転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
「あれ?便利屋の皆さん、どうしたんです?」
シャーレの当番を終えて帰る準備を始めていたモルフォ。そんな時、シャーレの入り口に便利屋68の姿があった。
「あら、モルフォじゃない。シャーレの当番かしら?」
「ええ、そんなところで」
「仕事終わりの打ち上げってやつ?D.U.地区になんか話題の店が出たって聞いて行ってみたんだよね~」
「へー」
どうやら便利屋の四人がここに来たのは食事のためのようだ。しかし話題の店とは。聞いた記憶がないが後で調べてみようと思いながら、ムツキの話の続きを聞く。
「でまあ、折角近くまで来たし?先生に顔出していこうかなーって」
「ああ、なるほど?」
シャーレまで来たのは何か用事があったわけではなく、とにかくふらっと来ただけだったようだ。四人がここにいる理由に納得した様子で頷くモルフォはシャーレの方を見上げる。
「でも今、先生いないんですよね」
「あら、そうなの?」
「ええ、連邦生徒会の方に行ってるとかで。色々後始末がまだ残ってるそうなので」
「後始末?」
「まあ、ちょっと……」
探るような視線を向けるカヨコに対して誤魔化すように視線を逸らす。まだ鋼鉄大陸の一件も上はドタバタしているようだ。ミレニアムの方は落ち着いてはきているが、連邦生徒会の方はそうはいかないのだろう。
「戻ってくるまで待ちます?」
「そ、そうですね……えっと、なんか面白い物って……あったりしますか……?」
「そうだね……」
ハルカがおずおずと言った様子でモルフォに質問する。それを聞いたモルフォは少し考え込んでいたが、四人の顔を見ていくと、
「あー、そういえばあれがあったか……」
「何?」
「えっと……こねこばくはつとかどうです?」
「「「「こねこばくはつ!?」」」」
こねこばくはつと呼ばれる、思わず聞き返されるタイトルのゲームを提案するのだった。
★
こねこばくはつ。それは、カードゲームの一つなのだが、「このカードゲームは以下のような人にピッタリです。こねこや爆発が好きな人、あとレーザー光線好き、または山羊に興味のある人」という中々ユニークな謳い文句がある。タイトルからしてどうもスプラッタな感じがする作品だが、あくまでカードゲーム上の話なのでそこまで絵面が大変なことになるわけではない。
このカードゲームでは複数のカードが存在しており、こねこばくはつカード、爆弾処理カード、その他のカードの三つに分かれている。
最初に山札から七枚をそれぞれのプレイヤーに配る。その後、爆弾処理のカードを一枚ずつ、各プレイヤーに配り、それを含めた合計八枚が各々のプレイヤーの初期手札となる。その後、プレイヤー数より一枚少ない数のこねこばくはつカードと残った爆弾処理カードを全て山札に入れ、シャッフルする。これで山札の準備は完了だ。
山札からこねこばくはつカードを引いたプレイヤーはその場でゲームから脱落。これを繰り返していき、最後の一人になるまで続けるのがこのゲームだ。
「それにしても、聞いている限りだと凄いゲームね……」
「子猫を爆発、か……」
「あはは、まあ爆発させるのは好きだけど」
「まあ、ゲーム名やカード名が特徴的なだけでルール自体は単純ではあるので……」
シャーレの居住区に連れられてそこにモルフォにこねこばくはつを見せられ、ルールを覚えながらも思わず苦笑が漏れるアル達。子猫に爆発とフレーズだけなら中々興味を引くものが揃っているだけにどうしてそれを取り合わせてしまったのかという思いがどうしても残る。
「で、手番を決めたら……」
プレイヤーは自分の番でいくつかの行動を取れる。まずは手札から好きな枚数カードを使用するというもの。カードにはそれぞれ効果があり、これを適用して勝ち残りを目指していくことになる。この時、一枚もカードを使わずにパスするという選択肢も取れる。その後、山札から一枚引くことになる。ここで、こねこばくはつカードを引いてしまうと脱落してしまうため、こねこばくはつカードを引かないように祈ることになるのだ。
「まあ、本当にルール自体は単純ね……」
「で、でも楽しそうですね……」
「というかこれ、こねこばくはつカードを引いた時に黙ってたら駄目なの?」
「引いたらこねこばくはつカードは強制的に公開されるので駄目ですね」
