転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
視聴途中で何度か休憩を挟んだり睡眠を挟んだりしながら見続けてきた物語も遂に佳境に入っていく。季節が過ぎて次の春。約束の日を前にリゼンブールに戻ったウィンリィとピナコの下に戻っていたエドが再会を果たす中、パンザノ達も分かれてリオールに来ていたマルコー達と合流し、セントラルに向かっていた。また、アルは肉体に魂が引っ張られる感覚を再び味わっていた。この感覚はブリッグズに来てから定期的に訪れるようになり、その感覚は段々と短くなっており、グラトニーとセリムことプライドに捕まった時にこの現象に見舞われて気を失ってしまう。
東方ではブリッグズとの合同軍事演習が起こっており、グラマンやマイルズを警戒してかなんとブラッドレイが視察に訪れていた。そのせいでグラマン達も身動きが取りづらくなる中、セントラルの方にイシュヴァール人が潜伏しており、その暴動をきっかけに行動を起こそうとしている事を察知し、ブラッドレイはセントラルに戻ることに。だが、その途中で橋にかかったところでなんと橋を爆破し、列車が吹き飛んでしまう。それを行ったのは、過去にマスタングの部下であった者達。セントラルの軍人たちの警戒の外にあった者達を使い、ブラッドレイを排除することに成功するのだった。
「……え?ブラッドレイこれで終わり?」
「な、なんか呆気ないですね……」
(呆気なかった……ねぇ)
エド達もホーエンハイムと再会し、ホーエンハイムの身体の事や、翌日、日蝕を利用して扉を開けようとしている事を聞かされるエド。ホーエンハイムにトリシャの遺言を伝え、涙を流す彼の姿に複雑な感情を抱くのも束の間、その日の夜にプライドに操られたアルと戦うことになってしまう。プライドの能力の影を伸ばした攻撃を防ぐためにエドは停電を起こして暗闇にし、ハインケルが臭いを辿って本体を強襲する。一方エド達の方にも臭いで戦えるグラトニーが強襲するが、グリードはリンに主導権を渡して気配で察知し、機械鎧を使えるようになって合流したランファンと共にグラトニーを蹂躙する。
「ランファン強ーい……」
さらにフーの援護もあって、アルをプライドから引き剥がすことに成功。気絶したアルをダリウスに運ばせて逃がすも、プライドはグラトニーを捕食してグラトニーの能力を得てしまう。だが、アルの作戦によりホーエンハイムを囮にプライドにアルが飛びかかると、それに気を取られた隙に巨大な土のドームに二人を閉じ込める。これにより、プライドは影を生み出す明かりが消えてしまい無力化されてしまう。
「プライドを無力化した!」
「アルは飲まず食わずでも問題ない……プライドと一緒にいても、問題ないわけね」
プライドがドームからの脱出を諦めたのか、アルから外れた兜を叩き始める中、エド達の下にスカー達も合流する。グリードは一足早くセントラルに向かっており、フーもリンの行方を確かめることを兼ねて一足早くセントラルの様子を見に行くことになる。そしてすべての人間が準備を終え、遂に約束の日が始まる。
マスタング一派、そこに駆け付けたブリッグズ軍らの加勢、ロスやハボックの協力もあり、戦闘は激しくなる。エド達は負傷したハインケルや非戦闘員であるヨキ、マルコーを残してセントラルに突入、混乱に乗じて第三研究所を通じて地下に入る。そしてホーエンハイムはランファンを一人で行動させ、ホーエンハイムも一人でお父様の下へ向かう。その頃、中央司令部では、研究していた不死の人形兵を一斉に目覚めさせていた。
「うわ……」
目覚めと共に目が開かれ、悲鳴を上げ始める人形兵。だが、人形兵は見境なく人を襲って噛み殺す。そして、人形兵はエド達の前に現れ襲い掛かる。スカーの人体練成も通用しないのを見て、エドが人形に魂を定着させたのだと気付く。
同じ時期、中央司令部では軍に反乱を翻したオリヴィエの前にスロウスが立ちはだかっており、弟のアレックスが救援に駆け付けたり、プライドがモールス信号を使って助けを求めていることにハインケルが気付くも時既に遅くキンブリーの襲撃を受けてドームが壊されてしまいプライドが解放されるわ、シンに戻ろうとしていたがセントラルに戻ってきたメイの下から逃れたエンヴィーが人形の賢者の石を取り込んで復活するわと色々な場所で同時に動きが起こり始める。
