転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

83 / 209
ゲーム開発部達とカービィのエアライド

 

「モルフォ!」

「おはよう、アリス、ケイ」

 

部室に入ってきたモルフォにアリスが駆け寄ってくる。部屋の中を見るとモモイとミドリが対戦ゲームに興じており、ユズがそれをソファに座った状態で見物している。いつも通りのゲーム開発部の日常が戻ってきた感じがして、安心感を感じる。先生と補習授業部もトリニティに戻り、対策委員会もアビドスに戻ってしまった。その際、セミナーから今回の件に対する謝礼金を受け取ったらしく、

 

『ホシノ先輩は「他人の命や体を金で払わされている感じがして嫌だけどアビドスとしてはミレニアムから受け取るしかないからねぇ」って言ってて……まあ、このお金はできるだけ早く消費するために備品や設備の方に当てていくことになると思うかな……?』

 

このような事を後にアヤネから伝えられていた。

 

「おはよう、ユズ」

「あ、おはようモルフォ」

 

ユズの隣にモルフォが座ると、アリスもモルフォの隣に座り、二人の対戦光景を見ていく。

 

「そういえばモルフォ、聞いた?エリドゥのこと」

「いや、まだ聞けてないかな」

「暫くは事件で破壊されたりしちゃった部分を直すって名目で表向きの部分を作り直して実験都市らしくするんだって」

「表向きって何あるんだろうね」

「シェルターはあったって……」

「……そっかぁ……」

 

ユズからエリドゥの現在についても伝えられる。城塞都市としての役割は確認できないようにしてからミレニアムの生徒達にも使ってもらえるようにする予定なのだろう。暫くはリオのAMASなどはその工事に着手することになりそうだ。

 

「ま、負けた……!」

「ふっ……」

 

ゲーム画面を見ていると、モモイがミドリに勝利していた。運がモモイに傾いたのが大きかったようだが、その幸運をモモイは見事に逃さなかったようである。

 

「あれ?モルフォじゃん、来てたんだ」

「……あ、本当だ。ごめんねモルフォちゃん、気付かなくて」

「ああ、大丈夫大丈夫。それよりさ……折角だし皆でこれやろうと思って」

「いいねいいね、やろう!」

 

そう言いながら、一緒に持ってきたカバンの中から、ゲームキューブを取り出す。それを見たモモイが目を輝かせてそう提案すると、皆もわくわくした様子で頷く。

 

「それで、何を持ってきたの?」

「うーん、カービィのエアライド」

「「「「カービィのエアライド?」」」」

 

カービィのエアライド。それは星のカービィシリーズの外伝作品の一つであり、人気も根強いゲームであり、プレイヤーはカービィを操作し、エアライドマシンと呼ばれる様々な乗り物に乗り、レースをしたりフィールドを散策したりして対戦を行う。このゲームの最大の特徴は操作方法が3DスティックとAボタンしか使わない、というものであり、マシンは常に走っており、Aボタンでその場に制止してチャージ、スティックも左右に動かして曲がるか回転させてスピンするかの行動しか存在していないのだ。

 

そしてこのゲームの中でも人気の高いモード、シティトライアルでは街と呼ばれるフィールドでアイテムを拾ったり、マシンを乗り換えたりしながらパワーアップをし、最終決戦であるスタジアムで定められたルールに応じて最大四人で順位を競い合うというものになっている。アイテムにはステータスをアップ、ダウンさせるものはもちろん、コピー能力による攻撃手段の確保に一時的なバフなど、様々なものが存在しており、街でライバルを妨害するか、なども戦略として大事になっていくのだ。

 

「ふむふむ……面白そうだね」

「早速やってみようよ!……でも、誰からやる?」

「とりあえず私抜きでやってみればいいんじゃない?操作感も知りたいだろうし」

 

