転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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名も無き神々の王女とアビ・エシュフ(前編)

 

「……」

 

巨大なモニターが存在する部屋。そこに映る、生徒達の戦い。それを赤い瞳に映しながら、名も無き神々の王女は静かに佇んでいた。

 

「やはり、来ましたか。この身体を取り戻しに」

 

予想していたかのように、王女は立ち上がる。その視線の先に捉えていたのは、二つの画面。そこには、C&Cと対策委員会が他よりも早いペースでタワーまで近づいてくる光景があった。

 

「……ですが、何もせずに、とはいきません」

 

傍に置いていたスーパーノヴァに視線を向ける。このスーパーノヴァは火力だけならば確かに素晴らしい威力を誇るだろう。だが、武器としてはそれ以上のものがある。

 

「私自ら、相手をしましょう。そして、絶望を与えてあげます」

 

それを持ち出すため、王女は部屋を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『先生、いいですか?』

「うん、どうかした?」

 

ゲーム開発部達がアバンギャルド君との戦いを終えたのはいいものの、さらなる襲撃を前に逃走を余儀なくされた中、先生の下にヒマリから通信が入る。

 

『アリス達が敵の襲撃を受けています。彼女達だけでは対処しきれない量のため、現在は逃走中です。ルートとしては先生達と合流するはずなので共に対処をお願いしてもよろしいでしょうか?』

「うん、わかったよヒマリ。皆、いいかな」

 

補習授業部の面々に、アリス達の方で起こっている事態を説明する。それを聞き、ヒフミたちも頷く。

 

「わかりました!皆さんを助けにいきましょう!」

「あ、相手があのちっこいのだけなら私達だって余裕なんだから!」

「しかし……数が多いと厄介ですね」

「ならトラップを仕掛けよう。時間がない、皆、協力してくれないか?」

 

そして、アズサの提案を受け、四人は罠を仕掛けてアリス達を待つ。罠を仕掛け終えて数分もすると、慌ただしく走る音と共にアリス達が先生達の下へとやってくる。

 

「せっ、先生!?」

「皆、こっちに! 早く!」

「は、はい!!」

 

慌てて先生が指差した方向へと走り抜けていく。そして、殿でシールドを構えながら後退していたモルフォも含め、全員が退避した直後。

 

「今だ!」

 

アズサが起爆スイッチを押すと同時に大爆発が発生する。その大爆発が、まとめて敵を吹き飛ばしていく。

 

「やったわ!」

「うわっ、凄い威力……」

「アズサちゃんは罠の仕掛け方が上手なんですよ」

「そうみたいですね……ありがとうございます。おかげで助かりました」

 

ほっとした様子で汗を拭いながらハナコを見る。補習授業部と先生も、モルフォ達が戦闘でダメージを負っていることに気付く。

 

「うぅ……また明日筋肉痛ですよぉ……これ……」

「また地獄を味わうの……」

「二人とも、名誉の負傷と諦めるんだ」

 

エンジニア部は別の意味でちょっと大丈夫ではなさそうだが。

 

「あなた達、大丈夫なの!?その怪我……」

「大丈夫だよ、コハルちゃん。まだまだ全然動けるから。ただ、それよりも……」

「……!?皆、まだいる!」

 

ミドリが、アバンギャルド君の存在について教えようとしたその時。アズサの険しい声が響き、全員が素早く武器を構える。煙の中から、ゆっくりと巨大な影が起き上がる。それは、アバンギャルド君であった。だがその頭部には数体のDivi:Sionが張り付いており、爆発の衝撃で黒く焦げ半壊した個体がボロボロと剥がれ落ちていく。

 

「な、何あれ!?」

『敵に鹵獲されたアバンギャルド君よ……!皆、気を付けて!』

「アバンギャルド君……?」

「モルフォ!」

 

その奇抜なネーミングに思わずヒフミが聞き返してしまうが、その先はアバンギャルド君の放つグレネードによって中断させられる。放たれたグレネードを先生の指示に反応してモルフォがガードする。すかさず、周りの面々がアバンギャルド君を攻撃するも、巨大な盾に攻撃を受け止められてしまう。しかし、その隙を利用して散開し、それぞれ物陰へと隠れる。

