転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
エリドゥの地下深くに存在する小さな格納庫。そこには、ミレニアムの生徒達が鋼鉄大陸で使用した装備が厳重に保管されていた。エネルギー弾を放つ装備の数々、生徒達が使用した戦闘用衣装、それだけでなく、デカグラマトンとの最後に使用した預言者達の力によって変化した装備群もある。
とはいえ預言者達の装備は現在起動することができなくなっており、全て灰色に染まっている。破損したアリスとケイの装備も復元されているが、こちらも形だけである。
「……」
その空間に立っていたマルクトは、自分の銃を立てかける。このエリドゥに居て、準備が終わるまでは持っていたが、このキヴォトスでこれからを生きるにはこの銃はあまりに威力が強すぎるのだ。幸い、リオらがマルクトの銃を元とした、火力を大きく落としたものを作成してくれたため、これからはそちらを使用することになる。そして、新たな銃を用意されてたのはアイン、ソフ、オウルもだ。このキヴォトスでは銃を持たない人など珍しいなんてレベルではないのだから。
「……これを、また使う時が来なければいいのですが」
そう呟きながら、格納庫を後にする。それと共に格納庫の扉が閉まり、厳重なロックがかかったのを少し名残惜しそうに一瞥し、マルクトは背を向けるのだった。
★
「そっか、近いうちに行っちゃうんだ」
「まあ、なんだかんだで世話にはなりましたよ」
「え、えっと……多分どこかしらでまた戻ると、お、思います……」
「まあ……住み心地はいいし。多分ちょくちょく戻るだろうからそこまで心配はしなくてもいいよ。それにお姉様もいるし!」
場所が変わり、エリドゥ内にある居住区。そこにいたアイン、ソフ、オウルはゲーム開発部に今後の事を話していた。あの一件からある程度時間が経っているのもあってか、三人の態度は以前と比べて目に見えて軟化しているようだが、これもマルクトが率先して人と交流したりキヴォトスでの生活に溶け込もうとしているのが大きいのだろう。
「でも、寂しくなるね」
「まあ、永遠の別れってわけじゃないし……」
「そこまでいうなら餞別か何かでもくれたらどうです?」
「ず、図々しい!」
「うーん、まあ外に持ち出すのは駄目だけど、ここで見るのならハガレン……いやお父様とかな……」
「ほお?何かあるんですか?」
三人が御所望なので何か名作でも、と思って鋼の錬金術師を思い付くモルフォ。しかしあの作品は一部の設定が大丈夫なのかと考えていると、オウルがニヤニヤと笑いながらモルフォを見る。
「まさか私達の心配をしているんですか?そんなもの……たかがアニメかゲームでしょう?そんなもので私達が今更動揺するとでも?」
「アニメがアニメなのはそれはそうだけど」
「ふーん、まあいいんじゃない?気にしてるのが何か知らないけど」
「どうせ面白いだろうし私はいいと思う!」
「アリスもそう思います!」
挑発するようなオウルの様子に始まり、他の面々の反応も見つつ、まあいいかとBDを作り出すと、映像を流し始める。いきなり巨大な街の映像と、チョークで描かれた謎の陣、そしてそれを描く男性という姿と共に、事件の説明がされる。
『氷結の錬金術師、ですか』
鋼の錬金術師FULLMETAL ALCHEMIST。それは漫画を元としたアニメで、錬金術が存在する架空の世界を舞台としたファンタジー漫画である。19世紀の産業革命期のヨーロッパを題材にしており、軍事国家アメストリスを舞台とした、
第一話はアニオリエピソードとなっており、国家錬金術師であることを止め、反体制派に寝返ったアイザックを捕縛する話となっている。セントラルに現れたアイザックは水を沸騰させる、凍らせるなど様々な方法でアメストリスの兵士を殺害していく。
「錬金術っていうか、魔法じゃ……」
「まあこれだけ見てたらそう思うのかもね」
「というかいきなりポンポン人が死んでいきますね……」
「まあ序盤はダークファンタジー的な雰囲気もあったからね」
