転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

65 / 208
ゲーム開発部とバニーチェイサー

 

「……」

 

モモイ達が眠るゲーム開発部の部室。珍しくモルフォも泊まり込みで眠っている中、アリスが目を覚ます。周りに視線を向けると、寝相が悪かったのか転がり、モルフォに密着した状態で寝ているモモイや静かに寝ているミドリとユズの姿があった。

 

「……まだ早いですね」

 

時計を見ると、まだまだ早朝だ。しかし目が覚めてしまった以上はどうしたものかと考え込む。昨日は遅くまでゲーム開発を行っていたため、皆もまだまだ疲れていることだろう。それを起こしてしまうのも忍びない。

 

「……そういえば、以前ユズが見つけた新しいコンボ、私も練習をしておいた方がいいかもしれません。ネル先輩からも度々挑まれてますし……しかし、これは皆でやった方が楽しいです、では……」

 

であればいつぞやのようにゲームをプレイしながら皆が起きるのを待とうかとも考えたが、折角ならと途中まで作ったゲームを皆が起きるまでにできる範囲でデバッグでもしておこうとパソコンを開く。

 

「……?」

 

と、確認をしていたアリスが違和感を感じる。一体何に違和感を感じているのかと見直してみると、

 

「……え、これって」

 

先日、チヒロらに作ってもらったセキュリティが破壊されていた。しかもそれだけではない。ゲームにダウンロードされた形跡があった。つまりこれは、

 

「た、大変です!」

 

開発中のゲームの漏洩。あまりの非常事態に飛び出したアリスの大声に、モモイも含めて全員が目を覚ます。一体何事かと四人がアリスを見ていると、アリスがモルフォに飛びついてくる。

 

「ぐぇっ」

「大変です!ゲームが……ゲームが誰かにダウンロードされてます!!」

「……はぁ!?」

「「え!?」」

 

モモイを潰しながらモルフォに飛びついたアリスの放った言葉。それを聞いたモルフォが一瞬理解しきれずに無表情になっていたが、次第にその言葉の意味を理解すると、ミドリ、ユズと共に驚愕の表情を浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……成程、ね……』

 

早朝からヴェリタスに乗り込んだゲーム開発部。当然その理由はアリスが発見した異常であり、それが可能なハッカーと言えばこのミレニアムでも限られてくる。ことゲームに対しては真摯に向き合う彼女達に限ってそれはない、とは思いつつも能力的に可能であるヴェリタスがその追及を受けてしまうのはある意味仕方のないことであり、ハレが五人から追及を受けている間にマキがチヒロに救援を要請。出先にいたため、電話で対応することになったチヒロはゲーム開発部から今回の一件について聞き、大きくため息をついていた。

 

『マキ、ハレ、コタマ。念のために確認するけど、本当に何もやってないんだよね?』

「当たり前じゃないですか!?」

「ゲームのフラゲなんかしない……海賊版だってやらないよ」

「それに、未完成のゲームを抜く意味がないし……」

「だよね……」

 

断固として抗議するヴェリタス。とはいえこれまでの行いとかを考えると疑われる事自体はある意味仕方のないことではあるが、四人の性格を知っているモルフォ達としてはむしろヴェリタスが否定してくれたことにほっとしている側面もある。一応やったかどうかは念のための確認という意味合いが強く、本題はむしろここからだ。

 

「でも、それなら一体誰が?」

「アリス、ダウンロードされてたのは一回だけなんだよね?」

「はい。だから犯人は一人だと思うんですが……」

『あのセキュリティをどうにかできる人は限られてる。それこそ部長とかぐらいだけど……さすがに部長だってこんなことはしないはず』

 

候補としてヒマリが出てきたが、彼女が可愛い後輩達が気に入らないことをするわけもないだろう。そもそも、ゲームが未完成なのだから、マキも指摘した通り、現段階でダウンロードする必要がない。つまり、

 