「あちゃー、そっかー」
ふと、魔が差したのか思い付いたことを提案するムツキ。しかし、薄々察していた通り、当然そんなことはルール上禁止されている。となれば、こねこばくはつカードを引いたら即座にアウトになるのだが、それを回避する手段も存在する。それこそが、爆弾処理カードだ。こねこばくはつカードを引いた時、爆弾処理カードを捨てることでゲームからの脱落を回避できるのだ。その後、引いたこねこばくはつカードは、山札の中に戻すことになる。つまり、各プレイヤーは最初の一回だけ脱落を回避できるのだ。
「……え?シャッフルしないの?」
「はい。なので山札の一番上に置いたりしてもいいんですよねこれ」
「つまり次の相手を攻撃していいと……」
「山札の上から二枚目三枚目に仕込んだりするのも攻撃になるってわけか……一回こねこばくはつカードを引いたらそこから動きそうだね」
そして、このゲームに登場するこねこばくはつカード、爆弾処理カード以外にも様々なユニークな効果を持つカードが存在している。
アタックと呼ばれる、カードを引かずに手番を終えられる上に、次のプレイヤーが二連続で手番を行うカード。これにより、次の手番は山札から二枚のカードを引くことになり、こねこばくはつカードを引く可能性が上昇するのだ。なお、アタックにアタックを重ねることもでき、そうした場合、さらに次の人にその連続行動の権利を渡すことができる。
山札を引かずに手番を終了することができるスキップ。ただし、アタックに対する形でスキップを使用した場合、最初の手番こそスキップされるものの、残ったもう一回は通常通りに行うことになるので、完全にスキップさせられるわけではなく、あくまでアタックで増えた分を打ち消すだけなのは注意が必要となる。
そして、いいねカードというものもあり、これを使うとプレイヤーを一人指名してそのプレイヤーからカードを一枚もらうことができる。ただし、渡すカードは指名したプレイヤーが選ぶため、貰えるカードを好きに選べるわけではない点は気を付ける必要がある。
さらに山札の一番上から三枚までを確認することができる予知能力というカードもある。このカードを使い、山札を確認することで、もしその中にこねこばくはつカードがあれば戦略上の大きなアドバンテージを得ることができる。ただし、こねこばくはつカードがなくてもカードの確認はできるので、どのプレイヤーにカードがいくのかを知ることもできる。
他にも山札を見ずにシャッフルできるカードと、カード効果を無効にすることのできるダメ!カードというものがある。ただしこのダメ!カードは自分の手番ではない時に使用でき、こねこばくはつと爆発処理カード以外のカードを無効にすることが可能となる。また、ダメ!カードに対してダメ!カードを繰り出して無効を無効にすることもでき、これによって本命を通すというプレイングもできる。
そして、五種類のねこカード。これは一枚では効果がなく、同じ種類のねこカードを二枚同時に出すことで指名したプレイヤーからカードを一枚奪える効果がある。これは、いいねカードとは異なり、指名されたプレイヤーは渡すカードを選べず、ほぼランダムにカードを奪われるという点で差異がある。
「山札は64枚。こねこばくはつカードは一枚抜かれて63枚で初期手札で合計32枚を抜けば山札は残り31枚……となると、案外一回のプレイ時間はそこまで長くなさそうね」
「ま、とりあえずやってみましょう!なんかわくわくしてきたわ!」
一通りルールとカードの説明が終わったところで、モルフォが見守る中、四人はゲームをプレイする。八枚の手札をそれぞれ用意した後で、アルを一番最初の手番としてゲームが開始される。
(とりあえず、私の手札は……)
アルはまず何を出すのかなどを考えながら手札を見る。しかし、一気に八枚もの手札を回されるといろんなことができそうで逆に何をすればいいかわからなくなる。
「……とりあえずこの予知能力を使おうかしら」
「おっ、早速チラ見しちゃう?アルちゃん大人しいねぇ」
「そ、そういうわけじゃないのよ?ただどんな感じか見るのも大事ってだけで……」
「はいはい、じゃあ確認してよ」
早速と言わんばかりにカードを確認するアル。しかし、そのカードを見たアルの表情が固まってしまう。
(いや、ちょっとぉ!?)