 

「相手がキャタピラならそこを破壊すれば機動力を削げるはずだ」

『そこの対策もしているわ。普通に弾丸で破壊しようとするとかなりの手間がかかってしまう』

「そうか……いや、弱点を潰しておくのは当たり前の事か。いい機体だ」

『ありがとう……』

「アズサちゃん!?何話してるんですか!?」

 

アバンギャルド君の兵器としての完成度に舌を巻くアズサだったが、おかげでアバンギャルド君のウィークポイントが潰されてしまっていた。やはり、狙うのは頭部しかないのだが、そこの守りも厚い。

 

「ふむ……この人数なら囲めばガードしきれないところから頭部を狙うことが可能だと思いますが、どうでしょうか?」

「よし、それでいこう」

「私達も偶然のような形とはいえ、一度はそれでどうにかしたんだが……問題はアバンギャルド君を無力化することよりも、胴体が残っていれば奴らがまた頭になって奪い取ってしまうことだ。しかも、戦闘に時間をかけているとDivi:Sionが湧いてくるからな……」

 

ハナコがアバンギャルド君の攻略法を口にするも、ウタハが微妙な反応を示す。先程の事実上の敗走を思い出したのだろう。つまりはこの戦闘だって、時間をかけられないということだ。

 

「だが、自爆装置がある。倒してそれを起動させれば問題はないはずだ」

「で、あれば……先生、どうしましょうか?」

「よし、皆で囲んで攻めよう」

 

先生の指示を受け、頷く面々。囮になるように飛び出したモルフォ。その後ろからモモイとミドリがアバンギャルド君を攻撃しようとすると、アバンギャルド君がガトリングとアサルトライフルを三人に向ける。しかし、その脇をウタハが雷ちゃんと共に走りながら、共に同乗したコトリがウタハにも支えられる形でガトリングを放つ。頭部を狙われていることを察したアバンギャルド君がアサルトライフルでモルフォとモモイを、ガトリングでウタハとコトリを攻撃する。

 

「今だ!ユズ!ヒビキ!」

「はい!」

「わかった!」

 

ユズとヒビキがグレネードと砲弾を放ち、アバンギャルド君を攻撃する。それを盾で受け止め、爆風が飛び交う中、それを確認した瞬間に先生が次の指示を出す。

 

「今だよ!」

「はい!」

 

先生の指示を受け、補習授業部も走り出す。煙に隠れる形で盾のあるアバンギャルド君から見て右側に回り込み、アサルトライフルとスナイパーライフルを連射していく。当然、それはアバンギャルド君の盾で防がれるが、コハルたち三人が盾を固定している間にアズサが背後に回り込み、頭部に狙いを定める。

 

「これで―――っ!?」

 

が、そこで頭部に張り付いていた個体の内数体がアズサに視線を向け、エネルギーを充填し始める。まずい、そう思ったアズサだったが、既に回避不能な状況だと悟り、ダメージを覚悟で攻撃を開始する。そして発射直前、

 

「まずい、アズサ!!」

『アリスが行きます!』

 

先生にダイブ装置を預け、アリスがアズサをアームで回収する。そしてその場から離脱するとエネルギー弾が放たれ、地面を抉る。アズサを掴んでいない左腕のガトリングで後退しながらアバンギャルド君の頭部を少しずつ剥いでいく。

 

「コハルちゃん、落ちた奴をお願いします!」

「ミドリ、あれを狙って!」

「ええ!」

「うん!」

 

零れ落ちた個体をコハルとミドリが確実に仕留めていく。そんな中、先生はちょっとだけ違和感を感じ取っていた。

 

「……今、攻撃が一瞬止まった?」

『先生も気付きましたか』

「ヒマリ?」

『ウタハ達が戦闘した時もだけれど……アリスが出てきた時だけ、アリスへの攻撃に対してだけ行動の優先度が下がっているように見えたわ。あの時はアリスからの攻撃を警戒して守りを優先した、という行動だったと解釈することもできないわけではなかったのだけれど……』

