転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
そしてミレニアムプライス当日。五人はゲーム開発部の部室で、その瞬間を目撃するべくやってきた先生と一緒にテレビを見ていた。そこにはミレニアムプライスの生中継がされており、受賞作品の発表が行われようとしていた。
「つ、遂に来たね、この時が……」
「限界、本当に限界ギリギリまで色々見て、私達に作れるものは出し切った……!」
「でも、まさかこんなテンポよく進むとは思わなかったね……テイルズ・サガ・クロニクルを作った時は色々滅茶苦茶だったし……」
テレビ画面に齧りつきながら、今か今かと待つ五人。できる限りのことはやったはずだ。モルフォも、他の四人のため、できることを協力してきた。その甲斐もあってか、モモイ達三人も驚くほどのペースでゲーム作りは進められることとなった。
「お姉ちゃんのどんでん返しでデザイン作り直しとかプログラム組み直しがほとんどなかったのはやっぱ大きいね……」
「そ、それを言ったらミドリだって、こういうキャラが欲しいからシナリオ弄れない?とかあったし!」
「え!?それは、まあ……その……」
「……私達、思ったよりその場の勢いでゲーム作ってたのかもね……」
「……いやまぁ、情熱とやる気が第一だからそこは正常だと思うけどさ。案外、色々やれるもんだね……」
「ゲーム作りは大変でしたが、とっても楽しかったです!」
ミレニアムプライスへと応募したゲーム開発部の新作、テイルズ・サガ・クロニクル2。その制作秘話が語られている中、モルフォは感慨深そうな表情を見せる。今回のゲーム作りが大幅に捗ったのもやはり、モルフォがスケジュールを組んでくれたことが大きいだろう。初めての取り組み故、慣れないところも多かったが、先生にもサポートしてもらいながら作り上げた予定は、今回のゲーム開発に大きく役立っていた。
「……ミレニアムプライス、始まったみたいだね。司会進行はコトリか……確かに適任か」
「もし受賞したらクラッカー鳴らそうよ!……でも、もしそうじゃなかったら……」
「……すぐに、荷造りしないとね……私達はさておき、ユズちゃんとアリスちゃんは……」
「「……」」
遂にミレニアムプライスが始まり、五人の表情が険しくなる。もし、ここで成果を示せなかったら。いや、今はそこは考えないことにして、発表を待つ。今回、部活の存続のための最後の頼みの綱としてこのミレニアムに全てを賭けている部活動は、当然ゲーム開発部以外にも多くいる。そういったライバルたちの中から掴み取らないといけないのだ。だが、三桁以上の応募作品の中から選ばれる受賞作品はたったの七作。
『第三位は……!』
次々と受賞作品が発表されていく中、遂にランキングはトップ3に差し掛かる。第三位、そして第二位も、終ぞゲーム開発部の名前は出てこない。
「「「「……」」」」
「くっ、二位でもない……!だ、だとしたら……!」
『最後に!今回のミレニアムプライスで、最高の栄誉を受賞した作品です!その一位は……!』
「「「「「……!」」」」」
『CMの後で!』
「アリスッ!!」
「充電完了!いつでも撃てます!」
「撃つな!?」
「気持ちはわかる!わかるけど授賞式会場もこの画面も撃っちゃダメ!」
「こ、ここで撃ってもし受賞が取り消されたら……!」
「まあまあ、落ち着いて、皆」
一位の発表を前にCMで焦らし始めるコトリ。その様子を見たモモイが思わずアリスにレールガンを構えるように指示、アリスもそれを受け撃つ気満々で電力をチャージし始めたのを見て、モルフォが慌ててアリスの両腕を抑える。ミドリとユズもアリスに抱き着いてアリスがレールガンを撃たないようにしていると、CMが終わる。そして、遂に待ち侘びていた一位が発表されようとする。
『さあ!それでは発表します!待望の一位は……新素材開発部―――!』
「うわあああ!」
だが、その一位でゲーム開発部以外の部の名前が出た瞬間。誰からも取り押さえられてなかったモモイが激情のあまり、テレビを破壊してしまう。
「あっ、モモイ!?」
「きゃああ!?本当にディスプレイを撃ってどうするの!?」
「どうせ全部持っていかれちゃうんだから関係ないよ!うわあああ!!あそこまで頑張ったのに、もう終わりだぁ!」
「うぅ、結局こうなっちゃうなんて……」