一旦モルフォが観戦に回り、モモイ、ミドリ、ユズ、アリスがコントローラーを手に取る。それぞれ、ピンク、緑、赤、青のカービィを選択し、シティトライアルを開始、ライトスターと呼ばれる初期機体に乗り込み、街を走り回る。

 

「このマシンって浮いてるんだね」

「うん、レース系だとダッシュパネルがあって、それを踏むときはAボタンをプッシュして地面に着ける必要があるんだよね。バイク系だと最初から地面を走ってるから上を通過するだけでダッシュするんだけど……シティトライアルもあったような」

「あっ、チャージしてブーストすると攻撃力が上るんだ」

 

アイテムはそのまま街に落ちていることも多いが、コンテナと呼ばれるブロックに入っていることも多い。青いブロックにはステータス、緑のコンテナにはバフアイテムや攻撃用のアイテム、そして赤のコンテナにはコピー能力に伝説のエアライドマシンパーツが入っていることがある。基本的に青いコンテナを破壊してアイテムを集めていくのが基本の流れになる。

 

「おっ、なんか羽っぽい機体見っけ!これ使おうっと!」

「ウィングスターは高い飛行能力を持ってるね」

「おお、確かに凄い飛べる!」

 

早速新たな機体、ウィングスターを見つけたモモイがその飛行能力に満足げな表情を浮かべる。気持ち、速度と飛行のステータス強化を狙うように動きつつある彼女の画面を見ながら、ミドリも乗り換え用のマシンを見つける。

 

「これは……」

「ジェットスターだね、空中に出ると一気に加速するマシンだね」

 

それは緑と黒を基調とし、大きなターボエンジンを搭載したマシン、ジェットスターだった。それを使い、ジャンプ台から飛び出してみると、甲高い音と共にジェットスターが空中を飛び出す。旋回性能こそウィングスターに劣るものの、速度だけなら明らかに上、しかもその音と速度に思わずミドリもにやけてしまう。

 

「……これ楽しいかも」

「うわぁ、そっちも速そう……」

「でも曲がりにくいのは場合によっては難しいところかな……」

「アリスもマシンを探します!えっと……これにします!」

 

それは、後方に青い球体がついたマシン、ロケットスターだった。それに早速乗り換えたアリスがチャージを始めると、目に見えて後方の球体がどんどん膨らんでいく。そして最大チャージでAボタンを離すと轟音と共にロケットスターが飛び出していく。

 

「速いです!!これめっちゃ速いです!!」

「ロケットスターはこのダッシュが凄いんだよね」

「……どれも特色があるんだね」

「そうだね、ユズはなんか興味あるのあった?」

「うーん、どれも興味はあるし、実際使ってみたら……ってのはありそうだけど、今の所、皆が使ってる中だと初期機体が拡張性高そうな気がする」

「あ、それわかるんだ……確かにライトスターはそうだけどさ……」

 

一方ユズは、ライトスターをこのまま強化していく方向性で進めていく。そんな中、イベントが発生する。シティトライアルではイベントが一定時間毎に起こり、それによって毎回違った試合展開を見せていく。そして今回発生したのは、城のシャッターが開いたというアナウンス。

 

「アイテムが大量に手に入るチャンスのイベントだね」

「城ってどこにあるの!?」

「えっとね……」

 

城の場所と言われてもまだマップの事が分からない四人にその位置を教えると、四人は一斉にそこへと向かっていく。だが、そこにあったのは、なんとラーメン。ただのHP回復アイテムだけであった。

 

「食べ物って確か回復アイテムでしょ?しょっぱ!?」

「うわぁ……」

「薬にも毒にもならない……」

「うわーん!全くお宝じゃありません!」

「運がいい時は全ステータスアップが大量に入ってることもあるんだけどね……今回は特に運がないパターンを引いたね……」

 

ステータス強化ができるなら最高のイベントなのだが、それができないと途端にしょぼくなる悲しいイベントが終わり、また時間が経つと次のイベントが発生する。

 

