転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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夢見モルフォと百夜ノ春ノ桜花祭(後編)

夕日が見え始めた百鬼夜行。修行部、お祭り運営委員会と共に街に繰り出したモルフォ達は、魑魅一座を探していた。魑魅一座を率いている元凶を探すため、魑魅一座を取り押さえ、聞き出すという方針に決まったためだ。このまま、問題が解決しないままクライマックスになれば、魑魅一座の暴走によって花火の打ち上げが妨害され、台無しにされてしまう可能性も考えられる。やはり、少しでも早く魑魅一座を捕まえなければならなかった。しかし、

 

「……あいつら、いっつも呼ばれなくても来るくせに、なんでいざ探そうとすると出てこないわけ!?」

 

全く見つからない。昼間はむしろ向こうから来るレベルだったのに、こちらが探そうとした途端に昼間の勢いが嘘であるかのように魑魅一座は影も形も見えなくなっていた。

 

「フィーナ、分かった気がしマス!リモコンと同じデス!」

「あー、あるある」

「この前さー、カラースプレー、一本だけ別の所に置いちゃったみたいでずっと探してたんだよねー……最後は見つかったからよかったけど」

「確かマフィンの法則だったっけ?そんな感じの!」

「美味しそうな法則だね~」

「いやマーフィーの法則では……?」

「失敗する可能性のあるものは、失敗する、という経験則や法則の形式で表明されるユーモアやジョークですね」

「へ~、なんか話聞いてたらお腹すいちゃったかも。あ、あれ買おうよミドリ!美味しそうだよ!」

「……アイスコルネット?コロネにソフトクリーム……あ、普通に美味しそう。食べたくなってきたかも」

 

そんな状況と祭の雰囲気もあってか、次第にワイワイと生徒達は雑談を始めていた。その光景を見て、

 

「騒ぎがないおかげで、皆さん普通にお祭りを楽しめてますね」

「うん、良いことだと思うよ」

 

ミモリが楽しそうに言う。それを聞いて、先生もモルフォ達を微笑ましく見ていたが、やがてその視線が一人険しい表情を浮かべたままのシズコへと向けられる。

 

「う……なんで魑魅一座は出てこないの……!?」

「うわああああん!パパー!ママー!どこー!?」

 

シズコに先生が声をかけようとしたその時だった。泣いている子供の声が聞こえてくる。全員がそちらの方を見ると、迷子の女の子がその場で泣きながらオロオロと周りを見ている姿があった。

 

「あら、迷子の子が……」

「放っておけない事案発生!ツバキ先輩!」

「うん、出動~」

「え!?ま、待って……!?」

 

それを見た修行部の三人の行動は早かった。三人が子供の対応をするために離れていく。慌ててシズコが声をかけようとするのだが、遠くからシズコの姿を見つけた少女が小走りで駆け寄ってくる。

 

「あっ、シズコさん!ようやく見つけました!花火の準備の事なんですが……!」

「うっ!?よりによってこのタイミングで……でも知らんぷりなんてできないし……!フィーナ!後はお願い!先生達と一緒に魑魅一座を見つけて、監視しておいて!」

 

どうやら祭りのスタッフの子らしく、シズコはスタッフと一緒に離れてしまう。それを見たマキが苦笑しながら口を開く。

 

「忙しそうだね」

「うん、でも魑魅一座がいなければこれが普通の光景なんだろうね」

「ハイ!お頭の言う通りかと!魑魅一座がいなかったら、ワタシ達お祭り運営委員会も他の皆も、準備や何やらで走り回ってたと思いマス!」

 

マキの言葉に同意する先生に、フィーナが笑いながら答える。しかし段々その表情が憂鬱そうなものへと変わっていく。

 

「そうやって良い意味で忙しくしてたはずなのに、こうして違う意味で忙しくなってしまうダナンテ……」

「だったら解決しないといけませんね!花火のためにも!」

「そうだね、コトリ。フィーナも不安になっちゃうかもしれないけどさ、皆で魑魅一座を捕まえようよ」

「ハイ!皆さんがいてくれるなら、大丈夫デス!」

 

そんなフィーナにモルフォ達が声をかける。祭を守りたいという気持は皆同じなのだと。その言葉を聞き、フィーナの顔に笑みが戻る。と、そんな時だった。

 

「おうおうおう!こりゃどういうことだ!」

「見ろよこれをよぉ!髪の毛が入ってんじゃねえかよ!」

「ム……楽しい祭に水を差そうとするのは許せマセン!ちょっと行ってきマス!」

 

店主に絡む不良生徒の姿が目に入り、フィーナがその対応に向かう。暫く、フィーナが戻るまで近くで待つことになる、その間、先生が皆にアイスコルネットを奢り、皆で小腹を満たしていると、モルフォはふとイズナの事を思い出す。

