転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
「へー、先生は仕事で来てたんだ。てっきり遊びに来てたのかと」
「あはは……仕事が終わって余裕があったら楽しみたいところだね」
百夜堂にてまさかの再会を果たしたモルフォたちと先生。まだ先生と会ったことのなかったコトリとマキとも自己紹介が終わり、大きなテーブルを囲みながら話し始める。先生も仕事で来てはいるが折角の機会だし、まだ会ったことのない生徒と話をしようということで快くテーブルを囲んでくれた。
「いやー、まさかこんなところで噂の先生に会えるとは!」
「気にはなってたんだよね。D.U.まで行くこととかあんまりないからさ」
「私も、モルフォ達の友達と会えて嬉しいよ。ユズは一緒じゃないの?」
「ユズちゃんは予定がつかなくて……」
と、六人で話をしていると、髪を一本にまとめ着物を着こなしている少女、朝比奈フィーナと。百夜堂の看板娘でもある茶髪に桃色を基調とした着物とウェイトレス服を合わせたような可愛らしい服装をしている少女、河和シズコが飲み物を運んでくる。彼女はお祭り運営委員会という組織に所属しており、この喫茶店のオーナー兼看板娘でもあるのだという。
「飲み物をどうぞ。そちらの皆さんも!」
「ありがとうございます、シズコさん、フィーナさん」
「はい!お頭のお連れの方々、失礼なきようにおもてなしも全力デス!!」
「いやいや、そういうのじゃないからね?」
フィーナという人物はどうも任侠に憧れを抱いているようで、言葉の節々からそういった面を覗かせている。シズコとフィーナはまた別の用意があるのかまた机から離れると、先生が店の外に見える街並みを見て楽しそうに笑う。
「それにしても、百鬼夜行は初めてだけど凄いところだね。景色もいいし、街並みも綺麗で、何よりあの御神木が立派だ」
「そっか、先生キヴォトスの外から来たって話だから百鬼夜行に来るのも初めてなんだ」
「では説明しましょう!」
「え?」
ここに来るまでにも少しは桜花祭を楽しんできていたようだ。そんな先生にコトリがサムズアップをしながら得意げに口を開く。
「百鬼夜行連合学院というのは、昔から観光業を中心に発達した学院自治区となっていまして、お祭り、温泉、音楽、グルメと多種多様な娯楽があるのです!特に今回の桜花祭では私が所属するエンジニア部の部員の一人が作ったホログラム花火が使われるとあってその期待値はかなり高いですよ!」
「そうなんだ、楽しみだね花火」
コトリの説明を聞き、楽しそうに答える先生。と、その時だった。突然表の方で爆発や銃撃の音が響いてくる。
「!?」
「え、何々!?」
「あ、あいつら……!!」
先生やモルフォたちが混乱している中、その騒ぎを聞きつけてシズコとフィーナが店の奥から走ってくる。モルフォ達も表の方に出ると、そこにはお面をつけた少女達が暴れていた。
「何あれ?祭のイベント……じゃないよね?」
「あいつらは魑魅一座……祭を荒らす連中よ!」
「桜花祭を滅茶苦茶にしようとしている奴らです!許せマセン!」
「あー、ヘルメット団とかみたいな奴らって事ね……」
組織名はともかく、大体不良とかと似た存在なのだとは伝わったところで、ショットガンとマシンガンをそれぞれ構えたシズコとフィーナに向かって、魑魅一座が突撃してくる。だがそこにはモルフォ達もいる。
「はっ、たかがお祭りの運営委員会ごときが相手になるもんか!全員突撃!」
「……いや私達も巻き込まれてない!?」
「……あれ、迎撃しちゃっていいやつ?」
「まあ不良だしいいんじゃないでしょうか?……っておおう!?」
「コトリ!モルフォ!大丈夫!?」
どう動くべきかいまいち掴みかねている所に魑魅一座からロケットランチャーが撃ち込まれる。コトリの目の前に迫ったそれがモルフォのシールドで受け止められ、爆発の衝撃がモルフォの手首に伝わる中、先生の険しい声がとぶ。モルフォと冷や汗を流したコトリが何とか無事だと頷くと、今の攻撃で参戦することを決めたモモイ達もそれぞれの得物を構える。
