転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
「やっぱ……このボディは最高やな……」
それを見ると、ニヤニヤが止まらない。青と白を基調としたカラーリングのF1カーのようなボディをした一台の小さな車がモルフォの目の前にはあった。ノーズ部分には「豪」、リアウイングには「MAGNUM」の文字が描かれている。タイヤはホイールが緑色となっており、ローラーが四か所に装着されている。
「やっぱり……サイクロンマグナムは……いいよねぇ……」
モルフォが作り出したのは、ミニ四駆と呼ばれるホビー。その中でもフルカウル型ミニ四駆と呼ばれるものの一つであり、サイクロンマグナムと呼ばれている。スピードを出しやすく、スマートでヒロイックなそのデザインが大人気の一台であり、モルフォも作って大満足の機体となっていた。
「……あ」
電池を入れてタイヤを回してみる。これだよこれとわくわくしながらタイヤを回し続けていたが、タイヤの勢いが突然なくなってしまう。まさか電池が切れかけのものを入れたのだろうか?いやしかし電池は新品のものを入れたはずだけども、と首を傾げながら電池を新しいものに入れ替えて電源を付ける。すると少しだけ動いたものの、また止まってしまった。
「……ちゃんと組み立てられてると思うんだけどな……いや待てよ?このモーター、どこのを使った?」
そういえばと思い出す。このモーターって春葉原でいつだったか割引セールで安く売ってたのを買ったやつだと。その後、ちょっと使ってみたがモーターがポンコツすぎて碌に回転しなかったからその内捨てようと思いながらも完全に忘れてたものだと。おそらくは寿命もほとんどないのだろう。サイクロンマグナムの力に耐えきれず、敢えなくお亡くなりになられたようだ。
「……ちゃんとしたの春葉原で買うかぁ」
そして予定を立てると、大事そうにサイクロンマグナムを一旦ケースにしまうのだった。
★
春葉原。ミレニアムの電気街であり、その街並みもモルフォの知っているある街並みに似ている場所だ。ここもまた、以前はオタクの聖地と呼ばれていたりするのだろうかと考えると少しわくわくしてくるものがある。店も様々なものが立ち並んでおり、大型の電気屋はもちろん、ムシクイーンを始めとするカード専門店やらラジコン専門店にアンティークショップなどもある。それだけでなく、カフェやレストランといった飲食店もあり、一通りのものはここで揃うと言ってもいいだろう。
「えーと、ラジコン専門店は……」
ミニ四駆に使えるモーターを探すならやっぱりここだろう。事前に調べておいた店に向かい、色々物色していく。
「うーん……モーターのコーナーは……」
ちゃんと使えそうなモーターを確かめる。キヴォトスで使われてるモーターの規格やサイズなどにも注意して選んでいく。こうしないとそもそもモーターを入れられない、みたいな事態に陥る可能性があるからだ。安物を使ってみて基本的なサイズとかは問題ないとは思っているが、それでも万が一がある。
「……これ、入るかな」
念のために取り外していたモーターを取り出してサイズなどを比較する。一通り確認を終えると、よしと頷いた、その時だった。
「おや?モルフォじゃないか」
「うわ!?……って、ウタハ先輩じゃないですか?」
突然、背後から声をかけられる。驚いてモルフォが振り向くと、そこにはウタハの姿があった。
「ウタハ先輩も買い物ですか?」
「ああ、こういう店には掘り出し物があるかもしれないからね……まあ、モルフォが入っていくところを見て気になった、というのが大きいんだが。モーターを探しているのかい?」
「はい」
偶然モルフォを見かけてその後を追って店の中に入ってきたようだ。モルフォが手に持っているモーターを見て、大体どういうモーターを探しているのか見当がついたのだろう。顎に手を当てて少し考えると、
「ふむ……これとかどうかな?安価だし、性能も一般的に使う分には申し分ない。玩具とかに使うなら十分耐えうると思うよ」
「本当ですか?」
