転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
その日、ナグサとキキョウは陰陽部に呼ばれ、ニヤ達の前にいた。ニヤは隣のカホと共に重々しい表情を浮かべており、事態の深刻さが露わになっていた。
「何かあったの?」
「まさか、花鳥風月部が―――」
「……ああ、いやそれとはちょっと違……いや、違わない?一応関係は……」
「どうですかね……一応関係はしているんですが……」
「ま、まあ……とりあえずちょっと面倒なことになっちゃいましてねぇ……」
「「?」」
陰陽部がここまで警戒するということはまた花鳥風月部が。そう思っていたが、どうにも歯切れが悪い。ニヤがカホに促すと、カホはそれを見て嫌なことでも感じたのかしかめっ面を浮かべながら手紙をナグサ達の前に差し出す。
「手紙?」
「百夜堂……というよりお祭り運営委員会に届けられたんですよね……カイテンジャーから」
「か、カイテンジャー……?」
「ええっと、それって確かテロリストの……」
「そうそう。無限回転寿司戦隊カイテンジャー……ご存じの通り指名手配もされてる重犯罪者ですよ~」
カイテンジャー。それはこのキヴォトスに出没する戦隊ヒーローのような恰好をした五人組で、頭に寿司ネタが乗っているという一見奇天烈な恰好をしている。KAITEN FX MK.0なるロボットを有しているが故にその武力だけは大したものがあり、独善的ともいえる正義や夢のために大型兵器の設計データに始まり物資や資金の強奪を常日頃から繰り返しているのだそうだ。
「あんまり百鬼夜行には出ないから印象は薄いけど……」
「あいつら、一度現れたら周囲が焦土になる、なんていう噂が流れるぐらいには犯罪の規模も大きいのよね……で?それと花鳥風月部が関係ある……関係ある?どういうこと……?」
「にゃはは、まあそうなりますよねぇ。まあ、これを読めばわかると思います」
「えーと……『我らは正義の味方、無限回転寿司戦隊カイテンジャー!今回、我らは正義を守るため、悪の巨大ロボットを有する百鬼夜行に果たし状を申し込むことにした!我らの正義の弾丸が、諸悪の権化たるかの獣、最強一角ライオンGを打ち破り、百鬼夜行連合学院に真の光と正義を見せてやろう!』……だって?」
「???」
「まあそうなりますよね」
ナグサが読み上げた手紙の内容に脳が理解を拒み始めるキキョウ。その気持ちはよくわかるとカホがうんうんと頷く中、ニヤが溜息を吐きながらナグサの方を見る。
「……どう感じます?」
「いや……どうって言われても……どう答えればいいの?」
「わからないわよ……そもそもカイテンジャーって正義でも何でもないし、かといって最強一角ライオンGってあれ……まあ諸悪の権化ではあるか……それと戦おうってのがそもそも意味不明っていうか、そんなことするまでもないというか……」
「ですよねぇ……」
「とはいえ、おそらく向こうからしたらそんなこと知ったこっちゃじゃなさそうですしね~、これはこれで面白そうではありますが」
「そんなわけがないでしょう……あいつらが出たら間違いなく大暴れするでしょうし……」
苦笑するニヤに頭を抱えるカホ。とりあえず、諸々の頭を痛めそうな要素についてはナグサは考えるのを止める。
「来るってわかってるなら、迎え撃つしかないんじゃない?」
「まあ最悪そうなるんですけどねぇ~、案外知ってたりしません?」
「知ってるって……?」
「あの子……箭吹シュロの居場所を」
「「えっ」」
つまり百花繚乱でそのカイテンジャーを迎え撃てばいいということなのだろう。そう考えて話を終わらせようとしていたが、ニヤにシュロの事を出されてしまい、再びナグサとキキョウは顔を見合わせる。
「つまり、最強一角ライオンGと戦いたいのがカイテンジャーの望みなら、それを被害が及ばない場所に出ればそこで戦ってくれるってことじゃないですか。しかもそれだけじゃない……ついでにそういう催しにしてしまえば盛り上がりますし?」
「……まあ、これを祭事にするのはともかく、こちらである程度自由に呼べるなら都合は良いのは確かなので……先日の一件で協力してもらいましたし、何か知っていたらと思うんですが」
「ごめん……私達は何も」
