転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
「もう終わりだぁ!!」
ゲーム開発部の部室。寝転がり、涙目で悲しみの声を上げるモモイ。その近くでは項垂れた様子で座り込むミドリとユズ、そして戸惑っているアリスの姿があった。
「えっと……なんか大変な事になっちゃったね……」
「あはは……まぁ、神ゲーを作れる何かと聞いて出てきたのがただのメッセージとくれば……」
そんな四人を見ながら、モルフォもまた、脱力した様子で胡坐をかいていた。彼女の顔にも疲労の色が浮かんでおり、これまでの戦いは何だったのかと言わんばかりの様子だ。
「「ゲームを愛しなさい」だっけ?まぁそれはそうね……アンチ精神でゲーム作って碌なのできるとは思えないし……」
「それはさぁ!そうだけどぉ!!」
モルフォの物言いに起き上がったモモイ。その胸にタオルを投げつける様子も見ながら、アリスはどうしていいかわからないといった様子だ。
「G.Bibleに入っていたメッセージ、か……」
その様子を見ながら、先生は思い出す。廃墟から帰還後、ヴェリタスにG.Bibleのロックを解除してもらおうとしていたのだが、返ってきた答えは無理、というものであった。「鏡」というプログラムを使えば、突破できるかもしれないがそのためには押収してきたセミナーに頼むしかない。しかし、ヴェリタスの過去のやらかしによって没収されたこのプログラムを素直に手渡してくれるとは思えず、チヒロ以外のヴェリタスと珍しく弱気になって反対派に回ったモモイ以外のゲーム開発部がセミナーにカチコミをかけようと考え始めたのだ。
それを見たモルフォが、わざわざ襲いに行くぐらいなら廃墟で見つかったプログラムを解読するには鏡が必要だから一時的に使わせてほしいと交渉すればいいのではないかと提案、チヒロも「これ以上セミナーに迷惑をかけるな!」と怒りを見せたことで沈静化、モルフォがユウカやリオと交渉したことで、廃墟から持ち帰ったデータの詳細は確認したいとリオが了承したことで無事、一時的に鏡を持ち出すことに成功。それによってヴェリタスはG.Bibleの解析に成功したのだが、そこに入っていたのは一文だけの短いメッセージ。「ゲームを愛しなさい」、たったそれだけであった。後はG.Bibleと一緒に入れられたであろう幾つかのジャンクデータ。チヒロ達も解析してみたものの、本当にただの何の変哲もないデータであることが判明した。
「もう駄目だぁ、おしまいだぁ!」
「ゲームの作り方が全く書いてないのは正直、予想してなかったかな……あはは」
力なく、ミドリが乾いた笑いを見せる。アリスと出会えたことは嬉しいが、それはそれとして二回も廃墟に行ってロボット達と戦って、苦労して駆け回ったのもこのG.Bibleを手に入れるためだったのだが……その結果が、ゲームの作り方や演出の作り方といったものではなく、ただの一言のメッセージとは。
「……いやぁ、参っちゃうなぁ……」
廃墟から見つかり、アリスの様子から彼女と関係がある可能性も疑われたG.Bibleだったが、結局のところ無関係なものだと分かったため、そのままゲーム開発部の下に戻ったモモイのゲーム機を手に持ちながら、モルフォも元気のない声を漏らす。そんな皆の様子を見かねたアリスが、まずはモモイ達を元気づけようと声をかけようとする。
「あ、あの、モモイ……デイリークエストはしないんですか?いつも、「デイリークエストより大事なものなんてない」と言っていたのに……」
「もう私のHPはゼロなんだよ……」
「え、えっと……ミドリ……?」
「ごめんね、アリスちゃん……知ってたけど、現実って元々こういうものなの……そう、つまりこれがトゥルーエンド……ハッピーエンドとはまた別の到達点……」
「ゆ、ユズは……」
「ご、ごめんね……アリスちゃん……」
「も、モルフォは……!」
「まあ、私が立ち直っても三人がこれじゃあね……正直私も大分きっついかなぁ……これ。どうしよ?」
モルフォも含めて死屍累々といった様子のモモイ達を前に、アリスもどうやって声をかけようかと頑張ってそのワードを探そうとする。
「今の皆の姿は……まるで正気がログアウトしたみたいです」
