転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
「……?これは……先生からのメッセージ?」
ある日の朝。先生からモモトークであるメッセージを受け取ったモルフォ。そこには、『急でごめんね。実はゲーム開発部への依頼で、あるものを用意出来たら嬉しいんだけど……』というメッセージから始まるいくつかの依頼文が投稿されていた。
「……ふーむ?」
ゲーム開発部はデジタルゲームが専門だが、一応対外的にはモルフォ個人ではなくゲーム開発部として依頼を受けてほしいということらしい。そうしなければならない理由が向こう側にはあるようだが、求めているものは変わらない。で、あればそのオーダーを叶えようと、モルフォは少し考えて、棚の中に入れていた一つのケースを取り出すのだった。
★
「……おお、ここが」
「凄いしっかりした建物です!」
そして準備を終えたモルフォが部室に行き、皆と話をした後、彼女はトリニティに移動していた。そして、その隣にはアリスもいる。正直最初は一人でもいいかとは思ったのだが、アリスが今回の実質日帰り出張に興味を持ったこともあり、それなら一度アリスにも経験してもらおうと同行してもらったのだ。
「ここに、補習授業部という選ばれた人たちがいるのですね!」
「うん……逆の意味でね」
アリスは特殊な経緯でミレニアムの生徒になっている。そのため、このキヴォトスで学籍がそのまま戸籍に繋がるということを知識として知ってはいても他の一般的な生徒よりは実感に乏しい。加えて、ゲーム開発部はミレニアムプライスを乗り越え、いくつか新作を出して一定以上の成果も収めており、アリスの成績も決して悪いわけではない。つまりとんでもないやらかしでもしない限りは退学とは無縁ではあるのだが、それ故に補習と言われてもピンとこない。現に、選ばれた一部の者しかなれない伝説の部活みたいに認知している。が、それは大きな間違いである。
「成績悪い人たちが留年しないように、最悪退学にならないように頑張るためのストッパーだからね補習って。もしアリスが補習になったら冗談でも何でもなくゲーム断ちかな……」
「ええ!?アリス、ゲームできなくなるんですか!?」
「そうだよ、補習するってそれだけギリギリってことだからね」
「わ、わかりました……アリス、補習にならないように気を付けます」
アリスの勘違いを訂正すると、補習授業部があまりにやばい状況にあると気付いたようだ。怯えた表情でモルフォの言葉にぶんぶんと首を縦に振って頷く。
「でもトリニティって凄いなあ……わざわざ部活を作って合宿までさせるぐらい手厚くやってくれるなんて」
そして今回、補習授業部は目の前に存在する建物を丸々貸し切って補習をすることになっている。それも、シャーレの先生を顧問につけてだ。今日はその引っ越しをしているらしく、折角ならということで先生から何か、皆の仲を深めるものはないかと聞かれたのが今回の訪問理由だ。ちなみに、ちゃんとティーパーティーから許可をもらってるとのことだが、
(どうして今回の件でトップに許可を……?言っちゃ悪いけど補習自体はどこの学校でもあることでは?)
そんなことのためにトリニティのトップの許可が必要なのだろうか。数日前にこの補習授業部についてセイアに触れられた記憶があるが、今夜あたりにまたセイアに聞いてみようと思いながら、モモトークで先生に到着したことを伝える。すると、既読の通知がつき、建物から先生が出てくる。
「やあ、待ってたよモルフォ、アリス。よく来てくれたね」
「はい!こんにちは先生!」
「こんにちは、早速ですが中にその……補習授業部の人達が?」
「うん、掃除が終わって、一区切りついたところだから丁度よかったよ」
先生に案内されて、勉強用のスペースとして用意された教室へと入っていく。そこには、花で彩られた翼を持つ、白髪に薄紫色の目をした少女と、黒い帽子をかぶり、頭部と腰から二枚ずつ黒い羽を生やした薄桃髪の少女。そして、
「皆、お客さんを連れてきたよ」
「え?お客さんって……え?」
「……ヒフミさん……と、ハナコさん……?」
「あら……モルフォちゃん?」
「モルフォちゃんと……アリスちゃん……?」
何故かヒフミとハナコの二人の姿がそこにあった。ヒフミとは面識のあったアリスも、まさか知っている人物がいるとは思わず驚いてしまう。
