転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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エンジニア部とメタルファイトベイブレード

 

「すみません、また調子を見てもらうことになってしまって」

「何、気にしなくてもいいさ。こちらとしてもこの子が役に立っているなら嬉しい限りさ」

 

この日、モルフォの姿はエンジニア部にあった。そこにあったのは、彼女の愛銃ショットガンハンマーとシールドであった……のだが。それはかなりくたびれていた。

 

「ちなみに何があったんだい?前回見た時からあまり時間が経っていないはずだが……」

「えー……実は……ネル先輩に組手をしてもらいまして」

「それは……大丈夫だったのかい?というかなんでまたそんなことに」

 

ショットガンを解体し消耗具合を確認していた紫の髪の少女、白石ウタハの手が止まり、モルフォの方を見る。その表情には、モルフォを心配する感情と、なんで彼女と?という疑問が浮かんでいた。

 

「あー……先日ネル先輩と知り合いまして。それからですかね、アスナ先輩がモルフォに手合わせしてあげたらいいんじゃないか、みたいなことを言ったらしくて……案の定、コテンパンにされましたよ」

「……ふむ……」

 

とはいえ、ネルに自分の実力を見てもらうこと自体は、良かったと思っている。その提案をしたのがアスナというのが少々気がかりではあるが、キヴォトスで生きるなら実力だけならいくらあってもいいのだ。多分。

 

(……驚いたな、この凹みや損傷具合……彼女の攻撃を効率よく受け止めることができている。人に照準を合わせる、という行動が取れないからこそなのか……?)

 

最終的には押し切られたのだろうが、少なくとも途中まではネルの攻撃をちゃんと耐えることができていたのだろう。受けて耐える戦い方。彼女一人では近接戦闘しかこなせず、盾役しかできないだろうが、だからこそ他の仲間がいる状況ならば彼女の長所は輝くことだろう。

 

「まあ、修理の方は問題ないさ。すぐに終わるよ」

「ありがとうございます、ウタハ先輩」

「ただ、相手を狙う暇がないなら、ゼロ距離で撃つという手もあると思うが……」

「ネル先輩にも言われました。ちょっと考えておきます」

 

まあ、そこは自分の触れる部分ではないだろう。そう結論付け、彼女の装備を修理していく。そしてハンマー部分の修理に入ったところで、彼女はこれまで付けていたパーツとは別のものを取り付け始める。そして新たなショットガンハンマーを作り上げると、チェックしてからモルフォへと渡す。

 

「できたよ。新しい機能を搭載したショットガンハンマーだ」

「ありがとうございます、新機能……というと?くぎ抜き機能ですか?」

「それはそれでありだがそうじゃないよ。この子に付けた機能、それは打撃音が変わる機能だ」

「……?」

 

打撃音が変わるとはどういうことなのか。それを確かめるために、ひとまずハンマーを床に打ち付けることにする。すると、

 

『ポイーン』

 

ドゴォ!とかバァン!みたいな、そんな重厚な打撃音とは違う、ゲームのSEのような音が響いてきた。

 

(これペーパーマリオやん)

 

モルフォがウタハを見ると、満足げにサムズアップしてきた。とりあえず何回か床を叩く。

 

『ドン!!』

『デデン!!』

『ヒィン』

『チュミミミーン』

『カン☆コーン』

「……個性的ですね……これはこれで好きですけど」

 

ゲームの武器を使っているようでこちらとしては楽しい。これを使われた相手や仲間がどう受け取るかはわからないが。だが個人的にこれはハンマーらしくて気に入った。

 

「気に入ってくれたようで何よりだよ。シールドの方は……」

「それなら代わりのものを作ってある。自爆装置を組み込んでおいた」

「……一瞬あり?って思ったけどさ……ヒビキ、それ盾を失うリスクが釣り合ってないのでは?」

 

ウタハが銃の修理をしてくれている間に、ゴーグルをつけた黒髪の少女、猫塚ヒビキが別のシールドを手渡してくる。盾に自爆機能は確かに用途によっては役立ちそうだが、中々に使いどころが難しい気がする。

 

「盾を失う状況は負け戦。囮にして爆発させて離脱する隙を作るのは理に適っている」

「まぁ、そっか……確かに殿代わりにぶち込むのはありか……」

 

うんうんと頷くモルフォ。勝手に自爆されたらさすがに困るが、ミレニアムが誇るエンジニア部が作っているならその心配はないはずだろう。ありがたく、ヒビキからシールドを受け取ると、それを待機状態である小さな形状へと戻す。

 

「助かりました。いつもありがとうございます」

「何、気にしなくていいさ。こちらとしてもそれの使い心地を教えてくれるのは助かっているからね」

 

ふふ、と笑うと、ウタハの視線がモルフォの持っている鞄に向けられる。

 

「ところで……また何か持ってきたのかい?」

「はい、ウタハ先輩たちの用意してくれたあれやこれやのおかげで色々作ってきましたよ」

「それはよかったよ。君の心情もあるだろうからこちらから詮索はしないが……それでも、自由に作るという行為と衝動は誰にも止められるものではないからね」

 