「仕方ないじゃん、最後の手段だったのに!それが、あんな誰でも知ってる文章が一つ入ってるだけだなんて!釣りにもほどがある!知ってたさ!世界にはそんな、それ一つで全部が変わって、上手く行くような便利な方法なんかないって!でも期待ぐらいしたっていいじゃん!うわああん!」
「ごめんね、アリスちゃん……私達は……G.Bible無しじゃ、良いゲームは作れない……」
「全部が変わる、便利な方法、か……」
モモイの言葉に、モルフォが反応する。これまでは色々と理由をつけていたが、ここまで落ち込んだ友人たちの姿を見て、思うところがあったのだろう。さすがにこのまま何もできずに、となれば後味が悪いと考えてしまう。今までは自分を逃げ道にさせないように、そう考えていたが、本当にゲーム開発部が消えてなくなるのはモルフォだって嫌だ。口を開こうとして、その肩に先生の手が置かれる。
「……先生?」
「大丈夫だよ、モルフォ。ほら」
「……いいえ、否定します」
先生がアリスの方を指差す。モルフォがアリスを見ると、アリスは静かに首を横に振る。
「アリスは、テイルズ・サガ・クロニクルをやる度に思います。あのゲームは、面白いです」
「……え?」
「感じられるのです。モモイが、ミドリが、ユズが……このゲームをどれだけ愛しているのかを。モルフォが、このゲームをどれだけやりこんだのかを。そんな、たくさんの想いが込められたあの世界で旅をすると……胸が、高鳴ります」
アリスは思い出していた。初めて、テイルズ・サガ・クロニクルをプレイした時のことを。モモイ、ミドリ、ユズ。三人が作り上げ、このゲームを最後までプレイしたモルフォのそれぞれの思いを。一緒に、テイルズ・サガ・クロニクルを攻略した、あの瞬間を。
「仲間と一緒に新しい世界を旅する、あの感覚は……夢を見るというのが、どういうことなのか……その感覚を、アリスに教えてくれました。だから、待望のエンディングに近づくほどに、あんなに苦しんだのに、思ってしまうのです……この夢が、覚めなければいいのに、と。アリスは、そう思うのです」
「アリス……」
アリスの言葉に、静かになる四人。その言葉に思うことがあるように黙り込んでいたが、やがてユズが口を開く。
「……作ろう」
「え?」
「私の夢は……私が作ったゲームを、皆に面白いって言ってもらうこと……でも、私が初めて作った、テイルズ・サガ・クロニクルのプロトタイプは……四桁以上の低評価コメントと、冷やかしだけで終わっちゃって……それが辛くて、ゲーム開発部に引き籠ってた時……モモイとミドリが訪ねてきてくれて、一緒にテイルズ・サガ・クロニクルを完成させて……今年のクソゲーランキング一位になっちゃったけど。それを見て、モルフォが来るようになって、一緒に遊ぶようになって……凄く、楽しかった。モルフォのおかげで、知らないこと、楽しいことをたくさん、知ることができたから……」
「ユズ……」
テイルズ・サガ・クロニクルを作ったこと。それを通じて、三人の仲間と出会えたこと。今までの旅路を思い出しながら、ユズはアリスの顔を見る。
「アリスちゃんとも出会って……アリスちゃんもこのゲームを面白いって言ってくれた。それが、凄く嬉しかった……心の通じ合う大事な仲間たちと一緒にゲームを作って、それを面白いと言ってもらうこと……モルフォのおかげで、その夢が叶って……他の人にも、言ってもらえたらって、思ってた。それが、次の夢だったから。だから、それが叶って、凄く嬉しかったんだ」
「ユズ……」
「これ以上は、欲張りかもだけど……叶うなら、私はこの夢が、この先も終わらないでほしい……もっと、先を見てみたい……アリスちゃんだけじゃない。モモイと、ミドリと、そしてモルフォと一緒に……ゲームを作りたい!」
ずっと、抱え込んでいたことを吐き出したのだろう。どこかすっきりとした表情で、ユズは皆の顔を見渡すと、改めてモルフォを見る。
「モルフォが、ゲーム開発部に入れない理由もわかってる。だけど……やっぱりモルフォとも一緒にゲームを作りたい、一緒に遊びたいよ。これからも」
「ユズ……」
「入れない理由って……お姉ちゃんが部員だけ確保して部の存続を回避しようとする逃げ道にするから、じゃ……」
「……でも、それならアリスが入った今は別に関係ないはず……」
「あ……確かに」
ユズの言葉で、モモイとミドリも気付く。確かに、それも理由の一つだったのだろう。しかし、アリスが入ってきた今、モルフォがゲーム開発部に入ることを渋る理由は確かにないはずだ。どのみち、人数で廃部を免れなくなってしまったのだから、そういう意味では入ろうが入るまいが、関係ないはずなのだ。