アルは重傷のハインケルの下に向かおうとするも、プライドに足を捕まえられてしまう。咄嗟に足を分解して土煙に紛れてハインケルの下へ辿り着いたアルに、ハインケルが差し出したのはなんと北で回収した賢者の石であった。だが、アルはそれを使うことに難色を示してしまう。
『こいつは、人の命でできてるってんだろ?元の身体に戻るのにこれを使いたくないってのも、お前の兄貴に聞いた……だったら……だったらお前のためじゃなく、世界を守るために使ってやれ』
『!』
『こんな石ころになってるのに、まだ人の命として認めているお前だから頼むんだ。俺には、わかる……どんな見てくれになったって、大事なものを守るために戦いたいんだよ……!こいつらにも、戦わせてやってくれ……』
『……わかった』
『ぶちかましてやれ……アルフォンス』
『……一緒に戦おう』
ハインケルから賢者の石を受け取ったアル。直後、土煙の中から赤い練成反応が溢れると共に、自らの足を練成して立ち上がったアルが二人の前に現れる。それを見たキンブリーが興奮したような笑みを浮かべる。
『これはこれは……逃げるどころか……イイ!非常にイイですよ!アルフォンス・エルリック!!』
「……改めて思うけどキンブリーって狂人なの?」
「はい」
「やっぱり狂人なんですね……」
賢者の石を使い、互角以上に二人と戦うアルフォンス。再びセリムをドームに閉じ込めて無力化するともキンブリーが賢者の石を取り出したことで一変。プライドも解放され、再びアルフォンスの不利に。だが、戦闘のどさくさでアルは石を手放しており、その石を手にしたマルコーがハインケルを治療、復活したハインケルがキンブリーに致命傷を与える。さらにプライドもヨキが操作する車に轢かれて吹き飛ばされるとその隙に逃げ出し、セントラルへと急ぐ。そして残された満身創痍のキンブリーの魂をプライドは取り込むのだった。
その頃、オリヴィエ達の方もスロウスが能力である高速移動を発動し、オリヴィエ達を追い詰めてくる。それでも最速のホムンクルスを前になんとか致命傷を与えていくも、そこに他の軍人たちが現れる。さらに、人形兵が強襲し、見境なしに襲い掛かってくる。その土壇場でオリヴィエは敵であった中央司令部の軍人たちを自分達の指揮下に置いてみせ、反撃に転じる。
「うわーお、敵のはずなのに味方にしちゃったよ」
「あっちもこっちも激戦ばっかりですね……」
「でも、着実に敵の戦力は削れているはずですけど……」
場面が変わり、疲弊してきたエド達の下にもマスタングが合流し人形兵を焼き尽くす。そんな中、メイとエンヴィーが現れる。エンヴィーはスカーと錬金術師たちが手を組んでいる光景に呆れていたが、マスタングはとうとうエンヴィーがヒューズを殺害した張本人だと知ったことでエド達を先に行かせると復讐の炎が燃やし、蹂躙を開始する。憎しみの怒りのままエンヴィーを殺し続けるマスタングの前では、エンヴィーも形無し。
「うわぁ……」
「これ、かなりやばいやつじゃ……」
「……復讐の炎、ですか」
マスタングによってエンヴィーも命を殆ど焼き尽くされ、元の小さな緑の魔物のような姿になり、大佐にエンヴィーのトドメを刺させまいと戻ってきたエドの右腕で握られる。機械鎧のせいでエンヴィーには取り込むことができない。マスタングにエンヴィーを殺させまいとしているのはエドだけではない。リザも同様だ。ここでエンヴィーを激情に任せ、復讐心のままに、憎しみを晴らすためだけに殺すような男が皆の上に、国の上に立つ男なのかという言葉にマスタングも断腸の思いでギリギリで踏み止まる。
そんなマスタング達を何を思ったのか煽るエンヴィー。この場にいた人間達を殺し合わせようとするのだが、既にエド達はエンヴィーに怒りを覚えることはなく、憐れむような視線を向けていた。そして、エドは一言、震える声を上げるエンヴィーに言う。
『エンヴィー』
『!』
『お前、人間に嫉妬してるんだ……人間は、お前らホムンクルスよりずっと弱い存在のはずなのに、叩かれてもへこたれても、道を外れ倒れそうになっても、何度でも立ち向かう。周りが立ち上がらせてくれる。お前は、そんな人間が羨ましいんだ』
