転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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対策委員会とナナトリドリ

 

「ま、負けた……!」

 

シャーレの当番の仕事も終わり、あるカードゲームで遊んでいたモルフォとセリカと先生。そのカードゲームの名は、ナナトリドリ。1から7の数字が描かれたカードがそれぞれ九枚。参加者は八枚の初期手札と二個のペンギンコマを持ち、残りのカードは山札として場に置かれる。その後、手札のカードは順番を並び替えずそのままの状態で所持することになる。

 

プレイヤーは手札から場にカードを出すか、山札から一枚カードを引き、そのカードを手札に加えるか捨てるかを選ぶ、パスという行為を行う。パスが一巡すると、場を流すため、現在場に存在するカードは全て捨てられることになる。

 

場に出すカードの強さは、出す数字の高さ、同時に出す枚数によって決まる。1より7の方が強く、7より1・1の2枚の組み合わせの方が強い、といったように。ただし、手札から出すとき、カードは隣同士になっているものしか出すことができない。手札の数字が1・1・1となっていれば1を三枚同時に出すことができるが、1・2・1となっていた場合、1・1の組み合わせで出すことはできず、1か2を一枚ずつしか出せない。また、カードを出す場合は現在場にあるカードよりも強い手を出す必要がある。

 

また、場にカードを出した後、直前に場に出ていたカードを自分の手札に加えるか捨てるかを選べる。場に1のカードがあり、2のカードを出したら直前に出ていた1のカードを手札に加え、好きな所に入れられる。それによって、1のペアを作り後に備える、といったことが可能となるのだ。

 

それらを繰り返し、手札が0になった人物は勝ち抜けし、最後に残った一人はペンギンコマという残基を一つ失う。それを繰り返し、誰か一人が脱落した時点でゲームが終了し、残りの人物が勝者となるゲームである。

 

「な、なんか違和感が凄いわね……手札を並び替えられないなんて……」

「大富豪とかだとある程度手札を並び替えちゃうからね。同じ数を纏めたり、革命用の手札は別に揃えたり……」

「でも、異世界のカードゲームって面白いわね……こういうのもあるなんて。でも、教えてもよかったの?」

 

一通りそれを楽しんだところで、セリカが懸念点を告げる。今回、このゲームを一緒に遊ぶにあたり、先生とモルフォから彼女の秘密を教えてもらったセリカは、果たして知ってもよかったのかと少し不安そうにモルフォを見る。とはいえ、モルフォから別に隠しているわけではないし、自分が作り出したものを誤解さえされなければいいのだと言われ、先生もセリカや対策委員会の皆なら大丈夫だと伝えられたことでそれを受け入れることにしたようだ。

 

「……皆でやったら楽しそうね、これ……」

「そうだね、対策委員会の皆とやってみたらどうかな?きっと楽しめるはずだよ」

「いいの?確かに嬉しいけど……」

「皆で楽しんでくれれば私も嬉しいからね。気になるなら……そうだね、一回貸すからまた後で返しに来てよ」

「……うん、わかった。そういうことならちょっと貸してもらおうかしら」

 

セリカの頭の中に他の対策委員会の皆の姿が浮かぶ。モルフォの私物であるこのナナトリドリを受け取っていいのかと思ってしまうが、貸し借りにされたことで少しだけその抵抗感も薄れる。そしてセリカがナナトリドリを受け取る様子を、先生は微笑ましく見つめるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ってわけなんだけど」

「ん、モルフォが遊ばせてくれるゲームは楽しかった。だから楽しみ」

「ふーん、モルフォちゃんにそんな秘密があったんだねぇ……それで、どういうゲームなの?」

 

アビドスに戻ったセリカは、モルフォと先生から許可を得たことでモルフォの能力の事を共有すると、事前にそのことを聞いていたシロコ以外の三人も興味を持ったようだ。日々、借金返済のために奔走していれど、彼女たちとて高校生。未知のゲームと聞けばこうもなろう。ホシノがそのゲームの名前を聞くと。

 

「ナナトリドリって言うんだけど」

「……ふーん?」

 

一瞬、ほんのわずかにホシノが体を強張らせる。しかし、あまりにも一瞬だったこと、他の四人もナナトリドリの方に夢中になっていたことでそれが気付かれることはなかったようだ。セリカから説明されるルールを聞いていたが、

 