「そうですか……ひとまず先生に聞いてみるしかなさそうですね。とりあえず下がってもらって大丈夫です」
シュロの連絡先については先生に訪ねてみるようだ。とりあえずこの件を皆に伝えてそれからどうしようかと微妙そうな表情のまま、ナグサとキキョウは陰陽部を後にするのだった。
★
「……ふう。百鬼夜行に来たのもあの時以来ですね」
「そういえばケイが自分の身体で来たのは初めてだったっけ」
「あの時は色々あったよね……怪異とか……それに最強一角ライオンGを皆で作ったり……」
「私達がここに来たのもその最強一角ライオンGが原因ですけどね」
カイテンジャーが指定した日。ゲーム開発部の六人はシャーレの先生に協力を依頼されて百鬼夜行を訪れていた。というのも、
「……なんで手前がこんなところに……」
シュロへの連絡手段を持っているのがモルフォだけだったからだ。先生もニヤから話を聞き、あの時シュロと行動を一緒に取っていたゲーム開発部に連絡を取ったことがきっかけでモルフォ達も来ていた……というより、ゲーム開発部も来てくれないとシュロがどう動くかわからないという事情もあったためだ。
「災難だったね……」
「他人事のように言っていますがあんたらも当事者みたいなものじゃないですか!?」
「それで……コンディションはどう?」
「どうと言われてもそれは別に問題ないんですが……というか本当にやるんです?」
「やるも何も、勝手にあーだこーだ言われて黙ってるわけにはいかないでしょ!」
「そうです!最強一角ライオンGは……最強です!だから負けない、そうでしょうシュロ!!」
(既にアヤメに負けていませんか?)
よれよれのくたびれた百鬼夜行の制服を着ているシュロは奢ってもらったベビーカステラを放り込みながらゲーム開発部からの後押しを受けていた。とはいえ、シュロ自身はどちらかというと乗り気ではあったのだが。
「へん、別に手前だって暴れることが嫌というわけではありませんよ。何がカイテンジャーですか、手前の百物語に真っ向から喧嘩を売るとは……その愚かな思想を真っ向から打ち砕いて徹底的に恐怖を植え付けてやりますよ。ただ……」
「ただ?」
「これはなんなんですか!!」
爪楊枝を目の前に向けながらシュロが声を上げる。そこでは様々な屋台が並び、ワイワイと盛り上がる百鬼夜行の生徒達や住人の姿があった。建物の壁には「最強一角ライオンG VS KAITEN FX MK.0」と書かれたポスターが貼られており、シュロの協力を取り付けられたことを先生から聞いたニヤがシズコにそれを伝え、思いっきり祭にしてやろうと思い立った結果がこれだった。
「手前の最強一角ライオンGは見世物じゃありません!」
「見世物じゃないけど、人々の記憶や印象に強く残るのはいいことでは?」
「それは……で、でも最強一角ライオンGは作品なんですよ……芸術なんです、それも……手前一人で作ったものじゃありませんし……」
ちらちらとモルフォ達を見ながらシュロは呟く。と、
「皆さーん!」
「あ、ユカリじゃん」
「久しぶりだね」
「はい!また会えて身共も嬉しいです!」
「アリスもです!」
そこにユカリが姿を見せる。ユカリはモルフォ達に会えて嬉しそうな姿を見せ、アリスと共に喜び合う。と、その視線がケイへ向けられる。
「えっと、こちらの方は?アリスさんにどことなく似ているようですが……」
「……ああ、そういえばこの姿で会うのは初めてでしたか。天童ケイですよ」
「……え、ケイさんって、アリスさんの中にいた……!?何故こんなことに!?」
「ミレニアムだからね、できないことはないんだよ」
「成程!そうでしたか!!」
「それで納得させていいんです?いや手前もまともに説明してもらっていませんが」
「……ガッツリ説明すると色々大変なことになるので仕方ないんですよ。察してください」
ケイを見て首を傾げていたがすぐに納得するユカリ。そのままケイとも話し始めるユカリを見ていたが、ここでシュロがモルフォの裾を引っ張る。
「いいんです?彼女、間違いなく百花繚乱からお目付けで付けられていますが」
「別にいいんじゃない?後ろめたい事今回はしないでしょ」
「いやまぁそうですけど……って、普段から後ろめたい事しているかのような言い方は止めてもらえませんか!?」
