転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
「……成程、今使ってるコピープロテクトはこういう感じか……」
「TSC2はミレニアムプライスに出す、ということもあってそこら辺は意識してなかったんですが、今後は割れ対策も必要かと思ったんですが……これも正直ネットで拾えるフリーのものなので……」
「まあ、フリーソフトの時点でね……」
ヴェリタスの部室に集まっていたゲーム開発部は、チヒロにあるプログラムを見てもらっていた。それは、ゲーム開発部が使用しようと思っているコピープロテクト。所謂割れ対策である。
「まあ、こういうことなら私達で作った方がよっぽど安全だろうね」
「いいんですか?」
「構わないよ、これくらいは」
やはりセキュリティのことならヴェリタス、もっと言えば副部長のチヒロに聞くのが安牌だろうと考えてマキに相談してみたところ、丁度チヒロが部室にいる、ということでこうしてきたのだが、まさか作ってもらえるとは思わず、モルフォ達は驚いてしまう。
「……思ったのですが副部長ってモルフォとアリスにはなんか甘くありません?」
「……そりゃあね……」
どこか遠い目をし始めるチヒロを見て、モモイが過去の学籍偽造の件を思い出して冷や汗を流しながら視線を横にずらす。そんな姉の姿を白けた様子で見ながら、ミドリが口を開く。
「でも、割れ対策って色々種類あると思いますけどどういうのを?」
「何がいい?作った方が、とは言ったけど……データを書き換える系はさすがに君達の仕事になるけど」
「データを書き換えるというのはどういうことですか?」
「簡単に言うと内部データを書き換えるMODを適用する、って感じになるのかな?ただ、本気で相手を潰すゲームにしちゃう感じだけど」
セキュリティに引っかかると、ゲーム内部のデータが書き換えられ、プレイに支障が出やすくなるタイプのコピープロテクト。単純に倒せない敵を出す、進行に必要なフラグが消滅するなどといったものである。中には中盤から終盤までは普通にプレイできてそこでこの罠を仕掛けるといった行為で相手の精神を折る、みたいなこともあったりする。
「正直それはねー……いやそりゃ必要なのはわかるよ?わかるし、割れ行為なんてやる奴は四肢をへし折って病院送りにしたくなるぐらいだけどさ」
「せっかく作ったゲームをその相手を潰す罠に変える行為はしたくないかな……それに、折角作ったものを何もできないように自分達の手で壊しちゃうのはちょっと……」
「それに、今はそこまで割れ対策を重要視しなくてもいいと思いますけどね。割ること自体が割に合わなくなってるというか。無論不要というわけでは全くありませんしむしろ必須ではありますが」
「あー、まあコタマ先輩の言う通りではありますね。所謂海賊版ってオンラインの恩恵受けられませんし」
だが、ネットとゲームが紐づいていることが珍しくない現状ではそこまで気にすることもないのかもしれないというコタマの指摘にそういえばそうかと納得するモルフォ。ユズもそれに同意するように頷く。
「アップデートとか追加コンテンツをダウンロードできないのは確かに痛いよね……」
「オンラインでできないだけじゃなくてハードのアカウントとかがBANされる可能性もあるもんね……確かに割に合わないか」
「割れ使ってるのばれたら炎上凄いからね。この前さ、私が見てた配信者が割れ使ってるのばれて大炎上してたんだよね。私も燃やしてたんだけど。あーアンチになりそ」
「もうなってる!」
「マキ……常識の範囲内でやりなよ」
他の面々もうんうんと頷いている中、さらっと明かされたマキの発言に溜息を吐くチヒロ。とはいえこれは相手がやらかしていたため、ラインさえ越えなければ別にいいかと軽く釘を刺す程度に留めておくようだ。
「そういえば気になってたんだけど……モルフォの力ってそういうセキュリティとかはどうなの?」
「……よくわからないですね。あるとは思うんですが」
ふと、ハレからそう振られ、顎に手を当てて考え始める。確かに、自分は能力で形を与えてゲームなどを生み出している。生み出しているのだが、作り方が分かっても理解しているわけではない。
「確かにこうすれば作れるみたいなのはわかるんですが、気付けばできているって感じなんですよね。そしてそれについて私も理解してるってわけじゃなくて。ただ、今は色々勉強とかもしてるんで多少は齧れるようになってるんですけどね……」
普段の勉強などには全く活かされる項目ではないのだ。いや、もしかしたら能力を応用すればそういう使い方もできるかもしれないが、リオからも警告されてるし、そういうのでズルするのは違うのだから。それに、一回そういう方向性に能力を使えば歯止めが利かなくなるのは考えるまでもない。