その言葉を聞いたエンヴィーは過去に自分がいった様々なことを思い出す。そして、自分の人間を見下す態度こそ、嫉妬の裏返しだったことを悟ると、エドの手から逃れたかと思うと、なんと自ら核である賢者の石を破壊して死んでしまう。その姿を見て、マスタングは一言、卑怯者めと呟くのだった。
「エンヴィーが……」
「これで、残るホムンクルスはラース、スロウス、プライドの三人……」
「ラースは落下してやられたんじゃ」
「いやあまりに呆気なさすぎて逆に死んでるとはとても思えないんだけど」
中央司令部では人形兵とスロウスを相手にするオリヴィエ達の戦闘が続いていた。そんな中、約束の日の前にブリッグズ要塞でイズミと合流していたバッカニア達が彼女の協力とファルマンの案内でとうとう中央司令部を占領。そのままイズミとシグはスロウスと戦うオリヴィエらの下に向かい、アレックスと共にスロウスを圧倒。遂に最後の命を使い果たして死んでしまう。
一方、お父様の下へと辿り着いたホーエンハイムはお父様に七つの大罪に準えた欲望を自分から切り離して子供達を作ったのかを質問する。本当は人間のように家族が欲しかったのではないかというホーエンハイムの指摘にお父様は目を見開くと、一瞬の隙を突いてホーエンハイムの身体に腕を突き刺す。
『私は人間になりたいのではない。完全な存在になりたいのだ』
「……完全?」
「……あれ、それって」
「……」
お父様の言葉にアイン達が何かを察し始める中、お父様は賢者の石をホーエンハイムから奪い取る。その直後、ホーエンハイムから腕を引き抜いたお父様は、腕を震わせる。自分の身に何が起こったのかホーエンハイムに問いただすと、ホーエンハイムは簡単に勝てると思うなと返す。なんとホーエンハイムは賢者の石となったクセルクセス国民全員と対話して味方につけていたのだ。
その頃、中央司令部では完全にブリッグズが抑えて完全な勝利に沸き立っていたが、
『ただいま、諸君』
『!?』
『私が留守の間に随分賑やかになっているではないか。これより、私自ら指揮を執り、反逆者を排除する。手の空いている中央兵は手伝いたまえ』
ブラッドレイが生きていることが明らかとなる。しかも、ブラッドレイが現れたのはなんと正門。中央兵達が敬礼する中、再び地下に場面が移る。お父様の中に入って暴れ始めたクセルクセス国民達がお父様の身体を破壊する。だが、お父様の中から無数の目が浮かび上がる黒い人型が抜け出し、先程まで身体だった皮を取り込んでしまう。ホーエンハイムは入れ物であるお父様の身体を破壊すれば決着がつくと思っていたが、既にお父様はそれを克服していたのだ。
「ば、化け物になっちゃった!?」
「まるでフラスコの中の姿がそのまま大きくなったような……」
『正面から!?』
『自分の城に入るのに裏口から入らねばならぬ理由があるのかね?』
地上ではブラッドレイが正門からの正面突破していた。戦車の機銃の弾を全てサーベルで弾き、砲弾を両断。その人間離れした技に戦車を動かしていたブリッグズ兵も恐怖のあまり表情を歪める中、ブラッドレイは手早く戦車を無力化して搭乗者を殺すと、そのまま無傷で上へと上がってくる。バッカニアが立ちはだかるも、機械鎧を破壊し致命傷を与えてしまう。
「……いややっぱおかしくないです?」
「ちょっと強すぎる……」
「弾を切るって、しかも眼帯つけたままだよね……いやおかしいって」
そこにグリードが乱入するも左目を見せたブラッドレイには届かない。更なる援軍としてフーが駆けつけ二対一になるも、それでも圧倒されてしまう。しかし、最終的にフーとバッカニア二人の犠牲を経て、遂に腹を刃で貫通されるだけでなく、フーを殺された怒りと共に一撃を繰り出したグリードによってブラッドレイの左目が潰されるという大戦果を上げる。さらにブリッグズ兵の射撃が右肩に命中して堀へと落下すると、フーの死に悲しみつつもバッカニアの最期の頼みを受け、二人は勢いづく中央兵達を倒していくのだった。
また場面は変わり、地下を進むエド達は広間のような場所で医者のような男と出会う。その医者は専門の教育と訓練の中で育てられ、ブラッドレイになっていたかもしれない余り物の男達を次々と呼び出して襲わせる。が、その中で発動された巨大な練成陣の力によりエド、アル、イズミはお父様の下へと強制的に引き込まれてしまう。
