転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
「……なんだあれ?」
ミレニアムの自治区。ちょっとした用事で遠出していたモルフォが帰り道を歩いていると、不思議な光景を目にする。工事現場だろうか、ヘルメットを被った集団がドリルやツルハシを手に道路を掘ったりしていた。
「今日工事の予定なんてあったんだ」
そんな予定は聞いたことなかったが、まあキヴォトスだ。急な工事もままあることなのだろう。そんな中、工事現場などで用いられるタイプの白いヘルメットを付けた作業員たちがモルフォに気付き、手を振ってくる。モルフォも頑張ってねと手を振り返すと、回り道をして帰ろうとする。
「……む?彼女は確か……」
と、そんな時だった。モルフォの姿に見覚えがあるのか、白衣を着た少女がモルフォの方を見て首を傾げる。そしてすぐにモルフォの正体を思い出したのかモルフォに近づくと、彼女の顔を覗き込む。
「ふむふむ、どうやら思い過ごしではなかったようだね。君、最近噂のゲーム開発部の敏腕マネージャーだろう?」
「?はあ……まあゲーム開発部ではありますが敏腕とは?」
「おや、知らないのかい?」
黒髪に角を生やし、黄色い瞳をこちらに向け、尻尾にゲヘナの校章を巻きつけている彼女はおそらくゲヘナの生徒だろうか。自身の評判について困惑したように首を傾げるモルフォに意外そうな表情を浮かべていたが、すぐに笑いながら彼女の肩を叩く。
「まあ、敏腕とは私が勝手に呼んでるだけだが」
「じゃあ知りませんよそれ。でもよく知ってますね?私の顔とか」
「ふふ、当然のことさ。温泉開発とゲームは切っても切れない関係だからな。ゲーム開発部もシャーレの部員と聞いてからは情報収集も兼ねてアンテナを伸ばしているのさ」
「成程……ところでどちら様なんでしょうか?ゲヘナの人っぽいですけど……今日って何か工事とかあったんです?」
「む?ああ、すまないすまない!自己紹介がまだだったな!我々は温泉開発部だ!」
「温泉開発部?」
元気よく笑いながら、白衣の少女は自分達を温泉開発部と名乗る。ゲヘナにはそんな部活があるのかとモルフォが感心していたが、その温泉開発部がどうして工事をやっているのだろうかと新たな疑問が出てくる。
「でもやってるのって工事では?もしかして工事もやってるんですか?」
「む?ああ、旅館を建てるためには必要だからな。当然工事はお手の物さ。だがここに来たのはそういうわけではないぞ。ここには……温泉がある!」
「え?温泉?」
温泉を作りに来た、当然だろ?温泉開発部なら?と言いたげな白衣の少女に思わず疑問の視線を向けてしまう。ミレニアムの地下に温泉がある、なんて話は聞いたことがないのだが。
「初めて聞いたけど……」
「まあ、ここに住んでいるミレニアムの生徒が誰も目を向けなかったのだ、そう思うのも無理もない。だが私にはわかる!ここには温泉があると!」
「はぇー……」
まあ、温泉開発部ならわかる何かがあるのだろう。直感めいたものが普通にあるのはモルフォも知っている。温泉限定のセンサーと言われるとちょっと限定的な気がするが。
「というわけだ。温泉ができるのを待っているといい!きっと君やミレニアムの生徒達も気に入ってくれるだろう!」
「……そういえば地下のインフラとか大丈夫なんですかね……」
「はっはっは!気にしなくても大丈夫だとも!」
「大丈夫ですか……ならいいんですが」
ちゃんとインフラに配慮してくれるならまあ別にいいんじゃないだろうか。それにこんな往来で掘っているのだから許可の一つでも取っているのだろうし。そうモルフォは思い込んでいた。だが実際は違う。それを裏付けるかのように、作業をしていた赤髪の少女が突然後ろ向きに倒れる。
「いたぁ!?」
「メグ先輩!?」
「メグ!?何があった!?」
メグと呼ばれた赤髪のゴーグルをつけた少女がおでこを擦りながら立ち上がる。見た感じ、スナイパーにでも撃たれたのだろうか。
