転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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放課後スイーツ部達と人狼ゲーム

 

「……あ、うあ……」

 

プルプルと手を震えさせる赤い目に長い黒髪の少女。その手にはクッキーのようなものがあり、それを見ていた四人の少女達が微笑ましそうにその姿を見つめている。

 

「美味しい?ケイ」

「甘くて……サクサクして、美味しいです……」

「「「「おお……」」」」

「なっ、そんな目で見るのはやめてください!」

 

そこそこちゃんとした店の、だが値段はリーズナブルで評判も良いクッキー。トリニティにあるクッキー専門店までわざわざ足を運んだ理由は、

 

『……あ、買い置きしてたクッキー無くなってる』

『今度詰め合わせの適当に買う?』

『うーん、アリスとケイは何か食べたいのある?』

『……別にお菓子なんて何でも一緒では?』

『『『『え?』』』』

 

ケイが食べれば味なんて全部一緒だろうという発言をしたのがきっかけである。元々AIであり、先日の一件からアリスの中に宿るもう一つの人格と化した彼女は食事をする機会がない。基本的にそういった行為はアリスが行っているからである。そのため、彼女としては栄養にさえ気を付ければ後はどうでもいいだろう程度の認識でしかなく、下手するとサプリメントで十分では?みたいなことまで言い出しかねない。そこで、

 

『よーし!今日はトリニティのめっちゃうまそうなスイーツ食べにいこう!!』

 

モモイの一声がきっかけとなり、六人はこの店までやってきたのだ。そして、おそらく生まれて初めてとなるであろう食事をしたケイの反応はというと。あまりの美味しさに感動したのか瞳が揺らいでおり、その様子を四人から微笑ましい様子で見られていた。慌てて咳ばらいをして誤魔化しながら残りのクッキーを口に放り込むのだが、その美味しさに思わずにやけてしまう。

 

「……く、屈辱です……」

「なんか噛ませにされる女騎士みたいなこと言ってる……」

「モモイはもう許しません……」

「なんで!?」

「そりゃあ噛ませ女騎士って言われたら誰だって怒るでしょお姉ちゃん……」

「どうどう。飲み物もあるよ」

 

思わぬ流れ弾にモモイが唖然となってしまう。その様子を尻目に一緒に頼んだ紅茶を進めると、クッキーの口直しにケイが一口飲む。紅茶もまた、店員がクッキーに合うものとして店に並べているだけの事もあり、これもまた一口飲んだだけで口の中に美味しさが広がっていく。

 

「お、美味しい……」

「よかった。ケイにも喜んでもらえて」

「トリニティだから普段から来れる場所ではないけど……たまにはこういうのもいいよね」

「……そうですね……」

 

紅茶を飲んでほっと溜息を漏らすと、モルフォとユズの言葉を聞いて頷く。

 

「じゃあ、この後もう一軒行ってみる?ちょっと気になるものがあるんだ」

「本当ですか!?」

『……アリスも食べたいです』

「う、も、申し訳ありませんアリス……」

 

モルフォの提案に食い入るように身を乗り出すケイ。しかし、その内側からアリスの恨めしい声が聞こえてきたことで慌てて人格がアリスへと切り替わる。ケイから入れ替わったアリスは先ほどまでケイが食べていたクッキーを口に入れると、

 

「凄く甘くて美味しいです!」

 

満面の笑みを見せる。その様子を見ながらも、モルフォとミドリは顔を見合わせる。

 

「……アリスちゃんの声が聞こえないのはちょっと不便だね……今はアリスちゃんが外に出てるから、ケイちゃんの声が聞こえないし……」

「二重人格ってこういう感じなんだろうね……」

「エンジニア部に言ったらどうにかなるかな……」

 

通常の人間であれば難しいかもしれないが、アリスとケイとなるとまた話は変わってくる。二人は機械の体を持っているのもあって、ある程度融通が利くのかもしれない。内側にいる人の声が聞こえない、アリスとケイ、二人と同時に話すことができない、というのはどうしても寂しいものがある。

 

「……まあ、今は置いておこう!それよりモルフォ、次の店だよ次の店!」

「そうだね、それじゃそろそろ行こうか」

 