『今回は、明らかにテンポが遅れている。アリス諸共、アズサを攻撃できていたはずなのにね』

「……つまり、名も無き神々の王女はアリスを攻撃したくないと思っている?」

 

だとしたら、何故彼女はアリスを追い出したのか。アリスを陥れ、その体を奪い取る行動を取っておきながら、実際にはアリスへの攻撃を躊躇する。そこの違和感に答えが出ない。だが、先生のその言葉を聞いたアリスが、ある策を打ち出す。

 

『先生、アバンギャルド君がアリスを攻撃できないのなら、アリスが盾になります!』

『待ちなさい、アリス。それは早計すぎます』

『そうよ、それを確定させるにはあまりに情報が……』

『……確かに、断言はできません。ですが』

 

それが事実ならば、確かにアリスが前に出ることでアバンギャルド君の動きを封じることが可能になるだろう。しかし、それを確定させるにはあまりにも情報量が足りない。だというのに、アリスに危険な真似はさせられないとヒマリとリオが制止しようとするが、アリスは首を横に振るように画面の中の表情を動かす。

 

『戦っているのはアリス達だけではありません。既にネル先輩達は先にタワーに着いているかもしれないんです。アリス達もここで立ち止まっているわけにはいきません。それに……アリスは皆さんを信じています』

「アリス……」

『だから、やりましょう、先生!足りない部分は、勇気で補う……それが勇者です!』

『アリス……』

「……よし、わかった。やろう、アリス!アズサ、何かあったらアリスを頼めるかな?」

「わかった、全力で守ってみせよう」

 

アズサがアリスを見て頷くと、二人はアバンギャルド君の前の前に飛び出す。すると、アバンギャルド君は目に見えてアリスに対して攻撃行動を止め、回避や防御を優先するように動く。

 

「っ!?」

「やっぱり、アリスには攻撃できないのか!ヒビキ、地面だ!地面を抉れ!」

「わかった!ユズも合わせて!」

「うん!」

「コハルちゃんも手榴弾を!」

「え、ええ!」

 

それによって隙が生じたことで、ウタハがキャタピラを無力化するためにヒビキに指示を出す。その意図を理解したヒビキとハナコが、ユズとコハルにも同様の指示を出し、アバンギャルド君の足元が爆発していく。それによって地面が抉れ、不安定になってきたところで、アバンギャルド君のキャタピラがハマり、大きく傾く。

 

「今だ!皆!!」

 

先生の指示に合わせて、アバンギャルド君に次々と弾丸を叩き込んで衝撃を与える。盾や銃身を使って防御し、どうにか姿勢を支えようとするも、この状況に至っては衝撃さえ与えれば十分。無数の弾丸を叩き込まれ、そして、

 

「今だあああ!!」

 

足元に転がっていた瓦礫を、モルフォが勢いよくハンマーで打ち出す。それが隙間を縫うように頭部に命中し、その衝撃でDivi:Sionが吹き飛んでいく。

 

「逃がさない!」

 

空中を舞うDivi:Sionを見たミドリが、即座に撃ち抜き、破壊する。それによって、アバンギャルド君を制御するものは完全に無くなり、その場に倒れ込んでしまう。

 

「やった!」

『私達の絆と勇気の勝利です!』

 

再びアバンギャルド君を撃破したことで、喜び合うモルフォ達。幸い、撃破までにかかった時間が少ないこともあり、Divi:Sionの増援もまだ来ていない。で、あればすぐにでもアバンギャルド君のボディの破壊に取り掛からなければ。

 

「よし、自爆装置を作動させよう」

「……いや、頭部は破壊されて中が剥き出しになっている。そこから爆弾を内側に仕込めばそれだけで破壊できないだろうか?」

「……確かに」

 

機能としてあるのだからそれで壊してしまえばいいと考えていたウタハだったが、アズサの指摘に成程と頷く。わざわざ探すよりは爆弾をさっさと取り付けて壊す方が効率的かもしれない。