「ブラッドレイ……まだ生きてるんだよねこれ」
「え、まだ戦うの?ちょっと強すぎない?」
「グリードのおかげで地上の方は何とかなりそうですが地下の方は……あ」
最深部ではお父様がホーエンハイムを体内に取り込んだ状態でエド達三人を迎えていた。その上の階ではリザに致命傷が与えられ、医者は人体練成を行い人柱になることをマスタングに強要する。しかし、メイ達が合流してリザが治療されるのだが、さらにプライドとブラッドレイが現れたことで状況は三転。ブラッドレイはマスタングの手袋の練成陣を破壊しながら地面に縫い付けると、プライドが医者を使って強制的に人体練成をマスタングにさせたことでマスタングが五人目の人柱となり、お父様の下へと送り込まれてしまう。
「は、反則技すぎない?」
プライドもお父様の下へ向かい、残るスカー達をブラッドレイが迎え撃つ。既にボロボロで満身創痍なのに、勝てる気がしない。そんな中、スカーが単身、満身創痍のブラッドレイに挑む一方、お父様の所に現れたマスタングは視力を持っていかれてしまう。
『真理は残酷だ。身の程を弁えず死人を蘇らせ、母の温もりを求めた者は立ち上がるための足とただ一人の家族を持っていかれ。もう一人は体をまるごと持っていかれ温もりを感じぬ姿に。亡くした子を求めれば二度と子を与えられぬ体に。そして、国の先を見据えた者は視力を持っていかれその未来を見ることができなくなった。人間が思い上がらぬよう正しい絶望を与える。それこそがお前達人間が神と呼ぶ存在、真理だ』
『納得いかねえ!』
集まった人柱に向けてそう言うお父様。しかしエド達は、自分達三人は自分の意志でやったのだから、その報いは受け入れよう。しかし、マスタングは違うと声を上げる。と、そこにスカーが地面を破壊したことで地下に落ちてきたメイが現れると、エド達とお父様、プライドの戦いが始まる。
そんな中、ブラッドレイにスカーは追い詰められていたが、相手が満身創痍であったことや兄の研究書を解読し、左腕に再構成の練成陣を刻んでいたことで錬金術を使いダメージを与えていく。そんな中、遂に日蝕が訪れてしまう。
「日蝕が……」
日蝕によって地上が暗くなっていく中、人柱を拘束して周囲に配置して国土練成陣を起動しようとするお父様。それを狙って現れたグリードがお父様を攻撃するも、自分の強欲から生まれた存在故にその行動を読んでいたお父様はそれを躱し、本当の国土練成陣の中央に移動する。
『世界の中心は、ここだ!』
そこに手を当てると、赤い光と共に五人の人柱の腹に巨大な目が開く。アメストリスに巨大な練成陣が描かれると同時に人々が苦しみながら倒れていく。賢者の石の練成が始まったのだ。
「あ、あれ?逆転の練成陣は……?」
「スカーのお兄さんが編み出した練成陣はどうしたの?」
「み、皆……」
国土練成陣そのものが扉となって開かれ、巨大な人影となったお父様が宇宙へ手を伸ばす。
『おお……神よ……我が魂に応えよ……!来い!』
その声に呼応するように開かれた扉からお父様は次々と神を取り込んでいく。神を地に引きずり落として自らの一部とするために。
「か、神になろうとしてたんですかこいつ!?なんてことを……」
「ほ、ホムンクルスを作り、国を治め、そ、その全ての旅路は自らが神にならんと……うっ」
「ああ!?アインが!?」
「……成程。ホムンクルス達やお父様を見て、何か思うところがありましたが。既視感だったのですね」
「なんか納得してる!?」
「いやまぁ、なんか似てる部分がないわけじゃありませんが……」
「……末っ子が一番強いのも一緒ですよね」
「お姉様はあんなおっさんじゃない!」
「ブラッドレイ大総統恰好いいだろうがよえーっ!?」
「それはそれだよ……」
お父様の目的が明らかになったことで、アイン達は悟っていた。このホムンクルス達はどことなく既視感があることを。完全な存在、旅路の果てに辿り着いたお父様が神を手に入れ変化した、若い頃のホーエンハイムを模した姿。自らが神を越えた完全な存在となったお父様。五千万人のアメストリス国民を賢者の石にしてみせたお父様にある異変が起こる。
それは、事前に全土に配置していたホーエンハイムの中にいたクセルクセスの民の反撃。日蝕によってできた月の影を円として生み出された、逆転の練成陣がお父様に影響を及ぼしていく。