「だけど、私じゃゲームは作れないよ?」
「そうとも限らないよ?」
「先生……」
そこで、口を開いたのは先生だった。モルフォがゲーム開発部に入ろうとしない理由、それは先生もユズと同じく理解していた。だが、ゲーム開発とは何も、シナリオを作ること、キャラをデザインすること、プログラムを組むことだけに限らない。ゲームを作らなくても、ゲーム開発に関わることは十分可能だと、そしてその道がモルフォにはあるのだということを先生は提案する。
「モルフォ、マネジメントをやってみる気はないかい?」
「マネジメント?」
先生からの提案に驚くモルフォ。続けてユズたちも首を傾げていると、先生が説明を始める。
「マネジメントは簡単に言えば計画を立てたりする人ってこと。当然それだけじゃないけど……今のゲーム開発部でそれを専門にやっている人はいないでしょ?だから、モルフォにやってもらったらどうかな?」
「私がマネジメント……」
「確かに、モルフォちゃん、よく予定を組んだりとかしてるし、丁度いいのかも……」
「そうだよ!考えてみればミレニアムプライスまで時間がないんだから、予定を組んでくれる人は必要だよ!」
「うん……モルフォも協力してくれるなら、凄く心強いよ……」
「はい!アリスも、モルフォと一緒にゲームを作りたいです!」
先生の話を聞いて、賛同するゲーム開発部。彼女たちの視線を受けながら、モルフォは考え込んでいた。こういう形で関わることができるとは思ってもみなかったのだ。しかし、それはモルフォにとって、渡りに船であると言える。そして、この提案を先生がしたということは。
「……もしかして、先生はずっとこの事を?」
「うん、モルフォの事を聞いて、考えていたんだ。モルフォはゲーム開発部には入れないって言ってるけど、やっぱり皆と一緒にいたいと思ってるってわかってたから。だったら、こういう道もあるよって提案したかったんだ。それにやっぱり、モルフォの秘密、皆には知ってもらった方がいいって、私は考えたから」
「先生……」
先生の言葉を聞いて、モルフォも言葉が出てこなくなる。しかしすぐに皆の顔を見る。
「そっか、そういう道も、あったんだね……全然、知らなかったよ」
「あはは、しょうがないよ。私達も知らなかったもん。それより秘密って何?」
「……そうだね。ミレニアムプライスが終わったら、教えるよ。きっと皆、楽しんでくれると思うから」
先生の心遣いにも感謝しながら、モルフォは笑いかける。自分も、ゲーム開発部の一員となって、テイルズ・サガ・クロニクル2の開発に協力する。その意思を示しながら。
「!アリス、楽しみです!!」
「そう言われたら俄然やる気が出てきたよ!ゲーム開発部を存続させるためにも、頑張ろう!今からミレニアムプライスまで、時間ってどれくらい残ってる?」
「えっと……大体三週間ぐらい?」
「なら、十分!まだ時間はあるよ!」
今からミレニアムプライスまでの時間は、決して多くない。だが、元々ミレニアムプライスで成果を出すために、廃墟に向かう程に、がむしゃらに動いてきたのだ。ここまでの経験は、決して無駄になっているわけではない。
「それじゃあ皆!ゲーム開発部一同、テイルズ・サガ・クロニクル2の開発を始めるよ!!」
「「「「おー!!」」」」
やる気を完全に取り戻したモモイの言葉を受け、五人は拳を突き上げるのだった。
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「じゃあ、こんな感じでどうかな。案とかは皆で出し合うけど、シナリオを組むのはモモイだからね」
「うん、わかってるよ!」
「うわ、凄いしっかりしてる……これ、モルフォが作ったの?」
「先生にも相談してね。皆の予定を組むなんて初めてだからさ」
翌日。先生と共に話し合い、今後の予定を組み上げたモルフォのスケジュールを見て、モモイ達は驚いていた。
「た、確かにこのスケジュールなら……うまくいくかも」
「アリスはこの通りに動けばいいんですね!」
「そうだね、時間はないから、皆頑張っていこう!」
「「「「おー!」」」」
再び皆で拳を突き上げてやる気を示す。そして、ゲーム開発部はミレニアムプライスへ向け、慌ただしく動き始めるのだった。