ウタハはある製品を手に取り、モルフォに見せる。モルフォが何にモーターを使おうとしているかまではわからないが、これまでの傾向からして、ホビーとかに使おうとしているのだろうと結論付けて提案したようだが、それが大正解だった。モルフォも、お世辞にもモーターに強いわけではないが、ウタハのお墨付きならば迷う必要もないだろうと、快くその製品を受け取る。
「ありがとうございます、これを使ってみます」
「そうか、助けになったようで何よりだよ。ところで……何に使おうとしているのか、教えてもらってもいいかな?」
「いいですよ。会計が終わったらカフェに寄りませんか?」
「構わない。今度は何が出来上がったのか楽しみだ」
この後の予定を決め、モルフォはモーターを二つ購入するのだった。
★
「……へえ……!これは……!」
カフェで飲み物を楽しんだのもそこそこに、モルフォが鞄の中から取り出したのは、サイクロンマグナムと、もう一台の赤と白を基調としたミニ四駆だった。
「ふむ……こちらは速そうな機体だが、こちらはスピードよりも安定性を重視しているように見えるな」
「ええ、サイクロンマグナムとハリケーンソニックです」
V字のフロントウイングと三段フラップが付いた大型ウイング、黄色いホイールが特徴的なハリケーンソニック。そのボディには「烈」、ウイングには「Sonic」の文字が刻まれており、こちらもまたサイクロンマグナムのようなヒロイックでスマートな印象を感じさせる。
「成程、これのためにモーターが必要だったんだね」
「はい、手持ちのが不良品だったもので」
「これなら私が勧めたもので問題なさそうだね。実はもう少しパワーが必要なものだったらどうしようかなとはちょっと考えていたんだ」
サイクロンマグナムを観察しながら、少し安堵したような声を漏らすウタハ。彼女としてはスピードに秀でたサイクロンマグナムの方が興味が惹かれるらしい。やはりスピードは浪漫ということか。
「……しかし、これはまた洗練された素晴らしいデザインだな……」
「いいですよねサイクロンマグナム。ハリケーンソニックも好きですけど、やっぱり印象はサイクロンマグナムの方が好きです」
「ああ、同感だ。こちらもこちらで大きな魅力があるがね……ところで」
サイクロンマグナムをじっくりと見ていたウタハだったが、周りの様子を確認する。まるでこれから話す内容を誰にも聞かれたくないから確認している。そう言わんばかりに。そして、ハリケーンソニックを見ていたモルフォに声のボリュームを下げて質問する。
「……ところで、君に確認したいと思っていたことがあるんだ。いいかな?」
「?はい、いいですよ」
「ありがとう。私が聞きたいのは……このサイクロンマグナムや、過去に持ってきたベイブレード……そういった知識は、どこで知ったんだい?」
「……」
ウタハの質問は、モルフォの異能についての問いかけであった。薄々、ウタハには察せられているとはモルフォも考えていたため、いつか確認しようとしていたのだろう。その機会が今、ということか。
「元々、モルフォが持ってくるものは別の人が考えたんだろうということは予想していたんだ。キヴォトスの外のもの……とも考えていた時期はあったが、キヴォトスの外からシャーレの先生が来たという話も聞いてね……それなら、なんでキヴォトスの外、と言わないのかなと思ってね。だから考えたんだが……」
そこで言葉を一旦区切り、モルフォの顔を見る。モルフォも、ウタハの次の言葉を待つように真剣に彼女の目を見返す。それを受け、ウタハは自分の考えた結論を告げる。
「……突拍子もないものなら笑ってくれても構わないが……それは、この世界に存在しないものだったんじゃないかな?」
「……はい、その通りです」
口ではそう言っているが、ウタハとしては真剣に考えて導き出した答えなのだろう。そしてそれは大正解だった。モルフォは頷きながら、二台のマシンを見ると、ウタハに自分の能力について話し始める。異世界のホビーなどを再現するその能力を聞き終えたウタハは、難しそうに腕を組む。
「成程……わかったよ。教えてくれてありがとう。だがそういう能力は……うーむ。確かに口外はできないな……君がそんなことをするわけがないと思うが、発想を飛躍させて危険性を探ろうとする人もいるし」
「リオ会長みたいな?」
「む……会長も知っていたのか。いや……知っていても不思議じゃないか……まあ、あまり気にしなくてもいいよ。彼女は石橋を叩きすぎる性分だからね」