「……ホシノ先輩?聞いてる?」

「え?あ、ごめんごめん、ルール難しくて全然聞いてなかったよ」

「いや、ホシノ先輩の場合はただ本当に聞いてなかっただけでしょ」

 

ふと、話を振られて慌てて誤魔化す。実際の所、やってみればそこまで複雑なルールではなかったため、苦しい言い訳だったのだが、ホシノならそういうこともあるだろうとセリカも溜息を吐きながら改めて説明し直す。今度はホシノもちゃんと話を聞いていたようで、全員がルールを把握したところで八枚のカードとペンギンコマを二つ配っていく。

 

「さてさて……うへ」

 

手札を並び替えてはならず、同じカードしか同時にだせない。つまり、同じカードが何枚も横並びになっている方が有利。ホシノもそこはわかっていたために、今の自分の手札が完全にバラバラになっているのを見て思わず顔が引き攣ってしまう。

 

(バラバラな手札……ね、なんかの暗示かな?)

「誰が最初に出します?」

「セリカちゃんでいいと思いますよ?これ持ってきたのはセリカちゃんですし」

「ん、文句はない」

「おじさんもそれでいいよぉ」

「……じゃあ私から」

 

手札にあった一番弱いカード、1を一枚だけ場に出すセリカ。それから順繰りに一枚ずつカードを重ねていく。そして最後の番となっていたシロコは、

 

「ん、こういうゲームはとにかく攻めて攻めて攻めまくること。一枚でも手札を使い切ることが大事。出し惜しみしてると変な所に引っかかって理不尽にぼこぼこにされてしまう」

「し、シロコ先輩?」

「うへ、なんか実感籠ってるね、なんかやってた?」

「ん、ちょっとゲームやってた。まずはこれ」

「……へ!?」

 

シロコは一気に三枚のカードを場に出す。序盤は少しずつ探り合いをするかと思っていたばかりに、シロコの破天荒な一手は早速波乱を生み出そうとしていた。

 

「ちょっ、三枚って……」

「……しかも7ってことは、この上を行くにはフォーカード以上ってことですよね……パスですね」

「……うへ、これどうしようもなくないかなぁ?うわぁ」

「参っちゃいましたね、私もそこまで余裕がありませんね」

 

しかもスリーカードの中ではかなりでかい組み合わせ。全員動くことができず、手札増強を狙って山札から一枚ずつ引き、ホシノはそれを手札に加える。それ以外はある程度手が固まってるからか、引いてきたカードを捨てていく。

 

「ここは畳みかけていく。もう一回スリーカード、これで残り二枚」

「やっば!でもこの手なら勝てそうだし、私もスリーカードで上書きよ!」

「……パスで」

「うへ、なんか皆手札強くない……?」

 

ポンポンスリーカードを捨てていく後輩達の姿を見ていると、なんでこんなに手が弱いんだと、ホシノもつい頭を抱えてしまいそうになる。さっきの手札増強で1ペア。ここの手札増強でやっと2ペアという有様だ。

 

「じゃあ私もスリーカードで~」

「ん!?私の番が来ない……!」

「おじさんの番も来ないよぉ」

「ホシノ先輩、相当手札悪いようですね……」

「え~?それはどうかなぁ?それに、アヤネちゃんも手が悪そうだけど?」

 

後輩達から、ホシノの手の悪さが疑われたのを誤魔化すかのように、自分と同じく動かないアヤネも手が悪いんじゃないかと言ってみる。しかし、結局自分の手札が悪い疑惑が消えるわけもなく、露骨に逃げようとしたことで四人に確信を与えてしまっていた。

 

「そういうわけじゃないんですが……これは上書きしてもらいましょう」

「うへっ?」

 

ノノミの出した手が強く、シロコやセリカでは返せなかったが、ここまで温存していた手を切るアヤネ。代わりにノノミが場に出していた三枚のカードを回収したということは、それらを用いてもっと強い手が飛び出すということ。まさかこのまま何もできずに負ける?冷や汗を流しながらカードを引き、なんとかスリーカードを作り出すも、今は何の役にも立たない。また順番が一巡し、アヤネは弱い手を処理するようにカードをピンで出す。そのおかげでホシノも次の手を繰り出せたのだが、

 

(……お?)