 

「そういえば先生、イズナって子ですけど……」

「うん、見たよ。最初にここに来た時に出会ったんだけど……魑魅一座のようにお祭りを邪魔しようっていう子じゃなかったよ」

 

聞けば、百鬼夜行に来てすぐに彼女と出会ったのだという。その時、楽しそうに祭を案内してくれた彼女の姿は魑魅一座の目的とは大きくかけ離れており、展望台から見える巨大な桜、ご神木を見せてくれたりしたのだそうだ。キヴォトスで一番の忍者を目指すという夢を持つ彼女だが、その彼女の雇い主と魑魅一座が繋がっているとしたら。

 

「忍者か……恰好いいじゃん!」

「うん、私も恰好いいと思う、衣装とかもいいよね」

「わかるわかる!いいよね忍者!こうシュバババーって!」

「やはり忍者といえば小物!特に忍者の七つ道具は有名ですよね!」

「忍者といえばやっぱり術だよね、風遁とか雷遁とか、派手なものも多いし」

 

そんな事を先生が考えている傍で、イズナの夢を聞いたモルフォ達五人の反応はかなりの好感触だった。その様子を見ていると、自分の夢について、普通の学生はあまり言わない夢であると、少し自嘲するようにも言っていたイズナに聞かせてあげたいなと考えていたのだが、その視界に見覚えのある姿が映る。

 

「……イズナ?」

「え?」

 

なんと、そこにいたのはイズナだった。先生に見つかったイズナは、おそらく先生に見つからないようにしようとしていたのだろう、先生にばれてしまったことに慌てた様子で背を向けようとする。そこに、

 

「待って、イズナ。一緒に祭を巡らないかい?」

「はい!喜んで!!」

 

先生が誘いをかける。その言葉を聞いたイズナの狐の耳と尻尾がピンと立ち上がってその場に立ち止まってしまう。そして先生の方に振り向くと、あわあわと慌てた様子で口を開く。

 

「で、ですが、イズナは先生を倒しに……」

「皆と一緒じゃ嫌かな?折角のお祭りなんだから、皆で回ればきっと楽しいよ」

 

そんなイズナにそう語り掛けた先生の言葉を前に、イズナはポカンと口を開けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「見てください!先生、カルメ焼きがありますよ!こっちは綿あめ、それに焼きそばも!」

 

先生を倒すとは何だったのか。そこにはすっかり祭を楽しんでいるイズナの姿があった。

 

「すっかり楽しんでるね……」

「見てよこれ!らくがきせんべいだよ!やろうやろう!」

「うわ、懐かしいなぁ。マキ画伯の実力見れちゃう?」

「画伯なんてまたまたぁ」

「これ店次第で当たり外れ激しいんだよね……色何個でも使っていいよっていう店もあれば一回軽くかけて終わりみたいなしょっぱい店もあるし……」

「あー、あったね……イズナはどう?一緒にやらない?」

「はい!やりましょう!」

 

祭を楽しんでいたのはイズナだけではない。ここまで何の音さたもない魑魅一座に完全に警戒心が消えてしまったモルフォ達も楽しんでおり、五人はらくがきせんべいに興じていた。

 

「イズナちゃん、凄い楽しそうだね」

「はいっ!イズナ、百夜ノ春ノ桜花祭が本当に大好きなんです!」

「……え、えっと。なのに中止にしようとしていたんですか?」

「……へ?中止?なんのことですか?」

 

明らかに魑魅一座の目的と繋がらないイズナの様子。そして返ってきた言葉にモルフォ達は顔を見合わせる。先生も、イズナが知らずにその雇い主なる人物から協力を要請されていたのだということを悟る。

 

「イズナの雇い主のことだと思うんだけど……」

「え、えっと……雇い主様は事業を邪魔する奴らがいるから、その者達を倒せと……でも、それが桜花祭を台無しに……!?」

「ここまで来たら先生にその雇い主の事、話しちゃえば?」

 

徐々にパズルのピースが噛み合っていく音がしたのだろう。イズナも冷や汗を流し始める。その様子を見て、モモイがもう言っちゃえば?と言うのだが、葛藤するように首を横に振る。

 

「い、いえ、ですが誰に雇われてるかを口にするなんて、忍びとしてやってはいけないこと……!イズナは立派な忍者になるんです!ですから、いくら先生だとしても……!」

「うーん、個人的には忍者に必要なのは信念だと思うけど」

「……し、信念?」

 

忍者として、受けた任務は絶対に。そう思っているところもあるのだろう。そんなイズナを見て、モルフォも前置きを入れた上で言葉を続ける。

 