「ごめんごめん―――」
ぷんぷんと怒り始めたシュロを宥めていると、爆発音が鳴り響く。
「何の音!?」
「お姉ちゃん、あっちの広場だよ!」
「これは……」
「現れましたね、カイテンジャーが!!」
「なんと!?急がなければ!」
カイテンジャーが出現したのだろう、急いでモルフォ達がその場に駆け付ける。そこには様々な生徒達が集まっており、その中にはさりげなく魑魅一座らの姿もあった。そして、その中心に爆発と共に現れた、赤、黒、緑、黄、桃の五人組が現れる。
「百鬼夜行連合学院……前々から怪しいとは思っていた。だがその実態が妖しき怪人を従えているという事実を知り、こうして我らは現れた!正義の鉄槌を下し、真なる光をこの百鬼夜行にもたらすために!」
それぞれ、カイテンレッド、ブラック、グリーン、イエロー、ピンクと名乗りながら口上を述べていくカイテンジャー。この見た目だけならヒーローショーみたいにも見えるのだが、実際はこのヒーロー集団は犯罪者である。
(コスプレイベントとかにも出たりするのかな……さすがに偽物だってわかりきってるし襲う旨味がないからやらないか……)
「「「「「無限回転寿司戦隊カイテンジャー!!」」」」」
名乗りを上げたカイテンジャーの背後で大爆発が巻き起こる。その名乗りを見て、周囲でそれを見ていた人々が拍手を送ると、カイテンジャーの五人も顔は見えないが得意げな様子を見せる。
「……さあ、我らは逃げもせず、堂々と現れた!邪悪なる怪人、最強一角ライオンGよ、その姿を見せるがいい!」
「我らのKAITEN FX MK.0の方が強いと思い知らせてやろう!」
「来なければこの会場を全て破壊するわ!!」
そして挑発するように声を上げるのだが、それを聞いていつでも彼女達を攻撃できるような位置に陣取っていたナグサ達は呆れかえってしまう。
「どこが正義のヒーローよ……」
「途中までちょっと言い返せなかったのになぁ……」
「あれ怪人って言われたらまぁそうだよねとしか言えないんだよね……百蓮で消せるだろうし……」
「三秒間待ってやる!それができなければ……」
「グリーン!いくら勤務時間のことがあるからってそれはもうちょっとだけ待ってやってもいいんじゃないか!?せめて40秒ぐらい!!」
「いいや限界だ!やるね!!」
百花繚乱が呆れかえってる中、カイテングリーンが爆弾を投げ始める。まずいと判断してナグサが爆弾を撃ち落とそうと銃を構え始めた、その時だった。一瞬の閃光と共に、巨大なメカライオンが出現すると爆弾をその身で受け止めていくと咆哮を張り上げる。
「あれは!?」
「最強一角ライオンGだ!!」
(そういえば明るい時に見たのは初めてだっけ……)
昼間の光の下に現れた最強一角ライオンは薄暗い水色と白銀を基調とした色合いをしていた。武装も角と鋭い爪のみというシンプルな姿ではあるが、それ故に美しさと格好良さが両立している。そんな、最強一角ライオンGの出現に周囲の人々が湧き上がる。
「うおおおおおお!!」
「最強一角ライオンG!?あれが!?」
「また見れるなんて……!」
「……あ、普通に格好いいなあれ……」
「レンゲ?」
爆弾を投げ込むという丁度いいパフォーマンスをしてくれたカイテンジャーを見て、これに合わせて召喚してやろうと思い付いたシュロの一手は望み通りの戦果を得たようだ。そして、最強一角ライオンGを見たカイテンジャーは気圧されたように後ずさっていたが、
「現れたな諸悪の化身よ!」
「今こそ、我らの力を見せるとき!」
「レッド!まだ白兵戦をしていないがいきなりロボット戦をやっていいのか!?」
「向こうが掟破りなんだ、仕方あるまい!!見よ、これが―――!!」
「「「「「KAITEN FX MK.0!!」」」」」
どこからから現れた五機の車両、マカレルタンク、セイバーシュリンプ、カリフォルニアリッド、スクランブルキャリアー、イールキャリアー。そこにカイテンジャーがそれぞれ乗り込むと合体し、最強一角ライオンGを見下ろすほどに巨大な合体ロボとなる。
「うおおおおおお!?」
「最強一角ライオンGよりでかい!?」
「いえ、全長は大体同じです!四足歩行と二足歩行の差があります!」