「というよりも……部長じゃなくてもゲームが制作途中であることを知っている人だったら仮にセキュリティを抜ける実力があってもやる理由がないと思う」

「しかも今回、ゲームが保存されていたのはミレニアム内のサーバーですよね?つまり学内からしかアクセスできないようになっている」

『一回、ダウンロードされた時間から半日、いや一日遡ってミレニアムに外部から入ってきた人を洗い出してみて』

 

チヒロの指示を受けて監視カメラの映像を確認し始めるヴェリタス。しかし、一通り確認したが怪しい人物は誰もいない。

 

「怪しい人物はいない……ということは外部の人間じゃない?しかしミレニアムにいる生徒でそれが可能な人というと……」

『……じゃあ、彼女かもしれないね……』

「「「「「彼女?」」」」」

 

さらに大きなため息が電話越しに聞こえてくる。チヒロ本人としてもどこかそうであってほしかったと思っているようなその呟きに、モルフォ達も顔を見合わせる。

 

『……黒崎コユキ。セミナーをクビにされた問題児で、様々な問題を引き起こした白兎と呼ばれる一年生さ……』

 

 

 

 

 

 

 

「……成程……」

 

その後、ヴェリタスによってコユキがミレニアムのサーバーにアクセスし、セキュリティを滅茶苦茶に突破した上でゲームをダウンロードしていったのだと判明。だがそのコユキはミレニアムのどこにもいないことがわかり、どこへ行ったのか、その情報を求めてセミナーにマキを連れて向かったところ、六人の相手をしたノアが難しい表情を浮かべていた。

 

「まさか、コユキちゃんがそんなことをしていたなんて……」

「ノア先輩!居場所を知ってるなら教えて!」

「えーと、実は……コユキちゃんはゴールデンフリース号に向かっているんですよね」

「ゴールデンフリース号?」

 

一刻も早くコユキを見つけ出してわからせなければならない。普段のゲーム開発部とは全く違う怒りの形相を前にノアも苦笑を隠すことができない。そして彼女自身コユキの居場所は把握しており、ゴールデンフリース号の名を出す。

 

「オデュッセイア海洋高等学校が所有する船で、ランク制のカジノを設けているんです。コユキちゃんはそこに、セミナーの名義で債権を大量に無断発行して向かったようで」

「なんて?」

「セミナーの名義で債権を大量に無断発行しまして……」

「なんてことを……」

 

ゲームを割るなんて許されざるよというテンションで来ていたが、下手をするとそれ以上のコユキの罪状にモモイは思わず表情を引き攣らせる。ゲーム開発部で何かをやらかす場合、その割合はモモイが起点になっていることが多いこともあり、やらかしの具合の酷さに思わず正気に戻ってしまったようだ。

 

「なのでユウカちゃんの方からC&Cに依頼して、コユキちゃんを捕まえようと潜入してもらっているんですよね」

「あー、そういうことなら私達がネル先輩達の邪魔をする必要も……」

「何言ってるのお姉ちゃん」

「ミドリ?」

「大切なゲームを盗まれたんだよ?骨の数本は持っていかないと駄目に決まってるじゃん。私達の手でとっ捕まえてやらないと」

「ミドリ!?」

 

怒りはわかるけどそこまで酷いことはどうなの?とモモイの表情が再び引き攣っていく。だがミドリの表情は真剣そのものだ。そしてそれは他の面々も同じで。

 

「ゆ、ユズは……」

「骨はやりすぎだよ、ミドリ」

「そ、そうだよね……」

「徹底的に縛り上げて数日は吊るしておこう」

「それも酷!?あ、アリス!さすがにこれは」

「そうです!やるなら一瞬です!スーパーノヴァの最大出力で悪を成敗します!!」

「それはダメ―――!!!」

 

怒りのゲーム開発部を逆にモモイが止めるという真逆の現象が起こっていた。ユズとミドリは百歩譲っても、アリスのそれはアウトである。スーパーノヴァの最大火力を生徒が受けたら危険が危ないのだ。

 

「モルフォ!モルフォは……」

 

こうなった以上、最後に頼れるのはモルフォだけだ。そしてモルフォはモモイを見ると、

 

「コユキを潰す……」

「やめてェ!!モルフォ!!」

 

