転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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美食研究会とULTIMATE MARVEL VS. CAPCOM 3パロディ

「ここかぁ、祭りの場所は……」

「いや祭じゃなくてコラボカフェだけど」

 

その日、ゲーム開発部はあるゲームのコラボカフェの会場であるビルを訪れていた。そこは多くの学生達で賑わっており、店の中からは楽しそうな騒ぎ声が聞こえてくる。

 

「三対三でプレイする対戦ゲーム、マーブル&カプリコーン3……コラボカフェに来れる日がくるなんて」

(どう聞いてもマブカプですありがとうございました)

 

このキヴォトスには、前世にあったゲームのパロディと思われるゲームも多い。だからこそ、この世界はもしかしてなんかのゲームとかアニメが元じゃないの?という仮説を以前考えたことがあったモルフォ。だが、それはそれとしてパロディであってもそういうゲームを純粋に楽しむことも多い。このマーブル&カプリコーン3も同様だ。内容などからして、モルフォの立てた仮説に基づくならULTIMATE MARVEL VS. CAPCOM 3と呼ばれるゲームが大元なのだろうと予想している。

 

「アリスも見た事あります!ユズがとにかく強かったです!」

「私達も時々やってたけど……そういえばモルフォちゃんがやってるところ見ないよね、プレイしたことない?」

「いや、あるよ?あるけど家で腕が鈍らないようにやってる程度だからね……それよりいろんなキャラが出てくるから見てるだけで楽しくてお腹いっぱいになる類かな」

 

MARVEL VS. CAPCOM 3は、マーベルとカプコンの二社によるクロスオーバー作品で、それぞれの会社のキャラが登場し、それらを選択してチーム戦を行うというゲーム内容となっている。アイアンマンやキャプテン・アメリカ、リュウ、モリガン、ダンテといった代表キャラ達が集っており、まさしくお祭りゲーに相応しい内容に仕上がっている。そして、それと似たゲームと言えどその楽しさは据え置きになっているものも多い。故にモルフォもこのゲームはそこそこやってはいたため、こうしてコラボカフェが実際に開催されると聞いて皆で行くのを楽しみにしていた。

 

「……」

「ユズ、どうしたの?」

「え?ああ……ちょっと思い出しちゃって」

「何を?」

「うーん……前戦った子かな。ゲーセンで戦ったんだけど名前も姿も見れず仕舞いで……凄く強かったからちょっと残念だなって」

「ふーん、ユズにそこまで言わせる子ってそれはそれで興味あるね……」

 

あのユズにここまで言わせる在野の実力者がいるというのか。このキヴォトスも広いものだ。

 

(でも、よくこれコラボカフェなんてやれてるね……しかも、マブカプ3の方はアーケード化してなかったと思うけど……ここはこっちの方が優れてるな……)

 

そもそもが二社のコラボゲームということであちらはかなり難しそうだが、こちらに出ているゲームは一社から出されたコラボではない対戦ゲーム。後はキヴォトスと言う土地なのもあってかコラボカフェを開きやすいところがあるのかもしれない。立地的にゲヘナに近いのが気がかりといえば気がかりではあるが。

 

「そういえば……ここに来る途中も騒がしかったね」

「はい!ゲリラ公演?なるものをやってました!」

 

そして、そんな立地故なのか、ここに来るまでも騒がしかった。五人の目的がコラボカフェだったためにそこまで興味はなかったが、ゲリラ公演なるイベントをやっていたようだ。

 

「あー、なんだっけ……どっかで見た事ある白い鳥みたいな―――」

「はい!ぺロロ様ですよ!!」

「ひっ!?」

 

どこかで聞いたような元気な声が響く。その声にユズが驚いたように跳ね上がり、モルフォの背中に回って彼女の体に抱き着く。アリス達も驚いたように声の主を見ていたが、その顔を見てモルフォが彼女が誰なのか気付く。

 

「あ、ヒフミさん!?どうしてここに?」

 