 

「じゃあアズサちゃん、爆弾を取り付けてもらえますか?」

「ああ、任せてくれ」

「て、手慣れてるね」

「ああ、爆弾の使い方は叩き込まれているからな」

 

手慣れた様子でアバンギャルド君に手持ちの爆弾を取り付けていくアズサ。そんな彼女の発言を先生やハナコは微妙そうな表情で聞いていたが、準備を終えたアズサが周囲を確認し、爆弾を起動。アバンギャルド君は大爆発と共に木っ端微塵になってしまう。

 

『ああ、アバンギャルド君……』

「……そんなにお気に入りだったの……?」

「まあ……色々言ってはしまったがリオにとっては我が子みたいなものだろうからね……私からすれば雷ちゃんを敵に洗脳されて寝取られた上にこちらの手で破壊しているようなものだから……」

「寝取られ!?」

「そこに触れるのはやめよう!コハル!!」

 

リオの残念な声に、仕方ないこととはいえ一定の理解をウタハが示していると、突然反応し出すコハル。これが死刑を言い出す前兆だと察したモルフォが慌てて止める光景を、ウタハは首を傾げながら、そしてハナコは笑顔で見ていた。

 

「でも、やっぱり皆で力を合わせれば何とかなるものですね」

「ふふ、そうですね。損得とか、そういうのを抜きにし、学園の垣根さえ越えて一人の友達を助けるために皆で駆け付ける……素晴らしいですよね」

「はい!アビドスで皆と戦った時の事を思い出します……」

「……アビドス?」

「……い、いえ!なんでもありません!!」

 

ヒフミとしては、アビドス、ゲヘナ、ミレニアムの皆と一緒に戦ったあのアビドスの戦いの事を思い出したのだろう。しかし、それにヒフミが関わっていることを知らないハナコは思わず冷や汗を流して聞き返してしまう。バツが悪いように視線を逸らすヒフミを見て、追及しない方がいいのだろうと思わざるを得ない。

 

『皆さん、戦闘が終わってすぐで悪いのですが、すぐにタワーの方に向かってください』

「うん、わかったよ。けど、何かあったの?」

『……C&Cと対策委員会がタワーに、着いたのだけれど……まずいわ。名も無き神々の王女は……あれを持ち出したわ』

「あれ?」

 

ヒマリの険しい声音にすぐに真剣な表情になる。何かがあったのだろうと先生が確認を取ると、リオからも険しい声音が聞こえてくる。ネルとホシノ達が着いた以上、並大抵の相手では苦戦すらしないはず。しかしここまで焦るということは一体、何があったのか。

 

『名も無き神々の王女は……アビ・エシュフを強奪したわ……』

「アビ・エシュフ……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんか、凄いのが出てきちゃったけど……えっと、あの子がアリス、でいいのよね?」

 

アバンギャルド君と遭遇しなかったこともあり、先んじてタワーまでたどり着いていた対策委員会とC&C。直前で合流し、共にタワーを制圧し、名も無き神々の王女を抑えようとしていたのだが、タワーの入り口前に彼女はいた。ただし、アリスが普段から着用していたミレニアムの上着を脱ぎ捨てており、パワードスーツのようなものを纏っていた。

 

「……うん、そのはずだけど、あの武装は……」

「アビ・エシュフ……!?」

 

それを見て、一際驚愕が大きかったのはやはりトキであった。その反応を見て、あれはトキのためにリオが用意したものなのだろうとネルは瞬時に理解する。

 

「……こりゃ、骨が折れそうだな」

 

両腕には三門のガトリングガンが搭載されており、肩部にはレーザーキャノンが二門搭載されているのが見える。それだけでなく、王女の腕や脚も装甲で守られており、背面もアビ・エシュフの強固な装甲に覆われていた。王女はバイザーを下ろすと、C&Cと対策委員会を見渡す。

 

「よく、ここまで来たものです」

「はっ、てめえこそ後輩の体を奪って逃げだしやがって……そのツケ、払ってもらうぞ」

「この体は私のものですよ」

「……皆、準備いい?」

 