「そっ。どんな時でも絶対に諦めないド根性とか……絶対に教え子を立派な忍にしてみせる……言ってみれば座右の銘のようなものだよ。絶対にこれだけは曲げねえ、そう思える自分の中の信念、つまり忍道が大事だと思うんだけど、どうかな?」

「……忍……道……!」

 

忍者の道、忍道。その言葉を静かに聞いているイズナ。その様子を見ながら、モルフォはさらに言葉を続ける。

 

「雇い主の命令に疑問を持つことだって、悪いことじゃないと思うよ。それに、陰に生きる忍だからこそ、物事の裏の裏まで読み取って、その依頼が自分の信念と相反しているかどうかを判断することも、忍者として必要なことなんじゃないかな?」

「……た、確かに……!だ、だとしたら、イズナは……!?」

 

モルフォの言葉に感銘を受けたのか、イズナは自分のしてきたことを悟り、頭を抱えてしまう。そんなイズナの頭を撫でながら、先生は優しく声をかける。

 

「イズナは、どうしたい?」

「先生……」

 

先生を見上げるイズナ。雇い主に騙されてしまったとはいえ、自分が大好きな桜花祭を台無しにしようとしている魑魅一座に協力しようとしていたのだという事実を知ったことによる不安がその表情に現れていた。

 

「私は、忍者っていうのは凄くカッコいいものだと思ってる」

「!」

「それは、戦い方や動き方、仕草や話し方、色々あるけど……どれだけカッコいいかを決めるのはやっぱり、その人の気持ちだと思うんだ」

「気持ち……!」

「イズナは、どんな忍者になりたいのかな?」

 

先生の言葉を聞き、イズナは目を閉じる。そして、ゆっくりと目を開いた彼女の目には、強い決意が宿っていた。

 

「イズナ、決めました!イズナは……この桜花祭を守ります!今、わかりました……イズナの真の主君、それは先生なのだと!!皆を守り、皆の為に動き、皆の為に頑張る……そんな先生こそ、イズナという忍が本当に仕えるべき御方!これからもずっと、夢を見続け……本当の意味で、最強の忍になる……イズナの忍道を貫くために必要な人だと!」

 

迷いを振り切り、新たな覚悟を見せたイズナの表情を見て、先生も笑顔を浮かべる。

 

「イズナ!はい、これ!あげるよ!」

「!これは……!?」

 

そんなイズナに、マキがせんべいを手渡す。そこには、手裏剣やクナイの絵が描かれており、それを見たイズナがキラキラと目を輝かせる。

 

「マキ殿、いいのですか!?こんな素敵なもの……!」

「いいよ!」

「恰好いい忍者が見れるならキャラ作りの参考になるよ!だから見せてよ、イズナの恰好いいところ!」

「うん、忍者ってどんなものなのか、私も見てみたいな」

「モモイ殿、ミドリ殿……!」

「花火を守るためにも、私達も協力しますよ、イズナ!忍者と一緒に戦えるなら百人力ですね!」

「コトリ殿!」

「私達は応援してるよ、イズナのこと!だからそのために皆で桜花祭を守ろう!」

「モルフォ殿!……先生!いや、主殿!!イズナと一緒に、雇い主様……ニャン天丸の野望を止めに行きましょう!!」

 

せんべいを受け取り、皆の言葉を受け、イズナが笑顔で声を上げる。それに呼応するようにモルフォ達も手を突き上げる姿を見守りながら、先生はスマホを取り出してシズコ達にメッセージを送るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なにぃ!?どうなっている!?」

「た、大変っす!隠れ家が、修行部とお祭り運営委員会にばれたっす!」

 

祭り会場から少し離れたところにある廃墟。本来なら人気のないはずのそこにいた魑魅一座達は、眼帯を付けている商店街の会長、ニャン天丸と共に襲撃を受けていた。イズナが漏らした今回の犯人の名を聞き、先生が修行部とお祭り運営委員会と合流し、一気に襲撃をかけてきたのだ。

 

「バカな……桜花祭を台無しにしてやればお祭り運営委員会はその責任を取らされ、以後の桜花祭の運営は商店街に一任されるようになる計画が……このままでは!」

 

魑魅一座とて頭数は確かに揃っている。揃ってはいるのだが、

 

「ぬ、抜けない……!」

 

ツバキとモルフォがシールドを構えて前線に立ち、盾になる。その後ろから先生の指揮の下、他の生徒達が魑魅一座を次々と仕留めていく。さらに、

 

「くそ、なんだこいつ速すぎる!?」

「イズナ!?お前裏切ったのか!?くそっ!」

「イズナは……忍です!主殿のため……イズナの忍道のため、戦います!!」

 

