転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
「次回作とかどうするの?」
「次回作かー、TSC2よりボリューム大きくしたくない?」
「まあ気持ちはわかるけど……」
テーブルを囲みながら、談笑するゲーム開発部の五人。TSC2で一山当たり、ひとまずの猶予こそもらえたものの、今のままで何もせず過ごすわけにはいかない。あくまで見逃されたのは来学期までだ。それまでに、何らかの形で結果を残さなければならない。
「正直、次回作をもっと大きく、ってやると来学期になってもゲームができてない、とかなりそうな気がするけど」
「えー、そうなっちゃうー?」
「……モモイ、完全に気が抜けてない?」
のだが、肝心のゲーム開発部の面々はまだTSC2を作り上げた反動で燃え尽き症候群を発症してしまったのか、いまいち集中しきれていない様子であった。特にモモイなど椅子にもたれかかってだらーっとしており、ミドリとユズもモモイと比べるとマシとはいえ、どこかぼーっとした様子が拭えない。唯一、アリスだけが三人の気の抜けように首を傾げていた。というよりアリスに関しては燃え尽き症候群がどういうものかまだ理解できていないのもあるのかもしれないが。
「だってーそうだーこのままじゃやる気でないしゲームしようよー」
「お、お姉ちゃん……」
「うう……でも、今の状態じゃさすがに大作はきつい気がする……」
「まあ、そうだよね……でも、何も活動しないってやばくない?」
とはいえ、燃え尽き症候群に陥るのはモルフォとしてもわからなくもない。モルフォもまた発症していないかどうか問われれば否定できる自信がないのだから。
「そうです!アリス達は確かに、ミレニアムプライスというイベントをクリアしました!ですが、まだアリス達のメインクエストは終わっていません!そう、これは期限が定められている新たなメイン目標なんです!これをクリアしなければアリス達はゲームオーバーになってしまいます!」
「うう、それを言われると弱いよぉ……」
「でも、ゲームを作るとしても何から手を付ければいいかな……」
だからこそ、アリスの言葉が染みてくる。三人とも何とかやる気を振り絞ってゲーム作りへと気持ちを切り替えていく。
「けど、作ろうとしてもアイデアが全く降りてこないよー」
「うう、同じく……」
「なんか、とっかかりがあるといいんだけど……」
そして切り替えたはいいが、やはり無から有は生まれない。とりあえずなんかないかとミドリが今まで描いてきた色々なキャラのラフスケッチを見返していると、
「ん?ミドリ、それって?」
「あ、色々描いてたけど没になっちゃった奴……なんかあるかなって」
「へー、皆で見てみようよ!」
モモイの言葉を受け、皆でミドリが描いていったラフスケッチを見ていく。採用するかどうかはおいといて、描きたいものを次から次へと描いていったのだろう、これは結構惜しくね?となるものから、いやそれは尖りすぎだろというものまで様々なものが見受けられる中、モモイ、ミドリ、モルフォの視線がある一体のキャラへと向けられる。
「これは……」
「忍者かな?」
「尻尾が生えています!」
「もしかしてこれ、イズナの?」
「あ、うん……そうそう」
それは、桜花祭の後でミドリが描いていた、忍者キャラだった。とはいえ、TSC2では採用されるに至らず、こうして寝かせられ続けていたのだが。
「イズナ?」
「百鬼夜行で出会った子だよ。忍者を目指してる子でさ、今何やってるんだろう……」「あっ、そうだ!忍者だよ忍者!次のゲーム、忍者で一本作ろうよ!」
「「「「忍者?」」」」
ここでモモイが閃く。忍者をテーマにするのは確かにありだ。ミドリとしても、このデザイン自体はかなり手応えを感じるものだったこともあり、ちゃんとこのキャラが活かせるゲームを作り上げるのはかなりアリな気がしてきた。
「いいかも……でも、どういうゲームにする?」
「うーん、やっぱり長編でー」
「いや、短編でいいんじゃない?長編ってそれこそ来学期までに作れるの?」
「で、でもシナリオが……」
次にこの子のためのシナリオを捻りだそうとするモモイに、そこまでしなくてもよいのでは?とモルフォから剛速球が飛んでいく。モモイは一瞬ぐぬぬと唸るも、シナリオも大事だと説く。が、
「……短編でシナリオなんて凝ったもの用意しなくてもよさそうな気がするけど……」