望みが絶たれ、泣き叫ぶモモイ。ユズたちも、受賞という目がなくなってしまい、完全に落ち込んでしまう。しかし、一しきり泣き叫んで落ち着いてから、モモイはゆっくりと口を開く。
「……でも、全部が否定されたわけじゃない。へこたれる必要なんてないって……だって、ネット上の評価も全然悪くなかったし、クソゲーランキング一位だったあの時から、ちゃんと成長した。ゲームの作り方だって、これまで以上にちゃんと、組織としてやってこれたと思う。これからも、きっと成長していけるはずだよ。今回は、ゲーム開発部は廃部になっちゃうけど……次こそはもっと、いい結果を出して、改めてゲーム開発部として、今より大きな部室を貰って再スタートしよう!……でも」
確かに、ここでゲーム開発部は廃部となる。しかし、廃部となった部活がもう二度と作れないかというとそうではない。部室も予算も失うが、人数自体はある。と、くれば、他のコンクールなどで成果を手に入れてから再度申請し直せば、ゲーム開発部を復活できる。今回の経験は、決して無駄にはならないはずだ。ただ一つ、懸念があるとすれば。
「……うん、ここを追い出されたら、ユズちゃんとアリスちゃんは……」
「「……」」
ユズとアリスの今後だった。モモイとミドリ、モルフォのように部室以外にも帰る場所があるのであればともかく、ユズは基本的にずっとこの部室を寝床に始め生活空間として使用していた。だが、ユズは心配するミドリに笑いかける。
「心配しないで、ミドリ。私も寮に戻るから……実はね、度々、寮には戻ってたんだ。といってもモルフォの部屋に遊びに行ってたんだけど……だから、もう私の事をクソゲー開発者だって呼ぶ人はいないってわかってる。今後、もしかしたら呼ぶ人がいるかもしれないけど……でも、大丈夫。今の私には皆や、先生もいるから」
「ユズ……」
もう、この部屋から出て、他の学生たちが住む寮に戻ることに抵抗はない。それに、寮に戻っても、他の皆との繋がりもあるし、頼ることのできる先生もいるからだ。だからこそ、ユズはもう自分は大丈夫だという。だが、アリスの方は話が少し変わってくる。アリスはずっと、この部室で寝泊まりをしていた。つまり、まだ彼女には寮の部屋といった他の居住スペースがないのだ。
「それなら……アリス。シャーレに来る?」
そんなアリスを見て、先生が提案する。確かにシャーレにも居住スペースはある。ミレニアムに通うことを考えれば寮生活やミレニアムの自治区内に住処を構えるのがいいが、今すぐにそれを用意するのも難しいはずだ。そうなれば、多少不便になるかもしれないがアリスには一旦シャーレに来てもらう方が丸いか。しかし、その選択をせざるを得ないアリスの表情は浮かない。やはり、アリスも、この部室がなくなってしまうことが嫌なのだろう。
「……アリスちゃん……ごめんね」
「いえ、大丈夫です。先生の事は信じられますから……ですが……もう……皆とは、一緒にいられないんですね」
アリスの言葉にミドリは悲しそうに俯いてしまう。モモイが言ったように、ゲーム開発部を復活できる目は十分にある。しかし、それまでゲーム開発部が消滅し、バラバラになってしまうのも事実だ。アリスが言うように、これまでのように一緒にいることはできない。まして、アリスがミレニアムを離れシャーレに行くということは、それだけ距離が空くということだ。やはり、今までのようにはいかない、という思いは出てきてしまう。
「うっ……ごめんね、アリスちゃん!私、毎日シャーレに行くから!本当に、絶対に毎日行く!どこに行っても!一緒にゲームを作ろう!」
「うううう……!や、やっぱり嫌!先生!やっぱアリスを連れて行っちゃダメ!そうだ!私の部屋に連れてく!ベッドも一緒に使おう!ご飯も二人で分けて食べるから!」
「わ、私の分もあげる!」
「いや、さすがに元々二人いる所にそれは……それだったら私の部屋に来てもらう方がいいよ。セミナーに話をしてすぐに寮の部屋を用意してもらえるようにするとか……」
「さ、三人とも先生を困らせないであげて……それに、寮の部屋に無断でアリスちゃんを住まわせてることがばれたら……」
そのことは、皆わかっていた。モモイも、頭ではわかっているからこそ、やっぱり今のこの状況を無くしたくないという思いが強いのだろう。他の三人もアリスの行く末を案じるように声を上げる。そんな時だった。部室の扉が開かれたのは。