『どうあっても邪魔をするか……ホーエンハイム!!』
『そのためにここに来たんだよ!フラスコの中の小人ホムンクルス!!』
国土練成陣に対するカウンターの練成陣。その力によってお父様から魂がまとめて吐き出されていく。その魂はアメストリス全土へ広がり、元の身体へと戻っていく。
「逆転の、練成陣……」
アメストリスの人々を失い、苦しむお父様。今ある魂だけでは神を抑えきれないのだ。お父様がエネルギー弾で攻撃すると、ホーエンハイムはそれを上へと弾き飛ばす。それは地上を突き抜けていき、その偶然が今にも殺されようとしていたスカーに一つの光明を持たらす。日蝕が終わり、差し込んできた太陽の光。それが剣を反射してブラッドレイの目が一瞬眩んだその時。スカーはブラッドレイの両腕を分解し、代わりに口で刃を掴んだブラッドレイの反撃を腹に突き刺される。
最期の時を迎え、倒れていたブラッドレイの下にランファンが現れる。彼女から家族に、妻に遺す言葉はないのかと聞くと、ブラッドレイはくだらない言葉を垂れ流すなと一蹴すると、
『舐めるなよ、あれは私が選んだ女だ。私とあれの間に遺言などいらん。王たる者の伴侶とはそういうものだ』
そう言い、ブラッドレイの髪の色が白く染まり、老け込んでいく。
『用意されたレールの上の一生ではあったが……お前達人間のおかげで、まあ、多少、やり応えのある、良い人生であったよ……』
「良い人生、ですか」
そう言い、眠りにつくブラッドレイ。終ぞ仇を討つことのできなかったランファンだったが、ブラッドレイがここに来る途中で拾っていた賢者の石の小瓶を手に入れると、スカーに言われるがまま、彼を練成陣の中央へ向かわせる。スカーは両手を地面に当てる。
『兄者……正直、俺の中の憎しみは消えていない。なのにその憎しみの相手を、アメストリスを助けようとしている。兄者は正の流れと負の流れと言ったが……矛盾したその両方を抱えている俺は、どこへ流れていくのだろうか』
今度は、スカーの発動した練成陣が広がっていく。それは、お父様の妨害する、錬金術封じを解除するための練成陣だったのだ。その妨害がなくなり自由に練成ができるようになったエド達だったが、ここでお父様は地上へ上がると、地上にいたブリッグズ兵を賢者の石へと変えてしまう。
その後をホーエンハイム達が追い、エドは一人残ったプライドとの最後の戦いを始めていた。だが、プライドはマスタングに強制的に人体練成を行わせた代償として体がボロボロになっており、代わりにエドの肉体を入れ物にしようとする。その直後、プライドの中からキンブリーの意識が現れて妨害を開始してしまう。
『何故邪魔をするのですか、キンブリー!!』
『ええまあ、あなたがホムンクルスの矜持を持ったまま戦っていれば何もしなかったのですがね……ホムンクルスの誇りだ矜持だと宣っておきながら、我が身に危険が訪れた途端、下等生物と見下していた人間の入れ物に逃げ込もうとする……あなた、美しくない!』
それによって隙が生まれ、エドが練成を行おうとしている腕でプライドの頭を掴む。殺される、そうプライドが直感した直後、内部からキンブリーが反論の声を上げる。
『あなたはエドワード・エルリックをわかっていない!!』
エドはなんと自らを賢者の石へと練成してプライドの中に飛び込むと、プライド本体の魂をつかみ取る。戦いの決着を見届けたようにキンブリーが魂の中から去る中、婦人やブラッドレイとの家族との記憶が走馬灯のようにプライドの脳裏を駆け巡る。そして、プライドの本体である小さな赤ん坊のような核を引き抜いたエドは、それを赤いコートの中に優しく置くと、自身も地上へと向かうのだった。
「……ホムンクルスも、これで全滅か」
「最後はお父様だけですね……」
地上にエドが現れた直後。お父様は巨大なエネルギー波を放出する。その一撃は中央司令部の一角を完全に消し飛ばしてしまう。その攻撃に耐えるためにホーエンハイムも残る賢者の石を殆ど使い果たしてしまい、アルもメイを庇って鎧が大破し、動けなくなる。エドの右腕も装甲が吹き飛ばされてしまい、殆ど骨組みだけの状態となる大惨事の中、エド達を賢者の石にしようとしたお父様に、ブリッグズ兵が反撃を開始する。