静かにそう言い放つ。完全に味方が消えてしまったモモイを見ながら、少し思案していたノアが妙案を思い付いたとばかりにスマホを取り出す。

 

「あ、では今からユウカちゃんに電話しますね」

「……そういえばユウカ先輩はどこに?」

「席を外してるんですが……今回の後始末とか諸々で。皆さんがゴールデンフリース号に途中乗船できるように掛け合ってみますね」

「できるんですか!?」

 

何と、ゲーム開発部が船に乗り込めるようにしようと言い出すノア。そんなことができるのかと思わずモモイが聞き返すと、ノアは笑って答える。

 

「そもそもC&Cが潜入という形をとっているのは、ゴールデンフリース号からすれば客のコユキちゃんを拉致する形で連れ帰るという事情があったんです。なので、客が客を連れていくってなると尾を引くかもしれない……でも、既にC&Cが潜入している今であれば、表向きゲーム開発部の皆さんが客として潜り込んで捕まえた後、C&Cにコユキちゃんを渡してそのまま……ということもできるかもしれません」

「成程!それでユウカの反応は?」

 

ノアの作戦に、ゲーム開発部も船にこれで乗り込んでコユキを捕まえられると希望の色が浮かぶ。とはいえ、これでユウカが首を縦に振らなければそれも叶わない。そして結果は、

 

『わかったわ。今回は皆にも迷惑をかけているみたいだし……これまでのゲーム開発部の実績もあるし……ゴールデンフリース号に乗船する許可は出すわ。そのために必要な資金もこちらで工面するから、客として潜入してC&Cと協力してコユキをとっ捕まえてちょうだい!方法とかは任せるけど、ゴールデンフリース号は明日出るそうよ!それまでに間に合わせて!』

 

何と、乗船許可が下りる。アビドスや廃墟での実績を評価されて出されたという、ゲーム開発部として喜んでいい内容ではないが、とにかくこれで第一関門はクリアした。ゲーム開発部は顔を見合わせると、笑顔で頷き合う。

 

「えっと、やりすぎないようには気を付けてくださいね」

 

その様子を見つつ、ノアは苦笑するしかないのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。ゴールデンフリース号の中のカジノには、様々な人たちがカジノに興じていた。獣人やアンドロイド、はたまたどこかから乗り込んできたのかバニー服の少女達が。このゴールデンフリース号に乗り込む女子生徒は、バニー服を着るという決まりがあるのだ。なんでも、所属している学園がばれないように、という配慮である。だがそのバニー服は個人で用意する必要がある。故にゲーム開発部の面々はエンジニア部を頼り、ヒビキや手伝いを買って出たコトリとウタハも協力したことで一日かけて用意してもらい、潜入することになったのだが。

 

「ねーなんか違和感凄いんだけど」

「モルフォ、似合ってますよ?」

「まじでー?」

「いや、割と冗談抜きで。男装の時も思ったけどモルフォは衣装とシチュエーションで変わる人だと思う」

 

桃、緑、青、赤、橙の五色のバニースーツを着た少女達が欲望渦巻くカジノへと入っていく。既に熱狂するフロアの放つ熱気に思わず圧倒されそうになるが、いつまでもそうしているわけにはいかない。生唾を呑み込みながら、五人はゆっくりと入っていく。

 

「とりあえず、どうするの?」

「普通に客として振る舞いながらコユキを探そう。だけど……」

 

ちらと、モルフォがモニターを見る。ここではランク制を採用している。そして最高ランクのSともなれば他から見れば無法レベルの権限を手に入れることが可能となる。Sには劣るもののAランクともなればかなりの乗客として持て囃される。コユキを捕まえることを考えれば、今の最低ランクの自分達は上に上がった方が都合はいいのだが。

 

「……この金、ユウカの金なんだよね」

「軍資金として渡されてはいるけど……さすがにこれは。いや、怪しまれたらやばいからちびちび使ってくことにはなっちゃうけど……」

「……コユキを探しつつ、一旦フロア全体を見て行こう。どういうのがあるのか見るぐらいなら不自然じゃないからそこは問題ないはず」

 