 

邪魔な間のカードが消えたことで繋がりができる。バラバラの手札を整えられるのは追加で引くカードだと思い込んでいたために完全に頭から抜け落ちていたが、全体に目を向けてみると、意外といろんな手段で手札を調整することが可能であり、カード同士の繋がりが広がっていることに気が付いた。

 

「ふーむ、アヤネちゃんが折角くれたカード、もらっちゃおうかなぁ?」

「……手が悪いと思っていましたけど……案外立て直しもしやすいですね……」

「でも、ホシノ先輩は手札が多い、ここから逆転は難しい」

 

積極的に手札を補充していくホシノの動きを見て、アヤネは警戒を強める。ホシノも段々このゲームのコツを掴んできたようで、手札の枚数こそ五人の中では一番多いものの、逆を言えば多くの数字を抱えているということ。まして、手札増強を他のメンバーよりも優先して行っているということは、一度攻勢に入ればそれだけ、一気に大量の手札を消費させられるということなのだ。

 

「まだわかんないよ?意外とおじさんにも逆転の目はあるかもしれないし」

(……手札交換をやり出す奴は大体やばい手を作ってるってモルフォが言ってたのよね……実際その通りだったし……)

 

それを理解しているのはアヤネとモルフォ、先生と一緒に遊んだことのあるセリカだけだった。セリカも、モルフォが出しては拾ってを繰り返す手札交換戦術で手札を増強し、終盤で一枚もカードを出す間もなく仕留められただけに、今のホシノの動きはかなり怖いのだ。今でも「手札が回り始めた!」というモルフォの台詞が死刑宣告のように思い出せるぐらいにはインパクトが強かった。

 

「ここは流れを変えちゃいたいですねぇ。スリーカードで攻めちゃいましょ」

「……手札が四枚に……!」

「ここは攻め時よ!スリーカードで上書き、この三枚はもらうわ!」

「でかいですね……パスで」

「じゃあおじさんも先輩の意地見せようかなぁ、フォーカードだよ。セリカちゃんが捨てたのは貰おうかな」

「「「「!?」」」」

 

そして、遂にホシノが動く。掟破りのフォーカードによって遂に主導権がホシノへと移ってしまう。さすがに四枚は誰も持っていないのか、パスをせざるを得なくなる。次に1ペアでカードを出すと、他のプレイヤーも出せるものを出し始めるのだが、ここで先ほどセリカが出したスリーカードを使って上書きしつつ、また捨てられたカードを回収する。

 

「やっばいかも……?」

「ううん、ちょっと序盤で攻め急いじゃったかもしれませんね……」

(……手札が弱い)

 

さらにホシノの猛攻が止まらない。最初はどうしても使い道が見えない不要なカス札を捨てて他のプレイヤーがカードを出すのを誘発しつつ、その後、主導権を握るように大きな手をぶつける。その時、使い道のあるカードなら回収して大きな手を作るための糧にする。その繰り返しで少しずつ、着実に詰みへと向かっていくホシノ。まるで運の揺り戻しが来たかのように、盤面がリセットされた瞬間を見計らうと、残っている六枚の手札を同時に手に取る。

 

「!?」

「まさか、その六枚全部……!?」

「もしかしてホシノ先輩、ここまで考えて……!?」

「これで終わりだよ」

 

5のシックスカード。ホシノの切り札に四人は対抗することすらできず、一方的な逆転劇を演じられてしまった。

 

「いぇーい、おじさんあがり~」

「そんな、ホシノ先輩に負けるなんて……!」

「ホシノ先輩、こういうの弱そうなのに……」

「それはひどくない?いやまぁ運が良かったのはあるけどさぁ」

「そ、そうですよ。ホシノ先輩が強かっただけですよ」

 

せっかく勝ったのにこの言い方はあんまりではないか。思わず抗議してしまうホシノと、彼女にフォローを入れるアヤネ。どう転ぼうと、ホシノが今回のゲームに勝ったのは事実なのだから、その結果は受け入れるべきだろう。それにこのゲームの肝心なポイントは、一番最初に上がったから勝ち、というわけではない。

 

「まあ、ホシノ先輩が一番に抜けちゃったけど、結局最後まで上がれないのが駄目なわけだし。まずはビリになるのを避けるのよ!」

「うへ、そういえばそういうゲームだっけこれ……」

 

ここにきて、勝者ではなく敗者を逃れるゲームなのだということを思い出す。完全に頭の中から抜け落ちた事を思い出してつい苦笑しながら、ナナトリドリを再開する四人の後輩達。その様子を見ながら、楽し気な表情を浮かべるのだった。

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