周囲を完全に取り囲み、迫撃砲やら機関銃やらライフル弾ととにかく何でもありの攻撃の数々。底に地下から合流してきたアレックスやリザの目を頼りに攻撃するマスタング、ランファン、ゴリウス、ザンパノとひたすら連続攻撃を浴びせていく。
「すごーい……」
「……なんか、普通なら噛ませとかになりそうな一般兵士が凄い活躍してる……」
「これだよこれ」
しかし、賢者の石の守りを突破することはできず、むしろ弾の方が尽き始める。そこにグリードが現れ、お父様の力を奪おうとするが、お父様は逆にグリードの賢者の石を奪おうとする。そこにエドとイズミ、アレックスが激しい接近戦を仕掛けていく。それを衝撃波で吹き飛ばした際にエドの右腕も砕け散ってしまうも、諦めずひたすら攻撃を続けていく三人。と、そんな中だった。エドの左脚をお父様は腕でガードしたのだ。
『素手で、防御した……!奴の限界だ!!あいつはもう、神とやらを抑え込んでいられない!!』
苦しみだすお父様は再び衝撃波を放ち全員を吹き飛ばしてしまう。そして賢者の石を求め、鉄骨が左腕に突き刺さって逃げられないエドに歩いていく。それを見て、アルはある秘策を思い付く。それは、メイに道を作ってもらい、自らの魂を対価にエドの右腕を復活させるというものだった。
『何をする気だ……やめろ……おい……アル……』
『勝てよ、兄さん……!』
『やめろおおおおお!!』
エドの制止の声が響く中、アルは真理の扉の下に辿り着く。そこにある、自分の身体に完全に魂が定着すると、エドの右腕が復活する。それを見たエドは、声を張り上げる。
『バカヤロー!!』
お父様を錬金術によって吹き飛ばし鉄骨を引き抜くと、怒涛の反撃を仕掛けていく。賢者の石の守りが消えたお父様に攻撃が通じている。その様子を見て、ブリッグズ兵を始めとして全員の声が上がる中、エドの拳がお父様を殴り飛ばす。
『立てよド三流!オレ達とお前との格の違いってやつを見せてやる!!』
立ち上がったお父様にも容赦なく拳を浴びせていく。そして倒れたお父様だったが、残り少ない微かな賢者の石の力を衝撃波として放つ。最早エド達を吹き飛ばすほどの威力もないがその場に踏ん張らなければ吹き飛ばされるほどの出力があった。エド達が動けないでいる中、グリードの賢者の石を求め、リンの身体に拳を突き刺すとグリードを取り込もうとする。
『グリード!!』
リンが抵抗しようとするも、お父様から生まれたせいで向こうに引っ張られる力の方が強いのか、グリードには抵抗できない。このままでは共倒れになることを悟ったグリードは、リンの顔面に拳を叩き込むとランファンが賢者の石を持っていることを告げるとそのままお父様の中へと入っていく。
『グリード、何故父に逆らう……!』
『遅めの反抗期だよ、親父殿……あんたがくれたこの炭化能力で、一番ボロいボロ炭に変身してやる!』
『小賢しい!消えよ!愚か者!!』
「……ああ、そういうことか……」
「……こうしてみると、よくもまぁ私達は無事だったものです」
「ほ、本当にそうですね……」
グリードの抵抗も虚しく、お父様は口からグリードを引っ張り出すとそれを噛み千切り、砕けていく左腕と共にグリードが散り始める。
『十分だ……ああ、もう十分だ……もう、何にもいらねえや……じゃあな……魂の友よ……』
リンやエド達との友情を思い出し、散っていくグリード。そして、エドの放った拳がお父様の胸に大きな穴を開けると、そこからクセルクセスの人々の魂が全て外に消えていく。賢者の石が消えたことで穴の中から無数の黒い手が伸びると、それがお父様の身体に絡みつく。
『生まれた場所に還れ!フラスコの中の小人ホムンクルス!』
『何故だ、私は知りたかった、この世の全てを、何者にも縛られず、自由に、広い世界に、私は―――』
そして、お父様は完全にその場から消えてしまう。気付けばお父様は、フラスコの中の小人の姿となって、真理の扉の前にいた。
『何故だ、何故私のものにならぬ。神よ、何が気に入らないのだ』
『お前が己を信じないからだ』
ホムンクルスの言葉に答えたのは、ホムンクルスの真理。
『他人の力を盗み、人から生まれたもののくせに、神とやらにしがみついていただけだ。お前自身が成長しておらん。七つの欲を切り離せば、人を越えられるとでも思ったか?笑わせるな』