そこにいたのはなんとヒフミだった。トリニティの生徒であるはずの彼女が何故こんなところに。と、その手に大量のペロロのグッズが握られているのを見て、大体の事情を察する。

 

「あ、これを見てください!丁度さっきまでペロロ様のゲリラ公演がやっていまして……ふふ、今日はたくさんのペロロ様に囲まれて幸せです!」

「ぺ、ペロロ様って……確か、あのモモフレンズ?のだっけ……」

「はい!あなたも好きですか!?私はペロロ様が一番大好きです!!」

「え、えっとぉ……まあ、そうなんだろうなって……」

 

やはりヒフミはペロロを求めてここまで来ていたようだ。そして、ペロロがどういう存在かを思い出したモモイの手を握り、目を輝かせて詰め寄るヒフミ。その圧の強さにモモイが若干冷や汗を流しながら助けを求めるようにモルフォへ視線を向ける。

 

「あ、はは……その辺にしておいてあげてください、ヒフミさん……それで、ヒフミさんはどうしてコラボカフェに?こっちはモモフレンズとは関係ありませんよね?」

「え?ここコラボカフェやってたんですか!?」

「マーブル&カプリコーン3っていうゲームのコラボカフェなんですが……」

「え、えっと……モルフォちゃんの姿が見えて、でどこ行くのかなって見てみたらカフェが見えて丁度お腹空いてたのもあって……」

 

どうやら知り合いの姿が見えたのと、カフェをやっていたから来ていただけで、ここがゲームとのコラボカフェだとは気付かなかったようだ。ゲームとは明らかに別物のペロログッズを持つヒフミの姿はいろんな意味で浮いているが、まあ人間は多趣味なものだ。

 

「えっと、バッグまではしょうがないですけど、普通のグッズとかは見えない方がいいのでは?一応ここ、マブカプの……」

「モルフォちゃん、マルカプだよ」

「……そうでした。マルカプのファン達がほとんどだと思うので……」

 

そこはマーベルよりもちゃんと繋がってるんだからマブカプで通しておけよ!と内心ツッコミながら訂正する。筋金入りのペロロファンであるヒフミとしてはモルフォの指摘の御尤もさは瞬時に理解したようで、袋を探すのだが、

 

「うう……ありません……」

「……これ使います?」

 

待機状態のシールドの中から大きな無地のエコバッグを取り出す。先日、エンジニア部に点検してもらった際にヒビキから「小物入れがあると便利だから」という理由でつけられた機能である。ちなみに現在はサイズの都合上平べったいものしか入れられず、ほとんどエコバッグやちり紙専用となっている。

 

「い、いいんですか?でも……」

「さすがにこの場所でペロロを見せる方がまずいので……帰る時に返してもらえばいいですから」

「ご、ごめんなさい……」

 

本音を言えば帰りでも見せびらかさないように持っていってほしいところだが、それはヒフミの善性が許さないだろう。まあその時はその時考えればいいかと一旦先延ばしにすることにして、アリスを見る。

 

「……ここってカフェとしてはどうだっけ?」

「値段自体はそこそこですが結構ボリューミーだと書いてました!」

「おお、ちょっとだけネットでメニュー見てはいたんだけど楽しみだったんだよね!さっそく行こう行こう!ヒフミさんも一緒に!」

「あ、ありがとうございます」

 

アリスの言葉を聞いたモモイが折角ならとヒフミも誘う。モルフォの友達なら大丈夫だろうという信頼なのだろう。そんなモモイの姿にヒフミも安心したように、六人は店の中へと入っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、美味しかったぁ」

「凄く美味しかったですが……皆さんの反応を見ていると横でずっと解説を聞いているばっかりなのが申し訳なくなってきました」

 