そうするために勝ち目のあるギャンブルを見つけるのも兼ねて、一旦フロアを見渡していく。だが、コユキもおそらくは一通りチェックするために移動しているのだろう。一周してもそれらしい人物は見つからないまま、五人は一周を終えてしまう。

 

「あったのはルーレットにスロット、バカラ、ブラックジャック、ポーカー、マネーホイール……」

「ランクを上げるにはどうすればよいのでしょうか?」

「ネル先輩達は……?」

「……連絡つかず、まあこっちから連絡することはできないから、そこは待つしかないかな」

 

ネル達も潜入し始めているだろう。それに今回は先生も同行しているらしい。なんでもC&Cが任務の中で爆破や破壊行為をよく繰り返すせいでユウカがお目付け役として先生を付けたらしい。加えてゲーム開発部を行かせたのも、ユウカの中ではモルフォ達がいるならブレーキをかけてくれるかもしれないという思惑もあったりする。

 

「……よし、決めた。皆……当たるスロットを探すよ」

「……え?」

「当たるって?」

「決まってるでしょ」

 

じゃあどれをやろうか。そう考えた時に、モルフォは少し考えてその対象をスロットにする。何故スロットにするのか、どうして当たると断言しているのか。四人が困惑していると、モルフォはにやりと笑い、

 

「目押しできるスロットを探す」

 

そう宣言するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「コイコイコイコイ……うわー!?また外れですかー!?」

「はーっはっは!嬢ちゃん派手に散ったな!じゃあ俺は勝ち分を貰うぜ」

「くー!?でも、今日は調子がいいんです!Aランクまで来たんですよー!」

 

ルーレットで大敗北した、黄色いメッシュの入った桃色のツインテールの少女が頭を抱える。白を基調としたバニースーツを着た彼女は、それでもまだまだとコインをつぎ込んでいく。その隣に座っていた犬の男性は、今の勝負で手に入れた分のコインを抱えると、

 

「俺は今のツキが生きている内に他で一山当ててくるぜ、嬢ちゃんも頑張れよ、もしSになったらドリンクの一杯でも奢ってくれや」

「ふふふ、いいですよ!その時を楽しみにしていてください!」

 

少女と言葉を交わして去っていく。直後、入れ替わるようにオレンジの髪の少女とアッシュグレーの長髪のバニーガールの少女が座る。

 

「むー……ここは」

「11にストレートアップで!」

「!?」

 

と、隣に座っていた二人の少女が突然に大量のチップを賭け始める。オレンジの髪の少女はアッシュグレーの髪の少女の言葉に従って山のようにチップを積み重ねていく。その光景を見てざわつく観客達。ツインテールの少女も唖然とした様子でそれを見ている。

 

「おい、こんだけ山のようなチップをストレートアップだと……?まさか全賭けか!?」

「まさか、本当に当てるのか?」

「当たったら……一発でSランクだぞ?」

「見ろ、こっちのオレンジの子、確か他の奴と一緒に来てスロットで一山当ててAランクになった……」

(スロットで!?何したんですか!?……って、あああああ!?)

 

そこで、ツインテールの少女は気付く。そのアッシュグレーの髪に青いバニースーツを着た少女がアスナであることに。つまり、C&Cがこの船内にいて、自分を探そうとしているのだということに。

 

(ま、まままずい!アスナ先輩ってことは……しかも今、Aランクって……)

 

そう、アスナはモルフォ達と合流した後、モルフォと一緒にスロットに訪れていた。そしてゲーム開発部とC&Cが探していたコユキこそが、このツインテールの少女である。

 

「く……22にストレート!!」

 

だが、ツキは自分も来てる。負けも多少あったが、その負けを大きく上回るレベルで勝ち、Aランクに上がったのだ。ここでSランクになれば、Aランクのアスナでは捕まえることはできない。自分が捕まらないようにするにはこの勝負に勝つしかない。そう決意し、全ての資金を投入するコユキ。その結果―――

 

「じゅ……11!!?」

「うあぁああああ──なんで──!?」

「「「うおおおおおおおおおお!?」」」

 