「モモイ!ミドリ!アリスちゃん!ユズ!モルフォ!」
「ひいっ!もうユウカが!?」
「ちょ、ちょっと待って!そんなすぐになんて……!」
「悪魔め!生徒会に人の心は無いわけ!?」
そこから入ってきたのは、満面の笑みを浮かべるユウカ。ゲーム開発部の廃部が決まってすぐに来たのかと思ったモモイとミドリが涙目になりながら声を上げる。だが、ユウカの次の言葉はその場にいた面々の予想を裏切るものだった。
「おめでとう!!」
「「「「「……?」」」」」
「……えっ、何?この反応?」
おめでとう。ユウカのその発言にフリーズしてしまう五人。ユウカの性格上、廃部になっておめでとう、なんて絶対に言う人間ではないのはわかりきっているが、だからこそ、なんでその言葉が出たのかわからない。そして、ユウカ自身も、ゲーム開発部がこんな反応を見せるとは思わず、困惑してしまう。
「結果、見てなかったの?」
「……結果?」
「?ユウカ、どういうこと?ゲーム開発部は受賞しなかったんじゃ……」
「……え、先生も見てないんですか?今だって放送中なのに……って、あれ?テレビは?」
皆の発言から、ユウカは自分しか知らない情報があることに気付く。部室の中を見渡すと、弾丸で撃ち抜かれ無残な姿になり果てた、テレビだったものが転がっていた。
「……モモイが吹き飛ばしちゃって……」
「……何してるのよ……ほら、見て」
ユウカが呆れながらスマホのライブ配信の映像を見せる。どうやらこれを見て急いできたようだ。そして、その配信映像の中では―――
『ミレニアムプライスはこれまで、生徒達の才能と能力で作られた作品に対し、「実用性」を軸に据えて受賞を行ってきました。これはより良い未来を求め、実現していくという趣旨に基づいています』
そこでは審査員のスーツを着たロボットが、ある作品について語っている映像があった。この話がどういう関係があるのか、五人は首を傾げながら耳を傾ける。
『しかし今回の作品の中には、新しい角度から「実用性」を感じさせてくれたものがありました。とある「ゲーム」が実際に。懐かしい過去をありありと思い出させ、未来への可能性を感じさせてくれたのです。よって、私達はこの度、異例の選択をすることにしました』
「……」
『今回は「特別賞」を設けます。その受賞作品は……ゲーム開発部の「テイルズ・サガ・クロニクル2」です』
「ええ!?嘘っ!?」
『レトロ風という時代を超えたコンセプト、常識に縛られず次々と想像を超えていく展開、一見してそれらとマッチしそうにない不可思議な世界観、と、最初は困惑の連続でしたが……新しい世界を旅して、一つ一つ新たな絆を結びながら、魔王を倒しに行く……そういったRPGの根本的な楽しさが、しっかり込められた作品だと思います。プレイしながら、かつて初めて夢中になった頃の思い出を、鮮明に思い出しました。そういった点を評価して、この作品に……今回、ミレニアムプライス「特別賞」を授与します』
そして、驚くべき発言が審査員から飛び出してきた。それは、自分達が作り上げた希望、テイルズ・サガ・クロニクル2が特別賞を受賞したという内容。それはつまり―――
「え……あ……」
「本当におめでとう!その、実は私もプレイしてみたの。決して手放しに面白かったとは言えないけれど……良いゲームを遊んだ後の、あの独特な感覚が味わえたわ」
ゲーム開発部の作り出したゲームは、間違いなくこのミレニアムプライスに風を巻き起こしたのだということ。さっきまで、もう完全に駄目だと思っていたばっかりに、まさかの真逆の展開に追いつけないでいると、マキが飛び込んでくる。
「あ、いたいた!モモ、ミド、モルフォちゃん!テイルズ・サガ・クロニクル2やってみたよ!すっごい面白かった!今、ネット上でも大騒ぎだよ!ヴェリタスの調べだと、有名アイドルの名前より、テイルズ・サガ・クロニクル2の検索数の方が多くなってるって!」
「ほ、本当に?」
「ほら見てよ、コトリも凄いことになってる!」
「あ、本当だ……それに、セリカ達からも祝電が来てる」
大喜びするマキと、配信画面の中で司会進行の役をほっぽりだしてゲームについて熱弁するコトリ。その様子とモモトークの通知音で我に返ったモルフォがスマホを見ると、セリカ達からもゲーム開発部が受賞したことと、ゲームの感想についてのメッセージが綴られていた。どうやら彼女達もプレイしていたようだ。