『私は、完全な存在になりたかった。この世の全てを知りたかった。欲して何が悪い?望んで何が悪い?願い求めて何が悪い!?』
叫ぶホムンクルス。だが、真理は無言のまま笑うだけだ。
『なんだ……なんだお前は。なんだっていうんだ!何様のつもりだお前は!?』
『私はお前たちが世界と呼ぶ存在。或いは宇宙。或いは神。或いは真理。或いは全。或いは一。そして、私はお前だ。思い上がらぬよう、正しい絶望を与えるのが真理』
その言葉を聞き、先程地下でエド達に言ったことを思い出すホムンクルス。
『だから、お前にも絶望を与えよう』
『戻りたくない……嫌だ……』
その言葉と共に扉が開かれる。そこから無数の手が伸びてホムンクルスの身体を絡めとる。
『やめろ……そこに縛られ続けるのは嫌だ!嫌だ、嫌だ!』
『思い上がった者に絶望を』
『私はどうすればよかったのだ!』
『お前が望んだ結末だ』
『どうすればよかったのだ!』
そして、扉はホムンクルスを内側に引き込んで完全に閉じてしまう。そして扉と共に残された真理は一言、
『お前はその答えを見ていただろうに』
そう呟くのだった。
「……」
完全に見入った様子でお父様、いやホムンクルスの最期を見ていたアイン達。マルクトはホムンクルスと真理の言葉を思い出しながら、アイン達を一目見てから映像の方を見ると、そこではアルを取り戻すため、リンが賢者の石を使えと差し出してくる。しかし、元の身体に戻るために賢者の石を使わないと約束したというエド。ホーエンハイムが一人分ならあるといい、自分の命を使えという。そんな父にクソ親父と、涙を流しながら怒鳴るエドにホーエンハイムも悲しそうな顔をしながら小さく声を返す。
そしてエドは考える。アルを取り戻すために、何かがあるはずだと。そして遂にそれに気付くと、エドはある確信を胸に人体練成の陣を地面に描くと、
『ちょっと行ってくるわ。鋼の錬金術師最後の練成にな!』
そう言い、人体練成を開始する。巨大な光の中、ホーエンハイムもまた、確信を込めたような笑みを江戸に向けていた。そして、エドは再び真理と相対する。
『弟を連れ戻しに来たか。だがどうやって人間一人を引っ張り出す?代価は?お前の肉体を差し出すか?』
『代価ならここにあるだろ?でけえのがよ!』
「!!」
(真理の扉を、差し出す。それをしたら、エドはどうなってしまうんでしょうか……まさか)
そう言い、エドが指差したのはなんと、自身の真理の扉であった。これには、真理も唖然となったような表情を浮かべる。
『こいつは俺の真理の扉だ。ってことはどう使おうが俺の自由だ。違うか?』
『ふっふふふ……そう来たかぁ』
それを聞いた真理は、これまでとは一転、笑いだしてどこか嬉しそうな声を出す。
『しかしいいのか?真理の扉を失えば、二度と錬金術を使えなくなるぞ?』
『そうだな……確かに、この扉の向こうには錬金術の全てがある。でも、おかげで躍らされたよ。真理とかいうものを見せられて、錬金術で全てを解決できると思い込んだ。だけどそれは間違いだった。ただの傲慢だ』
『錬金術の使えない、ただの人間に成り下がるのか?』
『成り下がるも何も、最初からただの人間だ。キメラにされた女の子一人助けられない、ちっぽけな人間だ』
『いいんだな?本当にそれがなくても』
『錬金術がなくても、皆がいるって!』
『正解だ!錬金術師!!お前は俺に勝った!持っていけ、全てを!!!』
エドが真理の扉を分解していく。その様子を心底嬉しそうな声を上げながら見届けつつ、真理は自分の後ろを指差す。
『勝手口はあっちだ。エドワード・エルリック』
真理が消えた先。そこには、がりがりの肉体のアルフォンスがいた。彼の手を取ると、エドはアルを絶たせる。
『無茶しやがって』
『えへへ、兄さんこそ』
『さあ、帰ろう。一緒に』
『うん』
二人は、残された出口でアルの真理の扉を通る。そして、遂にアルは体を取り戻した状態で現実に戻り、アルは皆との再会を果たすのだった。
「……力がなくても、可能性がなくても。皆がいる」
「ええ、そうですね。それだけで……十分なのでしょう」
