転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
ちらと視線を遠くへ向ける。建物の一つが数時間前に大爆発を引き起こしたのか、黒煙が天へと昇っていく。
(ミレニアムの風物詩ですな……こんなもん風物詩にするなって思うけど……まぁゲヘナよりマシなんだろう多分)
ミレニアムで爆発騒ぎは珍しくもなんともない。ミレニアムの構内ではエンジニア部を始めとしてそういう騒ぎは起こっているし何なら斜め上の方向にかっとビングし始めたゲーム開発部も、主にモモイの主導で騒動を起こしたりする。では構外で爆発が起こった場合はというと。大体C&C……のような気がする、というのが個人的な主観だ。
(ユウカ先輩の胃が大変なことに……なりそうだ……今度遊ぶ時に胃薬でもあげようかな)
リーダーであるネルを筆頭に、建物やら機械やらをよく壊してくるし、もう少し加減を……なんてことをユウカと遊んでいる最中に愚痴られたことも記憶に新しい。
「……そういえば、なんか爆発の頻度が多いような?」
ふと、毎日毎日こういう光景を見ていることに気付く。それも、一日に何度か発生している場合もあり、それだけC&Cも任務漬けの日々を送っているのだろうかと考えてしまう。だからだろう、ネルとの手合わせも最近は数が減っているのは。おそらく、その打撃音はやめろと組手中打撃音変更機能をオフにせざるを得なくなっていることが関係しているわけではない、はずだ。
「まあ、いいか……落ち着いたらネル先輩から連絡来るだろうし……」
夕日を浴びながら帰路につく。そして寮の部屋の前に辿り着く。しかしそこには、メイド服の先客が二人いた。
「……ネル先輩?アスナ先輩?」
「おう、帰ってきたかモルフォ。ちょいツラ貸せ」
「……え?」
それは、アスナとネルだった。様子を見るに、任務が終わった後だろうか。しかし、今日はどういう用件だろうか。組手の話だったらネルからちゃんと連絡が来るはずだが。だとすると。
「新しいプラモですか?最近組もうと思ってるのだとウォーグレイモンがありますけど」
「それはそれでめっちゃ興味あるけどそうじゃねえ……いやめっちゃ興味あるけどよ……」
初めて聞く名前だが、モルフォの持っている、そして自分が受け取ったプラモのラインナップを見るに絶対外れではないだろう。そもそも名前の響きからして格好いいのだからプラモだって絶対恰好いいだろう。それはそれで興味が惹かれるが、今日の用件はそうじゃない。いずれ触れるつもりだがそうじゃない。そう言い聞かせるように後頭部を掻きながら言葉を続ける。
「実はよ、最近依頼詰めまくってて、で、明日休日にしてんだよ」
「はい。なんか遊びます?」
「まあそうなんだが……どうせなら他の連中もどうかって思ってな……というより……アスナが言うんだよ、ここらでリフレッシュしようってな」
「それは……なんかあるんです?」
いつもの直感だろうか。これ以上は自分が説明してもふわふわになるだけだろうと、ネルは視線をアスナへ向ける。モルフォもそれに釣られるようにアスナを見ると、アスナは少し考え込むような仕草を見せながら、今回ここに来た理由と意図を告げる。
「うーん、近いうちに凄いことになる気がするんだよね。多分、ゆっくりできるの明日ぐらいかなって。だったら折角だし、皆で遊べるものがあったらモルフォに選んでもらおうかなって。それに、リーダーが部室に飾ってるプラモの出所とか二人とも気になってるみたいだし」
凄いことって何だよ、と突っ込みたくなるが、予感のようなものなのでわからないのだろう。ネルもお手上げのような仕草を見せるが、まぁ、何かが起こるからその前に気晴らしして万全な状態で問題に当たりたい、ということのようだ。
「あー……まぁ、あれだ。別にあいつらにだったらばらしてもいいと思うんだよ。口は堅いしな……無理強いはしないが」
「別にいいですよ?あくまで私が作ったとかそういう話じゃないってところさえわかってもらえるなら全然……しかし、そうですね……そうなると、パーティゲームになりますよね……」
うーむ、と考え始める。パーティゲームも嗜んでいるが、どういうものがいいか。桃鉄はキヴォトスの人間では絶対地理がわからないので除外。マリオカート、ありといえばありだが、画面分割はプレイする人にとっては厳しいだろう。となると、丁度いいのは。
「……スマブラ、ですかね」
「「?」」
★
「……これは……」
翌日。C&Cの部室へと足を運んだモルフォは、部室の一角にジオラマが出来上がっていることに気付く。そこにダブルオーガンダムを始めとしたプラモが飾られているあたり、どうやらネルの私物のようだ。だが、その前でじっとプラモを見つめている褐色肌に黒髪のメイド服の少女がいることに気付く。
(あれは……ハンター?)