「なんか……いまいち実感湧いてこないなぁ」
「あはは、確かに……」
思わず苦笑が漏れてしまうモルフォに、同意したように笑うユズ。だが、嬉しさを感じさせる二人をよそに、アリスはあることを調べていた。
「―――確認しました。三時間前にアップしたテイルズ・サガ・クロニクル2は、先ほどまでダウンロード7705回、合計1372個のコメントがついてましたが……ミレニアムプライスの発表以降、約26秒間でダウンロード回数が1万を超えました」
「!?」
アリスの調べた言葉にざわつくゲーム開発部。受賞効果で伸びるのはわかるが。もう2000以上もダウンロードが増えるとは。数十秒でこれなのだからここからどれだけ伸びるのかは皆目見当もつかない。
「コメントも約500個追加、言葉のニュアンスからして否定的・疑惑のコメントが242個、肯定的・期待のコメントが191個、残りは不明、もしくは評価を保留しているコメントです」
「そ、それって結局ダメってこと?」
「いや、このタイミングでの追加ってなると、前回のテイルズ・サガ・クロニクルの評価だけを引きずってる未プレイのパターンもあるから一概には……」
「うん。見て、今同率で、一番多く共感をもらってる、二つのベストコメント……」
そんな中、ユズはあるコメントに着目する。chickenとKotoha0507という二人のユーザーのコメント。『実際にプレイするかどうか、最初は散々迷いました……でも今はこう思ってます。このゲームに出会えて、よかったです』『これまでミレニアムに対して、偏見を持ってしまっていました。冷静さと合理性しかないというミレニアムの生徒達への偏見は、今回のミレニアムプライスと、この『テイルズ・サガ・クロニクル2』を通じて、完全に無くなったと断言できます』。これらの好意的なコメント、そして、今回の特別賞受賞。この二つを、やっと呑み込んだモモイが、おずおずとユウカに確認を取る。
「え、えっと……っていうことは、廃部にはならない……ってことだよね!?」
「ええ、そうよ。といっても、これは臨時の猶予よ。あくまで正式な受賞ではないから……セミナーとしては来学期まで部室の没収及び廃部を保留することになったわ」
「ってなると、次のコンクールまでの猶予は取れそうだね」
ユウカから返ってきた言葉は、特別賞受賞に伴う、ゲーム開発部廃部までのタイムリミットの先送り。正式な受賞ではないため、今年度一杯というわけにはいかなかったが、このタイムリミットのおかげで、ゲーム開発部にもまだまだチャンスが生まれることになる。それは、五人にとってとても大きな事実だ。
「私も、あなた達のおかげで思い出せたわ。小さい頃に遊んでいた、色んなゲームの事を。久しぶりにあの頃の……新しい世界で旅をする楽しさを感じられた……ありがとう。それじゃあ、部室の延長申請とか、部費の受け取り処理とかは必要だから、落ち着いたらセミナー室に来てね。じゃ、また後で!」
そう言うと、ユウカは部室を後にする。おそらくセミナー室へと戻ったのだろう。ユウカがいなくなり、静まり返った部室。だがやがて、喜びを噛み締めるように、口を開く。
「じゃ、じゃあ……!」
「やったああ!」
「よ、良かった……!」
「うん、やったね……嬉しい……!」
「……ゲーム開発も、楽しいもんだね」
「?え、えっと?」
喜ぶ四人に対して、アリスだけがユウカや四人の話を理解できず、少し困惑したように首を傾げてしまう。四人が嬉しがっていることは分かったが、ランキングに受賞できていなかったはずだと考えているのだろう。そんな彼女の肩をポンポンと叩きながら、マキが話しかける。
「あはは、良かったねアリスちゃん!」
「えっと……良かった、というと……?」
「アリスちゃん!私達、特別賞を受賞したんだよ!この場所も、私達の部室のままなんだ!」
「つ、つまり……アリスは、これからも皆と一緒にいて、良いのですか……?」
マキとミドリの言葉に、アリスも現状を理解し、徐々に口元に笑顔が浮かび始める。
「うん!」
「これからも、よろしくね……!」
「やったね、アリス」
「……私も、私も、嬉しいです」
「うん!これからも、ずっと一緒だよ!」
喜ぶアリスとゲーム開発部達。五人は手を重ねて、笑い合うのだった。
「……はい!これからも、よろしくお願いします……!」