「うわ!?視界が!」

「霧です!霧で前が見えません!」

「なんかあるの?特別出やすくなるアイテムとか……」

「ないです」

「え?」

「ただ視界不良になる、それだけ……」

「外れイベントだね……」

 

続くイベントは霧による視界不良というこれまた悪影響しか起こらないイベント。視界が見えなくなることでコンテナも探しにくくなり、不自由な街中を走っていくことになるのだが、そんな中、スタジアムの予告が起こる。シティトライアルではこうやって、散策終了後に四人で戦うスタジアムについて予告で触れることになるのだ。その内容は、飛行距離が大きく求められる、エアグライダーと呼ばれる競技への予告。

 

「これはエアグライダーかな……?」

「成程……やっぱり飛行能力の強化が大事ってことだね」

「じゃあ今のマシンはかなり当たりってことかな?」

「むむむ……アリスのマシンでは厳しいです……」

「今からマシン乗り換えるべき?いやもう遅いか……」

 

飛行に有利なマシンに最初から乗っているモモイとミドリが勝利に近づいていることを認識し笑みを浮かべる。ユズは全体的にバランスよく強化を施しており、アリスもステータス上はともかく飛行能力は特化している二人に負けていた。そんなこんなで、最後の追い込みをしつつ、街を走る時間が終わりを告げる。そして遂にスタジアムに差し掛かったその時、出てきたのは、

 

「「「「……シングルレース?」」」」

「詐欺予告だったか……」

 

スタジアム詐欺。それはシティトライアルで起こる、最後に挑むスタジアムが予告とは異なっているパターンだ。たまにこのようなことが起こるのだが、エアグライダー用に仕上げていたモモイとミドリは、突然、火山を舞台としたマグヒートと呼ばれるコースを用いたレースになったことで、

 

「え、普通にレースにな……うわー!?」

「ちょっ、速すぎて曲がれない!?」

「と、とりあえずチャージの使いどころさえ間違えなければうまく走れそうです」

「マシンを交代しないのが正解だったなんて……」

 

空中に出た瞬間にレースに求められる以上の過剰な性能になるウィングスターと超高速で動き回って人力での操作が困難を極めるジェットスターにモモイとミドリが四苦八苦する中、程よく速く、曲がりやすいライトスターを操るユズが初見のコース故にある程度は苦戦しながらも順調に進み、アリスもマップを見ながらロケットスターのチャージの使いどころを間違えないように進めていく。

 

「び、ビリは回避……!」

「ぐ、うう……レースになるなら別のマシン探してたのに……!」

 

結果、ユズが一位、アリスが二位、そして三位は超速度でごり押して無理矢理ゴールしてきたミドリとなり、四位はモモイという悲しい結果になってしまった。

 

「うう、ビリってことは私が交代か……」

「いえ、アリスも交代します」

「……は?」

 

モルフォにコントローラーを渡そうとしたモモイ。だが、アリスの声が突然困惑したものに変わり、その目が赤くなったのを見て、アリスが無理矢理ケイと人格を交代させたことに気付く。

 

「あ、アリス!?なんで急に……」

『ですがケイ、すっごく興味がありましたよね?次はケイの番です!』

「いや、ですが……!」

「まあ、いいんじゃない?ケイも友達だしさ、一緒にやろうよ」

「……ま、まあいいでしょう」

「なんか……モルフォには甘くない……?」

「少なくとも私を入れたままのゲーム機を碌に充電もせずにおざなりにする人よりは信じれます」

「酷い!?」

 

酷い言われようだがやったこと自体は事実なので何も言えなくなるモモイ。そしてケイとモルフォが交代で入り、ゲームを再開しようとしたその時だった。

 

「にはははー!遊びに来ましたよー!」

「どうも、モルフォ」

「あれ、トキとコユキ?どうしたの」

 

部室の扉を開けて姿を現したのはコユキだった。その隣にはトキの姿もある。今日は休みの日なのと、もう普通に学内を自由に出歩いてもよくなったのか、トキは制服を着ている様子だ。