「いえ、むしろ警告してくれてありがたいと思ってますよ。そっちに向かってはいけないんだって自覚できますし」
「ふむ……そうか」
どことなく思うところがあるようだが、ウタハもこれ以上は追及することはしないことにする。
「しかし意外だな、いや、モルフォの人となりだからこそかな……?」
「?どうしました?」
「いや、君は君のままでいるべきだと思っただけさ。それよりもこのサイクロンマグナムとハリケーンソニックだが……実際に走っている姿を見せてもらってもいいかな?」
「構いませんよ。でもコースは……」
「それならエンジニア部に行こうじゃないか。簡単なコースならすぐに作れるからね。それにしても……こういう方向性なら、別の物もみたいものだ」
「別のミニ四駆ですか?」
「まあ、今はそういうことにしておこうか」
ウタハの提案を受け、モルフォも頷く。そして二人はそのままミレニアムの方へと足を向けるのだった。
★
「おお……良い走り」
「速いですねぇ!サイクロンマグナムのスピード感もいいですが、ハリケーンソニックのコーナリングも面白いです!」
「実際に動いているところを見るとまた違ってくるね。直線だとサイクロンマグナムが速いけど、カーブを曲がるのはハリケーンソニックの方が得意って感じだね」
場所は変わってエンジニア部。ミニ四駆用のコースを簡単に作り、そこを勢いよく走らせるとマグナムとソニックがコースを縦横無尽に駆け回る。その様子にはモルフォとウタハはもちろん、コトリもヒビキもご満悦だ。
「でも、折角ならもっと速さを追求したいですね!このモーター使ってみません!?」
「マシンが耐えれるかな?今積まれてるものと比べて結構性能に差があるだろう?」
「……デザインだけ取って作り直した方がいいかも……モルフォはどう?」
「うーん、さすがにこのマグナムとソニックはちょっと……」
「ですよね……」
走り回る二機のマシンを見ながら、あのパーツを使ってみるのはどうか、こういうのはどうかと白熱するエンジニア部。このままエンジニア部に任せたら、とんでもないマシンができるのは間違いない。
「……マグナムトルネードとかもできそう……」
「「「マグナムトルネード?」」」
ふと、モルフォの零した言葉に三人の視線が集まる。思わず口走ってしまったと思いつつも、まあ別に隠すことではないかと説明を始める。
「マシンがコースを飛び出して空中で高速回転しながら一直線に飛んでいく技ですね、まあ現実じゃ無理ですしまずコースアウトですけど」
「成程、それでショートカットするんだね」
「弾丸のように飛んでいく、だからマグナム……!」
「本当にやると確かにマシンの方が怖いですが……一からエンジニア部の技術で作り直せばもしかしたら可能なのでは!?」
マグナムトルネードの概要を聞き、エンジニア部の目の色が変わる。すぐに会議を始めるその様子を見たモルフォは少し考えていたが、サイクロンマグナムをエンジニア部に手渡す。
「で、あればサイクロンマグナムを預けましょうか?」
「いいのかい?」
「さすがに本当にマグナムトルネードを使えるようなマシンになると跡形もなくなりそうなのでデザインの参考にしてもらえればという感じですが」
「ありがたいよ。ふふ……燃えてきたね!」
「であれば……あの素材が使えそうですねぇ!」
「材料の軽量化は……」
サイクロンマグナムを受け取り、話し合いと作業を始めるエンジニア部を楽しそうに見るのだった。
★
「これならばいけるはずだ!」
「ええ、今のセッティングなら完璧に飛べるはずですよ!」
「これでサイクロンマグナムは……!」
翌日。サイクロンマグナムはどうなったのかとエンジニア部の部室へと赴いたモルフォが見たのは。空中を飛び出し、高速でジャイロ回転するエンジニア部製の新生サイクロンマグナムだった。
「!?凄―――」
見事な軌道でコースを飛び出して見せたサイクロンマグナムは、見事なマグナムトルネードを実現し、かっ飛んでいく。そのまま―――
「「「あっ」」」
エンジニア部の壁に勢いよく突き刺さり、小さくない凹みとヒビを生み出してしまう。その結果、エンジニア部はユウカに怒られることになるのだった。