「でも、万が一流出したりした場合を考えたら一度、調べた方がいいかもしれないね。今度、何か見せてもらってもいいかな?」
「いいですよ」
相手は選んでるし、そもそも自分の能力で生み出すものは基本的にオフラインで完結させている。ネットに流すつもりもないため、今のところ心配はしていないが、それでも何が起こるかわからないのだ。もしコピープロテクトの類が機能していない、みたいなケースになって海賊版が出回ったら……そう考えたら大変なのはこちらだ。ここはチヒロだけでなく先生ともある程度話を付けておいた方がいいかもしれないと内心で決めておきながら、チヒロの提案を受け入れる。
「……それでこっちの方のセキュリティはどんな感じになりそうですか?」
「まあ手堅く作って……突破できる人なんてこのキヴォトスを見てもそうそういないんじゃないかな?」
突破できそうな人が思い浮かばないわけではないが、さすがに後輩が丹精込めて作り上げたものを割ってプレイしようなどという最低な行動はしないだろうし、実質問題ないと言えるだろう。チヒロの作り上げたセキュリティならば問題ないはずだろう。ゲーム開発部の皆は問題の一つが解決したことにほっとした様子を見せるのだった。
★
「ねぇねぇ、これ見て!」
「……どうしたの、マキ」
「モルフォとちょっと見てたんだけどすっごく面白くてさ、皆で見てみようと思って!」
その日の夜。部室に入ってきたマキが笑顔で一枚のディスクを見せる。それを見て、エンジニア部が作ったモルフォのヘッドフォンについている機能をコタマは思い出す。何かアニメでも持ってきたのだろうか。
「興味あるかも」
「どういうものなんですか?」
「えーとねー、デジモンゴーストゲームってやつ!」
「いや、言われても知らないけど」
デジモンゴーストゲーム。ホログラムゴーストと呼ばれる真偽不明の怪奇現象の噂が飛び交う世界。デジモンと呼ばれるデジタルワールドから現れた生き物達が引き起こす怪奇現象を、主人公である天ノ河宙はパートナーデジモンのガンマモン、そして仲間たちと共に解決したり対応したりしていく話だ。終盤を除き、基本的に一話完結式で話が進むため、話を抜き出してもわかりやすい。
「ふーん、どんなお話なのか興味ありますね。流してみてください」
「はーい」
そう言われ、マキはディスクを入れて映像を流し始める。メインキャラである宙と恐竜のような姿をしたデジモン、ガンマモン。月夜野瑠璃ともふもふの毛が特徴的な大柄の兎のような耳を生やしたデジモン、アンゴラモン。東御手洗清司郎とクラゲのような女の子っぽいデジモン、ジェリーモンがそれぞれ出会い、パートナー関係を結ぶまでの話。そしてデジモンにとって必須である進化というパワーアップを初めて行ったエピソードを見ていくことになるのだが、
「……これ大分ホラーじゃない?」
「そうそう、意外と怖いんだよね……でもちゃんと面白いというか」
「デジモンという生き物が結構殺伐としてるというか結構気軽に人間を仕留めにきている……データの生き物っぽいのは面白いんだけども」
「なんかこう……ここまでくると別の生き物ですよね、いやそういう描かれ方してますが」
思った第一印象は、人間とデジモンで価値観が違いすぎる、ということだ。人間たちはおそらくシャーレの先生のような、キヴォトスの外から来た人のような耐久力という設定なのだろう。しかし、デジモンはデジモンの価値観で生きており、己の物差しで人間たちを捉える。その最たる例が、人間達の住むリアルワールドに出た後に博物館の広告映像に載っていたミイラを作る技術を見て、これが人間界の最新医療だと誤解して疲れた人間たちを治療するという名目でミイラにして殺そうとしたマミーモンというデジモンだろう。これを見てハレはエナジードリンクを断った方がいいのかと一瞬思ったほどである。すぐに撤回したが。
「まだ善意でやってたり理性が働いてるパターンはマシだけど、完全に悪意全開でやってる場合がやばいですね……」
ガンマモンが宙がミイラにされて殺されそうになる場面で初めて進化し、ベテルガンマモンという赤い二足歩行で人型の炎を操る恐竜デジモンへと進化することになるエピソード「博物館ノ怪」に登場するミイラ型デジモン、マミーモンは治療のために殺人行為を誤解して行っていた。そのため、最終的に宙達と和解することができ、医療大学に身を潜め、人間たちに悟られないように本当の最新医療を学ぶという落としどころができた。