「……えっと、え?お二人が、補習授業部……?」
「?ヒフミとハナコは知っているのか?」
「え、えっとアズサちゃん……その、お友達なんですけど……」
「ええ、それはもう……モルフォちゃんには私の大事な所を見てもらっちゃった仲で……」
「!?エッチなのはダメ!死刑!!」
「うわーん!?モルフォが死刑にされましたー!!」
「え!?あ、いや本当にそういう意味じゃ……」
「あーもう滅茶苦茶だよ」
補習授業部の四人とアリスのわちゃわちゃした会話に匙を投げるモルフォ。その様子を苦笑しながら見ていた先生が手を叩いて皆の注目を集めると、一度六人に自己紹介をそれぞれしてもらう。そして、ゲーム開発部の二人が来た目的も伝えられたのだが、
「……成程。キヴォトスの外にあるゲーム。ゲームとはどんなものだ?いつ使う?」
「げ、ゲームっていうのはですね、アズサちゃん……」
白い翼の少女、白洲アズサはまさかのゲームを知らないという異常な事態が発覚し、驚くモルフォ。しかし、かつてのアリスのように何も知らない、というよりはゲームを知らずに育ったようにも見える。一体どんな箱入り娘なのだろうか。
「って、ゲームなんかやってる暇ないわよ!私はすぐに正義実現委員会に戻らないといけないのに……テスト、一回目は不合格になっちゃったのよ!?すぐにでも勉強しないとないけないのに!」
「だからこそだよ、コハル。初日だから掃除もしたけど……やっぱり、最初のテストの失敗をいつまでも引きずってるわけにはいかないからね。ここで気分転換をした方が、きっと皆もテスト勉強に身が入ると思って呼んだんだ」
「だ、だけど……!」
黒い翼の少女、下江コハルは今はゲームをやっている暇はないときっぱりと言う。焦って勉強しようと、少しでも成績を上げたいと思うその気持ちはわかりつつも、やっぱり気になるかと先生も苦笑していると、モルフォから助け船が出される。
「ミレニアムの研究結果に、適切な時間で息抜きにゲームなどをやってる人の方が成績が上がるっていう内容があるね」
「!?それ本当なの!?」
「一時間二時間もやりまくってたらそりゃ駄目だけど、息抜きに軽く一戦とか一狩りとかみたいなのならむしろ効果あるんだって」
「そ、そうなんだ……さ、さすがミレニアム……」
ミレニアムが科学的に立証したとあれば、コハルもなるほどと納得する。が、そこに茶化すようにハナコが会話に入ってくる。
「当然、体の方も隅々まで研究して」
「?隅々ってどういうことですか?」
「隅々というのは……」
「聞いちゃダメよ!?アリス、知らなくていいことはいっぱいあるの!!」
「いいえ、アリスは勇者です!勇者はいろんな知識を知らなければ謎を解けません!教えてください、ハナコさん!隅々とはどういうことですか!!」
「え?えっと……」
「アリス!ステイ!!」
「そんなこと知っちゃ駄……重っ!?」
「あ、アリスの銃は滅茶苦茶重いので気を付けて……足に落とすと昇天するかも」
「ひぇっ」
ハナコに詰め寄り、知識を伝授してもらおうとするアリス。まさかの反応にハナコが思わず挙動不審になっている所を慌ててモルフォとコハルが引き離す。が、コハルはあまりの重さにドン引きする。スーパーノヴァの重量そういえばミレニアム以外の人知らねーわと内心笑いながら全力で何とかアリスを引きずって離すと、
「えっと、ハナコさん……その、アリスに段階越えて教えるのはちょっと……この子まだ保健体育も触りしかやれてないので……!」
「あ、はい」
アリスの教育はほぼ詰め込みだが、目下で必要な奴を優先して保健体育など後に回してもいいものはどんどん後に回している。その弊害が出ようとしているのだが、アズサを一瞬ちらと見たハナコは何かを察したのか苦笑しながらモルフォの言葉を受け入れる。
「そ、それよりもヒフミさんやハナコさん、そんな成績悪かったんですか?明らかにこんなところとは無縁そうなんですが」
「ええ、私テスト駄目でしたよ」
「笑って言うことではなくないですか……?」
「私も同じだ。コハルもだな」
「わ、私は覚醒すれば点数は取れるから……!」
「アリス知ってます!覚醒すればとか言いながら失敗してる人はただ言い訳してるだけだって!」
「言わなくていいわよぉ!?」