「すっかすかじゃんそれ!?やっぱりシナリオは大事だよ!?そりゃ短編なら長すぎるのは……ってのもわかるけどさ!」
「……うん、それはそれで大事だと思うけど……一回、そういう作り方も試してみない?」
「ユズまで……」
「でも、新しいやり方にチャレンジするなら今だけ、ってのはわかるかな、私は。一回やってみて、駄目なら次はお姉ちゃんが考えてるように長編でチャレンジしてみようよ」
「う、うーん……まあ、それもいいの、かも……?」
ユズ、そしてミドリも賛成した事により、モモイも渋々といった様子で受け入れる。それに、モモイとしてもやる以上は真剣ではあっても息抜きでやるのだからそこまで詰めまくったものをやりたいとは思っていなかったのもあって、ある意味助かったような気分にもなっていた。
「では、忍者について知らないとですね!忍者とは盗賊やシーフに似たジョブですが、忍術という特別なスキルを使うと聞いています!アリス、忍者に会いたいです!」
「……イズナに聞いてみようか?」
「え、いつの間にモモトークを……」
忍者の事なら、それを目指している人に聞いたほうが早いだろうと考え、イズナのモモトークを開き、メッセージを送る。自分に語らせるとNINJYAと卑劣と青春とド根性しか出てこない自信があって駄目だった。
「百鬼夜行から帰る時にもらったんだよ……ん、んん?」
「どうしたの?」
「……忍術研究部の皆を紹介するって返ってきた」
「「「忍術研究部?」」」
そしてイズナから返ってきたのは、忍術研究部なる全く知らない部活動の名前。それを聞いたアリス以外の三人は揃って首を傾げてしまうのだった。
★
「……成程!忍者のゲームを作りたいと!そのために忍者の話をイズナ達にしてほしいのですね!モルフォ殿!」
「まあ、そんなところで……なんか、すみませんミチルさん。強引に迫ったような感じになってしまって」
「あ、大丈夫大丈夫!それにイズナの友達なら私達も歓迎するから!」
「よ、よろしくお願いします……!」
「よろしくお願いします!」
イズナ達と予定のすり合わせが終わって数日後。先生からシャーレの一角にある教室を使う許可をもらい、ゲーム開発部と忍術研究部は顔を合わせていた。久しぶりに会えたことが嬉しいのかイズナは尻尾をパタパタと振り回している。灰色のツインテールの少女、千鳥ミチルと長身で片目が隠れた、藍色とブロンドの二色の髪の少女、大野ツクヨと共にそれぞれ自己紹介を終えると、モルフォ達はこうなった経緯について説明していく。
「成程、忍者のゲームを……そっか。なんか嬉しいかも、こういう形でも注目してくれる人がいるって」
「アリス、知ってます!忍者は画面を所狭しと走り回り、忍術で敵をなぎ倒し、鉤爪を用いたワイヤーアクションでスタイリッシュに動く……忍者とはまさに、スピードを体現した最上級のジョブであると!!」
「お、おお……?」
「あ、あり、ありがとう……」
「アリス殿!その通りです!忍者とは凄いんです!!」
アリスのキラキラとした目にどう返したらいいかわからず挙動不審になるミチル。ツクヨは褒められたことがちょっと恥ずかしいのか縮こまってしまうのだが、イズナはというと逆にアリスと握手をしながら楽しそうに話を始める。
「え、えっと、それでミチルさん……その、今日は色々教えてもらってもいいですか?」
「ええ!任せてちょうだい!」
モルフォに背中を軽く叩かれながら、ユズがミチルに声をかける。先ほどまでついつい挙動不審になっていたが、アリスとイズナの様子を見てその緊張も溶けたのか、ミチルは自信に溢れた表情で答えてみせる。
「おおー!なんか忍者っぽい!」
「ふふん、忍者は闇を、失敗を恐れないものなのよ!」
そして得意げに忍者や忍術などについて語り始めるミチル。それをモモイ達は楽しそうに聞き入り、時折イメージが湧き上がったのかミドリはスケッチブックに書き込んでいた。
「……ま、こんなところかな?どう?参考になった?」
「はい!凄く楽しかったです!忍者とは奥深いのですね!」
「NINJAってすごいですねぇ」
「な、なんか発音がおかしい気がするけど……」
「気のせいですよ」
ミチルと、それに便乗してきたイズナの忍者談義について話が終わり、落ち着いてきたところで今度はアリス達が感想を述べあっていく。その中で、少し考えていたモモイが妙案を思い付いたと言わんばかりにミドリに視線を向ける。