 

「皆エリドゥで忙しくなっちゃってますからねー、セミナーにいても暇なだけですし、だったらゲームやろうかなーって!」

「コユキを一人にすると何をするかわからないのでついてきました」

「いや、ゲーム開発部に行くって聞いてじゃあ私もってついてきたじゃないですか!?」

 

部屋の中に入る二人を見ながら、ユズとミドリは互いに顔を見合わせる。

 

「どうしようか?」

「丁度いいんじゃないかな?これで八人になるから、丁度割れるし」

「そうだね。二人とも入る?」

 

ユズとミドリがコユキとトキにそれぞれコントローラーを手渡していく。そして、カービィのエアライドの簡単なルール説明を受け、それぞれカービィのカラーリングを選択していく。ケイが赤、トキが青、コユキがピンク、モルフォが黄色のカービィを選択してシティトライアルを始める。最初の方は平和にそれぞれアイテムを集めつつあったものの、流れが変わったのはコユキが赤いコンテナを破壊した時だった。そこから、緑色の謎のパーツが出現し、それを手に入れると不思議な音が鳴る。

 

「これはなんですか?」

「ああ、ハイドラのパーツだね……赤いコンテナの中にたまに入ってて、三つ集めると伝説のエアライドマシンを手に入れることができるよ。後、ドラグーンっていう別の機体もあるかな」

「じゃあこれを完成させれば敵なしですねー!」

「伝説、ですか……」

「お、ルインズスター……」

 

ハイドラを探すため、赤いコンテナを狙って破壊しまくっていくコユキ。一方モルフォが愛車である、常に最高速が出る代わりに直進移動しかできないという特性を持つルインズスターを確保する中、トキも小回りが利き、攻撃力に優れたデビルスターを確保。ケイは先程アリスが使用していたロケットスターを見つけて乗り込んでいたのだが、

 

「にはははー!どんどん壊していきますよー!」

「……は!?」

 

大砲を手に入れたコユキがコンテナを破壊するついでと言わんばかりにケイを強襲。耐久力がまだ低かったロケットスターは一瞬で粉々に粉砕されてしまい、赤いカービィが宙を舞っていく。

 

「お、思いっきり攻撃してる……」

「いやぁ、やろうと思えばやれるとは思ったけど……」

「一回やったら……もう戦争だからねこれ……」

 

先程やっていた時にはやらなかった他プレイヤーへの故意による攻撃。それはある意味不可侵条約のようなものがあったし、もし破れば袋叩きになるのは目に見えている。だからこそ、モモイ達は攻撃し合わなかったのだが、コユキは当たり前のようにそのラインを踏み越えてきていた。

 

「こっ、こいつ……!」

「ハイドラ、パーツ二つ目ですよー!!」

「うわぁ、こいつやば……あ!?予告デスマッチ!?」

 

コユキのやばさに軽く引いていたモルフォだったが、予告で他のプレイヤーとひたすら勝負するというデスマッチが出てきたことで冷や汗を流す。耐久力に優れ、戦闘に特化したマシンであるハイドラを完成されれば、まさにコユキの勝利は確定といっていいだろう。

 

「デスマッチ……成程、ハイドラはそれだけ厄介ということですか……では先にコユキを潰しますか……」

「なんで!?」

「先に人のマシンを破壊した人が言っていい言葉じゃありませんよね……!」

 

たまたま近くにあった大型バイクのようなマシン、レックスウィリーに乗って復帰しながら、ケイが怒りの声を上げる。いつの間にか交換していたワゴンのようなエアライドマシン、ワゴンスターに乗るコユキを二人が追いかける中、イベントが発生する。

 