彼女が見ているのは、狼のようなデザインをした、ハンターと呼ばれる黒い機体だ。その手にはスナイパーライフルが握られており、背中の棘はスティンガーミサイルとなって飛んでいく……という設定のプラモデルである。
「ふふ、気になりますか?」
「あ、アカネ先輩、お疲れ様です」
「お二人から話は聞いてますよ」
その様子を見ていると、眼鏡をかけた少女、室笠アカネから話しかけられる。昨日の内にネルとアスナから話は聞いていたようで、モルフォに優しく対応する。
「カリン、モルフォちゃんが来ましたよ」
「!あ、ああ、すまない」
ハンターを見ていた、カリンと呼ばれた少女がここでモルフォに気付いたようでこちらに近づいてくる。
「角楯カリンだ。話は部長やアスナ先輩から聞いている」
「よろしくお願いします。そういえばお二人は……」
「もうすぐ戻ってくると思いますよ?」
扉の方を見ながらアカネがそう返すと、扉を開けてビニール袋を片手にネルとアスナが入ってくる。
「帰ってきたよ!」
「おっ、来てたかモルフォ」
「どうも。お菓子ですか?」
「まあな……」
「リーダー、すっごく楽しみにしてたからね」
「ばっ……」
そんなこと言うな!とでも言いたげな表情でアスナを睨み付けるネル。しかしアスナはというとニコニコと笑うばかり。自分の抗議も意味をなさないと悟ったネルは、諦めてモルフォを見る。
「……で?その……スマブラ?ってのは持ってきたのか?お前の言う通りテレビは用意しといたけど」
「はい。それじゃあ……」
「「!?」」
モルフォが鞄の中から、取っ手のついた青い立方体を取り出す。その、質量を感じさせるデザインに、初めてそれを見たアカネとカリンがつい反応しそうになり―――
「いや鈍器じゃねえから」
ネルの鋭い指摘にその手を止める。そう、丁度いいところに取っ手がついているこの箱は、鈍器ではなく、れっきとしたゲーム機、ゲームキューブなのだ。なのだが、キヴォトスの人間ですら鈍器にしか見えないと言われたらその点はもう否定できないかもしれない。
「でも威力は出そうだよね」
「……ゲームキューブは鈍器じゃありませぇん……」
こうなったら鈍器からゲーム機というイメージに早急に上書きするしかない。ゲームキューブのコントローラーを四つ取り出し、セッティングを進めていく。そして本体に、一枚のディスクを入れる。
「……大乱闘スマッシュブラザーズDX?」
その時にディスクに印刷されたタイトルを見て、カリンがぽつりと呟く。モルフォが持ってきたのは前世では神ゲーと名高いスマブラシリーズの二作目、DXであった。モルフォとしてはどのシリーズでもよかった……のだが、いきなり最新作のSPを持ってきてもキャラが多すぎて初心者には混乱しそうだという配慮で、キャラ数の問題でDXを持ってきた。全キャラ87体は凄いけどまずいですよ!