「あ、そうだ!ねえミドリ、キャラ三人に増やさない?プレイアブルキャラ三人!最初の子はイズナがモデルだからさ、二人はミチルさんとツクヨをモデルにしようよ!」
「そ、それは……確かに許可してくれるなら嬉しいんですけど……大丈夫ですか?」
「え、え?私達がモデル!?」
「そ、そそ、それは……!?」
突然のモモイの提案に、驚くミチヨとツクヨ。二人は顔を見合わせていたが、
「は、恥ずかしい……」
「で、でも……これはチャンスでは?忍術研究部の名を売る……そうすれば、私達のチャンネルを見てくれる人も増えて、忍者の事を知ってくれる人も増えるだろうし……そうよ!これはむしろ、良い機会!」
「た、確かに……?」
「ねえねえ、どんな感じになるの?」
「えっと……こ、こんな感じ……?」
そう言いながらミドリが見せたラフスケッチには、ミチルとツクヨをモチーフとした可愛らしいキャラが描かれていた。その書き込み量を見て、さっきからちらちら描いていたのはこれか……とモルフォは納得するも、こうならなければ適当な所でなかったことにするつもりだったのだろうと結論付ける。
「か、可愛い……」
「これが、私達?」
「二人とも凄いです!イズナのように、可愛く恰好いい忍者になっています!!」
「三人……ってなるとそれぞれ長所とかもつけられるね。アクションゲーム系にすれば、もっと差別化もしやすくなる」
「アクションゲームにするなら、今回は短編だから最初と終わりだけ決めれば十分じゃないかな?」
「アリスは必殺技が欲しいです!切り札の忍術スキルがあるといいと思います!」
「そういう感じか……よーし、頑張ってみるよ!」
そのイラストを見て、喜ぶ忍術研究部と、インスピレーションを受けたゲーム開発部。そしてゲームの方向性も無事に決まり、いよいよ話すことがなくなったところで、一度休憩を入れることにする。
「ふー、楽しいねこういうの」
「うん、なんか凄いゲーム開発してる感じがあるよね」
「確かに……」
「遊ぶことも楽しいですが、知らない人たちと出会い、話すことも大事です!そしてそれは経験値となってアリスをレベルアップさせてくれます!」
「でも、やっぱり大事なのは遊ぶことだよ!折角会ったんだもん、ゲームしようゲーム!」
「「え?」」
と、ここで唐突にモモイがゲームをやろうと言い出す。とはいえ、そんなことを言われてもとミチル達も困ったような表情を見せる。
「げ、ゲームって唐突ね……ただ、私達ゲーム機なんて持ってきてないわよ?」
「そもそもお姉ちゃんゲームガールズ死んでるじゃん……」
「うぐ……で、でもこういう時、モルフォなら、モルフォならきっと……!」
「アリス知ってます!こんなこともあろうかと、という奴ですね!!」
「えっと、別に無理はしなくても……」
「まああるけど……」
「あるの!?」
「アナログゲームですけどね。忍者マスターと言います」
「「「忍者マスター!?」」」
モルフォが取り出した箱を見てミチルたちが驚いたようにその名を見る。とはいえ、そういう名前のゲームってだけで三人がイメージしているような忍者とはちょっと違いますけどねと前置きしつつ、箱の中から色々な道具を出していく。
「な、なんと……これは凄く忍者っぽいです!」
「やっぱりあったじゃん!」
「ま、まあ……それで、どんなゲームなの?」
「えっとね……」
忍者マスターとは得点制のゲームである。五角形を仕切りで作り、その周りに色のついた忍者コマを並べた後に、各自、得点プレートを受け取り、初期点である3に丸のコマを置いて囲んだ後、親が刀のコマを受け取る。親は、色のついた忍者、色のついた煙、手裏剣、刀が描かれた九個のサイコロを仕切りの中に振り、出た目に応じたコマを手に入れ、得点を稼ぎ、最終的に20点を手に入れたプレイヤーが勝利する。
この時、出目にはそれぞれルールが存在しており、忍者の目は数字としてカウントする。忍者が一人の出目は1、二人の場合は2といったように。しかし、そこに煙の目が加わった場合、その点数にマイナスがかかってしまう。青い忍者の1の目が出ていても、別のダイスで青の煙が出ていれば、それは+1ではなく-1となってしまう。が、同じ色の煙が二つあればマイナスにマイナスをかけられるのでプラスになる。
手裏剣の目が出た場合は、振った人に出た数だけ点が入る。そして刀が出た場合、その数が手裏剣の数よりも多ければ、刀コマを奪うことができる。そして刀コマを奪われた人は、奪った人に半分の点数(端数切捨て)を渡さなければならない。