ピクピクと頬を引き攣らせるアル。彼女の見るカード、その一番上にあったのは、なんとこねこばくはつカード。いきなり外れのカードを見たアルはどうするべきか頭を考え込んでしまう。
「あ、アル様……」
「いやー、これは……」
「……まあ、大体察するよね……」
「……こ、これを使うわ」
こねこばくはつカードがこの三枚にあることを嫌でも察する三人。となれば、他のカードを使ってスキップするといった行動をとることになるのだが、アルが使用したのはシャッフルのカード。これにより、アルはデッキをシャッフルすることでこねこばくはつのカードをどこに行ったかわからないようにしてしまう。
「ふう……これで安心ね」
「……いやいや、アルちゃん、そこシャッフルしちゃうの?」
「アタックなりで引かないようにすればいいのに」
「あ……」
「しかもシャッフルのせいで見た他の二枚も無駄になってるし……」
「う……」
周りからの言葉、アルもその手があったかとようやく気付く。相手に爆弾を押し付けてしまえばいいし、そうすれば相手の爆弾処理カード、或いは爆弾を引かないようにするためのカードを消費させられたはずだ。勝ち残るにはそういう一手を打つのも大事なポイントなのだが、シャッフルを使うことで爆弾を隠すという一手を打つのは正直あまり好ましい一手ではない。
「ま、まあとりあえずこれで引かなきゃいいのよ!さあ―――あっ」
「「「「あっ」」」」
非効率なプレイングをしていることを誤魔化しながら、カードを引く。しかし、そこで出たのはなんと、こねこばくはつカード。シャッフルしたはずなのに、山札の一番上に出てきたのは不幸という他ない。そして、引いてしまったことでアルは爆弾処理カードを捨てることになってしまう。
「……こんなことってある!?」
「まあ……たまにあります!」
「あるの!?」
「いやまぁ確率的にはないとは言い切れないからね……」
これにはアルも納得できない様子だが、ありえない話でないなら相応にして起こるものだ。このように。
「じゃあ次は私だね?うーん、まあとりあえずアタックで終わりでいいかな」
「アタック……スキップで一回潰して、次は普通にやるかな……よし、これは違うね」
「えっと、えっと……」
その後、ムツキ、カヨコの順番が続き、最後にハルカの番になる。
「これ、ど、どうしたら……」
ちら、ちらとハルカの目がモルフォに向けられる。手札がありすぎてどう動けばいいかわからないが、ゲームであるが故に他の三人に聞くことはできない。そこで、外野のモルフォに助けを求めたのだ。モルフォはどうするべきかと悩んでいたが、他の三人の目を見てその意図を汲むと、
「えーとこれはね……」
ハルカの手札を覗いてみると、確かにこれは動き方に迷う手札だ。それも、
(ねこばっかりだ……)
ねこカードが五種類ずつ、しかも一枚ずつという有様。このねこカードにはじゃがねこ、ひげねこ、スイカねこ、タコスねこ、虹を吐くねこに分かれている。同じ二枚がないと役に立たないこのカード、そして爆弾処理の六枚で手札が埋まってるとあれば確かに迷うのも無理もないだろう。何せ、ここでねこカードを一枚引けば、他の人のカードを奪えるようになるのだ。ここで引くことができれば。
そう思いたいが、ここでノイズになるのはシャッフルしたのにこねこばくはつカードを引いてきたアルだ。引いたこねこばくはつカードを山札の一番下に差し込んだため、残るこねこばくはつカードは二枚、引くか引かないかでいえばワンチャン引くかもしれない状態だ。そして残る手札を見て、
「……これを使ってみよう」
「え、えっとこれは……」
「多分、うまくいくはず」
「わ、わかりました……じゃあこの、いいねカードで……室長を……」
「あ、私?」
いいねカードを使い、ハルカはムツキから一枚のカードを貰う。それは、ムツキが持て余していたねこカード。ハルカの手札にはすべてのねこカードが存在していたことで一枚でも手に入れればそれは効果を発揮することになる。
「そ、揃いました!じゃあこれを使って……課長から一枚もらいますね……」
「はい」
揃ったねこカードを使い、カヨコの手札からランダムに一枚手に入れる。そうして入手したカードは、予知能力カード。それを使い、山札の上から三枚を確認すると、一番上のカードであった別のねこカードを入手する。
「……ほっ」
「こんな感じかな?」
「あ、ありがとうございます……おかげでなんとなくわかった気がします」
「ならよかった」
モルフォに指示されて実際にやったことで、何となく流れがわかり、ハルカは楽しそうに頷く。そして次の手番からはアルも攻め始め、時にカードの効果を無効にしたり、奪い合ったりしながら、こねこばくはつカードを引かないように四人は立ち回っていく。それでも、運が悪くてこねこばくはつカードを引いたりして、爆弾処理カードを使わされることになる機会も増え始める。それでも少しずつ、手札も減っていき、全員が爆弾処理カードを持たなくなったことで一気に終盤に差し掛かり始める。