「あ、あれ?」
先程ロケットランチャーを撃ち込んできた魑魅一座が冷や汗を流す。どうやらあの攻撃は狙って撃ったわけではないらしい。しかし、先に手を出したのはそっちだと、モモイ達は引き金を引き始める。
「皆、横っ腹を殴りつけるよ!」
「「「わああああ!?」」」
フィーナとシズコを先生が指揮し、魑魅一座の注意がお祭り委員会の二人に向けられている所を脇から次々と弾を撃ち込んでいく。特に弾をばら撒くのに長けたモモイ、コトリ、マキの攻撃は乱入に混乱する魑魅一座に更なる精神的な動揺をもたらしていた。そんな中、注意して戦局を見渡していると、煙の中を走る見覚えのあるイズナの姿が目に入る。
「あれ?あの子って……先生!?危ない!」
「え?うわっ!?」
「きゃん!?」
モルフォの警告も遅く、イズナは先生にぶつかってしまう。
「大丈夫ですか先生!」
「う、うん。私は大丈夫……でも、どうしてイズナがここに……!?」
「先生!?そ、それはイズナの台詞です!どうして先生が私達の邪魔を……まさか、先生は最初からイズナを誘い出すために……!?」
「んん?」
「まさか、全ては仕組まれていた……!?イズナの夢を応援するって言ってくれたのに!本当は悪い大人だったんですか!?」
「どうして魑魅一座と……?だってイズナの夢は……」
「イズナは忍として命令に従っているだけです!」
イズナとしてもここで先生と会うのは予想外だったのか、混乱しているように見える。とりあえずイズナが先生を攻撃しようという様子は確認できないので置いといて、こちらに銃口を向けた魑魅一座の攻撃を盾で受け止めてショットガンをめり込ませて吹き飛ばす。
「一網打尽、デス!」
「これでも修羅場は越えてきてるんだから舐めないでよね!」
「調子に乗っちゃ駄目だよお姉ちゃん!まあカイザーよりは楽だけど!」
「ミドリ、なんか奥の方でロケラン構えてる奴いる!落として!」
「オッケー!」
先生がイズナと話をしている間にも魑魅一座はお祭り委員会だけでなく参戦してきたミレニアムの生徒達の援護もあり、追い詰められてきていた。
「くそ、援軍さえなければ……!」
「イズナ殿、一旦戦略的撤退だ!」
「え?戦略的撤退?ですがイズナは……」
「立派な忍者は引き際を弁えているものだろ!なんかそんな感じだったはず!」
「そういうことであれば!」
これにはたまらないと魑魅一座は撤退を選択。イズナも魑魅一座の言葉を聞き、改めて先生に言葉を告げる。
「先生……まさかイズナの夢を応援してくれた先生が立ちはだかるなんて……何という運命の悪戯……!ですがイズナは知っています!忍の道を行くからには、こういったことも起こり得るのだと!ドラマで見ましたので!」
「ドラマ?」
「望まぬ戦いに巻き込まれてしまうのもまた、忍者の宿命!先生、イズナは諦めません!次に相まみえる時はイズナ、今の三倍くらい強くなっているはずですので!では、ニンニン!」
そう言い、イズナは一瞬で走り去って消えてしまう。魑魅一座も蜘蛛の子を散らすかのように逃げ出してしまい、戦闘を終えたシズコははぁ、と溜息を吐きながら、
「ああもう、また悪さをして!もう許せない!」
怒りの声を上げる。その様子を見て、モルフォたちは互いに顔を見合わせるのだった。
★
「魑魅一座・路上流。昔から百鬼夜行で、しょっちゅう問題を起こしているやつらデス」
魑魅一座を共闘して撃退することになったモルフォ達は、先生と一緒にフィーナとシズコから魑魅一座について説明を受けていた。以前から問題児としてその名は広がっていたようだが、組織的に動くようになったのは最近になってからだというシズコ。組織だって桜花祭を台無しにしようとしているかのような動きを見せており、お祭り委員会としては到底見過ごせない存在になっていた。
「ああもう何なのよ!なんか頻度も数も増えている気がするし……今までは私達だけでも何とかなってたけど、もう手が足りないわ!」
「けどさー、なんでその魑魅一座って奴らは祭の邪魔するわけ?私達とか思いっきり巻き込まれたわけだし、他の学区の人が来なくなったらここも損しかしなさそうなんだけど」