しかし、その次の話であり瑠璃とアンゴラモンが出会うことになる「ラクガキ」という話では、ドラクモンという小さなデジモンが赤くしゃと呼ばれる都市伝説の犯人となっており、ネットを転々としながら写真に赤いクシャクシャのようなラクガキを行う。そのラクガキを行った対象は、足が動かなくなったり、髪が異常に伸び続けるなどの異変が起こるようになる。その能力で被害者を増やしていく中、そのターゲットが瑠璃に向かったことがきっかけで、宙と瑠璃は出会うことになり、結果、瑠璃とアンゴラモンがパートナー関係を結び、ドラクモンを撃退することに成功する……のだが。
この話の中では、ドラクモンの起こした異変のせいで車両の操縦が不可能になって事故を起こした人の映像などが入っており、描写こそされないものの明らかに手遅れな人が出てきていないか?と嫌な想像を掻き立てられるところがある。ちなみに、これでもまだ序の口だったりする。
「あー、嫌な汗掻いてきちゃった」
理性が働いているパターンの場合でも、人間にとっては洒落にならない。それは清司郎とジェリーモンが初めて出会う「神ノ怒リ」という話が該当するだろう。この話では、ずっと怪現象に悩み、恐れていた清司郎がその対策としてバーチャルお守りというデジタル化したお守りを千個以上も、店や施設どころか個人のスマホにまでハッキングしてばら撒くというヴェリタスレベルの行動をしたのだ。とはいえこれだけならまだマシだった。プログラムそのものは無害なのだから。が、それをジェリーモンが興味半分で不正に書き換え、電子マネーのシステム障害が発生。金の流れが乱れたことでマジラモンという巨大な辰のデジモンが現れ、手下のデジモン達を連れて清司郎達に裁きを与えようとする。当然裁きを受ければ清司郎は死亡するだろう。
どうにか収拾を付けるため、清司郎はどうにかバーチャルお守りを全て削除し始める。宙達の時間稼ぎによって清司郎と、清司郎の責任を取ろうとする姿に感化され、共にバーチャルお守りを消し始めたジェリーモンはどうにか全てのお守りを削除。そして清司郎の心からの謝罪を受けたことでマジラモンはその矛を収め、難を逃れる……のだが。一歩間違えれば宙も清司郎も殺されていたであろう状況に、既にコタマとハレも冷や汗が止まらない。
「え、こんなのマキ見てたの?」
「まああの時はアリスも楽しそうにしてたし隣にモルフォもいて色々デジモンの事とか教えてくれてたので……怖いというよりへーって感じで……」
よく平気でいられたなと二人がマキを見る。しかしマキがモルフォ達と見ていた時にはむしろデジモンの設定とかの方に興味が惹かれていたこともあってかそこまで気にならなかったようだ。しかし改めて見返すと先輩二人が感じているように結構ガッツリホラーである。その分終盤の戦闘パートのカタルシスが感じられていい意味で温度差で風邪を引きそうだが。
「……何やってるの」
「「うわああああ!?」」
「あ、副部長」
そんな時だった。部室の扉が開かれてチヒロが入ってくる。その声を聞いたハレとコタマが思わずお互いに抱き合ってしまうが、その光景を見て呆れた様子で溜息を吐く。
「そんなお化けが出たような反応しちゃって、何見てたの?もしかしてまたハッキングとか―――」
「いや、モルフォからアニメを借りてて皆で見てたんですよ。ただ結構ホラーで」
「アニメ?」
「そ、そうですよ、副部長も一緒に見ましょう!そうしましょう!」
「コタマ……何企んでるの?」
「いやこれ道連れ増やしたいだけでは」
「しーっ!!」
とりあえずいけないことをしているわけではないことを知れたことでチヒロが少しだけ安心していると、コタマがチヒロもアニメ鑑賞に誘う。その目的がホラーアニメの道連れを増やしたいだけだと知ったチヒロは再び呆れるも、その程度の思惑ならと、首を縦に振ることにする。
「別にいいけど……で?どういうの?」
「えーと、これは……」
マキがチヒロに簡単な説明をしていく。そして再び視聴を再開することになるのだが。ここからは話数が飛び飛びになっていく。というのも、モルフォが特に面白そうな話を選んだり、デジモンが持つ成長形態、幼年期、成長期、成熟期、完全体、究極体への初進化回をセレクションしたりと、割と安定したものが多かったので、基本的に程よくホラーかつ、楽しんで見ることができていた。そんな中、用意されていた話を一通り見終えたところで一旦休憩を取ることになる。
「ウタハから装置の事は聞いてたけど……こういうのか……結構面白いね」
「でしょでしょ!」
「面白かったですけど、ホラー描写も結構ガッツリで時折心臓に悪いのが来ますね……」
