転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
エンジニア部を後にした一行は続いてヴェリタスの部室へと向かっていた。だが、今のアリスはまだ丸腰のままだ。というのも、アリスが使うことが決定したスーパーノヴァは宇宙戦艦の砲台として搭載されるものだったこともあり、手で持つということを一切考慮していない。そのため、ウタハ達がスーパーノヴァを手持ち武器として改良するまでの間に次の場所へ向かうことになったのだ。
「ここがヴェリタスだよ」
「……」
「ネル先輩?どうしたんですか?」
「ネル先輩が怒ってます!」
「あ?別に怒ってねえよ……ただ、またやらかした奴らだからな」
先日、盗聴によってモルフォの秘密を知ったヴェリタス。その時にも一度シメたのだが、今回もまた、アリスの学籍偽造というやらかしをしてみせたわけだ。前者もではあるが、後者に至っては完全にラインを越えていると言われても否定しようがないだろう。
「ちとやることあっからお前ら外で待ってろ」
そう言うと、ヴェリタスの部室に入っていくネル。しかしすぐに部屋の外に顔を出すと、中に入るように言う。モルフォ達が困惑しながら部室の中に入っていくとそこには、タンコブを作り、机に倒れ伏しているマキ、ハレ、コタマと疲れたような様子を見せるチヒロの姿があった。
「マキ!?どうしちゃったのその頭!」
「ふ、副部長に……」
「そ、その副部長というのは魔物ですか!?アリスがやっつけます!」
「……その言葉は心外だね……」
三人の姿を見て、アリスが思わず声を張り上げる。この三人だけ見たら、確かに副部長なる人物にやられたと思うのかもしれない。しかし、モモイはバツが悪そうに視線を逸らしており、残る三人はモモイとマキ達を呆れた様子で見ていた。ネルは溜息を吐いてマキ達を指差す。
「悪いのはこいつらだ。むしろこれぐらいで済んでよかったんじゃねえか。リオの奴が不問にしたんだろ?」
「そうだよ……思いっきり貸しを付けられたんだからね……!こんなことやってたらそりゃセミナーだって情報の独占もしたくなるだろうさ!!」
「「「ひぃ!」」」
(あたしがシメたせいでチヒロも味を占めたのか?)
ネルに同意するようにチヒロが怒りの声を張り上げる。鉄拳制裁を喰らったのだろう、一撃で沈められたマキ達を一瞥してから本題に入るようにとチヒロの顔を見る。ヴェリタスの準備がある、というのはおそらくこれのことなのだろうと。無言でそう質問するネルに答えるように、チヒロは大きな溜息を吐いてからアリスにヴェリタスの面々の自己紹介をしていく。
「それじゃ、アリス。君の事を調べていくよ。いいかな?」
「はい!アリスはここでさらにレベルアップできるんですね!」
ヘルメットのような装置などをチヒロ達の手によって装着されていくアリス。それらと繋がれた機器のスクリーンに様々な情報が表示されていく。それらを見て、驚きの声や表情を見せるヴェリタス。先ほどのエンジニア部の面々の反応といい、やはりアリスは只者ではないのだろう。
「で、どうだ?」
「正直に言えばわからないことだらけだね」
「うん……精巧すぎるAI……いや、ほぼ人と変わらない。それに何より……ヘイローがある」
「ロボットの住人はキヴォトスでもいっぱいいますが、アリスさんには彼等とは違い、ヘイローが浮かんでいます……それだけでも特別な存在です。廃墟から連れてきたということですが……」
そして、ある程度区切りがついたところでネルが問いかける。しかし返ってきたのはエンジニア部の時と同じ、今のキヴォトスでは誕生しえない存在である、という結論だった。
「解析しきれない……ブラックボックスの部分があるのが気になるね……確かに今後も調査は引き続き行う必要はあるだろうね」
「……で?今のところこいつが悪さしかねない部分はあるのか?」
「ネル先輩!?アリスはそんなことしないよ!!」
「悪かったな、けどこいつが、じゃねえよ。こいつん中の部分だ」
ネルの物言いに思わずモモイが声を上げる。言い方がちと悪かったか、と内心呟きながら、自分が警戒しているのは、今のアリスの人格ではなく、アリスの未知の部分だと言う。最初はそこまで気にはしていなかったが、その道の専門家であるエンジニア部とヴェリタスがこう言うのであれば、気にはしておいた方がいいのだろうとネルも結論を下す。
「まあ、そういうのがあったとしても今すぐにってわけじゃあなさそうだが」
「それは間違いないよ。アリスのブラックボックスに繋がるには、別の何かが必要なんだ。そのピースがどういう条件で埋まるかまではわからないけど……少なくとも今のアリスがその中に辿り着くことはできないはずだ。今のアリスは精神面に関しては無害だと言っていい」