痛いところを突かれたコハルの悲痛な叫びが響き渡る。ハナコがテストが駄目なのは意外だったが、地頭は良いというタイプなのかもしれない。
「ちなみにヒフミさんは」
「えっとですね、実はテストの日にペロロ様のゲリラ公演がありまして……テストサボっちゃいました」
「怒らないで下さいね、受けなきゃいけないテスト受けないってバカみたいじゃないですか」
「はうっ」
まあ成績悪かったならしょうがない、そう思ってたところにこれである。というかゲリラ公演ということはあの日、コラボカフェだのゲーセンだのでワーワーやってた日が丁度テストだったということになる。精神が図太すぎる……と思わずモルフォが呆れてしまう。
「ま、まぁ……とりあえず親交は深まったみたいだし……モルフォ、持ってきたものは?」
「はい、これですね」
「……なにこれ?カード?」
モルフォが取り出したカードには、花火が描かれていた。赤、黄、緑、青、白の五色の花火に1~5までの数字が描かれており、1が三枚ずつ、2~4が二枚ずつ、5が一枚の一色十枚の50枚の山札となっており、花火が描かれたチップが八枚置かれる。
「あら、モルフォちゃんの大好きなカードゲームですね」
「ええ、といっても今回は皆さんにやってもらおうと思ってもってきましたけどね。この花火を」
「花火……?」
「ふむ、花火か……だが火薬を使うならクレイモアとか……そういえばその手のだとサーモバリックが……」
「アズサさん、これはカードゲームだから火薬は関係ないんです。ただのゲームだから深く考えずに楽しんでいいんです……」
「……そうなのか?」
あれ?この子本当に箱入りか?箱入りにしてはなんか物騒だぞ?サーモバリックって禁止兵器がさらっと出てくるものなのか……?と、困惑しつつも、深呼吸したモルフォはあることを決める。知らないならアリスみたいにゲームの楽しさを教えてやろうと。
「モルフォ?」
「ではまず、スタンドを使ってそれぞれ四枚、自分の手持ちのカードは見ないように相手だけが見えるように立ててください」
「?見てはいけないのか?」
「ええ。あ、相手の数字は教えちゃ駄目ですよ」
カードを立てるスタンドを使い、そこに四枚ずつカードを差していく。アズサは自分のカードは見えないが、ヒフミ、ハナコ、コハルの三人の手持ちのカードは見える状態になる。
「そして、自分の番が来たら、やれることは三つあります。一つはカードの情報を教えること。もう一つは手札を一枚捨ててもう一枚山札から引く。そして手札から一枚カードを出す、です。カードを教える場合は、八個あるこのチップの内一個を消費することで、他のプレイヤーに、そのプレイヤーが持っている手札の中から一つの数字の場所を全て教えるか、一つの色の場所を全て教えるかのどちらかを選択できます」
「つまり、アリスが1の数字を二枚持っていたらどのカードが1なのか教えてもらえますし、アリスが青のカードを二枚持っていたら、どれが青のカードなのか教えてもらえるということですね!」
モルフォの説明に、アリスが例を出して補足する。中々ピンと来ていなかったコハルとアズサだったが、アリスの説明でようやく呑み込めたように頷く。
「そして場にカードを出すときは、一番低い数字から出す必要があります。つまり1から階段になるように出さなければいけません。そして一枚出したらカードを一枚引き、1~5までの数字が成立したらチップが一枚回復します。それを繰り返していって、五色の花火を作り上げれば成功となります」
「つまり、これはプレイヤーが全員協力するゲーム、ということですね?」
「はい、その通りです。ちなみに、場に出すカードを三回間違えるとゲームが強制終了になるので気を付けてくださいね」
つまり、捨てたせいでもう残りがなかったり、チップが存在していないせいで情報がない状態で一か八か出さなければならない、といった状態にかかってくるルールなのだろう。
「チップは八個しか使えないんですよね……でも、一色完成すれば……チップは一つ回復する……」
一番手となったヒフミから、残る三人の手札を見る。次の手番であるコハルの手札には青の1が二枚、緑の5と赤の2。続くアズサは赤の1が二枚に青の1と黄の4。そしてハナコは赤、青、緑、白の4。このうち、まずは場にカードを出す必要があることを踏まえると、情報を伝えるべきなのはコハルだと判断する。