「いったた……撃たれちゃった!」
「部長!メイド服の部隊がこちらに―――」
「え?C&C?許可取ったんじゃないの?」
「許可?何のことだ?」
「え?だって大丈夫だって―――」
「温泉ができればそんなことを気にする必要はないからな!」
こいつら無許可でやってたのか……と呆れてしまう。そういえば便利屋もプッツンしていきなり店を爆発してたし、風紀委員会も闘争を求めてたし、ゲヘナの生徒とはそういう習性があるのかもしれない。じゃあこいつら思いっきり治安ぶっ壊してる側じゃないかと考えながらも、ネル達が来ているようなのでそれなら自分の出る幕はないだろうとその場から去ろうとする。だが白衣の少女は少し考え、すぐに命令を下す。
「よし、ここは一時撤退だ!丁度お客様も来ているしな、さらなる温泉開発のための知見を得よう!彼女をもてなすぞ!」
「「「了解!」」」
「というわけで、ちょっとごめんねー!」
「え?」
直後、メグと呼ばれた少女がモルフォを軽々と担ぎ上げる。一体どこにこれだけの腕力があるのだろうかと困惑しながらも持ち上げられたモルフォは、そのまま慣れた手つきで撤退し始める温泉開発部に連れ去らわれていく。
(途中で抵抗したらどうにか……いや、今の所撃ったりする感じはなさそうだし……攻撃喰らって痛いの嫌だしやめとこうか……)
そして素早く逃げ出した温泉開発部。C&Cが後を追ってきているだろうが、逃げるのは手慣れたものなのだろう。瞬く間にC&Cを撒いて温泉開発部は暗闇へと消えていくのだった。
★
「とうちゃーく!」
廃ビルへと連れてこられたモルフォはそこで解放される。ずれていたヘッドフォンを整え直しながら、ゆっくりと立ち上がると、白衣の少女が近づいてくる。
「やあやあ、いきなり連れてきてすまないね。だが、私達としても君達とは悪い関係になりたくないんだ。これはその誠意というやつさ」
「誘拐が、誠意……?」
「?力づくで縛って連れていくわけじゃないのだから十分優しいだろう?」
「そういうものなんです?」
「美食研究会はよく相手をふん縛って連れていくそうだぞ?」
「地獄かな?」
美食研究会なる集団のことなんて知らないが、縛って拉致するのと比べれば確かに温泉開発部は温情なのかもしれない。それに、白衣のこの少女や陽気そうなメグ、そして仲の良さそうな他の部員たちを見るに、決して悪人集団ではない。便利屋といい、やってることはともかく本人たちは割と善性寄りの人達が多いのかもしれない。
「……そういえば自己紹介まだしてませんよね?私は夢見モルフォ、ミレニアムの一年生です」
「おっと、そういえば所属しか名乗っていなかったな、これは失礼した!私は鬼怒川カスミ、ゲヘナの二年生でこの温泉開発部の部長を務めている。まぁだからといって遠慮はしなくてもいいぞ」
「私は下倉メグだよ!」
改めて自己紹介をし終えた白衣の少女カスミとモルフォ。お互いに名前を把握し終えたところで、モルフォは気になったことを聞いてみることにする。
「そういえば、なんで私達の事を?」
「ミレニアムプライスさ」
「ミレニアムプライス?確かに特別賞は取りましたけど……というかチェックしてくれてたんですね」
「ああ、様々な技術が見れるからな。温泉開発に活かせるものがあるかもしれないだろう?」
どうやらカスミはミレニアムプライスでゲーム開発部の存在を知ったようだ。そこから、人物と顔についてはシャーレについて調べた時に知った、ということなのだろう。だが、温泉開発に活かせるものとゲーム開発部に繋がりがあるのだろうか。
「ふふ、その顔は温泉とゲームが繋がらない、といった様子だな?」
「そうですね……温泉に浸かりながらゲームなんて……たまに防水仕様の袋とかに入れてスマホなりを持ちこむ人はいますけどあれもちょっと……」
「まあ、個人それぞれの楽しみ方を否定はしないが浸水や漏電とかもあるからあまり推奨はしないな。だが、案外遠い存在でもないぞ」