「本当に?よかった……」
「人柄も今のところ、大丈夫そうだし……とりあえず君達と過ごしても問題ないんじゃないかな」
ヴェリタスによる一連の検査も終わり、アリスがどこか名残惜しそうな表情をしながらヘルメットを外される。勇者の頭装備みたいなデザインと思ったのだろうか。
「これでアリスは内なる力に目覚めるのですか?」
「いや、それは……」
「あはは!まだまだだよ!でもヴェリタスで調べ続けたらその内目覚めるかも?」
「成程、まだフラグに必要な回数が足りないんですね!!」
そして当のアリスは未知のブラックボックスに対して決して煮え切らない様子のチヒロとは違い、ただただ純粋に言葉をぶつけてくる。どう返したものかと考えていたが、マキが機転を利かせたのかそれともとくに考えていないのかはわからないが、アリスの納得いく答えを出してくれたことで事なきを得る。
「……あ、コトリからモモトークが。アリス、スーパーノヴァの調整が終わったから取りに来てほしいって」
「遂に武器の錬成が終わったんですね!アリスは勇者の剣を取りに行きます!」
「アリス、待ってよー!」
「えっと、失礼しましたー!」
「アリスちゃん、お、置いてかないで……!」
すぐさまスーパーノヴァを手にするため、エンジニア部へと走っていくアリスを追いかけるモモイ達。その場に取り残されたモルフォも、急いで後を追いかける。
「……ネル、ちょっと聞きたいんだけど。リオに何があったの?」
「あ?別にあいつは何も変わっちゃねえんじゃねえか?」
「いや……そうなんだけど、そういうわけじゃ……」
ゲーム開発部とモルフォがいなくなったタイミングで、気になることを確認するチヒロ。それを聞いたネルは一瞬呆気にとられるが、チヒロもどこか聞きづらそうに言葉を返す。
「……まぁ、言いたいことは何となくわかったけどな」
そう、ぽつりと呟いてネルもチヒロに背を向けてヴェリタスの部室から出ようとする。だが部屋を出る直前に頭を掻きながら、
「まあでも……全員が凝り固まってたんじゃねーの?あいつや、今のリオを見てっとそう思うこともあるってだけだが」
「……凝り固まってた、ね……」
そう言うのだった。
★
「パンパカパーン!アリスは勇者の剣を入手しました!」
再びエンジニア部に到着したアリスは、アリス用にカスタマイズされたスーパーノヴァを満面の笑みで掲げていた。エンジニア部ではウタハ達が続けてドローンなどを準備しており、スーパーノヴァの試運転を行おうということだろう。スーパーノヴァの使い方をしっかりと聞いたアリスは、スーパーノヴァを掲げてドローンたちの前に立つ。
「よし、準備はいいかい?」
「はい!アリスはいつでもいけます!」
「頑張れー!アリス!」
「アリスちゃんならできるよ!」
「レールガン……本当にでかいなあれ……」
「3……2……1……スタート!」
ヒビキが合図を出す。それと共にアリスがドローンを次々と正確な射撃で次々と撃墜していく。ドローン相手ではレールガンの威力は過剰だが、スーパーノヴァのスペックを知っているウタハ達からすればそこは今回は考慮する材料にはならない。あくまでアリスがスーパーノヴァをちゃんと扱えているかどうかが大事なのだから。そして一通りドローンを撃墜し終え、スーパーノヴァの試運転が終了する。
「よし、問題なさそうだね」
「モモイ、ミドリ、ユズ、モルフォ!見ましたか!アリスはスーパーノヴァを使いこなしてみせました!」
「うんうん、凄い威力だったね!」
「これがレールガンなんだ……凄い威力だね」
「現実で見るのは初めてだったから……ちょっと凄いね」
「派手だねぇ……」
アリスの初戦闘の様を観戦していたモルフォ達がそれぞれの感想を漏らす。見事、全てのドローンを撃墜してみせたアリスが楽しそうにスーパーノヴァを掲げ、モモイ達に駆け寄ってくる。
「見ましたか!アリスの、勇者の力!」
「凄かったよアリス!スーパーノヴァも似合ってるよ!」
アリスの勇姿に盛り上がるモモイ達。それを見ていたモルフォがふと、あることを提案する。
「折角なら連携とかもやってみたら?モモイ達もこれからアリスと一緒に戦うことになるんだし」
「あ、確かに……やってみる?アリスちゃん」
「はい!ソロの実力は確かに大事ですが、やはりパーティープレイの方が重要です!アリスはモモイ達とのパーティで勝ってみせます!」
それは、ゲーム開発部の皆で一緒に戦ってみないかという提案。それを聞いたウタハはそのためにと次のドローンを用意し始める。とはいえ、連携しながら射撃訓練を行うようなものだ。それなら自分に声はかからないだろうなと思いながら提案をしていたのだが、