「じゃあ、チップを使って……コハルちゃんに情報を伝えます。コハルちゃんの手札には1が二枚あります」
「わかったわ!じゃあ、まずはこれを出せばいいのよね!」
そう言い、青の1を場に繰り出すコハル。次のカードを引くと、それは白の1だった。そしてアズサの番になるが、アズサには手札の情報がない。ここでヒフミの手札を見ると、そこには青の2と赤と青の5、白の1という手札になっていた。
「このチップは大切に使う必要がある。だがこれを使わなければまともに揃えることもできない。となれば、まずは補給線を構築するのが最優先……私はこのチップを使い、ヒフミ。お前の手札にあるこれが2だと教える」
「あら?私をスルーしちゃうということは私の手札は―――」
「いやいやいや!?それダメでしょ!?手札を教えるって……」
「ふふ、手札は教えていませんよ、コハルちゃん。こういうのは、さりげない仕草、行動から相手の内面を見ていくものです」
ねぇ、と無言で聞くかのようにモルフォに熱い視線を送るハナコ。それに気付いたモルフォが笑いながら手をひらひらと振ると、ハナコも楽しそうに笑い返す。
「では私は手札交換をしましょうか。あら、緑の4が消えましたね」
緑の4が捨てられ、新たに青の3が来る。これでヒフミとコハルから見れば、アズサとハナコの二人の手札で赤の1が揃ったことになる。そして続くヒフミの番だが、
(アズサちゃんが教えてくれた数字……色はわかりませんが、今欲しいのは1のはず。だけど2を伝えるということは……そういえば。もしここで、嘘の情報を、伝えたとしたら……誰かが裏切って、誤った情報を伝えてしまったとしたら……)
アズサが教えてくれた情報を推理し、カードを出そうと手にかける。だがそこで、ヒフミの心にある疑惑が出てくる。それは、ヒフミが補習授業部に入るに至った一つの原因、もといそれに便乗したある人物からの指令のようなもの。
(トリニティの裏切り者。まさかこういう……いや、私は……!)
カードを手にかけたのに出さない様子をアズサとコハルが疑問そうに首を傾げる。そしてハナコが不穏な表情を向ける中、ヒフミはアズサが教えてくれた数字、2の青の繰り出す。それはコハルの出した1と繋がり、新たにヒフミの手札に青の5が入ってくる。
「数字が繋がりました!ヒフミさん、凄いです!」
「……!はい、よかったです……ありがとうございます、アズサちゃん」
「?私は当然のことをしただけだ。それに、私が伝えたのは数字だけ、そこから青だとわかって出したのはヒフミだろう?」
(……いや、そっか。トリニティの、エデン条約を妨害しようとする裏切り者を三人の中から見つけてほしい、って……そんなの、関係ないんですよ。だって、私はちょっとだけ、悩んで、疑っていたのかもしれないのに、アズサちゃんは私を信じてくれた。これを出してくれるって。なら……)
一回、深呼吸を入れる。そして、明るい笑顔を浮かべて、
「よし、次は青の3ですね!頑張って見つけていきましょう!」
「ええ!でもまずはこの1よ!ほら、白!出てきたわ!」
「私の番か……ハナコ、それだが……3だ」
「ふふ、ありがとうございます。青の3が出てきましたね」
「えっと……じゃあ私もチップを使いますね。ハナコさん、それですが……青です」
「……成程」
「じゃ、じゃあ私もチップを使うわ!ヒフミ、それが5よ!」
まずは青の花火を作り上げることを協力して行う。ヒフミがハナコの手札にある青の4を青と表現する。それにより、ハナコは他にも青の4があり、その中で色を指定したことを悟る。続けてコハルがヒフミの手札の5を指定することで、ハナコの4とヒフミの5のラインが構築される。そして、
「これで……花火の完成です!」
「おめでとうございます。ではチップを一枚回復しましょうか」
遂に青の花火が完成し、歓声が上がる。アリスも皆を祝福するように拍手し、先生も楽しそうに笑う。そして喜ぶ一行だったが、ここで使用済みのチップをモルフォが回復させたことで、コハルの表情が唖然となる。
「ええ、これでチップが四枚に……四枚!?え、ちょっともうこんだけしかないの!?」
「今のところ一つの数字を見破るために一枚使ってるからね。でも、ゲームの流れは大体わかったと思いますし、一旦仕切り直しますか?」
「ふふふ、それも手かもしれませんね」
「じゃあ、アリスも一緒にやりたいです!」