ダイスを振り、コマを回収していき、最後にサイコロで出した忍者の合計の数を誰かが宣言したら終了となり、正しければその人に追加で1点が与えられ、間違っていれば持ち点が-3されてそのラウンドが終了。現在刀コマを持っている人が次の親となってダイスを振ることになる。
「わ、わかったような、わからないような……」
「まあ、とにかくやってみましょう」
テーブルを皆で囲み、最初の親はモルフォから始まることになる。
「とりあえずどういう感じか確かめるために一、二ラウンドやってから本番にしようか」
「そうしてくれると助かるかも……」
「じゃあいくよー、運命のダイスロール!」
モルフォが仕切りの中に九個のダイスを振る。全員が食い入るようにそれを見ていたが、ダイスが止まり、目が明らかとなった瞬間にイズナが素早く黄色い忍者のコマを取る。
「速!?」
「ふふふ、これぞイズナ流忍法の力です!」
「に、忍法凄い……」
「って、ユズちゃんいつの間に!?」
「普通に見えたから取った……」
「えっ」
イズナの瞬発力もだが、ユズの動体視力と反射神経の速さも目を見張るものがある。体全体で、となればさすがに初速はイズナに劣るが、それでも十分早い。
「さ、さすがユズちゃん……」
「えっと、えっと、他は……緑のコマ!これは大丈夫な奴で……あれ!もう緑の忍者がいません!!」
「あ、もう取っちゃった……」
「そ、そうだ……あれ?刀……ない!?あ!?」
まだ取れるコマがあるかどうか、アリスが探すのだが、既にそのコマはツクヨの手に収められていた。イズナとユズの動きに驚き、ついつい手が止まっていたミチルも慌てて探し始めるが、狙っていた刀は既にモルフォの手の中。残るコマも探そうとするが、既にモモイとミドリがそれぞれ回収し終えており、完全に取れるコマはなくなってしまった。
「えっと、もう取れるものがなくなったから……後は場に何人忍者がいるかどうか宣言して終わりってことかな」
「そうだね。まあ、これはチュートリアルでやってるところもあるんでミチルさん、今回はやってもらっていいですか?」
「え、ええ……えっと、1……3……6……」
モルフォに促され、忍者を数え始める。本番では呟きながら数える、なんてやらないだろうが、今はチュートリアル。なら間違いがないように確実にやった方がいいだろうと考えたのだろう。が、一個一個目を数え始める彼女の姿を見て、いつの間にか、その場にいた全員が同じことを考え始めていた。
(サイコロの数、多くない……?)
それだけ、一ラウンドで多くの人が、そして場合によっては多くの点数が手に入る。見た目より大味なゲーム性だが、その分逆転もしやすいゲームバランス。
「……11人、で大丈夫?」
「そうですね。なのでラウンドは終了して、ミチルさんに1ポイントですね。そして得点計算ですが……確か黄色の忍者はイズナが持ってるんだよね?」
「はい!イズナが手に入れました!」
「それ、黄色の煙の目があったから点数マイナスだよ」
「なんですと!?」
「そういえばあったね」
そして、大量得点と思いきや煙の存在でマイナスになりかねない、そんな罠も存在している上に、判断も即座にしてコマを回収しなければならない。思ったよりも忙しいゲームである。
「これは思ったより複雑だね」
「反射神経がものを言うかと思ったけど、どれを狙うかとかもあるもんね」
「く……でもイズナは次は失敗しません!このゲームに勝って忍者になります!」
「アリスもレベルアップのために頑張ります!」
(いや、これは名前が忍者なだけで忍者のそれとは別だとは思うけど……)
ゲームとしては、まだ一ラウンドやっただけだがかなり奥深く、味わい深いという印象を感じられた。これが第二、第三ラウンドと続けばさらに盛り上がるのは間違いないだろう。それとして、これは自分達の知る忍者とは別物ではないか、とも思ってしまうのだが、この場でそれを口にするのも無粋というものだろう。
「……ふふ」
「ツクヨ、楽しんでる?」
「うん……こうやって、皆で一緒に盛り上がれてるのが楽しくて」
「ま、それもそっか」
「じゃあ、後一回やってから本番やろうか」
楽しそうな表情を浮かべるツクヨ達だったが、モルフォの言葉を聞き、再びゲームに真剣に向き合うように視線を仕切りの中へと向けるのだった。