苦笑いを浮かべる。ノノミが先生に確認を取ると、
「うん、そこは大丈夫。モルフォの身体は……間違いなく人間の身体だよ」
原理などは先生もケイやリオほど詳しくは知らない。だが、デカグラマトンの作り出したあの仮想領域においては名もなき神々の力によって有機物すらも再構築できるようになっていた。何より、デカグラマトン本人が有機物から無機物への再構築を行うことで、先生達に勝利した後は生徒達を自らの新たな使徒という形で再構築しようとしていたのだ。であればその逆―――無機物から有機物への再構築も当然可能となる。
「だから……もう、モルフォは大丈夫だよ」
同じように再構築されたケイやアイン、ソフ、オウル、マルクト。ケイの身体は本人曰くアリスに類似している、とのことでエンジニア部らも検査したところ、同様の結果が出ていた。残る四人の身体は文字通り機械の身体ではあるが、身体を修復しただけのマルクトとは違い、アイン達は人工皮膚等、一部器官など今のキヴォトスで生きやすい形に新造されている。特に駆動系や動力に関しては完全に鋼鉄大陸などに依存しない形に改良されているといえるだろう。
「うへ、先生ありがとうねぇ、モルフォちゃんのこと……ユメ先輩ももう一人のシロコちゃんも凄く嬉しそうだよ」
「ふふ、ホシノ先輩も嬉しそうですよ?」
「え?そりゃあおじさんも嬉しいよ」
ユメとシロコ*テラーに押し潰されるように強く抱きしめられ続けるモルフォの様子を見ながら、ホシノ達も笑う。そんな、目を覚ましたもう一人のモルフォを見た当初よりもずっと良い形で、叶えたかった光景を見ることができた先生は、やっと肩の荷が一つ降りたように深いため息を吐く。この景色も、あの場にいた生徒達が、皆で頑張って掴んだ未来なのだと。これから、本当の意味で始まる彼女達の明るい未来を予想しながら、先生はホシノに転入の手続きについて切り出すのだった。
★
「エビの色違い多い……多くない?」
「いや、その……ペンギンに力入れたら余力が……」
「だとしてもカラバリ違いで敵数をかさましするのはちょっとねぇ……一回限りのボス戦限定キャラで七色エビとかやるならまだわかるけども……」
「……ごくん。そうですよ。ボリュームが完全に偏ってるじゃないですか……」
「う……やっぱりそうかな……?」
「やっぱりって自分でもそう思ってるんじゃないですか!?」
「うーん……とはいえステータスとかは作られてるし……なんかパーツとか追加できない?」
「パーツ?」
そして、ゲーム開発部の部室。そこでは、これまでと同じような、だがちょっとだけ新しく変わった日常が広がっていた。先生達に呼ばれ、氷海に向かう前に開発を進めていた新作ゲーム。その開発を再開していたモモイ達は早速様々な問題点にぶち当たっていた。
「例えばこの赤いエビ。こいつは触覚を伸ばしたりトゲをつけたりして」
「イセエビでは?」
「黒いエビは島縞模様にして……ついでに耳っぽくも見える触覚を生やして」
「ブラックタイガーじゃないですか」
「ち、ちなみに青いエビは……?」
「うーん……ああ、そうだ。あれがあった……足を前の方だけにして、ちょっとサイズダウンしよう」
「元ネタは?」
「ベルベットブルーシュリンプ」
「急に格好いい名前が飛び出してきた!?」
まずはミドリが作った大量の色だけ変えて敵の種類をかさ増ししていたエビ軍団の調理。実際にエビを調べてそれっぽい特徴をつけることで区別をつけることでパチモン感を無くそうという方向性でまず方向性が決まる。
「ごくっ……そしてユズは……ちょっと操作が難しすぎませんか?コマンド式だからってこれは……なんで進行上必須のアクションが途中まで全部コマンド一緒なんですか……というかこれ、一つ一つボタン増やしてるだけじゃないですか!?」
「いや、そのね……?そうすれば操作性が分かりやすいから……」
「格ゲーならともかく昨今のアクションゲームで同時押しアクションはともかくコマンド入力は流行らないと思うんだけど……」
「うーん……基本アクションは同時押しにしつつ、コマンド式の方は装備で変更しつつ、コマンド式で操作難易度を上げる代わりにステータスを上げられるとかそういう方向性で纏めるのは?」
「!確かにそれなら初心者にも優しいです!」
続けてユズが設定した難易度調整。とはいえ今回はそもそもの基本操作から躓き始めていたが。ユズであればちょっとしたコマンドの違いでアクションをどんどん使い分けられていくが、モルフォがやってみるとどうしても暴発が目立つ場面がちょくちょく出てくる。結果として、クリアできないわけじゃないけど暴発のストレスがやばそうという結論に達していた。
「でも下手にステータスを盛るとその塩梅が難しいですよ」
「そこだよね……まあ、そこはできるだけ調整頑張る方向性でいいんじゃない?」
「それしかなさそうですね……しかし、なんでこんなに急に皆駄目な感じに……?」
「中断したのを再開したからかなぁ……?それでなんか変な方向に皆走り始めてるんじゃない……?」
ミドリとユズの確認が終わり、呆れた様子で白い髪を弄りながらジュースを飲むケイ。それからクッキーを放り込んで袋をゴミ箱に入れると、新しいクッキーの箱を開け始めるのだが、ふとその様子を全員が見ていることに気付く。
「……?」
「ケイ、もう三箱目ですよ?」
「……え?あ……」
「……なんか急にケイちゃんの食欲増してない?」
「というか今までが我慢せざるを得なかったんじゃないかな……ほら、アリスちゃんの身体でドカ食いなんてできないし、エンジニア部の身体だってあんまり無理しちゃいけないってセーブがあったから……だから、本当に自分の体になったせいで……」
「……太るよ、ケイ」
「モモイ!!」
「これは別に間違ったこと言ってないじゃん!?」
食事について一切気にする必要がない自分だけの身体、という戦利品はあまりにも大きかった。顔を真っ赤にして怒り出すケイを見ながら、そういえばケイはミレニアムに戻る途中も人一倍食事を取っていたなと思い出すモルフォ。あの時は一人だけ素体だったせいで食事ができなかった反動かとも思っていたが、どうやらそういうわけではなさそうだ。
「じゃあモモイ、あなたはどうなんです!シナリオは!?」
「……一回全部書き直してて……ね?」
「書き直してる!?ほとんど出来上がってたのに!?」
「だって!あんなことあったせいであそこああした方がいいかなぁとか色々出てきちゃったんだもん!しょうがないじゃん!!」
「……まあ、モモイは今回はいいんじゃないかな……気持ちはわからなくもないし」
「モルフォがそう言うなら……」
「じゃあ次はアリスとケイだね。プログラムの方は?」
「あ、アリスですね……とりあえず、アリスが担当したプログラムは今の所異常はありません!バグとかもなさそうです!」
「さすがですね、アリス。私の方も勿論問題ありません。いくらでも壊してくれて構いませんよ」
「まあデバッグは追々ってことで……とりあえず開発スケジュールはこんな感じに―――」
騒がしく皆で話し合いながら、作業を進めていく。これからの予定を詰め、ゲームを作り、そして遊ぶ。いずれ、外で何かしらの騒ぎに巻き込まれたり、首を突っ込んだりするときもあるかもしれない。それでも―――
今はこの、いつも通りの日常を少女達は過ごすのだった。
デカグラマトン編は今回で完結となります。次回から普段通り、2日間隔での更新に戻ります