「どういうゲームなんだ?」
「最大四人でやる対戦ゲームですね。まぁ、口で説明するより一回見てもらった方が早いかと」
「二人はやったことないの?」
「まだやったことないかな?」
「ゲームはあんま触ってねえなあ」
まずは流れを掴んでもらうためにゲームを起動し、画面を進めていく。25人のキャラの中から、一番使い慣れていないフォックスを選択、CPUのレベルもそれなりのものを用意、ルールは3ストック制にして念のためのタイム設定、アイテムはスターと回復アイテム以外全部ありにして対戦開始。
「「「「……」」」」
この手の対戦ゲームというと、大体1on1のイメージが先行していたのだろう。四体のキャラが画面の中で動き回り、アイテムやステージギミックを駆使して戦っていく様子。その中でもちゃんとコンボ要素など格ゲーにある要素もある程度揃えているのがわかる。それだけでなく、アイテムを用いてモルフォが苦戦していたCPUを仕留めている様子も確認でき、初心者でも上級者に勝てるジャイアントキリングが起きやすいバランスも面白そうに思えた。
「……っていう感じです。どうですか?」
「へぇ、面白そうだな」
「結構わちゃわちゃしてるんだねー、楽しそう」
「これが異世界のゲームですか……確かに部長とアスナ先輩が面白がるのもわかりますね」
「……あのアイテム、面白そう」
四人の掴みも良好なようだ。一旦モルフォが離れ、四人がコントローラーを手に取る。そして思い思いのキャラを選んでいくことになるのだが、
「これ、どのキャラを選べばいいんだ?」
「とりあえずこれ!ってのでいいと思いますよ」
「まあどれが使いやすいかどうかなんて使ってみなきゃわかんねえか」
そう言いながらネルが選んだのはクッパ。いかにも怪物っぽいキャラが出てきたのを見て、小さな笑いがネルの両隣から漏れる。
「おい、なんで笑った」
「いや?リーダーなら選びそうだなーって思っただけだよ?多分このキャラ面白そうだよね」
続けてアスナが選んだのはMr.ゲーム&ウォッチという黒いキャラクター。多少キャラを見比べていたが、続けてアカネが選んだのはサムス。最後にカリンはフォックスと似ているという理由でファルコを選ぶ。そして四人がキャラを選び終え、ステージが決まり、四人の対戦が始まる。とはいえ、自分のキャラがどんな挙動をするのかわからないため、四人はまず自分のキャラを歩かせてみたりジャンプしたり技を使ってみたりと使用感を確かめていると。
「あっ、カリンてめえ!?」
「丁度近くにいた部長が悪い」
性能はともかく技に関してはある程度フォックスと共通していたが故に早めに感覚を掴んだカリンが一番近くにいたクッパに襲い掛かる。ネルも慌てて迎撃しようとするのだが、ファルコの速度にまったく対応できない。と、そんなことをしていると、
「じゃあ私も参加させてもらいますね」
「ちょ!?」
アカネの使うサムスがミサイルやチャージショットを遠距離から撃ち始める。慌ててその攻撃を避けたりガードしたりするが、ガードすればファルコが掴み、避ければリフレクターによって弾かれたものがクッパに当たるという悪循環に陥り、どんどんクッパが追い詰められてしまう。どうしたものか、なんてネルが考えていたその時だった。突然ガキィン!!という甲高い音と共に画面端から射撃していたサムスが吹き飛んで撃墜されたのは。
「「「……え?」」」
「あ、やっぱこの技強いねー!」
(ゲムウォの9をピンポイントで引き当てた……これアスナ先輩に使わせちゃいけないやつでは?)
それをやったのは、アスナの使うゲーム&ウォッチの横必殺技、通称ジャッジである。本来は使うたびに威力が変わるハイリスクハイリターンな技なのだが、どうやらアスナは持ち前の直感でそれを克服してきたらしい。
「おいあのキャラやべえぞ!?」
「……ちょっとアスナ先輩のキャラが一番やばそうですね」
「部長は何とかなるし、まずはアスナ先輩から狙った方がよさそう」
「おいお前ら……!」
三人の警戒は一気にアスナへと向けられる。カリンから遂に敵認定されなくなったネルの表情が険しくなるが、四人のキャラで一番やばいのは誰かというとゲーム&ウォッチなのは間違いない、という意見には同意だったのでぐっと怒りを呑み込んでネルもアスナを狙おうと動き出そうとするのだが。
「あっ、これもーらい」
(モンボ落ちてきた……いや待って?ルギア来たんですけど??)
偶然目の前に落ちてきたモンスターボールを放り投げる。そこから現れた白い竜のようなモンスター、ルギアが現れる。ルギアは丁度接近してきていたファルコとサムスを吹き飛ばしながら上昇すると、エアロブラストを発射して画面を占領し始める。そしてその攻撃は、
「はああああ!?」
ワンテンポ遅れてアスナを倒そうと向かっていたネルのクッパにクリーンヒットし、ネルの絶叫が響くのだった。