見物していた観客達の歓声が上がる。ゴールデンフリース号の職員であるバニースーツの少女達が拍手しながらやってきて、大量の報酬を手に入れ、Sランクへと辿り着いた二人を立たせてその手を握り、上に掲げて祝福する。

 

「いえーい!」

「あ、ありがとうございます」

 

この金の元手がユウカのポケットマネーであるため、素直に喜べずにいたものの、それでも笑みを浮かべて周りに応えるモルフォ。と、そこに先生とゲーム開発部と同じくバニー服に身を包んだC&Cが集まってくる。

 

「アスナ!?お前ここにいたのか!?」

「あ、リーダー!見てこれー!Sランクだって!」

「……お知合いですか?」

「あ、はい。この人たちと皆で一つの軍資金を使って頑張ってきていたので。えっと、Sランクになったのならお目こぼしってできますかね……?」

「はい、もちろん」

 

モルフォは知らないが、ネル達も潜入の過程でゴールデンフリース号の警備員を叩きのめしたり、施設を爆発させたりといったことをしていた。幸いして誰が侵入したかまでは明らかとなっていないものの、そういう意味もあってゴールデンフリース号に搭乗しているオデュッセイアの生徒達も警戒していたのだ。だが、モルフォの言葉を聞き、一瞬にしてその警戒心を解く。

 

「でも、正直なんか騒ぎになるかなって思ってたんだけど、先輩達静かに出てきたからびっくりしちゃったよ」

「あはは……でも、今回は静かにやってって言われてたからね。皆、ちゃんと言うことを聞いてくれたよ」

「先生の言うこともありますし、それにモルフォちゃん達がいますからね」

「さすがに皆もいるのにやりすぎて船を沈ませたりはできないから……」

 

モモイの発言を聞いて、苦笑しつつも先生が答える。無論、少しは騒ぎも起こしていたものの、こちらでは何の影響もないあたり、きちんとそのルールは守られているといえるだろう。先生がちゃんと見て、C&Cについていてくれたのもあるが。

 

「ところでよ、あたしら、そこにいる黒崎コユキってやつに用があるんだよ。ちょっと押さえてくれねえか」

「お願いします」

「「了解しました」」

「つ、捕まりませんよぉおおおお!!」

「あ、逃げた!?」

「逃がすか!!」

 

が、コユキは涙を浮かべながら脱兎の如く逃げ出してしまう。それを見て、ネルとモモイが飛び出し、その後を他の面々が追従していく。そして甲板まで逃げ出したコユキは、海を背にして追い込まれてしまう。

 

「もう逃げ場はねえぞ!」

「大体、何でこんなところまで……しかも、セミナーの金を横領して軍資金賄ってたんだって?アスナ先輩から聞いたよ」

「私達のゲームを割った理由も教えてもらうからね!!」

「あ、あのゲームなんなんですか!?偶然見つけたからやってみたは良いもののバグだらけでしたよ!?しかも途中で強制終了って、こんなのでゲームって言えるんですか!?」

「……光にな」

「アリス!ステイ!!」

 

目が据わり始めたアリスをモルフォが制止する。しかし他のゲーム開発部の面々もコユキのその発言にイラッときたのだろう、青筋が浮かび始めてるのがC&Cと先生にはわかる。

 

「で、横領した理由は?」

「VIP待遇のSランクになって自由になるんですよ!そのためにここまで頑張ってきたのに……というかそっちはどこからこれだけの金を!?」

「目押しできるスロットを見つけてアリスとユズに目押しで大当たりして稼いでもらったんだよ……後はアスナ先輩と合流して満を持してルーレットで決めた」

「んなもんチートじゃないですかー!!」

「というか目押しできるものなのこういうのって……」

「常人じゃ無理ですね……アリスちゃんが見てやっとこれ目押しできるタイプだってわかるぐらいなので。まあ、目押しできるってわかれば何回かやればその法則から見えなくても当てることはできます」

 