「あ、ダイナブレイドだ。これ倒すとアイテムが手に入るんだよね」

「ダイナブレイドも出てくるんですね。でもまずはコユキからです。コユキからハイドラのパーツを一つでも奪っておけば完成されませんから」

「いえこのまま破壊します……ええい、このバイク重いし旋回能力しょぼすぎないですか!?」

「レックスウィリーだし……」

 

ダイナブレイドをプラズマの電撃やゴルドーと呼ばれるトゲトゲの生えた球体を投げつけて仕留めている傍らで追いかけっこが続く。コユキも何とか地形やギミックを駆使しながら二人から逃げているが、そんな中だった。

 

「うおおおおお!?」

 

コユキが手に入れたのは、常に最高速になるというアイテム。それによって加速することで二人を引き離し、アイテムの効果が切れると、目の前にソードのコピー能力と常にスピンするアイテムがあることに気付く。それを見たコユキはその二つを取ると、

 

「にははは!今度はこっちから反撃ですよ!」

「っ、アイテムで強化を……!?」

 

逆にトキたちを攻撃しようとする。トキも、ニードルのコピー能力を手に入れてそれで反撃、しようとしたその時だった。なんとコユキはたまたま目についた無敵状態になる無敵キャンディまで手に入れた状態で突進。ソードとスピンの同時攻撃によって逆にトキのデビルスターが破壊されてしまう。

 

「そ、そんな!?」

「負けちゃったよ!?」

「く……もう彼女を止めることはできないというんですか!?」

 

レックスウィリーの貧弱なステータスではデビルスターに追いつくこともできず、半ばコユキを諦めていたケイもこの惨状に悔しそうな声を漏らす。呆然としながら何でもいいからマシンを探すように彷徨うトキの画面を尻目に、遂に三つ目のハイドラのパーツを入手。それによって緑色のカブトムシとクワガタムシの角が合体したような厳ついエアライドマシンが完成、さらに空が薄暗くなり、BGMも荘厳なものへと変わっていき、トキとケイも苦い表情を浮かべ、モモイ達はおお、と少し感動した様子でマシンを見る。

 

「にはははは!!無敵のエアライドマシンの完成ですよー!もう誰にも止められませんよー!……あれ?動きませんね」

「そりゃチャージを燃料にして走るマシンだからね」

「むぅ……って、なんかモルフォさんが来て……あの?」

 

しかし完成直後は動かない。仕方ないのでチャージしていると、その近くにルインズスターに乗るモルフォが近づいてくる。甲高い加速音を鳴らしながら、常にスピンするアイテムを手に入れて近づいてきたモルフォは、そのままハイドラに突撃。

 

「あの、ちょっと!?」

「うわ、あのハイドラHPやばかったはずなのにどんどん削られてる……」

「っていうかルインズスターでちょっとずつ擦っていってない?」

「待って、待って、待って!?」

「デスマッチにハイドラを持ち込もうとする者には……スクラップのペナルティね!」

「うあぁああああ──!?」

 

ハイドラは確かに圧倒的な性能を誇るマシンなのは間違いない。しかし、その性能もちゃんと強化アイテムを取ってこそのものであり、特に、事実上の燃料タンクに直結するチャージに関しては事前に確保しなければならないレベルだ。そして、そういったものを怠ってマシンだけを完成させた結果、それをデスマッチに持ち込ませまいとするモルフォが連続でスピンを当てていきハイドラをぶちのめすという方法で一瞬でスクラップにさせられていた。

 

「やはりモルフォは凄いですね。これで私もマシンなしという事態は避けれました」

「ふ……当然の報いですね」

「なんで!?」

「いやまぁ最初に喧嘩売ったのコユキの方だからね……」

「そりゃコユキちゃんが悪いとしか……」

「このゲームのジャンルを大乱闘に変えちゃったのはコユキだし……」

 

トキが常に滑る特殊な挙動をするスリックスターと呼ばれるマシンを入手している横で、伝説のエアライドマシンを破壊され、涙目になるコユキ。しかし彼女に味方する人は誰もおらず、そのままタイムアップ。今回は予告通り、ちゃんとデスマッチとなったのだが。