少しして。無事に食事を終えて店を出てきたゲーム開発部とヒフミ。しかし、ヒフミの表情は申し訳ない様子でいっぱいだった。というのも、ゲーム開発部は食事の内容に「これあれじゃない?」だの「ここの部分は確か……」だの、料理に秘められた元ネタの話に盛り上がっている中、ヒフミは仕方のないことではあるが完全に置いてけぼりになっていた。その度に横でモルフォやアリスに解説してもらい、ユズ達にマニアックな部分の補足をしてもらっていたのだが、説明ばっかりされていて自分から話を振れないという状況に申し訳なさを感じてしまったようだ。

 

「うーん……でも、布教活動をしている、という感覚であればそこまで私達も変なことをしているわけじゃないと思いますが……」

「そうそう……いやむしろ結構ガッツリ言いすぎてないかなーってこっちの方が心配になってきちゃったかも……」

「いや、そこは気にしてませんよ?どうしても布教しようとなると激しくなっちゃうのは当然ですし……でも、モルフォちゃん達がそこまで楽しく語るゲームはちょっと気になりますね……」

「じゃあ下のゲーセンでやりましょう!このカフェはすぐ下がゲーセンになっているんです!」

「さすがゲーム開発部の皆さん、ゲームについては完全に把握していますね」

 

そんなヒフミに、沼に沈めようとアリスが誘いの手を伸べる。ここまで誘われたら、やらなければ無作法であるとヒフミも当然その手を握った、その時だった。

 

「……成程。これは良いことを聞きました」

「……ん?」

 

店の前で、誰かの声が聞こえてくる。六人が視線を動かすと、ゲヘナの制服に身を包んだ四人の少女がいた。

 

「えっと、私達に何か?」

「私達は美食研究会……美食を追い求める者ですわ」

「美食研究会?」

「そういえばカスミさんから聞いたことが……」

「……いやなんで温泉開発部と面識あるの?っていうかなんて言ってた?」

「……人を縛って拉致するとか聞きました」

「それは誤解ですわ」

 

長い銀髪が特徴的な赤目の片翼に尻尾を生やした少女、黒舘ハルナ。金髪から角を生やし、尻尾を持つ少女、鰐渕アカリ。灰色の髪に黄色い瞳、そしてこちらも角を生やした少女、獅子堂イズミ。赤いツインテールと、翼と角を生やした少女、赤司ジュンコ。これら四人からなる美食研究会といえば、先日カスミから聞いた集団である。モルフォからすれば明らかにゲーム開発部と温泉開発部以上に関係が薄い集団である。なのに良いこととは何なのか。

 

「私達は美食研究会の名の通り、美食を探求しています。今回のコラボカフェもその一環。ですが……一つ、大きな壁に当たってしまいました」

「はあ……」

 

モルフォが人を縛って拉致するという発言をしたことでモモイ達が警戒した様子で美食研究会を見る中、ハルナはモルフォの目を見る。この面子の中で一番話を通しやすいのが彼女だと理解したのだろう。

 

「それは、私達はこのゲームを知らない、ということです」

「「「え?」」」

「過去のコラボカフェの評判なども見せてもらいましたが……料理に対しては味、量についても文句はないとお聞きしました。ファンからすれば細かい気遣いなども行き届いていると……しかし、それは裏を返せば普通の人では楽しむことができないということ」

「いやコラボカフェなんですから基本的にはそのファンを客層にしているのでは……?」

「その通りです」

 

何を当たり前の事を、と思いつつも、何となく美食研究会のリーダーらしき少女が言いたいことはわかった。コラボカフェのメニューを楽しむために原作知識を仕入れたい、ということなのだろう。実際、モルフォ達もそれで楽しんだ面はあり、モルフォ達がいたからこそ初見だったヒフミも楽しめたし実際にゲームをする導線を得た。しかし全員元ネタを知らない、となると純粋に楽しめるかどうか、は疑問となってくる。

 

「そのため、先ほどまで下でゲームに興じていたのですが……」

「よくわかんなかった!」

「キャラが多すぎてどれがどう強いのかが中々……」

「負けっぱなしだったわ……」

 

そのための準備としてまずはゲームを知ることから始めようとしたようだ。しかしその結果は散々なものらしく、このままではいつまで経っても美食に辿り着けないと判断したため、プレイヤーを捕まえて師事を仰ごうとしたのだろう。