ホシノの掛け声と共に、シロコ達も感覚を研ぎ澄まし、王女がいつ動いてもいいように構える。離れたところで瓦礫を盾にしながら戦況を見守っていたアヤネが、リオに通信を取る。

 

「リオ会長、アビ・エシュフというのはどういう武装なんですか?」

『本来はトキが使用するために造られたパワードスーツよ。エリドゥの防衛のために用意していたのだけど……名も無き神々の王女の力であれば、待機状態のそれを無理矢理奪い取ることは簡単なことでしょうね』

「……弱点は?」

『……アビ・エシュフの真価は、エリドゥ自体を演算装置とすることによって可能となる、こと戦闘に限っては未来予知にすら匹敵する程の超高度のシミュレーションが可能になるという点よ』

「……それだと、勝つにはまず彼女をエリドゥから追い出すしかないということになるのですが……」

『いえ。アビ・エシュフにはエリドゥを以てしてもクリアできなかった性能の限界があるわ』

「そうなんですか?」

 

既に全員が武装を構え、じりじりと睨み合いを続けるネル達と王女。その光景を見ながら、アヤネは戦いの火蓋が切られるまで間に攻略に繋がる情報をリオから得ようとする。

 

『それは、完璧なまでのシミュレーションは攻撃行動と回避、弾の撃墜を含めた防御行動を同時に行うことができないということ。こればっかりは、エリドゥという巨大な演算装置を用いても尚、成し得なかったことよ』

「!向こうが攻めている間は防御が疎かにならざるを得なくなる……いや待ってください。本当にここ実験都市でいいんですよね!?そういうことにしますよ!?」

『……そうしてちょうだい』

「……成程」

「……通信ですか。邪魔ですね」

『―――!―――!!』

「リオ会長!?ミレニアム、応答を……そんな!」

 

アヤネとリオの会話。しかし、リオの言葉が途中でノイズだけになってしまう。慌ててアヤネがヒマリらとの通信を取ろうとするが、完全に遮断されてしまったことに苦々しい表情を浮かべる。が、途中まで話を聞いていたホシノが、良いことを聞いたと笑みを浮かべる。そしてネルと視線を合わせて無言で頷き合うと、作戦が決まる。

 

「それじゃ……おっぱじめようじゃねえか!!」

 

先陣を切るようにネルがサブマシンガンを連射していく。それを完璧な動きで回避した王女は、ガトリングによる攻撃を開始する。

 

「うおっと……!こりゃ重いねぇ!」

「撃ち合いなら負けませんよ!」

「ん、いくら強くたってこの数相手じゃジリ貧になる」

「この!」

 

それを接近していたホシノが盾で受け止めると、多重に重なる激しいガトリングの発射音と盾に命中し、弾かれていく嫌な音が響き渡る。しかし、ホシノが前に出て受け止めたおかげで射線が塞がり、脇から出てきたノノミ、シロコ、セリカがアビ・エシュフを攻撃する。それらを前に王女は回避を選択、その場から跳んで後方に移動する。

 

(……確かに、攻撃と防御、どちらかだけというのはその通りみたい)

 

そこを狙って狙撃するも、それすらも簡単に回避された所を見ながら、リオの告げた情報の正確さを確信する。同時に、これならば勝ち目は十分にあると。

 

「……!」

「おっと」

 

着地したところを狙い、接近してきたネルを攻撃しようとするも、そこにホシノが割り込んできたのでホシノを砲身で殴りつけて吹き飛ばす。しかし、ホシノを囮にする形で懐に潜り込んだネルが連射してきたため、それをステップで避けて立ち止まると、ガトリングの斉射で無理矢理距離を取らせるついでに、地面を数ヶ所攻撃し、爆発させる。そこは、アカネが仕掛けた地雷があり、それらを王女は片手間で処理してきていた。

 

「やはり見破られますか……地雷はあまり効果がないようですね……」

「防御の方を計算した時に割り出してたんだろうな」

「こりゃ見た目以上に厄介だねぇ」

 