錬金術の演出はそれだけ見たら完全に魔法だ。特にエドワードことエドが使用する錬金術は両手を合わせ、地面や金属の一部を変化させるというものであり、それによって槍を金棒に変える、地面や壁を相手へと押し出して固める拘束具にするなどの様々な現象を引き起こせる。
「……チビって言われて怒るしなんかネル先輩みたいですね……」
「生意気な所もネル先輩みたいです!」
「後で怒られても知らないよ?」
アニオリではあるが、主要人物である焔の錬金術師、ロイ・マスタング大佐。その部下であるリザ・ホークアイ中尉。マスタングの親友であり妻と娘を溺愛するマーズ・ヒューズ中佐。筋肉隆々とした男、剛腕の錬金術師、アレックス・ルイ・アームストロング少佐。牢屋に投獄されている爆破の錬金術師、ゾルフ・J・キンブリー。国のトップであり高い実力を持つ左目が眼帯の男、キング・ブラッドレイ大総統と、多くのネームドキャラが出ている。最終的なアイザックの目的はブラッドレイの殺害であったものの国家錬金術師たちに追い詰められ、最終的にブラッドレイに斬り捨てられ死亡することで事件は終わることになる。
「さすが国のトップ、つよーい」
(……錬金術師最大の禁忌、人体練成……賢者の石、そしてアイザックが最後に落として砕けた赤い球体……この国の真の姿……)
(アニオリなんだけど滅茶苦茶後に繋がる話ではあるんだよね……後を知ってから見ると全然違ってみえるな……)
だがアイザックが機械鎧という義手義足のエドと、中身のない鎧のアルフォンスことアルを前に発した禁忌、人体練成と言う言葉。エド達が求める賢者の石や軍やブラッドレイに対する意味深な言及。それらの意味は、後に分かることになる。
『錬金術は物質を理解、分解、再構築する科学なり。されど、万能の業にはあらず。無から有を生ずる事能わず。何かを得ようと欲すれば、必ず同等の対価を支払うものなり。これ即ち錬金術の基本、等価交換なり。錬金術師に禁忌あり。其は人体練成なり。これ、何人も犯すことなかれ』
「……これは」
続く第二話。その冒頭で流れたナレーションに、思わずぽかんとなるアイン達とケイ。モモイ達はあーなんか錬金術っぽいと頭が空っぽになった様子になっているが、それよりも四人が反応したのは、このアバン映像の中で映し出されたセフィロトの樹だ。このセフィロトの樹は、後にも出てくる真理の扉に刻まれており、セフィロト関連の設定として出てくることはないものの、重要な要素であると言える。
『賢者の石……』
ここで時系列は十年前に遡る。エドとアルは家に戻ってこない父の部屋の錬金術の書物を読み漁り、錬金術ができるようになっていた。それを見た母トリシャは喜び、エドとアルも嬉しくてより錬金術にのめり込んでいった。だがその年の夏、トリシャは流行り病で死亡。父も戻らず、二人になってしまったエド達は、母を人体練成で蘇らせることを決意する。錬金術師の師匠を見つけ腕を上げた二人は、遂に人体練成を行う。
「いや禁忌って言ってなかった?」
「そんな黙っておけばできるみたいなノリでやるとやばいんじゃ」
「実際やばいと思うけど……」
大人一人を構成する材料を用意し、構築式を描いて練成陣を作る。そして魂の情報としてエドとアルは血を一滴ずつ垂らして練成を開始した直後。禍々しい雰囲気と共に黒い靄のようなものが練成陣から上がり、その中央に巨大な目が開く。
『うあっ!?』
『アル!?』
「「「!?」」」
アルの左手首が千切れ、黒い靄が無数の細い手となってアルの身体に伸びる。エドの左脚も同様に粉々に千切れ、倒れ込んでしまう。
『まさか、リバウンド……!?』
『兄さん!!』
構築式に誤りがあったり、対価以上の物を錬成しようとして失敗すると、リバウンドと呼ばれる現象が起きることがある。リバウンドは全て術を行使した者に跳ね返ってしまい、エドの左脚が千切れた原因はまさかこれかと脳裏を過った直後、アルは無数の手によって次々と粉々に砕かれていく。必死にエドが手を伸ばした瞬間、真っ白な空間に左脚が無事な状態で立っていた。
『よぉ』
そこには一人の人型の何かがいた。それは自らを様々なもので呼んでいたが、やがて神、真理と呼称する。そして俺はお前だと言うと、エドを真理の扉の中に引きずり込んでいく。