「……知ったこっちゃあないが、色々と気に食わないんじゃないかい?」
シズコも怒り心頭といった様子で魑魅一座に対する怨嗟の声を漏らす。マキが魑魅一座がなんで邪魔するのか理解できないでいると、そこに和服姿の猫が現れてマキの疑問に答える。
「あなたは……?」
「ニャン天丸会長!」
「どうも、百鬼夜行の商店街の会長だよ。今回の百夜ノ春ノ桜花祭では最後に打ち上げる花火がちょっと違うんだろう?」
「花火……そういえば」
「はい、桜花祭では火薬を用いた花火をこれまで打ち上げていたのですが、今回はエンジニア部製のホログラム装置を使用することになっているはずですね」
「だから、かもしれないね。何かが変わることを誰しもが簡単に受け入れるわけでもないし……火薬の方がいい、という人もいるのかもしれないね」
変化を受け入れがたい人達。データより実物派は確かに存在していることを考えれば、今回のホログラム花火の導入にいい顔をしない層も確かに存在しているのかもしれない。とはいえ、シズコ達からすれば祭を良くするためにやっていることでそのような反感を得られるとは思っていなかったのか悲しそうな表情を浮かべてしまう。
「まあ、これは推測でしかないし、儂だって今更蒸し返したいわけじゃないんだ。ただ、そういう奴らもいるだろう……学生がこんなに金を使って……ってな」
「……?」
どこかトゲのあるような言い方をする商店街の会長。不満を持っている層の一人である、というのを隠そうとしない素振りに先生が視線を向ける。
「はい、ですが私達も趣味や道楽でやっているわけじゃないんです。全てはお祭り運営委員会の委員長として、桜花祭を素敵なものにするために!それだけは自信をもって言えます!」
「ハイ!お祭りというのは、毎年どんどん楽しくなっていくべきデス!」
「ふん、そうかい。じゃあそうなるように頑張りな……それで?どうするつもりなんだい?」
そんな会長に自分達の覚悟を言葉で示すシズコとフィーナ。その言葉を聞いた会長はぶっきらぼうに言う。しかし、シズコもフィーナもその対応には苦笑してしまう。おそらく、これが会長という人物で、口ではこう言いながらもちゃんと二人に慕われることをやってきているのだろう。先生も、気難しい人なのかなと彼の事を捉えるようになっていた。
「そろそろあいつらをどうにかしないと、桜花祭が滅茶苦茶になってしまうだろう?」
「百鬼夜行で他に手を貸してくれる人はいないの?」
「ゼロってわけじゃないんですけど……真っ当に手伝ってくれるかどうか……まあ、今は背に腹は代えられませんし……」
むむむ、と難しそうな表情を浮かべるシズコ。少々頼みにくいと感じているのだろうか。とはいえ、この状況で選り好みをしている場合ではないと腹を括ると、
「先生、手を貸してもらっていいですか?」
「うん、もちろんだよ。桜花祭に来たのもある意味その為だろうし、何より生徒の頼みだからね」
「となると、問題はその手伝いを探している間だね……その間、魑魅一座がまた動き出したら……」
それでも、とにかく手が欲しいと、シズコは先生にその約束を取り付ける協力をしてもらおうとする。だが、問題はその間、最低でも先生とシズコは動けなくなってしまうことだ。その間、フィーナだけではさすがに手が足りない。と、その時だった。コトリが立ち上がる。
「先生!私にも協力させてください!ヒビキのためにも、お祭りを台無しにされちゃたまりませんから!」
「そうそう!理由はまだよくわかんないけど、楽しいお祭りを邪魔されちゃたまったもんじゃないよ!」
「あんな目に遭ったら黙ってはいられないしね、それにコトリなんてもう少しで怪我するところだったし!」
「魑魅一座を気にしながら巡るぐらいならここで一気に相手した方がいいよね」
「偶然居合わせたとはいえ私もシャーレの部員ですからね。先生、協力しますよ」
コトリに続き、他の四人も立ち上がり協力を申し出る。生徒達の協力の意思を確認した先生は嬉しそうに笑い、その申し出を受けることにする。