特に印象としてやばかったのは、グルスガンマモンと呼ばれる、ガンマモンの中に眠るもう一つの暗黒の人格と言うべき存在が登場した回だろう。その回ではシールズドラモンやアルケニモンと呼ばれる、明確に人やデジモンを殺害した敵が出現しており、それらを前に窮地に陥ったガンマモンがこの姿に進化し、蹂躙の限りを尽くしていた。このグルスガンマモンこそが今作におけるデジモン達の住む世界、デジタルワールドで起こる異変を引き起こした今作における一連の黒幕とも言うべき存在であり、一度は完全にガンマモンを乗っ取ってみせるも、クオンタモンと呼ばれる、二つの世界の為にデジモン達をリアルワールドへと転移させていた存在の力を借りた宙によってガンマモンが復活、その後はガンマモンに敗北したことで彼に従う存在となることで決着がつくのだが、物語を畳むため、熱い展開が多めになっていることで終盤の展開はホラー要素は薄くなっている。故に、
「ズィードミレニアモン……あそこはやばかった」
「ヨミガエリ……ああ、あの回ね……」
苦々しい表情を思わず浮かべるチヒロ。その回では、事故のような形とはいえムーンミレニアモンと呼ばれるデジモンによって殺害された神野愛美は、ムーンミレニアモンが復活するための依代として一体化し、本人を装いながら婚約者の精神力を吸収してその時を待っていた。そして遂にその肉体を依代にズィードミレニアモンとして復活することに成功、次元の裂け目を生み出して全てを消し去ろうとするのだが、復活した影響で一時的に蘇った愛美の精神が、自分の心が弱点、そこを攻撃してほしいと懇願、宙達はトドメを刺す。それによってズィードミレニアモンはムーンミレニアモン本来の姿である結晶体に戻る。その身柄をどうするのか、それについて話が出ると、「もし何かあったら皆でどうにかする」と言い、宙がその結晶体を預かることになる。そして、本来の何も言葉を話さず、動くこともなくなった愛美の亡骸は、婚約者の腕に抱かれ、婚約者は悲しみの声を漏らす……という後味のすっきりしない、哀しいホラーらしい終わり方を見せる。
「……なんだかんだでいい感じに終わることが多かった中でぶっちぎりで後味悪い話でしたね……」
「終盤は話が連続しているから話自体がすっきりしてなくて次への引きへってなってもまぁわかるんだけど……いやぁどうしよう、夢に出ないかな……」
「……そういえば。一つだけまだ見てないのあったっけ」
「どんなの?」
「モルフォが見たいなら止めないけどこれは……って言ってたけど、でも大丈夫!永遠ノ記憶とかヨミガエリ以上にやばいのなんてそうそうないし!」
ふと、全部見終わった後で思い出したのか、まだ見てない、モルフォがあまり推してこなかった話が一つだけあったのを思い出す。まあここまで来たらいいかと、チヒロ達もそれを見ることにする。その話のサブタイトルは「ウメク蟲」。奇妙な触角を生やし、狂暴化して暴走するデジモン達が人々を襲うという凶行が起こるようになり、人間達と共存を進めるデジモン達がどうにか取り締まっていたのだが、ガンマモン達もその被害を受けてしまう。それについて調べていく内に、原因があるデジモンの鱗粉によるものだと判明するのだが、
『これはモルフォモンの鱗粉だな』
「ぶっ!?」
それに出てきたのがモルフォモンと呼ばれるデジモン。その名前を聞いた瞬間にハレは思わずエナジードリンクを噴き出してしまい、マキはなんでモルフォが良い顔をしなかったのかの理由を察し、コタマとチヒロは唖然となってしまった。
「あー、そういうことね……」
「そ、そうですか……そういう……」
今回の事件はモルフォモンの身に何かが迫っていることに対する救援信号のようなものだと判明。モルフォモンから「怖い、人間、やめて」という感情を鱗粉と共に植え付けられたガンマモンをどうにか正気に戻した宙は、清司郎と共に、モルフォモンがSOSを広げるために使用している今は使われていない人工衛星をウェズンガンマモンと呼ばれる四足歩行型の恐竜デジモンへと進化したガンマモンの狙撃によって破壊。それによってデジモン達の感染はどうにか止まり、モルフォモンも無事、閉じ込められていたパソコンを事態の収拾にあたっていたデジモン達が研究者から回収することで解放され、他のデジモン達も正気を取り戻すことで事件は解決するのだった。
(極限の恐怖、環境、か……)
偶然名前が一致しただけではあるし、そもそもモルフォは人間である。それはわかっている、わかっているし、モルフォがこれを見せようとしなかったのは、今のヴェリタスの雰囲気を見れば大正解だったと言える。しかし、それはそれとして。
(……いや、考えすぎか……はぁ、アニメの影響で変な考察しようとしてるな……もしこの能力を悪用しようとしたらどうなるか、だなんて)
脳裏に思い付いた、嫌な考えをチヒロは振り払うのだった。