『うわああああ!?』
『うるさいな……お前が欲しがったものだろう?見せてやるよ……真理を』
扉の中に放り込まれたエドは、膨大な情報を脳に直接流し込まれ、激しい頭痛の中で唐突に真理を理解する。だが、左脚以上の通行料を持たなかったエドはその先を見ることができず現実へと戻される。そこには、服だけを残して消滅した弟と、左脚が千切れ痛みに叫ぶエドの姿が。
『クソォ……こんなことがあってたまるか……!こんな、こんなはずじゃ……畜生!持っていかれたァァァ!!助けて……誰か……母さん……』
必死に助けを求めるエドは、練成反応である青い光が消えたことに気付く。なら母親は練成されているはず。しかしそこにいたのは、
『あ……ああ……嘘だ……違う……こんなの……こんなのを望んだんじゃない……』
人の形を一部だけした出来損ない。人体練成は失敗し、母親は不完全な化け物として練成され、そしてアルも消えてしまった。自分のせいで。人体練成をしようと言ったから。エドは必死に、這いずり部屋にあった鎧を倒すと、そこに自分の血で構築式を描いていく。
『返せよ……弟なんだ……脚だろうが腕だろうが心臓だろうがくれてやる!だから返せよ……!たった一人の弟なんだよ!!』
「「「……」」」
そして、エドは手を合わせる。練成陣を用いない、自分の体を練成陣とした錬金術。その光と共に場面が切り替わり、これを見ていた既に視聴済みのモルフォ以外の面々は全員が言葉を失っていた。
「……これは?」
「「「お姉様!?」」」
「あ、ま、マルクト……い、いつから……?」
「七分ほど前からでしょうか」
「人体練成開始したところからか……」
しかも丁度戻ってきていたマルクトもいつの間にか見ていた。声をかけるタイミングを見失っていたようだが、アイン達からすればかなり思うところがあったようですっかり黙り込んでしまったところを見かねて声をかけたようだ。
「これは確か、アニメ、でしょうか」
「え、ええ……まあ、大分容赦ないんですがね……まだ二話ですよね。これ何話あるんです?」
「64話……」
「そんなに」
場面が変わり、マスタングとリザがエド達の家を訪れ人体練成を行った痕跡を発見。急いで兄弟を探し出すと、そこには鎧となったアルと右腕と左脚を失い絶望した様子で車椅子に座るエドの姿が。そこでマスタングはエド達が人体練成を行い、さらに弟の魂を鎧に定着させたことを知ることになる。マスタングは国家錬金術師になれば元の身体になるための研究ができると言うも、それに猛反対したのは二人の幼馴染の少女、ウィンリィ・ロックベルの祖母、ピナコ。人体練成が生み出したものは人じゃなかったと言い、これ以上二人に地獄を見ろと言うのかとマスタングに噛みつく。だが、マスタングに焚きつけられたエドの目には、火が付いていた。
「……人間の強さを描いている作品でしょうか」
「そうだね。人間……いや、意志の強さと言った方がいいのかな」
「意志の強さ……」
そして、エドは機械鎧を手に入れて再び立ち上がる。試験も無事にクリアし、国家錬金術師となったエドは、イーストシティ東方司令部で、マスタングから鋼の二つ名を大総統が与えたことを告げる。そして場面は現在、次の目的地であるリオールへ向かうことになる。
「……おっっっもい!!」
「……もう既にきついんですが」
「あ、はは……禁忌とかそりゃ不穏なワードは一話からあったけど……」
「返せってさ……あ、はは……」
「もう笑うしかありませんね……」
「ま、まだ62話ありますよね」
「言わないでくれません?」
『降りて来いよド三流、格の違いってやつを見せてやる!!』
モモイやケイ、アイン達を筆頭に二話の時点で既にやられかけているが、話は続いていく。リオールの街に賢者の石の情報を求めて調査を行うも、そこにあったのは賢者の石の偽物でそれを使っていたのはコーネロという人物だったのだが、エドとの戦闘でその石が壊れてしまう。その後、マスタングから綴命の錬金術師ショウ・タッカーを紹介される。タッカーは二年前、人語を理解する
「……死にたいって言ったキメラって」