 

「……成程、ゲームについて教えてほしいと……」

「ええ、その通りです。美食を極めるためにも、私達はこのゲームの事を―――」

「……それじゃダメだよ」

「「「「?」」」」

 

だがここで、急にモモイが口を開く。何が駄目なのか。四人がモモイを見ると、モモイは険しい表情で告げる。

 

「コラボカフェのためにゲームをやろうってのがそもそもの間違い!コラボカフェなんてやってるゲームの方が少ないし、そもそもコラボカフェの為にゲームが出ているわけじゃない!ゲームを楽しもうという気持ちすらないのにその先のコラボカフェにたどり着けるわけがない!」

「!!!」

 

モモイの発言に、ハルナがはっとした様子で目を見開く。食という観点で常に追い求めていたが故に、肝心なことを見失っていた。そう言いたげなその表情を見て、モモイが勝ち誇ったような笑みを浮かべる。

 

「……皆さんが食事を凄く楽しみにしていることはわかりました。アリス達も、今日の食事は凄く美味しくて楽しいものだと思います。ゲームは食べ物ではないので食べることはできませんが……それでも、食事に劣らない程楽しいものだと思います。どちらも楽しむわけにはいかないのでしょうか?」

「……それは……まあ、そうなんだけど」

 

アリスの指摘にバツが悪そうに頬を掻くジュンコ。薄々だがゲームはゲームとして楽しむべきではないかとは思っていたらしい。

 

「でもゲームが難しくて……」

「わかりました!ではアリス達が教えます!」

「まあ、一人も五人も……変わらんか」

「いや結構変わりませんか……?モルフォちゃん達が大丈夫ならいいんですが……」

 

そして、ヒフミだけでなく美食研究会も連れてゲームセンターへと向かうことになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

モルフォ達がそれぞれ一人ずつ分かれ、美食研究会とヒフミにマルカプ3を教え始めて数十分後。

 

「こ……こうですか!?」

「はい、そうです。フェザーガールはそうやって、ゲージをマックスで保つのが大事です」

 

ヒフミにレクチャーしてるユズが、あるキャラの操作を教える。五本ある特殊ゲージをマックスにした状態で倒されると、閃光を纏った巨大な翼を生やし蘇生強化される。通称ライトフェニックスというこの状態は、このゲームでも悪名高いキャラである。

 

「……このキャラ、一通り強い要素が揃ってるし、強化されたら余計手を付けられなくなるし……本当にやばいんですよね……」

「そ、そうですね……他のキャラと比べても何か、頭一つ抜けてるというか……どうしようもできないんですか?」

「……あるには、あるかな。ただ……」

「えっと、ユズちゃん?」

「あ……いや、何でもないです。それにしても……なんか、ざわついてるような」

「そういえば……?」

 

ふと、画面から視線を周囲に向けたユズは見ている他の学生たちが妙にざわついていることに気付く。彼女達の視線の先には、他のゲーム開発部の面々にゲームを教えてもらっていた美食研究会の姿があった。

 

「それでこのキャラが……」

「へぇ……そんな技あったんだ」

「ここはこんな感じでサポートが繋がります!」

「ありがとうございます~」

「ねえねえ、カフェで美味しかったのって何?」

「えーと、私達が食べてたのは……って、ゲームは……?」

 

ちゃんとキャラ性能やコンボ、キャラの魅力などを教えてもらい、感心する美食研究会の面々。ゲームの楽しさに気付き、笑顔でプレイしていく様子を見ると、思わず笑みが零れてくる。だが、

 

「おいおい、美食研究会が来るってことはあのカフェ爆破されてしまうのか……?」

「ちゃんと準備してる……この後実食する気ですよ」

「で、でも今回も凄く美味しかったし……もしかしたら」

 

周りの生徒達から聞いた言葉に思わず真顔になるユズ。ヒフミの顔を見ると、ヒフミも少し顔が引き攣っている。そんな中、

 