「……ふう、山札も薄くなってきたわね」
「いやー、ここからはいつ引いてもおかしくないね?」
「……さて、社長は引くしかないけどどうする?」
アルに手札はなく、ムツキ、カヨコも一枚ずつ。ハルカは二枚残ってこそいるが、片方はねこカードであったため、事実上自由なカードは一枚だけ。そして今の手番はアルのため、カードを繰り出せないアルはただ引くことしかできない。
「ひ、引いてやるわよ!私はアウトロー……アウトローはここで生きるものよ!!さあ……スキップ来なさい!!」
「アルちゃん、そうやって念じると……」
「……それ、フラグに―――」
覚悟を決めて引いたアル。だが、アルの引いた一枚は、なんとこねこばくはつであり、アルは固まってしまう。
「あーあ……」
「引いちゃいましたねぇ……」
山札が薄いから当然といえば当然だが、こねこばくはつを引く可能性は当然高まる。そしてこのタイミングでアルは不幸にもこねこばくはつを引いてしまう。最早、それを受け止める爆弾処理カードもなく、ここでアルは遂に脱落してしまう。
「そ、そんな……」
「まあ、ここまでよく持った方じゃないでしょうか」
「確かに、途中でいつ引いてもおかしくないことを考えれば」
「これで、こねこばくはつカードは残り二枚、か……」
がっくりと項垂れるアルを横目に、ゲームは続く。ムツキは特に使えるカードがないためかそのまま引くも、ねこカードだったのを見て少し渋い顔をする。カヨコは未来予知カードを使ってトップを確認し、安全なのを確認してカードを引く。そしてハルカのターン。カヨコはトップが安全だからそのまま引いたが、二枚目がどうかはわからない。だから、
「す、スキップを使います……!」
「うわお、まだ持ってたんだ!?」
「……と、なると」
スキップを使うことで、そのターンカードを引かないようにする。そして、脱落したアルを飛ばしてムツキの番に。
「ねえねえ、カヨコっちー、これアウトなやつ?」
「さあね?」
ムツキはカヨコに二枚目は大丈夫か問いかける。当然カヨコはポーカーフェイスを崩さないため、これがアウトかどうかはわからない。ムツキは少し考え込んでいたが、手札にある使える一枚を見る。
「じゃあさ、カヨコっち、ここでアタックを使ったらどうするのかなー?」
「……残念。最初は普通に引くけど、二枚目はスキップで飛ばす」
「えー」
(ただ、これで手札にあるのはねこカード。実質使えないも同然、か)
最後の一枚はアタック。それを使って、カヨコに二枚を引かせる。この二枚のどちらかにこねこばくはつがあると睨んでのことだったが、カヨコは三枚目を引かないように立ちまわる。この対応から、こねこばくはつのカードは三枚目にあるも同然。終盤ギリギリの攻防を見て、アルが羨ましそうな視線を向ける。
「うう……あそこで脱落していなかったら私もあそこに……」
「まあ、運が最後まで持たなかったんでしょう。次がありますって」
「そ、そうよね……」
「こ、これは引いてはいけない気がします……!」
ここまでの流れもあって、ハルカもさすがにこの一枚は引いてはいけないと察していたようだ。そして、ハルカの手札にはそれを防ぐための一枚も不十分だがちゃんと存在していた。
「しゃ、シャッフルです……!これで……や、やりました……!こねこばくはつじゃ、ないです……!」
「やったじゃないハルカ!」
「えへへ、あ、ありがとうございます、アル様……」
山札を切り直したことでおそらくトップにあったこねこばくはつを回避する。そしてムツキのターンがやってくるのだが、出せるカードはない。
「うーん、シャッフルしてくれたし、多分大丈夫だと思いたいけど―――ありゃ、引いちゃった」
「ここまでくるともう誰が先に引くか、だね」
そのため引く以外にすることができないのだが、ここでムツキがこねこばくはつを引いてしまう。それによって、カヨコとハルカの決勝戦となる。だが、この手番では使えるカードはカヨコにもハルカにもない。カヨコの手札にあるのはねこカードだから。
「……違うね」
「わ、私も……ひ、引けませんでした……」
余っているねこカードを一枚ずつ引き、再度のカヨコの手番もまたねこカードを引いてハルカの番に。山札は目に見えて薄くなっており、残る僅かなカードに手を伸ばすのだが、
「……あ」
ここでハルカは最後のこねこばくはつカードを引いてしまう。それによって、ハルカも無慈悲に爆発させられてしまい、カヨコがゲームの勝利者となる。カヨコが少し安心したように溜息を吐く。
「カヨコっちさすが~!」
「まあ、運が良かったのは大きいよ。正直可能性でいえばいつ脱落してもおかしくなかったからね」
「あうう、負けてしまいました……」
「大丈夫よハルカ!次があるわ!」
「次……ですか」
「そんな時間もかかってないし、先生もまだ来てないんだし、もう一回ぐらいできると思うわよ?」
ハルカの様子を見ながら、アルは二回目のゲームを提案する。そんなアルの姿に乗り気な便利屋68の面々を見ながら、モルフォは再び帰り支度を整えるのを再開するのだった。