「ありがとう、皆。手を貸してもらえるかな?」
「「「「「はい!」」」」」
「ありがとうございます!他の学区の方に協力してもらうのは申しわけないと思いますけど……助かります!」
「これが人情デスね!奴らにケジメをつけさせマス!」
そして、シズコからも感謝され、五人もこの件に協力して動くことになるのだった。
★
その後、百鬼夜行の生徒会である陰陽部へと先生とシズコは向かうことになった。百鬼夜行でこういった時に助けを求められる組織としては先の陰陽部もだが、もう一つ。百花繚乱紛争調停委員会というところがあるのだが、そこはメンバーが全員不在なのだそうだ。そのため、実質的に頼れるのは陰陽部だけと言える。モルフォたちは魑魅一座が暴れた時に備えて待機していたのだが、その報せが来ることもなく、いつしか気を抜いた様子でティータイムをしていた。
「……で、そういえばあのイズナって子も魑魅一座なの?」
「あー、そういえばいたんだっけ?でもなんか、お祭りを邪魔しようとか暴れようって感じはしなかったよね?」
「雇い主がどうとか言ってたけど……」
イズナの事を思い出したモルフォは、彼女の様子が他の魑魅一座と少し違っていたことに気付く。交流は短かったが、彼女が悪意ある存在とは思えない。最近組織立って動いているという事実や雇い主という言葉から、原因がその人物にありそうな、そんな考えがモルフォの脳裏に浮かぶ。
「奴らに頭が存在しているということデスね!そいつをシバいて指を詰めさせまショウ!」
「え、本当に指って詰めさせるの!?」
「さ、さすがに冗談だと……冗談だよね?」
任侠ものに影響を受けているだけであって本当にやろうとしているわけではないと思う、というか思いたいが……
「皆、戻ったよ」
そんなことを話していると、先生とシズコが百夜堂へと戻ってくる。二人と一緒にいたのは、タヌキの耳を生やした黒髪の少女と、薄桃色の髪の少女、二人と比べると身長が少し小さい黒髪の女の子の三人。
「陰陽部はあんまり役に立たなかったけど……修行部が協力してくれることになったわ!」
シズコが頼もしそうに、修行部の面々の顔を見ながら言う。それを受け、タヌキ耳を生やした少女、春日ツバキ。薄桃色の髪の少女、水羽ミモリ。少し小柄な少女、勇美カエデの三人は自己紹介をするのだった。
★
廃墟に集まる魑魅一座の面々。彼女たちの前に一人の人物が現れる。その人物は不満そうな声を魑魅一座へとかける。
「またやられたのか?それに、イズナ殿はどうした?」
「あいつは役に立たない!何が忍者だ!」
「今日だって、ここに来る途中にやるべきことがあるからって……!」
「……所詮この程度か……それなりに使えるとは思ってはいたが」
ここに集まった魑魅一座を見渡していたその人物は、雇っているはずのイズナの姿が見えないことに気付く。とはいえ、彼女の失態は既に耳にしたのもあってか、この場にいなくともあまり関心を寄せることはなかった。
「このままだと桜花祭を邪魔しようにも、あのシャーレの先生とかいう大人にやられっぱなしっす。お祭り委員会は先生だけじゃなくて修行部とも手を組んだみたいで……」
「シャーレの先生か……そこまでの力があるとはな。まあいい、商店街にはどれくらいの魑魅一座が?」
「大体120人ぐらい?」
「……そろそろ仕掛け時か。今からよく聞け」
シャーレの先生。確かに彼が来てから戦闘面については大きく変わったように見える。しかし、先生にそれだけの力があったところで変わらない。何せこっちは既に人数が揃っているのだから。とはいえ、このままウロチョロされるのも面倒だ。それならば。
「……えっ、本当にそんなことを?」
「本当にやっちゃっていいんすか?」
「ああ、大きな変数は取り除いておくに限る。そうすれば計画も成功し、報酬もお前達に渡すことができるだろう」
「わかったよ」
「はい!かしこまっす!」
イズナの雇い主の話に頷く魑魅一座達。その様子を満足げに見ながら、あることを念押しするように口を開くのだった。
「ただし、イズナ殿には内密にな。では、仕上げの時間だ」