「ぜ、絶対やばいですって」
「……モルフォ」
「まあ続きを見ればわかるよ」
二年前に作られたキメラは「死にたい」とだけ呟き、餌も食べずに餓死してしまったという。そんなタッカーは妻に逃げられてしまい、娘のニーナと大型犬のアレキサンダーと一緒に暮らしている。エド達も資料を探す傍ら、エドをお兄ちゃんと呼んで慕うニーナと一緒に遊んだりして親しくなる中、タッカーは年に一度行われる国家錬金術師の査定を前にして思ったより成果が出せず、国家錬金術師の資格を剥奪されそうになっている現状に焦りを感じていた。何としても査定を通さないと、また苦しい生活に逆戻りだ。そんなタッカーに、ニーナは励ましの言葉をかける。その言葉を聞いたタッカーは翌日は一緒に遊ぼうと言い、ニーナも喜ぶ。その様子をエド達は微笑ましい目で見ていたのだが。
『タッカーさん?』
『ニーナ?』
今にも雨が降りそうな曇り空。エド達は家の中が不自然なほどに静かなことに気付く。その様子に疑問を感じながら研究室に行くと、そこにはタッカーと、一体の犬型のキメラがいた。
「犬……」
「あっ……」
『やあ……できたよ。完成品だ』
何かを察したような悲鳴にも似た呟きをユズが漏らす中、タッカーがエドワードとエドの名前を教えると、キメラはエドワードと呟くエド達がその様子を感心しながら見ている中、タッカーはこれで資格は無事だと喜び安心していた。
『えど、わーど……えどわーど……お、にい、ちゃん』
『!!』
が、キメラがおにいちゃんと口にしたことで空気が固まる。何故か今になっても姿を見せないニーナとアレキサンダー、そして完成したというキメラ。トドメにキメラが口にした、お兄ちゃんというフレーズ。その答えに気付き再び絶句するアイン達。
『タッカーさん……国家資格取ったの、何時だっけ』
『えーと、二年前だね』
『奥さんがいなくなったのは?』
『二年前だね』
『もう一つ質問いいかな……ニーナとアレキサンダー、どこに行った?』
『ッ!』
『……君のような勘のいいガキは嫌いだよ』
エドの質問に答えていく。そして、ニーナとアレキサンダーがいなくなったことについて言及すると、まるで人が変わったかのような形相で吐き捨てる。直後、エドはタッカーの胸倉を掴んで壁へと叩きつける。そう、タッカーは人語を理解するキメラを作るため、二年前は妻を、そして今回は娘と犬を使ったのだ。人を材料にしてしまえば当然、人語を理解するキメラが生まれるわけである。だが、怒りのエドを前にしてもタッカーは笑いだす。
人類の進歩は無数の人体実験の賜物だと開き直るタッカーに人の命を弄ぶようなことが許されると思っているのかと言い返す。だが、それを聞いたタッカーはおかしいことを聞いたと言わんばかりに笑うと、
『そう、人の命ね!鋼の錬金術師、君のその手足と弟!それも、君が言う人の命を弄んだ結果だろ!』
『違う!』
エド達の行った人体練成も同じだと言い始める。これには遂に我慢の限界を迎え、勢いよく右手でタッカーをぶん殴る。だがタッカーは迫真の表情から成る狂気の笑みをエドに向け、
『同じだよ!君も!私も!』
『違う!』
『違わないさ!目の前に可能性があったから試した!それが禁忌であると知っていても!』
『違う!オレは!!錬金術師は!!こんなことは……オレは……オレはああああ!!』
『兄さん!!』
エドも何度も何度もタッカーをぶん殴る。我を忘れて拳を振るい続けるエドをアルが腕を掴んで止めると、
『それ以上やったら死んじゃう!』
『……』
これ以上の攻撃はタッカーの命を奪う事になると告げる。アルのその言葉で、やっと拳を下げたエドだったが、ここでいつの間にか自分の足元にニーナがいることに気付く。
『いたい?おとう……さん?いたい?おとう……さん?』
「……うっ」
こんな姿になっても父を心配するニーナ。ここでようやく、エドはタッカーを解放し、外では雨が降り始める。そんな中、アルはニーナを部屋の外に出すと、僕達では元に戻せないと悲しそうにつぶやきながらニーナの頭を撫でる。そんな中、タッカーは安心したかのように国家錬金術師の証である銀時計に頬擦りしており、エドはそれを見るとタッカーの銀時計を蹴り飛ばす。するとタッカーは慌てて銀時計へ走っていく。