右腕に装備されたガトリングガン、左腕に装備されたお皿のような盾、さらに大剣を装備している巨大ロボット。寿司をモチーフにした各機と合体してみせたその巨大なロボット、KAITEN FX MK.0と対峙する最強一角ライオンG。最強一角ライオンGの姿を初めて見たこともあるがそれ以上にこの対戦カードを目の当たりにした先生が嬉しそうに観客に交じって咆哮を張り上げる。
「はん!何が回転ロボですか!やってしまいなさい、最強一角ライオンG!!」
「……やっぱり悪側の人間なのかもしれない……」
「いや花鳥風月部は百鬼夜行から見たらバリバリ悪なんですよ」
「あ、はは……きょ、今日は無礼講ですの……」
最強一角ライオンGがKAITEN FXに飛びかかる。その突進を盾で受け止めたKAITEN FXは最強一角ライオンGを弾き飛ばすと、ガトリングを撃ち込んでいく。弾き飛ばされた最強一角ライオンGは瞬発力を活かして弾丸を回避していき、KAITEN FXの周囲を駆け回り、狙いをつけさせないように立ち回る。
「くぅ……なんという瞬発力!」
「だがレッド!滾る、これは滾るぞ!!ペロロジラの時もだが、やはりロボット戦はいいぞぉ!!」
「興奮するのはわかるが、負けるわけにはいかないぞ!我らの正義の為に!」
(世界とかそういうのかかってなかったらそういう風に感じれたのかもしれないんだけどなぁ……楽しそうでいいなぁ……)
「喰らえ、ミサイル攻撃だ!!」
胸部ハッチが開かれ、小型ミサイルがばら撒かれる。最強一角ライオンGはミサイルを跳んで回避するのだが、その着地を狙ってガトリングを叩き込まれ、脚を撃たれたことで着地に失敗し、地面を転がってしまう。
「ああ!?」
「今だ、叩き切ってやる!!」
KAITEN FXは大剣を引き抜くと、横転してしまった最強一角ライオンGの胴体へ振り下ろす。甲高い音が鳴り響き、刃が胴体へと食い込んでいく。
「ああああああ!?」
「シュロちゃん!まだ倒れてない!」
「がんばえー!最強一角ライオンGー!」
「ここはモルフォに倣って応援しよう!皆!」
「はい!モモイの言う通りです!」
そのまま二回、三回と刃が振り下ろされる。三回目は爪を間に滑らせて刃を受け止めながら三本の脚で立ち上がり、そのままKAITEN FXの腰部に頭を突っ込ませて機体を吹き飛ばし、体勢を立て直す。
「ぬぅ、やる!」
「でも今のは痛いはずよ!」
「こちらが優勢に変わりはない!この勝負、我らの勝ちだ!!」
「レッド!凄い負けフラグ臭凄い台詞だがいいのか!?」
「勝てばこれが勝ちフラグだ!!」
再びガトリング砲を撃ち込む。最強一角ライオンGはそれを獣のような動きで避け続けていくが、今の所KAITEN FXへ向けての有効打は先ほどの突進のみ。
「防御面はともかく攻撃面で完全に負けていますね……」
「そもそも怪異って最強一角ライオンGと比べれば格下でしたからね……」
「じゃあどうするの?このままじゃ負けるよ!」
「なんかパワーアップ要素とかないの!?あのクロカゲと合体した姿とか!」
「……無論、クロカゲは大事です……ですが、なんか合体できなくなっちゃって……駄目なんです。もっと根本的な問題……最強一角ライオンGなのに最強じゃない部分をどうにかしないといけないんです!」
分が悪く追い詰められ始める最強一角ライオンG。しかし、大剣を叩きつけられた時はその悲惨そうな姿を見て頭を抱えていたシュロであったが皆と別れた後も最強一角ライオンGについてこねくり回していたようだ。
「さあ、翻弄してしまいなさい、最強一角ライオンG―――いえ!!最速一角ライオンG!!」
「「「最速一角ライオンG!?」」」
シュロのその声と共に最強一角ライオンGの装甲が光を帯びていく。
「むぅ!?なんだ!?」
「やらせるか!」
KAITEN FXが最強一角ライオンGから感じた不穏な雰囲気を止めるべく大剣を振り上げて突進してくる。直後、最強一角ライオンGの額から伸びる角が勢いよく射出され、KAITEN FXを吹き飛ばす。合間に盾を差し込んで直撃こそ回避したものの、そのまま大きく後ずさってしまう。その目の前に立ち上がった最強一角ライオンGの周囲を炎が取り囲んでいく。
「なんだ!?」
「炎!?いや、あれは……」