 

「あ、よかった。ちゃんと初期機体にもど……いや弱いですね!?」

「ええ、本当に……みるも無残になってしまって……ふふ」

「狙い甲斐があって嬉しいですよ、コユキ」

「ひえっ、あのぉ、モルフォ……」

「大丈夫!デスマッチになったから私は全員狙うから!!」

「お慈悲をー!!」

 

当然、ヘイトを稼ぐだけ稼いで伝説のエアライドマシンを失い、最低ランクのステータスとなったコユキを狙わない理由がなく、笑みを浮かべるトキとケイからも集中砲火。当然のように最下位になってしまった。

 

「と、途中までは良い感じだったのに……」

「手を出さなきゃよかったのに……でも楽しかったでしょ」

「はい!それはもう!でも次は負けませんよー!」

「もう一つのドラグーンの方が気になりますね。揃えてみたいです」

「あ、私もやりたいやりたい!」

「お姉ちゃんずるいよ、私だってやりたいんだから」

「じゅ、順番どうしようか……?」

「次はアリスも皆とやりたいです!」

「ケイは?」

「え、えっと……まぁ、楽しかったですが……」

「よし、じゃあ次は……」

「……モモイ!!」

 

全員が一回ずつプレイしたところで、次の組み合わせをどうするか、八人で色々と話をしながら、次のシティトライアルをする組み合わせを決めようとしていた時だった。突然部室の扉が開かれ、ユウカの姿が現れる。

 

「ゆ、ユウカ!?」

「げっ、いやこれは別にサボってるわけでは……」

「コユキは今は仕事を割り振ってないから別にいいわよ……それよりモモイ!あなたには今回の件、ちゃんと罰を受けてもらうわよ!」

「え!?なんで!?」

「心当たりがない、とは言わせないわよ!?」

 

突然のユウカの宣告に真っ青になりながら立ち上がるモモイ。その場にいた全員の視線がモモイに突き刺さる中、心当たりという言葉に即座に全員が先生をモモイが呼びつけたことを思い出す。

 

「いや、確かに先生を呼んだのは……で、でも先生は許してくれたし」

「……あれは許さないと話が進まなかっただけのような。そもそもシャーレは中立の機関ですので一方的に一学園の生徒に罰を与える、みたいなことは難しいのでは?」

「トキ!?」

「いいから来なさい!……一応アリスもケイちゃんも助かったし、トリニティとは問題も起こらずに済んだから、本来は強制退部はもちろん、退学までいってもおかしくないところを停学にすらせずに奉仕で済ませてあげてるのよ……だとしても!こういう交渉はあなたがやることじゃないんだからね!?」

「ひぃいいいお慈悲を……」

「あなたには暫くセミナーの一般的な作業をやってもらうわよ!私とノアのどっちかが常に見ているからちゃんとやること!それと、ノアから政治についてちゃんと教えてもらいなさい!」

「待って!?それなんかやばそうなんだけど!?」

「シナリオライターなんだから、丁度いい機会だと思って丁寧に叩き込まれなさいよ!全く……あなたの行動一つでミレニアム自体が更地になってもおかしくなかったんだからね?そこは本当にわかってるのよね?」

「……あい、本当にすみません……」

 

ユウカに首根っこを掴まれながら部室から運ばれていくモモイ。その後ろ姿を、その場にいた一年生達はただ茫然と見送る。

 

「……まあ、ユウカ先輩がやってくれるなら……正直私はやらかしてる側だからモモイを責める立場じゃないし……」

「別にモルフォは悪くありません……これこそ私が言う権利などありませんが……アリス達を危険に晒しかけた彼女の行為は当然咎められるべきです」

「にはは……まあ、終わる頃には魂が抜けてそうです」

 

そして、今後のモモイが辿るであろう地獄を想像し、コユキは苦笑するのだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。