ウタハの興味深い視線が鞄に向けられる。それはヒビキも同様だ。モルフォの作るあれやこれやにはエンジニア部も絡んでいる。ウタハも、エンジニア部として、物作りに関わっているからだろう、モルフォが作ろうとしているものが、彼女の考案したものではない、ということは確証はないまでも気付いていた。それ故に、彼女はこれだけ、精力的に色々なものを作っているのに、エンジニア部やゲーム開発部には入ろうとしないのだろう、と。

 

「だからまあ、いつか君が納得できるような何かを見つけられたら、いいと思っているよ」

「ありがとうございます、ウタハ先輩」

 

ウタハに礼を言い、モルフォは一つのケースを取り出す。そしてそれを開くと、そこには不思議な形状のコマが何個か入っていた。

 

「……ベーゴマ?」

「違います、それについては私が説明しましょう!」

「コトリ!?一体どこに?」

「モルフォがこれを出すのをずっと待機してました!」

 

次の瞬間、どこから現れたのか、ずっと息を潜めていた眼鏡をかけた金髪の少女、豊見コトリが現れる。驚くモルフォを尻目に、コトリは駒の一つを手に取る。

 

「モルフォの頼みで鋳造を行わせていただきました!これはメタルファイトベイブレード!文字通り、金属のコマをぶつけ合うおもちゃです!しかもパーツ次第で攻撃力、防御力、持久力、重さなど、色々な調整が可能となります!」

「へえ、随分面白そうじゃないか」

 

コトリが手に取ったのは馬のようなエンブレムが確認できる青を基調としたカラーリングのコマ、ペガシス。その軸を見るとフラットになっているのが分かる。ウタハが手に取ったのは二つの弓が対になっているような形状をしたコマ、サジタリオ。軸を回転すると他のコマと比べて尖っているのがわかる。一方、面白そうにヒビキが手に取ったのは、たてがみと爪をイメージした、他と比べて重量感を感じさせるコマ、レオーネ。その軸はサジタリオのそれよりは緩やかな角度になっているものの、軸そのものが他と比べて大きく、多少の衝撃ではびくともしない様子を窺わせる。

 

「悪いね、コトリ」

「気にしないでください!それよりもこれを!」

 

そしてコトリが取り出したのはすり鉢状の形をしたスタジアムだった。回転させたベイブレードが自然と中央に行くようになり、それによってベイ同士が激突するという寸法だ。

 

「ふむ、しかしこのコマ……ベイブレードか。爪で引っ掛けて回転させる……確か、ベーゴマは紐を巻きつけたと思うが、それよりお手軽だね」

 

ウタハが、ケースの中からランチャーと呼ばれる、ベイを装着して回転させる器具、ランチャーを取り出す。今回用意したのは糸を用いないタイプのランチャーだ。理由は単純で、自分以外の人がそれを使うと力加減によって千切れる可能性があるからである。

 

「……このコマ……自爆機能とか―――」

「ベイブレードに変な機能つけると大概変な事になるよ……これとかこれみたいに」

 

そう言いながら、モルフォが取り出したのは、プラスチックでできた、黄色とオレンジのベイブレードだ。金属製のそれよりも一回り大きい(といっても黄色い方は外側の謎のリングのせいでさらに大きくなっているが)そのベイを見て、特に黄色い方は一目で気付いたのかウタハとヒビキは何かを察したような表情を浮かべる。

 

「そのベイブレード……足枷にしかなっていないのでは?」

「そもそもでかすぎて逆に持久力が……」

「回させてもらいましたけど残念ながらこのトライピオ、くっそ弱いです。後ご存じの通りリングが薄いのでめっちゃ脆いし、スタジアムにめっちゃ擦ります」

 

コトリも擁護が少し難しい様子で見た目はユニークなんですけどね、と辛うじてのフォローは入れつつも隠し切れない苦言を漏らす。

 

「……ちなみにそっちのオレンジの方は……」

「軸にバネが搭載されていて、衝撃を加えるとベイが高く飛び上がって相手にアッパー攻撃をぶち当てて一気に勝負を決める……というコンセプトでした」

「……衝撃というと……」

「はい。弾かれて既に距離を取られている相手にアッパーが当たるわけがなく、意味もなく跳んで自爆するベイになってしまったのがトライグルです」

 

そもそも今回のベイブレードとは規格からして違いますけどね、と補足しつつも、悲しいことになってしまったトライグルとトライピオについての話を終える。

 

「うーむ、やはりコマという長所を大きく損ねてしまうのは問題か。とはいえ、これはこれで突き詰めるのも悪くはなさそうだが……そうだな。今後の参考にもなるかもしれないし、まずはこのベイブレードというものを遊ぼうじゃないか」

 

モルフォの言葉に苦笑を隠せないウタハ。しかし、こういうユニークなアプローチを見せられると、何かしらやってみたくなるという欲望も出てくる。こういう方向性も悪くないなと思いながら、最初に手にしたベイをそれぞれランチャーに装填していく。その中でモルフォもどれを選ぼうかと考えたところで、