そう言いながら、カスミが懐からあるものを取り出す。それは、卓球のラケットであった。それを見て、モルフォもカスミが温泉とゲームは遠くないと言っていたその言葉の意味を理解する。
「温泉から出た後の卓球やゲームコーナー……」
「そう。温泉とは、確かに浸かることで一番の極楽を与えるものだが……温泉旅館を彩るものとしては他にも存在する。温泉がメインであることは言うに及ばずだが……温泉から出た後、その余韻をいかに昇華するか。マッサージ、観光、食事、アクティビティ……様々なものがあるが、当然ゲームもまたその一つであると言えるだろう?」
ピンポンやレトロゲー、ゲームセンターなどもまた、温泉を楽しむ要素の一つということだろう。そういう意味では、新たなゲームという娯楽を作り出すゲーム開発部は、温泉開発部と浅からぬ関係にある、と言えるのかもしれない。
「我々は温泉、君達はゲーム。開発するものは違うが皆を楽しませるという点においては志を共にしていると言えるだろう。そんな君だからこそ、知見を得たいと度々思っていたのさ。我々も温泉開発については抜きんでているが、ゲーム開発についてはやはり君達の方に軍配が上がるだろうからな」
つまり、ゲームについてはゲーム開発部の方が専門家。温泉上がりの人達が楽しめるゲームについて知りたい、というのがカスミの要望だった。
「つまり、新しいゲームを紹介してほしい、ということで?」
「おお、そういうことだ!何かないのかな?」
「と、言われましても……いきなり連れてこられた状態じゃ何も……うん?」
モルフォが視線を動かすと、一枚の小さな手持ちのホワイトボードを見つける。そこには赤と青のマグネットが四つくっついており、都合よく黒いペンもくっついていた。それを見て、あるゲームの存在を思い出す。
「代用品ばっかりだけど……何となくの雰囲気だけなら再現できるかな」
「ふむ?」
「これは私が考えたものではなく、キヴォトスの外にあるゲームなんですが……シンペイ、とかどうでしょう?」
「シンペイ?」
4×4の形になるようにホワイトボードに丸の目を書いていき、さらにその中に3×3の四角のマスを作っていく。ちょうど内側の四角のマスが丸のマスで必ず挟まれるような形になる。続けて、マグネットの方にも表と裏が分かるように印を書き込んでいく。
「ええ、本来はちゃんとしたコマとかがあるんですが……まあこういう状況なので……」
「まあ、仕方あるまい。さて、どのようなルールなのかな?」
シンペイ。それは、正式名称をSimpe!と言い、先に自分の三つのコマを同じ列に連続して並べた方が勝ち、というシンプルなゲームだ。そして、4×4のマスでは表、3×3のマスでは裏向きにコマは置かれ、表と裏で列を作ることになる。また、相手のコマを自分のコマで挟むと、そのコマを好きな場所へ飛ばすことができ、これによって相手の成立を妨害することになる。また、お互いに四つのコマを全て配置し終えた後は既に場にあるコマを斜めに移動させて列の完成を目指していくことになる。
その都合上、コマを移動させる場合は表、裏、表としなければならず、上下左右のマスに行くためにも二ターン必要となる。それ故、すぐに決着がつくわけではなく、戦略性などが問われるのだ。
「……ふむ、前半と後半でゲーム性が大きく変わりそうだな……だが、ルールは簡単だ」
「どうですか?」
「面白そうだ。試しに一回やってみようではないか」
ゲームをプレイすることを決めて、カスミがモルフォと向かい合い、近くに落ちていたまだ使えそうな椅子に座り込む。お互いに少し割れている机の上にホワイトボードを移動させると、それぞれマグネットを手に取る。手持ちのコマが残っている間は先手を取ったモルフォの駒をカスミが挟んで飛ばし、逆にカスミのリーチをモルフォが飛ばしたりしながら、お互いに列を揃えることができずに手持ちのコマがなくなっていく。そしてモルフォが、カスミに飛ばされたコマを動かし始めていく。