「―――大体わかりました。それでは実戦といきましょう。モルフォさん、本気で来てください」

「ええ、いいですよ。本気のチームでいきます」

 

モルフォと、操作などを一通り把握したハルナのバトルが始まる。見物人たちが周囲に集まり始める中、気を利かせた店員が大きなモニターに二人の戦っている画面を中継で流す。

 

「……え?このチームって」

「?モルフォちゃんのチームですよね?戦ったことないんですか?」

「いや、モルフォの本気のチームってカロリー使うからあんまりって言ってたから……でも、これって」

 

そこには、速度に秀でた変身ヒロインの少女、カメラを持つ戦場カメラマンのような少女、そしてレッサーパンダという謎のチームを組んだモルフォ。それに対して先ほどヒフミも使ってて強いなと感じたフェザーガールを主軸とした、強キャラで固められたチームをハルナは組んでいた。腕前では初心者に毛が生えた程度ではあるが、そこをキャラ性能でカバーしていこうとしているのだろう。

 

(ビューティフルジョー、フランクさん、ロケットラクーンっぽいチーム……この組み合わせ知ってこっちでやれるかもって知って結構頑張ったんだよねぇ……相手はフェニックスもといフェザーガール……脇を固めてるのも中々の)

「終わりだ……」

「誰か知らないけどあれが本気って終わってる……」

「カジュアル勢かな?」

「レッサーはサポートじゃ強いんじゃなかった?一応……」

 

二人の勝負が始まる。レッサーのアシストもといサポート技である振り子、他のキャラの連携や尖った性能で戦術を細かく組み上げてハルナを翻弄し、技などの出が速いヒロインを主軸に攻めながら、レベルシステムを採用している後続のカメラを持つ少女を育てていく。ハルナも、読み合いや小技などでは分が悪いと判断し早々に性能で押し切る選択を取る。だが、その光景を見続けるユズの表情は険しくなるばかりだ。

 

「あの、ユズちゃん?本当に大丈夫ですか!?」

「知ってる……このチーム、知ってる!」

「え?」

「さすがにお強いですわね……ですが勝負はここからですわ。このゲームはチームメンバーが少なくなればなるほど、ファクターと呼ばれる一試合に一回だけ使えるパワーアップ要素が強くなる。そこに、フェザーガールのリザレクションによる強化が入れば、その相乗効果で十分キリングをすることが可能になります……そして、既にゲージは最大値。さあ、どうしますか?」

 

格ゲーではキャラが死なないように立ち回る。だがフェザーガールは死んでも構わないキャラだ。つまり、好き勝手に動かせるということで相手に行動を読まれにくくなる。その利点は、初心者であっても熟練者であっても十分活かすことができる。そのせいでモルフォの残りのチームはカメラ少女とレッサーパンダのみ。そしてそこで、フェザーガールが倒れる。

 

「ああ、ライトフェニックスが」

「蹂躙だなこりゃ……この勝負みたいにカフェも美食研究会に焼け野原に……」

「……あのキャラ凄く強かったですもんね、やっぱり厳しいんでしょうか」

「……いや。この勝負、モルフォの勝ちだよ」

「え?」

 

それを見た観客達は、完全にハルナの勝ちだと思い込んでいた。ただ一人、ユズだけがある確信を持って否定していること以外は。

 

「……ん!?」

 

だがその光景は、ライトフェニックスをK.O.してみせたモルフォの勝利で終わる。今、一体何が起こったのか、観客達がざわついており、ハルナも、いつしか対戦を見学していたモモイ達も全員、呆然としていた。

 

「え?今リザレクションが……」

「前転の無敵だよ」

「ユズ?」

「リザレクションの際に攻撃判定が出て相手を吹き飛ばす。だからライトフェニックスは強いし、安全に復活できる。だけどそれは、前転の無敵判定を利用すれば避けられる。そして、そこに対空投げ技のハイパーコンボを叩き込む。それによって、ライトフェニックスは動く間もなく沈黙する」