 

「あ、そうだ」

 

そう呟くと、ドラゴンのシンボルがフェイスに刻まれたベイを、他とは違う白い糸式のランチャーに装填する。

 

「それは一体……いや、今は敢えて聞かないでおこう」

「軸を見ればどう動くかはある程度わかるけど、実際に見てみた方が手っ取り早いからね。合図とかは?」

「3、2、1、ゴーシュート!の掛け声で発射しますよ!」

 

そして四人は向かい合い、指をランチャーにかける。そしてコトリが教えてくれた合図を元に、四人はほぼ同時に口を開く。

 

「「「「3、2、1、ゴーシュート!」」」」

 

四人が勢いよくランチャーを動かし、四つのベイがスタジアムへと発射される。ウタハとヒビキがそれぞれ使用している持久型のサジタリオと耐久型のレオーネはスタジアムの中央に陣取る様にゆっくりと移動し始め、その周りをコトリのペガシスが高速で動き回り始める。そして、そのペガシスにモルフォが選んだベイが正面から衝突する。

 

「む!?これは……」

「モルフォの選んだベイ、これは左回転している……!」

「これはエルドラゴ……左回転のベイでペガシスと同じ攻撃型のベイだ!まずはコトリから喰らおう!」

「ちょっと困るんですけど!?」

 

金属音を鳴り響かせ、ペガシスとエルドラゴが大きく弾かれる。まだスタジアムからは出ていないが、また回り始めれば両者が激突するのは時間の問題だろう。そこでウタハがスタジアムの中央で回るサジタリオ達を見て、ヒビキに笑いかける。

 

「どうやら……相性的に私の方が有利みたいだね?」

「……このレオーネというベイ、多分ペガシスやエルドラゴみたいなベイが相手なら強いんだろうけど……サジタリオみたいに持久力のあるベイが相手だと厳しいかもしれない……む!?」

 

と、その時だった。エルドラゴとペガシスがいきなりスタジアムの中央に飛んできてサジタリオとレオーネを弾き飛ばしてきたのは。どうやら、外で打ち合っていたら偶然、中央へと来てしまったようだ。中央から弾かれたサジタリオとレオーネは何とか中央へ戻ろうとするのだが、一度外に弾かれたことで激しく走るペガシスとエルドラゴにドンドンぶつかり始めてしまう。

 

「それはちょっとまずくないかい!?……あ!」

 

固唾を飲んでそれを見守っていたウタハの口から焦りの声が漏れる。直後、ペガシスとエルドラゴが同時にサジタリオに、しかも丁度内側から外側に弾くように激突し、敢え無くサジタリオは場外へと飛び出てしまう。突然のダブルアタックはこれで終わらない。サジタリオに弾かれたベイたちはそのまますれ違うように外周を走ったかというと、その軌道は中央へと向かい、今度はレオーネに次々とぶつかっていく。

 

「これじゃ逃げ場がない……!」

 

ペガシスに弾かれた先にはエルドラゴが。そしてエルドラゴに弾かれればペガシスが。それぞれが逆回転をしているせいでレオーネは逃げきれないのだ。そして何度も何度もぶつかってしまえば、アタック型よりはスタミナがあるレオーネと言えど回転が弱まってくる。そして、敢え無くレオーネは沈黙する。

 

「こ、これで残っているのはペガシスと……」

「エルドラゴ……!」

(だが……)

 

勝利のためには後一人を倒すだけ。ぐっと拳を握りしめ、自分のベイを注視するモルフォとコトリ。しかし、肝心のベイたちはサジタリオとレオーネを倒す際にスタミナと回転力を使い果たしてしまっており、互いにぐらついた状態でスタジアムの中央で弱々しくぶつかるような有様だった。そして、

 

「「……あ」」

 

同時に、両者が沈黙し、モルフォとコトリの口から声が漏れる。同じタイミングで停止したということは、勝者はいない。しいて言うならこの二人が勝者、といったところか。

 

「あー、引き分けかぁ……」

「いやー、最後の方はいけると思ったんですけどねー」

「ふむ、単純な要素であっても一つ変わるだけで挙動から何まで様変わりするのは面白いな。少し、預かってもいいかい?えーと、さっき出してたトライグルとトライピオって奴もできれば」

「構いませんよ」

 

スタジアムの外に放り出されたサジタリオを回収しながら、ウタハは楽しそうに言う。ただのコマ、といえばそれまでであっても、これにロマンを追求するのは悪くない。特にあの二つは弄り甲斐がある。おそらくあの二つは、エンジニア部の手によって色々な改造を受けることになるのだろう。いずれは他のベイとかも用意した方がいいかな、とモルフォは考え始めていたが。

 

「やっぱり納得いきません!モルフォ、ここはもう一度やって勝者を決めるべきです!」

「ベイを改造するなら一通り触ってみるべきだと思う、こっちを使わせて」

「そうだね。なら私は……この天秤みたいな奴を次は使わせてもらおうか」

 

次のバトルを始めようとするエンジニア部たちを見て、モルフォも次のベイを選び始めるのだった。

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