「よし、それなら次のドローンたちも用意しよう。今度は向こうから攻撃もしてくるから気を付けてね」
「攻撃……ということは?」
「当然、モルフォのためだよ」
ウタハも気を利かせたのだろう。モルフォも参加できるようにドローン達が攻撃するようにしたようだ。確かにそれなら、モルフォも参加できるようになる。モモイ達も今か今かとそれぞれの得物を準備しながらモルフォを見る。それを見て、モルフォもショットガンハンマーとシールドを手に持つ。
「成程、モルフォのジョブはパラディンなのですね!」
「いやそういうわけじゃ……いやそういうわけ?」
「まあタンクなので近いですよね」
「やっぱりコトリもそう思う?」
皆の前に立ち、武器を構えるモルフォの様子をそう称するアリス。タンク役をやっているのは自認してはいるものの、パラディンとは違うのでは?と思ったが、盾役なのは一緒だし確かに考えてみるとそう思われてもおかしくはないのかもしれない。
「じゃあ……どんな感じで動いたらいいのかな……アリスちゃん、モルフォちゃんに撃ったら絶対ダメだからね」
「いやいや、しないでしょ!?」
「はい!フレンドリーファイアはいけないことですね!」
「レールガンはフレンドリーで済むの……?」
ミドリの指摘に冷や汗を流し始めるモルフォ。アリスもちゃんと言うことを聞いてくれたようでありがたいが、本当にあのレールガンを喰らったら洒落にならない気がする。洒落にならないで済んでしまうのは、この世界の自分の頑丈さに感謝したいところである。
「よーし!それじゃあアリス、皆!始めようっか!」
「「「「おー!」」」」
最低限の注意とお互いの役割などを打合せし終えると、モモイの合図と共にモルフォ達はドローンを相手に戦いを始める。その様子を、ここまで黙って見ていたネルは、目を細めながら見届けるのだった。
★
「……で、ここはこうなって……こうなるんだよ、アリス」
「うわーん!アリス、勉強よりもゲームがしたいです!!」
「……ねえ、なんで私も一緒に勉強やらされてるの!?」
「お姉ちゃんの語彙力とかがやばいからアリスちゃんのついででしょ?」
「ひっさしぶりに見たけど草食系を植物人間と置き換えるセンスはやばかったよ。それぐらい捻りだしなさい」
「は、はは……」
数日後。ゲーム開発部とアリスの様子を見に来た先生が見たのは、部室の中に置かれた机の上でひーひー言いながら勉強をしているアリスとモモイの姿だった。その光景に思わず苦笑していたが、ミドリとユズからアリスが無事、ミレニアムに転入するにあたって色々な問題をクリアできたことを聞いたのだが、最後にセミナー……というより主にユウカから学業の事を打診されたことで勉強を教えることが決定したのだ。
だが、ゲームによって今の状態に教育されたアリスからすれば、勉強とはつまらないもの、という刷り込みが無意識に行われてしまったようで、そのせいで悲鳴をあげているのだ。
「それにしてもモルフォ、教えるの得意だったりする?アリスちゃんもひーひー言ってるけど、なんだかんだ、できるようになってるし……」
「そうかなぁ。自分じゃそういうのわからないんだよね……単純にアリスが物覚えいいのは大きいかな」
口では嫌々となりつつも、やはりロボット故か学習能力は高かったようだ。その甲斐あってかアリスはスポンジのようにどんどん知識を吸収していく。この調子ならすぐにでもミレニアムの学習に追いつけるようになるだろう。ユウカやノアが万が一の為に用意しようとしていた缶詰用の学習プログラムは使わなくて済みそうである。
「ほら、アリス。ここをやれば一区切りだから!そうしたらゲーム作りの時間だよ!」
「わかりました!やっと本編の攻略ですね!稼ぎ作業を頑張ります!」
「う……は、早い……私より勉強できる……ここどうなってるのー!」
「ここはね……」
終わりが見えてきたところでアリスのやる気をもう一度奮起させてラストスパートをかける。その横で悲鳴を上げるモモイを見た先生が、モルフォがアリスに付きっ切りになれるようにとモモイに分からないところを教え始める。やはり先生なのだろう、授業や講師はお手の物ということか。
「あー、終わったー!私まで巻き込まれてるの酷いよー!」
「自業自得だよ。でもモルフォちゃん勉強できたんだね。てっきり遊んでばっかりかと……」
「好き放題遊びたいから勉強はちゃんとしてるんだよ。成績は触れるな、私は天才じゃない」
「な、成程……」
そんなこんなで落ち着いてきたところで、ゲーム開発部に先生とモルフォを加えて、テイルズ・サガ・クロニクル2を作るための会議が始まる。しかしその会議は、
「今度こそ、G.Bibleを取りに行こう!私達が神ゲーを作るには、あれしかない!!」
というモモイの一言で終了となるのだった。