「……いやいやいや!?そんなテクニック初めて聞いたよ!?」

 

まさかのテクニックでライトフェニックスを仕留め、勝利してみせたモルフォ。無言になり、顔を見合わせていた観客達だったが、ユズの解説を聞いたことでその実態を把握。直後、

 

「すげーぞこいつ!?」

「あんな技が……あれ?じゃああのキャラとかでもできるんじゃ」

「そうだよ、あいつも無敵あんぞ!?」

「いや、それよりもレッサーこんな強かったの!?」

「ねえねえ、確かあのキャラのイメージデザートとかあったじゃん、食べにいかない?」

「あ、行こう行こう!」

 

ゲーセンの中は大盛り上がり。モルフォの魅せたプレイに夢中になっていく中、カフェの方にもぞろぞろと移動し始める面々や、今のテクニックを再現しようとする者達で溢れていく。これがきっかけとなりこのライトフェニックスはダイヤを落とすことになる悲しき事態が発生するのだが……そんな中、我を取り戻したハルナは見つめていたが、やがて口元に笑みを浮かべる。

 

「成程。こういった熱狂も含めてのもの、ですか……ふふ、負けてしまいましたが、こういう一体感は悪くないですね。これは……カフェの方も期待が膨らむというもの。貴重な経験をさせていただきありがとうございました」

「いえ、こちらこそ楽しかったです」

「ふふ、ゲーム開発部、その名前覚えておきましょう。また縁があればお会いしたいですね。それでは」

 

敗者となったハルナは、潔く去ることを決める。楽しそうにゲームの話をしながらゲーセンを出ていく彼女たちの次の目的地はコラボカフェなのだろう。モルフォも席を立ちあがり、今のテクニックを再現しようと頑張る学生たちをすり抜けて皆の所に戻る。

 

「うわぁ、研究始まっちゃったよ。これダイヤ動くんじゃない?」

「確かに……リザレクションがあるから許されてたHPの低さだったのに、即死できるってわかったら」

「でも、凄かったです!アリスもあんな感じで戦えるようになりたいです!」

 

戻ってきたモルフォを出迎える面々。そんな中、ユズがモルフォの手を握ってくる。

 

「ユズ?」

「……あの時の人。モルフォだったんだ」

「え?あの時って?」

「ミレニアムに入学する前……ゲームセンターでマルカプをやらなかった?ほら、すぐ近くにサイクリングロードがある駅前のゲームセンターで……」

「あー、そういえばそんな駅に一回だけ行ってたような……ミレニアムに入学しようとは決めていたけど、一回見てみようと思って少し遠出してたんだっけ。でもなんでそのこと……を……え?」

 

モルフォの顔を見るユズ。その顔を見ながら、記憶を手繰り寄せたモルフォは、ユズと過去にこのゲームで偶然にも対戦していたことに気付く。あの時は対戦相手の事も気にしていなかったし、丁度アーケードの前に誰か座ってたので乱入して一戦だけやってからミレニアムを見に行こうとしていたのだ。それで一戦だけやってゲーセンを後にしたのだが、

 

「あ……そうだ。あの時LP潰しやったのがユズだったんだ」

「やっぱり……!」

「え?二人とも過去に会ってたの?」

「全然知らなかった……」

「いや私も覚えてなかったし……」

 

まさかその時に会っていたとは。こんなところで初めて二人が会った時のエピソードを知ることになるとは思わず、ゲーム開発部の面々は驚く。彼女たちの反応を見ながら、ヒフミも楽しそうな表情を浮かべる。

 

「こういう集まりっていいですよね」

「ヒフミさんは部活とかは?」

「やってないです。でも、いつかはそういうのを探してみてもいいかもしれませんね」

「きっと見つかりますよ」

 

そして、近いうちにヒフミもある集団に所属することになるのだが、それはまた別の話。そしてこのコラボカフェは美食研究会によって爆破されることはなかった。

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