『何が国家錬金術師だ……何が』
その哀れな後ろ姿と、キメラとなった成れの果てのニーナを見ながら、悔しそうに声を上げることしかできないエド。その後、軍人たちがタッカーの家へ上がり、キメラとタッカーを部屋の一室に閉じ込めて捜査を行い始める中、マスタングが自分達は命令とあれば人の命を奪う事も辞さない。そういう意味ではタッカーと大きな差があるわけではなく、その上で今の道を選んだと呟く。そして、雨の中で項垂れるエドに今後も今回のような事件に出くわすこと、さらにはエド自身が手を下す時が来るだろうと告げ、毎回そうやって立ち止まるのかと声を投げかける。
『軍の戌と呼ばれようが、悪魔と罵られようが、オレはアルと二人、元の身体に戻ってやる……だけどな……!オレ達は悪魔でも、ましてや神でもない……人間なんだ……人間なんだよ!たった一人の女の子さえ助けてやれない、ちっぽけな人間だ……』
様々な感情を織り交ぜながら、そう吐露するエドに背を向けてマスタングはリザと共にその場を後にする。そんな中、タッカー達の下に額に大きな傷跡を付けた褐色肌の男が現れる。
『神の道に背きし錬金術師、滅ぶべし……!』
直後、男がタッカーの顔を掴んで行った錬金術によってタッカーは全身から血を吹き出して死亡する。そしてニーナを見ると、もう人には戻れないことを悟って同じように殺害してしまうのだった。
「……いやいや、ここまで容赦ない事します?」
「ニーナが……」
「こ、これもかなりきついですモルフォ!」
「1クール越えればマシにはなるから……」
「それこの重さに慣れるからって意味じゃないの……?いやとんでもないけどこれめっちゃ面白いのが普通に困るんだけどさぁ……」
「凄く、メッセージ性があると思います。我は続きを見た方がいいと思いますが」
「そ、それはそうかもしれませんが……!わ、わかりました。み、見ましょう……」
再びざわめき立つも次の話へと入っていく。ニーナの一件の影響も収まらぬ中、エド達は額に傷痕を付けたイシュヴァール人の
しかし二人ともこの事を黙ってくれることになり、アレックスを護衛としてエド達は機械鎧とアルの鎧を修復するために故郷のリゼンブールへと戻ることになるが、その途中で偶然にもドクター・マルコーと出会う。錬金術を医療に応用する研究を行い、イシュヴァール内乱後、軍から姿を消した彼だが、賢者の石を研究を命じられており、不完全ではあったものの作られた賢者の石を持っていた。彼との交渉の結果、エド達の覚悟を見て自分の研究資料の隠し場所を告げると、真実の奥の更なる真実を、と言葉を送る。エド達は機械鎧をウィンリィとピナコに新調してもらい、アルの鎧も無事に直してセントラルに戻ることになる。その中で、ウィンリィの両親は外科医であり、イシュヴァール内乱に医者が足りず呼ばれ、そこで死んだことが明らかになったり、エド達は自分達の身体を取り戻すため、国家錬金術師として旅立つ日に家を焼いて後戻りできなくしたといった不穏な情報が明らかになっていく。
「……重い……んだけどその……いや、ありがたい?」
「まあ……ムキムキがいいよね……雰囲気的な意味で」
そんな重い展開の中では暑苦しく涙もろい人情家のアレックスの一挙一動が癒しになっていた。そしてエド達は無事にセントラルに戻り、資料を探すことになるのだが、保管場所である国立中央図書館第一分館はなんと全焼していた。それは、これまでも度々登場していた謎の勢力、ラストという女性やグラトニーという体躯の大きな人物の手によるものであった。
しかし、エド達の護衛を引き継いだブロッシュ軍曹とロス少尉からシェスカを紹介される。彼女はなんと分館にあった書物を記憶しており、マルコーの資料も一言一句そのまま書き起こしてもらうと、彼女を分館の資料が燃え尽きて困っていたヒューズに引き渡しながら、暗号化されたマルコーの資料を解読していく。そして、遂にエルリック兄弟は賢者の石の秘密に辿り着く。いや、辿り着いてしまった。
『悪魔の研究、求めてはならないもの……恨むぜ、マルコーさんよ……』