銃弾の雨の中を駆け回るイズナ。先生の指揮を受け、ピンポイントで厄介な敵を潰していくせいで、魑魅一座はうまく攻めることができずにいた。

 

「やるじゃん、忍者の子!私達も負けないよ!」

「ニャン天丸!お縄につきなさい!」

「違う!私はニャテ・マサムニェだ!」

「そんなの知らないわよ!?」

 

名前にこだわるニャン天丸ことニャテ・マサムニェだが、ある意味現実逃避に近いのかもしれない。彼の目の前で魑魅一座は次々と仕留められていく。先生の指揮下もあり、人数もある彼女達が魑魅一座に負けるはずもなく、気付けば地面に魑魅一座達が転がる状況になっていた。

 

「ふ、ふふ……儂の数年を賭した計画が……たかが学生と先生ごときのせいで失敗させられるだと?み、認めてなるものか……!だが、まだだ!まだ魑魅一座はいる!このために金をありったけつぎ込んだんだ!次はまだか!」

「……あ……その件なんだけど……元々来るはずだった子達のほとんどが「やっぱりパス」って……」

「「ここで働くより百夜ノ春ノ桜花祭を楽しみたい」って遊びに行っちゃったんで、これ以上はもう……」

 

しかし不敵な笑みを浮かべまだ戦力は残っていると声を上げるマサムニェだが、既に魑魅一座はマサムニェから離れてしまっていた。大金をつぎ込んだというのにあっさりと離反されてしまったマサムニェの人望の無さにはシズコ達も少しだけ同情してしまう。そして遂に敗北を認めたように、立ち上がれるまでは回復した一部の魑魅一座が互いに顔を見合わせて頷く。

 

「もうダメかもしれないっすね」

「うん、よし!解散!」

「あっ、待て!」

 

そう言うと、魑魅一座達は逃げ出してしまう。それを慌てて追いかける修行部たち。一人残されてしまったマサムニェは、自分に突き刺さる視線を前に眼帯を外すと。

 

「えっと、その、だな……諸君、全部水に流すというのは……」

「んなことできるかあああ!!シズコ本気の看板娘パーンチ!!」

 

当然、許されるわけもなくシズコの拳が叩き込まれ。マサムニェの体が宙を舞うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

無事、マサムニェことニャン天丸の野望を阻止。彼は無事、ヴァルキューレに連行されたことで、シズコ達はお祭り運営委員会の仕事に戻ることができるようになった。修行部の三人は逃げ出した魑魅一座を追いかけに行っており、モルフォ達は先生とイズナと一緒に展望台へと赴いていた。

 

「圧巻だね」

「うん、色々あったけど来てよかったね。すっごい良い景色!」

「ふぅ、疲れちゃったよ……ただお祭りに来ただけなんだけどなぁ」

「お姉ちゃん、実は呪われてるんじゃない?お祓い行った方が……」

「怖いこと言わないでよミドリ!?」

「さてさて、打ちあがるとしたら場所は……」

「イズナ、楽しみです!ホログラムの花火……どういうものなんでしょうか!」

 

花火が打ちあがる瞬間を今か今かと待っているモルフォ達。そして、遂にその瞬間が訪れる。花火が打ちあがる音と共に、百鬼夜行の空に、花火が打ち上がる。

 

「わあ……素敵です!!えへへ……こんなにたくさんの友達、そして主殿とこの景色を見れるだなんて……!」

 

ホログラムとはわからない程に精巧な、そして綺麗な花火の数々。空に咲き誇っては消えていく、儚くも美しい花火。百鬼夜行に来て、騒動に巻き込まれながらも皆で守った花火を、モルフォ達はその目に焼き付ける。そんな中、イズナが先生の顔を見る。

 

「主殿……その、イズナ、色々とご迷惑をおかけしてしまって申し訳ありません。イズナは……」

「気にしないで、これでも先生だから」

「……」

 

花火を見たことで今回の事件で自分がやろうとしていたことを改めて思い出したのだろう。先生を申し訳なさそうに見上げるイズナだったが、先生は優しく語り掛ける。それを聞いたイズナは、嬉しそうな顔を見せる。

 

「先生……えへへ、主殿!イズナはここに宣言します!先生は、主殿は、皆さんと一緒に私の夢を応援してくださる方!これから先、イズナは主殿に忠誠を誓います!ですので主殿!これからもイズナを、末永くよろしくお願いいたします!イズナはこれからも修行を続けて、イズナの目指す忍者になるため、頑張っていきますので!」

 

そう宣言し、一層の笑顔をイズナは浮かべるのだった。

 

「ニンニン!えへへ……!」

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