モモイ、ミドリ、モルフォがとりあえずスロットを回し、そこらのアンドロイドを越えるロボット特有の精密な身体能力で分析、それによって判明した攻略可能なスロットをユズの動体視力、ゲーマーとしてのフレーム単位でのボタン押しによって攻略するという荒業、そしてアスナの直感によるルーレット攻略によって一気にSランクまで駆け上がったモルフォ達を前に泣き崩れるコユキ。なお、アスナ以外のC&Cも「マジで……?」と言いたげな視線をユズとアリスに向けていたのだが。

 

「じゃあ覚悟してもらおうか。まずは骨折って病院送りだね」

「それだけじゃ駄目だよ、ボコボコにして吊るして野晒しにしないと」

「いいえ、光になってもらいます!!」

「ひぃ!?」

「お前らこんな物騒な奴らだったか……?」

「う、うーん……確かに割ったのはいけないことだけど……だからといってそこまでやるのは」

 

ミドリ、ユズ、アリスの容赦ない発言に思わず身が竦むコユキ。ネルすらドン引きし始める中、モルフォがコユキに向かって歩き始める。コユキも一瞬身構えるものの、モルフォが手に何も持っていないことに気付き、その動きが止まる。そして彼女の涙を拭う。

 

「あ……」

「お前を潰す」

「!?」

 

コユキの身を案じたかと思われた直後に浴びせられたモルフォの言葉に驚き固まるコユキ。直後、コユキの頭に手を当てて前屈みの体勢にすると、その両腕に自分の腕を絡めて曲げて持ち上げる。

 

「あれは、ダブルアーム!?」

「うわああああああ!?」

 

そのまま、コユキの体を勢いよく持ち上げると、そのまま逆さまに投げつけ、甲板へと叩きつける。

 

「そこからスープレックス!?」

「ぎゃあああああああああ!?」

 

激しい投げ技を受け、ぴくぴくと震え、沈黙するコユキ。その光景を見て、あまりの見事な技のかけかたに感心したようにネルが思わず口笛を吹く中、思い出したようにアカネが縄を取り出す。

 

「とりあえずコユキちゃんは縛っておきましょうか」

「……はっ?!ま、まだです!こ、こんなところで捕まってなるものですか……」

「もうやめた方がいいんじゃない?」

 

それを見て、諦め悪くコユキが痛みに我慢するように立ち上がる。しかし、カリンがはぁと溜息を吐きながら、これ以上はと制止する。一体どういうことかと思ったその時だった。

 

「立ったってことはそういうことでいいんだよな?」

「えっ」

「オラァ!!」

「ぐぇええええ!?」

「ら、ラリアットォ!?」

「……先生プロレス詳しいの?」

 

モルフォに触発されたネルからトドメのラリアットを受けてしまう。一応は手加減していたためにまだ意識はあるようだが、完全にそのダメージで起き上がれなくなり、今度こそ縛られてしまう。

 

「これで終わりだな」

「……なんかモルフォちゃんとネル先輩がぼこぼこにしてるの見てたらすっきりしちゃった」

「モモイがかけられてたのってかなりマシだったんだね、あれすっごく痛そう」

「アリスわかりました!モルフォは本気で怒ると物理攻撃に出るんですね!」

「……確かにそれはあるのかも」

 

経験者のモモイは同意するように頷く。あの時のモルフォ、相当怒っていたんだなということと、モルフォは二度と怒らせないようにしようと決意した瞬間であった。

 

「そういやお前ら、荒稼ぎした分はどうするんだ?」

「え?ユウカ先輩に全部返しますよ。自分で苦労して稼いだ金で当てるからギャンブルは本当に楽しいのに、他人の金で当てて楽しいわけないじゃないですか」

「ギャンブルはやったことないけどそういうものなの?」

「そうですよカリン先輩。当たれば確かにそれ自体は楽しいですけど、ギャンブルをよりもっと楽しむなら自分で金を稼がないと。そんなもんですよ」

 

ギャンブルの楽しさはわからないが、言ってることは全員わかるため、コユキ以外の全員が頷く。だが、コユキ自身も簀巻きにされながらも、ぼーっとした頭で思うのだった。

 

(より、楽しむなら……)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。