『一体、何が……』
『賢者の石の材料は……生きた人間だ』
『『!?』』
『しかも石を一個生成するのに複数の犠牲が必要ってことだ……』
まさかの事実。それを知ったエルリック兄弟は部屋に閉じこもってしまい、ロス達も他言無用を厳守される。賢者の石の事実を知った二人の落ち込みようは凄まじく、元の身体に戻れず一生このままではないかという予感すら感じさせていた。と、そこにロス達から賢者の石のことを聞き出したアレックスが現れ、彼の言葉から、エドはマルコーの言っていた言葉を思い出し、まだ明らかになっていない真実があることに辿り着く。
そして、隣に収容所があり、そこから材料を調達している可能性が高い、現在立ち入り禁止になっている第五研究所にエドとアルはこっそりと辿り着く。そこには何故か門番がおり、いかにも怪しさがあった。
「これ以上何がわかるっていうんですか……」
「あーあ、すっかりソフが怯えちゃって」
「う、うるさいですね!」
エドがダクトを使って一人で中に入ることで分断された二人の下に、それぞれアルのように鎧に魂を定着させられたスライサーとバリーが襲い掛かってくる。エドは負傷しつつもスライサーを撃破、スライサーはエドとの話で心を開いて情報を話そうとしたその時、ラストの伸縮自在の鋭い爪によって殺されてしまう。その背後から変装能力を持つ少年、エンヴィーが現れると、エドのことを人柱と呼び、計画と気になるワードを口にする。しかし、ここでエドはウィンリィの整備不良のせいで機械鎧が外れてしまい、エンヴィーにそのまま気絶させられてしまう。
アルの方はロス達が援軍に駆け付けバリーに弾丸を撃ち込んだ直後、第五研究所はラスト達の手によって崩壊させられてしまい、バリーは逃走、アル達はエンヴィーから出血の激しいエドを受け取り、第五研究所から去ることになる。
その後、入院することになったエドは機械鎧の整備をしにセントラルに来てほしいとウィンリィに連絡し、来てもらう。セントラルに来たウィンリィはヒューズの家に泊まることになり、娘と交流をしていく内に仲良くなっていく。そしてバリーの揺さぶりのせいで一時エドとアルの仲も悪くなりかけるもウィンリィの助けもあって以前よりも深く結びつくようになる。そして、エドは第五研究所であったこと、そこで見たウロボロスの入れ墨を入れた二人についてアレックス、ヒューズ、アルと情報を共有していると、そこになんとブラッドレイがエドの見舞いに現れる。
「大総統がわざわざ見舞いにくるなんて……」
「強いし、優しいしでいい人ですね!顔はいかついですけど」
「た、確かに頼れる人って感じは、あ、ありますね……」
「……」
ブラッドレイはエド達が賢者の石や軍の上層部について嗅ぎまわっていることを知った上で来ており、軍内部の不穏な気配を把握していることを伝える。そして、アームストロングが探りを入れようとしていた賢者の石の研究者は既に行方不明になっていることを口にすると、敵は我々の先を行っており、ブラッドレイですらその全容も掴め切れていないと明かすと、エド達を信用できる人物と判断し、
『これ以上この件に首を突っ込むことも、これを口外することも許さん。誰が敵か味方かもわからぬこの状況で、何人も信用してはならん。軍内部全て敵と思い謹んで行動せよ。だが、時が来たら君達には存分に働いてもらうので覚悟しておくように』
『『はっ!!』』
ブラッドレイはそれだけ告げると仕事を抜け出してきたせいで部下が探しに来ているといい、窓から逃げ出す。そんなお茶目な仕草にモルフォと首を傾げたマルクト以外から苦笑が漏れる中、エドとアルはダブリスにいる師匠に会いに行くことにする。しかし、その途中に機械鎧の聖地ラッシュバレーがあることに気付いたウィンリィが同行。エド達は翌日、ヒューズの妻と娘やアレックスらに見送られながらセントラルを発つことになる。
『あっちこっちも死体の山か……そのうち、国家転覆するんじゃ……?』