「いいですよ、モルフォちゃんも一緒に!」
「いいんですか?えーと、このゲーム一応五人までなんですけどね……まあ、山札は足りるしいっか」
補習授業部とゲーム開発部。トリニティとミレニアム。本来なら繋がらないであろう組み合わせが目の前で楽しくゲームに興じている。そして、六人の絆も深まっていく様子を見ながら、先生は安堵したように窓の外を見る。
(……とりあえず、これで皆気分転換になったかな。頑張って二次試験に合格できるようにしないと……)
その先には、遠くにトリニティの校舎が見えていた。そこにいるであろう、ある人物を見据えるかのように、先生はじっと窓の外を見つめる。補習授業部のやる気を上げるためにシャーレの部員を呼びたい。トリニティの現在の内情、エデン条約、そしてこの補習授業部が生徒達を退学させるために作ったものであり、同時にエデン条約を妨害する裏切り者を囲う檻であるということを一切伝えないという条件、滞在を認めるのはその一日のみ、かつ相手の方にもトリニティに来て経験したことなどはエデン条約の締結が完了するまで決して口外させないことなどを条件としてようやくティーパーティーのホストであるナギサは首を縦に振り、先生は二人を呼ぶことに成功したのだ。そして、その条件はもちろん二人も承知している。
「そういえばモルフォちゃん……一つ聞きたいことが」
「なんでしょう?」
「モルフォちゃんは狐を見た事がありますか?……ふむ、この3を出しましょう。これは緑の3ですね」
「?ミレニアムに狐はいませんよ?」
「そうだね、アリス。でも、うーん、夢ではよく見ますよ。以前からちょっとハマってまして、夢に見るぐらいには。1は出揃ってますし、余ったこれを交換しますか」
花火を進めながら、楽しそうに談笑するモルフォとハナコ。時折アリスや他の人も会話に混ざってくるが、先生から見てハナコは割とのらりくらりとしながら、主にコハルを下ネタでからかいながらも、なんだかんだで真面目に親し気に話すことが多い。だが、だからこそなのだろう、モルフォにかけるその言葉も、そして言葉をかけられたモルフォもまた、少し考え込んでからハナコに返答し始める。そんな二人の様子に、ちょっとした違和感を感じ取る。
「夢、ですか……ふふ、それはもう楽しそうですね。あんなことやこんなことを……まさにAVですね」
「け、獣と……!?」
「アニマルビデオだよ」
「あ、アニマル……?」
「動物を見ていると、色々わかるんですよねー……こう、直感もやっぱり人と違って優れてるっていうか」
「成程……ふふ、いい夢を見てるんですね。私も見てみたいです」
「いつか見れるんじゃないでしょうかね……」
「意外だな、ハナコはそういうのも好きなのか?」
「ふふ、人並みには」
そんな先生の違和感をよそに、花火は徐々に完成していく。その中で、以前一回会ったことがあるようだが急速に仲を詰めていくハナコとモルフォの姿に、まるでハナコはモルフォから何かを聞こうとしているかのように、そしてモルフォもハナコの話に合わせようと言葉を選んでいるかのように見えてくる。そこで確信する。ハナコはモルフォしか知らない、何かを知ろうとしているのだと。
(でも、何を?)
「ふふ、面白い話をありがとうございました。モルフォちゃんも腹芸は疲れるでしょう?」
「まあ、ゲームの中で演じるだけならむしろ好きですけどね。ただまあ、色々な人の言い回しとか聞いてるのもあって割と合わせられるようになったのかもしれませんね」
単純に頭が良いだけだったり、言葉の節々から欲望が感じ取れたり、難しい言い回しだったり、理論的で角ばった言い方だったり、語彙力が純粋に足りてなかったり。なんだかんだで色々な人と出会っていれば、裏に別の意図があるとわかれば内容が滅茶苦茶でなければ案外読み解けるものだ。ビナー語でもなければまだ詰まらずに済む。
「まあ友達と本音でぶっちゃけてワイワイやってるのが一番楽しいんですけどね」
「はい!アリスもそう思います!もうアリス達は皆友達です!これで緑の花火は完成です!」
「……うふふ、そうですね」
モルフォの言葉に同意するように笑顔で答えるアリス。彼女の繰り出した緑の5の数字を見ながら、ハナコは楽しそうな笑みを浮かべ、アリスの言葉に同意するように他の補習授業部の面々も楽しそうにカードゲームに興じるのだった。