「……これは嫌らしい手だな」
このゲームは初見だが、すぐにシンペイの醍醐味に気付いたカスミは、モルフォの打った手の意味に気付く。リーチにこそ届かないものの、次の一手でカスミがリーチをかければすぐにそれに対応してコマを飛ばすことが可能な位置だからだ。
(この状態でリーチをかければ、こちらのコマを飛ばしながら相手がリーチをかけることになる……成程、面白い)
しかし、その手に気付けばみすみす相手の思い通りになるわけにはいかない。逆にモルフォの裏を掻き、コマを動かしていく。それを見て、自分の狙いを見抜かれたことに気付いたモルフォも、次の一手を考えて駒を動かしていく。
「おー、なんか凄い!」
「部長と互角に戦ってるねあの子」
「やっぱゲーム作ってるって言うだけあって頭いいんだね~」
ルールがシンプルということは見ていてどういう状態なのかわかりやすいということ。どこまで手を読んでいるか、などまでは二人の頭の中の話なのでメグや温泉開発部員達にはわからないが、それでもお互いに真剣勝負を繰り広げていることはわかる。
「ふふ、強いじゃないか……だが……ここまでやってみて思ったんだが、君はこういうボードゲームよりも得意なものがあるんじゃないかな?」
「そうでしょうか?」
「君が得意なのは、ある程度運が絡むタイプじゃないかな?戦術を組立、相手の動きを予想するのも当然できるが。最も得意としているのは運という不確定要素が絡むもの」
そんな中、次の一手を繰り出しながらカスミはモルフォのプレイングを見てそう分析する。運が大なり小なり絡んだ方が強い。それは、そう言われればモルフォも何となく納得できるものはある。実際本人としても、そういったゲームの方が完全に運が絡まないタイプのゲームよりも好むというのは確かだ。だがそれは、
「まあそうですね。否定はしませんが……ただ、運が絡むゲームが好きなのは、誰にでも逆転の目があるからですよ」
初心者、上級者、誰であっても勝機があるからだ。カードゲームならお互いの手札と事故次第で十分初心者が勝てる可能性だってある。泥沼に陥り、次のドローカードで勝負が転ぶような場面もある。そういった時はやはり盛り上がるものだ。
「それは確かに盛り上がるな。完全に詰んだ状況で最後の一手を打たざるを得ない。オセロでそんなことをやっても冷めるだけだからな。最後まで一喜一憂できるゲームの方が喜ばれるのはあるのかもしれないな。それはそれでツイてない人からすればクソゲーと言われるかもしれんが」
「それはあるかもしれません。まあでも、結局一番肝心なのは楽しみ方を理解できるかどうかかもしれません」
「……一理ある。さて―――これで詰みだ」
とはいえ、今回は温泉宿で使えるような遊び、というオーダーだ。ならば単純な方が都合がいい。複雑なものもそれはそれで需要があるが、万人受けするのは単純な遊びの方だろう。
「……降参です。ここからは逆転できません」
「ふふ、中々面白い刺激だったよ」
シンペイの方は激戦だったが、最終的にカスミの方が勝利する結果に終わった。温泉開発部の主将として高い頭脳を発揮した形になったようだ。
「だがやはり、世界は広いな。こんなゲームもあるとは思ってもみなかったよ。言われてみればルールはシンプルなのに全く思いつかなかった」
「後日、連絡をください。本物のシンペイをお見せしますよ」
「それは楽しみだ」
今のゲームでモルフォの事を気に入ったのか、カスミとモモトークを交換する。どこにシンペイ入れていたのかぼんやり考えながら他の温泉開発部員達を見ていると、今のシンペイを見て盛り上がってたのか楽しそうに話をしていた。
「あの子強かったねー」
「私達もやってみようよ」
「いいねーそれ」
「楽しそうな所ですね」
「ふっ、そうだろう?どうかな?もし君がよければ温泉開発部に―――」