そしてセントラルで残ったヒューズは。各地で起こった大量の人が死ぬ事件の話を聞いてしまい、不幸にも真実に辿り着いてしまう。そのせいでラストに襲われ、なんとか彼女を退けて謎の敵に怪我を負わされながらも大総統に連絡を取ろうとする。しかし、その寸前でそれを取りやめ、一般回線を使い、マスタングに連絡を入れようとする。
『早くしろ!軍がやべえ!』
一般回線からの連絡は取り次ぎの時間が発生する。それすらももどかしさを感じる中、ヒューズはなんとロスに銃を突きつけられてしまう。だが、それが偽物だと看破すると、エンヴィーは正体を明かすと、ラストの時のようにエンヴィーを殺してこの場を切り抜けようとする。が、エンヴィーはヒューズの妻の姿に変身しており、そのせいでヒューズは攻撃することすらできず、エンヴィーに撃ち殺されてしまう。
『人間って本当愚かだよね。無駄なことに命掛けちゃったりしてさ』
あまりにも呆気ないヒューズの死に絶句する面々。そして、ヒューズの葬式が粛々と行われる中、信頼できる相手を失ったブラッドレイは手を震わせており、アレックスやヒューズの家族も涙を流していた。その後、葬式に出席していたマスタングはヒューズが死んだ日に何があったのか、その足取りを追っていた。そして、事情をある程度知っているであろうアレックスから、マスタングに遠回しに情報を伝えると、それを聞いたマスタングはセントラルに異動になったら上層部を探り、ヒューズを殺した犯人を絶対に見つけ出すことを決意するのだった。
「ま、マスタング大佐がなんか危険な感じがします」
「……まあ、ふざけるなってなるのも当然ではありますが……」
その後、ラッシュバレーで出産に立ち会い、ウィンリィがラッシュバレーで機械鎧技師の腕を磨くために残ることになった後にエド達は遂に師匠であるイズミ・カーティスがいるダブリスに辿り着く。久しぶりの再会にイズミだけでなくその夫である大男シグも歓迎してくれる。イズミは定期的に吐血するぐらい体が弱くなっていたものの、その実力は高く、エドやアルも呆気なくやられてしまう程だ。彼女に賢者の石の事を聞くもあまり知らないようだが、賢者の石の事を知る人間としてホーエンハイムの名を出すのだが、昔家を出て行ったっきり戻ってこない彼の事をエドは当然快く思ってはいなかった。
その日の夜、イズミと出会った時のことや修行の日々を思い出した時に、彼女もまた、エドと同じ練成を行っていたことに気付く。そう、イズミもまた人体練成を行っており、死んだ子を人体練成しようとしたことで内臓をあちこち持っていかれていたのだ。
「お師匠さんも人体練成を……」
「真理って碌でもないやつなのでは?」
「いや全くその通りだよ」
「……禄でもない、ですか」
「ケイ?」
「いえ、まあ言わんとしてること自体はまあ、わかるのですが……なんか、それだけの存在とは」
人体練成の際に人の身体を勝手に持っていく真理なる人物。こいつが諸悪の根源では?みたいな話にモモイ達が入っていく中、ケイやアイン達は真理に対してはまた、別の見方をしていたようだ。
「というかこれ、創作ですよね?なんでこんな……ものが作れるんです?」
「まあ……人じゃない奴っていうとあれだけど。そういうの、よくできてるというか」
イズミは禁忌を犯した兄弟に破門を言い渡す。しかし、それは弟子と師匠という関係ではなく、これから対等な一人の人間として付き合うということ。改めて受け入れられた兄弟だったが、グリードと名乗る謎の男とその配下と思われる人と動物たちが一つになった完全なキメラにアルが襲われ捕らわれてしまう。
「キメラって……タッカーが作ったのが最新じゃ?」
「まあ……タッカーは外部へのアピール、なんて可能性もあるかもね」
『ありえないなんて事はありえない』
アルもキメラについて疑問を持つものの、グリードは信条であるその言葉を口にする。そのグリード自身もまたホムンクルスであり、自分の頭を仲間に吹き飛ばしてもらう。そこから再生するグリードの右手には、ウロボロスの入れ墨が刻まれていた。
グリードは不老不死を求めてアルに魂の定着の事を聞くもアルには答えられず、エドとも交渉することになる。それも決裂し、アルは連れ去らわれ、エドはグリードと戦うことになる。グリードは皮膚を硬化する能力を持っており、あらゆる攻撃を遮断する。最初こそ優位に戦いを進めるも、錬金術を用いた反撃を受けてしまう。さらにエド達を探しに来たイズミも乱入し、不利を悟って逃げるグリードだったが、ここになんと軍が現れて二人は保護されることになる。