人数はこちらが有利。それだけでなく、ネルとホシノを起点に攻防一体の戦術を取れているのに、王女もまた一歩も引かず、そればかりか互角に立ち回る。それが、アビ・エシュフの強力さを際立たせていた。

 

「……お二人とも」

「およ?どうしたのトキちゃん」

「アビ・エシュフの最大の弱点があります」

「本当か?」

「はい。実際に確認したわけではありませんが……リオ会長なら必ずあの機能を盛り込んでいるはずです。そして、おそらくそれがある場所も……」

「よくわかんないけど、そういうことなら賭けてみようか」

「ああ、負けはねえがさすがにちんたらやりすぎて雑魚が集まったら面倒だからな」

「通信も取れなくなっちゃったからね~、あの子が原因っぽいし、とりあえず黙らせておかないと」

 

そんな中、トキがネルとホシノにアビ・エシュフの攻略に繋がる一手を伝える。二人はその提案に頷くと、他の面々にそれを共有。そして、

 

「そりゃー!!」

 

と、直感を活かしてアスナが突っ込む。しかし、その直感すらもアビ・エシュフのもたらす予測は上回り、ガトリングガンがアスナを捉えようとする。

 

「させませんよー!」

 

が、直前にノノミとセリカが弾幕を張り、王女に回避を選択させる。いかに戦況が互角とはいえ、被弾が重なれば不利になりやすいのは王女の方。それ故に、攻撃よりも防御を優先する思考のようだ。おそらくアスナもそれをわかっていたからこそ、このような突撃をかましたのだろう。

 

「隙だらけ」

「!」

 

アスナとは反対側から潜り込んでいたシロコも攻撃する。それを背後に跳ぶ形で回避した王女だったが、その背後に投げられたアカネの手榴弾をカリンが撃ち抜き、爆発。が、それすらも予測済みだったのか命中する直前に着地し、右へ跳ぶ形で爆風から逃れる。が、

 

「じゃあ次はおじさんが相手だよー!」

 

そこにホシノが立ちはだかる。が、ホシノが相手ならばと王女はガトリングを構える。盾を持っている相手であればシミュレーションせずとも、とりあえず弾を撃てばその場で防御行動を取るからだ。そして、その予測は合っていた。実際にホシノは防御を取った。しかし、

 

「そのいかにも雑な攻め……油断したな!?」

「っ!?」

 

ここで初めて王女の表情が歪む。ホシノの後ろから、彼女の肩を足場にする形で飛び出したネルが、空中から王女へと襲い掛かる。

 

「甘いですよ」

 

が、ガトリングはホシノに向けている右以外にもある。左のガトリングを空中のネルに向け、撃とうとしたその時だった。

 

「……これで詰みです」

「!」

 

アビ・エシュフにトキが取り付いていた。そして、トキはアビ・エシュフの装甲を弄るように手を動かし始める。

 

「油断しましたね。アビ・エシュフは私が使用するために生み出された武器。当然、自爆装置が搭載されているであろう場所も把握しています」

「!」

「あなたの体も少々傷つきますが、ご容赦を……!?」

 

そのまま、自爆装置が入っているであろう場所を操作しようとする。が、その手が止まってしまい、彼女の表情に驚愕の色が浮かぶ。

 

「……ありもしない機能に希望を見出していたとは、愚かですね」

「自爆装置が……ない……!?」

「「!?」」

「まずは一人、脱落ですね」

 

その場で回転。それによってトキを空中に吹き飛ばすと、彼女の腹部にレーザー砲の銃口を突きつける。

 

「トキ―――」

 

ネルがトキの名を叫ぶ。が、それをかき消すかのように、巨大なレーザーの発射音と閃光が、トキを吹き飛ばす。

 

「……あなた達は知らない」

 

レーザーに呑まれ、全身が傷だらけで落下するトキ。もう戦闘することは不可能だろうと彼女から視線を外し、王女は語る。

 

「私は名も無き神々の王女。この世界を、人類を滅ぼすAI。故に、結末は既に決まっているということを」

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