次の瞬間、炎の中で最強一角ライオンGの色が灰色から赤をベースとした色合いへと変わっていく。四肢にはスラスターが追加されていき、尻尾の先端に刃が装着され大きくなる。そして頭部から刀の刃が出現し、新たな一本角となり、生まれ変わった最強一角ライオンGが咆哮を張り上げる。
「これぞ!!最強一角ライオンGの新たな姿―――最速一角ライオンG!!」
「「「「「「「最速一角ライオンG!?」」」」」」」
最速一角ライオンG。その名と共に降臨した姿に、一瞬ざわめく観客たち。ゲーム開発部とユカリが驚きと共に口にしたその名が広まっていく中、最速一角ライオンGがKAITEN FXの目の前から消える。
「消えた!?」
「一体どこに―――」
「後ろよ!?」
「ぎゃああああ!!」
次の瞬間、最速一角ライオンGはKAITEN FXの背後に回り込んでおり、その背中を鋭い爪で切り裂く。KAITEN FXが後ろを振り向こうとするもそこに最速一角ライオンGの姿はなく、既に振り向いたKAITEN FXの後ろに回り込んでいた。
「速い!?」
「なんて奴なの!?」
「変わったぁぁぁぁあああああ!!」
『先生、凄い喜んでますね!!』
そして、KAITEN FXの左腕が頭部から生えた鋭い刀で切り落とされてしまう。
「しまった、ULTRAお皿シールドが!?」
「おのれぇ!」
ミサイルとガトリングを手あたり次第にばら撒くも、最速一角ライオンGを捉えることはできない。そればかりか最速一角ライオンGは素早く何度も切り込んでいく。
「この変化……いやこれ独学で捻り出したのは本当に凄いよシュロ……」
「ふふん!手前だって進歩しているのです!!」
「あれは……火力を落としている代わりにその分速度を跳ね上げているのですか」
「ケイ、そうなんですか?全然そんな風には……」
「今まではそもそも攻撃が当たってませんでしたからね。もし以前の最強一角ライオンGのままなら、当たれば一撃で腕を落とせていたはずです。ですが―――この速度はそのまま武器になります」
KAITEN FXの胸部に刀が突き刺さり、爆発を引き起こすと共に胸部ハッチが破損する。さらに何度も攻撃を受け続けた右腕が最終的に尻尾の刃によって両断される。
「武器を落とした!」
「今です!最速一角ライオンG!!」
そして、KAITEN FXの首が落とされ、大爆発を引き起こす。その爆発をバックに最速一角ライオンGが咆哮を張り上げると共に消えていく。
「うおおおおおお!!」
「格好いいぞー最強一角ライオンG!!いや最速一角ライオンG!!」
「ふっ……手前の作品が皆の心に強く根付いています……!」
「もうストーリーテラー止めて戦闘部分だけの脚本家やりなよ……」
「そんな脚本家あるんです?」
「複数人で脚本作るパターンとか……」
「それすっごく喧嘩しそう……」
「まあ殴り合うだろうね……」
その様子に呆れたり苦笑したり、純粋に盛り上がったり。そんな様々な面々の中、粉々に爆散したKAITEN FXからカイテンジャーが這い出てくる。
「く……ま、まさか正義が負けるなんて……」
「だ、だがこれで終わったと思うな……我々はいつかまた現れる……!その時こそ邪悪の権化を葬ってやる……!」
「というわけでいざ、さらば!カイテンジャー、その闘志は永遠に!!」
「永遠にじゃないわよ!?レンゲ、取っ捕まえて!」
「わかって―――くそっ、なんだ逃げ足無駄に早いな畜生!?」
そこから手慣れたような動きで逃げ出すカイテンジャー。レンゲがキキョウに言われて追いかけようとするもあまりの逃げ足の速さであった。
(……そういえば、戦ってた時は全く気付かなかったけど……あれ怪異だからカイテンジャーが幾ら攻撃したところであんまり意味ないのよね……あれを気絶なんて難しいだろうし……)
(あの速さならそう時間もかからずに自治区の外に出るね……)
一瞬カイテンジャーを追いかけようとしたもののどうせ途中で追いかけられなくなると判断してナグサは追いかけるのを止める。そして、大興奮の広場を見ながら焼き鳥の屋台はどこにあったのか考え始める。一方モルフォ達は、
「ふふふ……手前の新たな怪談がまた一頁……!」
「……まあ、楽しそうだからいいか」
楽しそうに、そして得意げに笑うシュロを見てから顔を見合わせ、楽しそうに微笑むのだった。