「……この声は!」
地下水路に逃げたグリードは、アル達を連れて逃げる算段を立てようとしていたが、ここでなんとブラッドレイが現れる。エドを苦しめたグリード相手に錬金術を使えないブラッドレイで大丈夫なのかとモモイ達が思った直後、ブレッドレイはグリードの生身の腕を一瞬で切り落とす。
『おいおいおいなんつうおっさんだ!?』
圧倒的な速度、手数でグリードを何度も切りつけるブラッドレイ。地上ではキメラが軍に掃討される中、グリードはなんとか反撃を行い、ブラッドレイの眼帯が外れる。しかし、首を刃で貫かれ、苦しそうに呻きながらグリードが目にしたのは、
『君に最強の盾があるように、私には最強の目があるのだよ』
「えっ」
「あの入れ墨……」
ウロボロスの入れ墨の左目。大総統が、グリードらと同じ存在であるという証であった。
『さてグリード君。君は後、何回殺せば死ぬのかね?』
そのまま何度も殺されていくグリード。他のキメラたちも切り捨てられ、アルの中にいたマーテルも鎧の上から刺し殺したことで、グリードらデビルズネストの殲滅は無事に完了する。
その際にマーテルの血を血印に浴びたことで真理を見た時の記憶を取り戻すアル。そんなアルの身体についてブラッドレイも知ることになるも追求せず、弟を大切にするようにと言い残して去ると、イズミと会話を交わすのだった。
「……ブラッドレイって何者なの?」
「グリードと同じならホムンクルスってことに……」
「でもグリードだけって可能性も……」
「これだけじゃ敵か味方もわかりませんね……正直味方であってほしいんですが」
その日の夜、鎧を掃除していたエドは、尻尾を掴みたいはずなのにグリードたちを皆殺しにしたブラッドレイたちの行動に違和感を持っていた。そうでなくとも、あの程度の人数に大総統が出張ってくるのかと。エド達はその疑問を調べるべく、セントラルに戻ることを決める。
その後。セントラルの地下へと場面が移る。そこにはブラッドレイの姿がおり、エドの弟、その師匠も人柱になりうると報告していた。さらにグリードを捕まえており、グリードは色欲のラスト、暴食のグラトニー、嫉妬のエンヴィーの名を呼ぶと、ここにいない怠惰のスロウスの名を挙げる。そしてブラッドレイは誰かと問うと、ブラッドレイは憤怒のラースと名乗り、ラストがラースのことをホムンクルスであることを明らかにする。そして、彼らのお父様が姿を現し、父の為に働いてくれないかと問いかけるもグリードはそれを拒否。その結果、グリードは溶鉱炉に突き落とされ、生まれた場所であるお父様の魂へと還らされてしまうのだった。
「……いやもうトップが終わってるんですが?」
「味方じゃなかった!」
「もうお腹いっぱいなんだけど……これからどれだけやばいことになるの?」
「こっからは割と明るくなるから……」
「当社比じゃないよね?」
「いや本当にここから要所要所はともかく全体的にはマシになるから……でも、面白いでしょ」
「面白いから問題なんですよ!なんて、なんてものを……」
ここまでの内容は形や流れを変化しつつも、今作より前にアニメ化された2003年版とも呼ばれるアニメで盛り込まれた話となっている。しかし2003年版放映時にはまだ原作も完結していないため、この1クールのノリを維持しつつダークファンタジーを突っ走る独自の話が進行していくことになる。それに対し、FA版とも呼ばれる今作は原作漫画同様のストーリー展開がされることになり、ここからシンと呼ばれる外国からアメストリスに不老不死を求めてやってきたリン・ヤオやその配下のランファンやフー、そしてスカーや彼と行動を共にする小悪党、ヨキの下に現れた少女、メイ・チャンが登場することになる。彼らの登場と共に、その雰囲気なども大きく変わっていくことになるのだが、これまでがこれまでだったのもあり、アイン達は警戒した様子で次の話を見ていくことになるのだった。