「遠慮しておきますよ。ゲーム開発部が今の私の居場所ですから」
「ふふ、そうだな」
さりげなく受けた勧誘をやんわりと断る。カスミとしても最初から受け入れてもらえるとは思ってもなかったのか、特に悔しがる様子は見せていない。
「しかし居場所とは随分大きく出たじゃないか。それほど気に入ってるのかな?」
「何だかんだで私を皆が受け入れてくれたところですからね。そこに行くまでに色々苦労もしましたが、一緒になれた今は皆と何かをするのって凄く楽しいですし……かけがえのない大事な仲間達ですよ。それはカスミさんも同じじゃないですか?」
「む」
「温泉開発部の皆と凄く楽しそうに作業してたじゃないですか」
「……はーっはっは!これは一本取られたな!!」
ゲラゲラと心底楽しそうに笑いながらモルフォの肩を叩くカスミ。あまりにも気分がいいのか、思ったより強めに叩かれてモルフォは肩が痛くなるのを感じていたが、カスミが上機嫌な様子を見ていると悪い気分ではない。
「……そういえば、皆さんいつまでここにいるんですか?」
「?ああ、まあほとぼりが冷めるまでだな!邪魔が入らなくなってきてから温泉開発をするさ、まあ君は帰りたまえ。ミレニアムにまで来ないと思うが風紀委員長が来たら面倒だからな!」
「もうセミナーに申請して温泉開発の許可取った方が早そうな……」
「はっはっは!そこは気にしなくても大丈夫だ!モルフォちゃんが心配することじゃないぞ!」
果たして本当に許可を取ってやっているのだろうか。まあセミナーに許可を取ろうとしても往来で温泉開発なんてしたらしばかれてしまいそうな気がするが、そこまでいったらもう自業自得だろう。ゲーム開発部は治安維持組織ではないのだ。
「そうですか……まあ、それならいいですけど……じゃあ、私はそろそろ帰りますね」
「うむ、帰り道は気を付けるんだぞ!もし温泉が見つかったら君にも連絡を入れるからその時は楽しむといい!」
そして、カスミ達に見送られながら廃ビルから出ていく。なんだかんだで人は悪くなかったな……とぼんやり考えながら廃ビルが見えなくなるところまで移動していったのを確認して、近くのビルからその様子を確認していたカリンが皆に合図を出す。
「モルフォ、出て行ったよ」
「あはは、凄いねー、温泉開発部に攫われたけどちゃんと帰れたんだから」
「つーかなんで普通にゲームやってんだよあいつ……いやまぁ、何事もなきゃいいんだけど」
廃ビルに一気に攻め込んで温泉開発部を制圧しようとしていたのだが、何故かモルフォとカスミがゲームをしているという様子を見て、ネル達も作戦を変更することにしていた。もしこのままモルフォが無傷のまま出てこれるならそれまで待ってから制圧しようというわけだ。そして、無事にモルフォが出て行ってくれたため、
「では、ミレニアムで温泉開発をしようとしたお礼をすることにしましょう。温泉開発部の皆さんが使用している爆弾を有効活用させてもらいましょう、爆発したのは温泉開発部のものなのでユウカからの追及もないでしょうし」
「ほんとかよ」
「では……」
アカネが今か今かとワクワクした様子でボタンを取り出すと、それをポチッと押す。次の瞬間、温泉開発部が滞在していた廃ビルが大爆発によって吹っ飛んでしまう。
「あいたたたぁ……皆大丈夫ー?」
「な、なんだ……!?爆弾が勝手に……!?」
爆風の中、瓦礫の中からメグとカスミが起き上がる。他の温泉開発部員が気絶して倒れている中、カスミは差し出された手を見てそれを取る。
「おお、すまない、助かったよ。全く、いきなり爆発するなんてな……一体何、が……?」
「―――よお、あたしらの後輩を拉致したようじゃねえかよ、ええ?」
そこには、満面の笑みのネルが、その表情を見て、一瞬で話が通じない相手だと理解し、同時にその風格から自分が恐れているヒナと同格のそれを感じ取り、
「ひぇええええええ!?」
カスミの絶叫が一帯に響くのだった。