戦いが終わる。プライドはブラッドレイ婦人に託されたり、後処理が行われる中、全てをやり終えたホーエンハイムはリゼンブールのトリシャの墓の前に立っていた。だが、その皮膚はひび割れが徐々に深く入ってきており、彼の身体がもう限界であることを示していた。
『ただいま、トリシャ。エドワードが……親父って呼んでくれたんだ。クソがついてたんだけどな……人より長く生き続けるなんてしんどいことばかりだと思ってた。だけど、君や息子たちに会えて、生きててよかったと、心から思えるようになった。充実した人生だった……そうさ、十分だ……ありがとう。トリシャ……ああ、でも……やっぱり死にたくねえって思っちゃうなぁ……本当俺って、しょうがねえなぁ……』
そして翌日。ピナコがトリシャの墓前に彼の姿を見つける。そこには幸せそうな顔をしたまま、息を引き取ったホーエンハイムの姿があったのだった。
『バカタレが……なんて幸せそうな顔して死んでんだい』
「「「う……」」」
モルフォが周囲に視線を向けると、堪えていたものが抑えきれなくなったのか涙を浮かべる皆の姿があった。グリード、エドとホーエンハイムの和解、エドと真理の対峙、そしてアルとの帰還。長い間、戦い続けたホーエンハイムの終わり。その全てが彼女達の涙腺を刺激していたようだ。
「……」
これ自体は何回か見てるのもあって感動はするがさすがに泣く段階は通り過ぎていたモルフォがマルクトの方に向けると、マルクトはいつの間にかアイン達を抱き寄せていた。やっぱり名作は凄いなと思いながら、最終話に話は入っていく。
最終話「旅路の涯」ではその後の皆の話となる。マスタングは過去の遺恨、そのけじめをつけるためにイシュヴァールの問題を解決するために奮闘し始めており、そのために下半身不随のハボック共々マルコーの賢者の石を用いた治療で回復していた。スカーもまた新たな目的の為にマイルズと共に動き出したり、メイも次期皇帝になるであろうリン達とシンに戻る。
そして二年後。グラマンが大総統の席に座っており、二年の時を経て元の少年の姿に成長したプライドとブラッドレイ婦人と会っていた。プライドには過去のホムンクルスとしての記憶が存在しておらず、すっかり心優しい少年になっていた。そして、アルはザンパノとジェルソと共に東に、エドは西へ旅に出ることを決めていた。お互いに様々なことを学び、知識を合わせてニーナのような不幸を生まないようにするために。だが、それよりも世界の広さを見てみたいと思っていた。
そして、旅立つエドはウィンリィに色々機械鎧のメンテナンスについて注意されていたが、列車に乗ろうとしたエドがウィンリィの方を振り向くと、
『等価交換だ!』
『へ?』
『俺の人生半分やるから、お前の人生半分くれ!』
なんと告白をしてしまう。しかし、その内容にウィンリィは思わず呆れてしまい、
『……ああもう、錬金術師ってどうしてそうなの?等価交換の法則ってバッカじゃないの?』
『なんだとぉ!?』
『本当に馬鹿ね、半分どころか全部あげるわよ』
その後に返した言葉に何を言ったのか思い出し、顔を真っ赤にして全部はなしと慌ててその割合を減らし始める。その様子を見て、思わずエドは笑ってしまい、等価交換の法則なんか簡単にひっくりかすと笑顔で言う。そしてウィンリィを抱き寄せると、
『元気貰った。ありがとうな……行ってくる』
『……うん、行ってらっしゃい!』
そう言い、改めて列車に乗り込む。ウィンリィが列車が見えなくなるまで見送る中、
『痛みを伴わない教訓には意義がない。人は何かの犠牲無しには、何も得ることはできないのだから。しかし、その痛みに耐え、乗り越えた時。人は何物にも負けない、強靭な心を手に入れる。そう……鋼のような心を』
車窓から外の景色を見つつ、エドのモノローグが語られる。それと共に皆のその後を描く一枚絵や写真と共に始まるエンディングが始まり、鋼の錬金術師FULLMETAL ALCHEMISTの物語は幕を閉じるのだった。
「終わった……」
「す、凄いアニメでしたね……」
「……なんてもの見せるんですか……!」
「……成程。これが、感動という感情なのですね」
モモイ達が疲れたように座り込む中、放心したような様子を見せるアイン達と、納得したような表情を浮かべるマルクト。だが、その後に話される内容からちゃんと皆が楽しんでくれたことを知り、モルフォも嬉しそうな笑みを浮かべるのだった。