会計を終え、次の店へと移動するゲーム開発部。そこは、そこそこ安めののものからお高めのものまで何でも揃ってるケーキ専門店だった。

 

「あー、これも何か見た事あるかも」

『……何やら騒がしいみたいですが』

「え?」

 

見れば、店の前に黒い服を着たガラの悪い女子生徒達の集団がいた。店の前から現れた店員と思われる獣人に詰め寄っている様子を、他の学生と思われる生徒達が遠巻きにしていた。どう見ても巻き込まれたくない、といった様子が見て取れた。

 

「うわぁ、不良達だ」

「なんかトラブルがあったのかな」

 

話の内容に耳を澄ませてみると、高額のケーキを割引しろ、挙句の果てにはタダにしろと言いたい放題。店員もすっかり困ってしまっている。

 

「……どうしようか」

「どうって……」

「……邪魔ですね。こういう手合いは手加減する必要はないですよね」

「……アリス、じゃなくてケイ?」

「ちゃんと加減はしますし、今の私達は名も無き神々の王女の力を許可なく使用できなくなっていますから」

 

そう言い、スーパーノヴァを手に取る。スーパーノヴァに追加された機能の一つを解放すると、先端の発射口部分が変更される。直後、大量の弾丸が不良達を襲い始める。

 

「いだだだ!?」

「ぎゃあああ!?」

「ケイ、大胆……」

 

ケイの武器はアリスと同じスーパーノヴァだ。だが、ケイ自身はエリドゥでの戦闘時にアビ・エシュフを使用し濃密な戦闘経験をしていたせいで、ガトリングの方がうまく扱えるようになってしまっていたのだ。そのため当初はミニガンをアリスが携帯しようとしていたのだが、

 

『さすがに嵩張りすぎる』

 

という根本的な問題により断念。それを受け、エンジニア部がスーパーノヴァにガトリング機能を搭載するという改造を施したのだ。一発の火力を突き詰めるのが従来のスーパーノヴァ、それに対しガトリングモードに切り替えることで威力を大きく減衰した状態で連射することが可能となる。それにより、偶然の産物とはいえ安全面においても満足のいく機能に仕上がったのだ。

 

とはいえ威力はミニガン等と変わらない威力になっているだけである。そのため、不意打ち気味にガトリングをぶち込まれた不良達は大混乱に陥りながら慌てて銃を構え始める。

 

「てめえ!?いきなり不意打ちとはどうしてくれぐはぁ!?」

「ああっ!てめえ、ダチの頭をいきなり撃つとはどういう神経してんだ!?」

「いや構えようとしてたから……」

 

続けてミドリが先んじて銃を構えた相手を撃ち抜いたことがきっかけで、不良達が一斉に六人へと襲い掛かってくる。

 

「うわわ!襲ってきた!?」

「なんでこうなっちゃうんだろ……」

「トリニティでも不良はいるってことだね……とりあえずどうにかするよ」

 

モモイとユズもそれぞれ武器を構えて不良を攻撃し始める。モルフォもシールドを展開しながらタンク役を担い、相手の攻撃を受けながら指示を出しケイたちの攻撃を通していく。

 

「ど、どうなってやがる!敵はたった五人だろ!?」

「なんでこっちの方がやられてんだ!?くそ、押せ押せ!!」

「ロケラン持ってこい!」

 

多少数があれど、ただの不良だ。場数を踏んできたゲーム開発部からすれば苦戦する相手でもない。不良達も自分達の不利を悟ったのか、RPGを持ちだそうとする。その様子が見え、モルフォも注意深くその人物を見ながらシールドを構える手に力を込めていると。

 

「ぐあっ!?」

「!?どうし……な!?」

 

背後からの銃撃によってRPGを撃とうとした不良が倒れてしまう。一体何事かと不良達が振り返ると、そこには不良を撃った本人である猫の耳を生やした黒髪に赤目の少女、黒髪緑目の少女、薄桃色のポニーテールに赤目のライオットシールドを手に持つ少女、ウェーブがかった金髪をツインテールにした小柄な少女の四人が立っていた。

 

「な、仲間か!?」

「いや知らないけど」

「くそっ卑怯な!血も涙もねえ!」

「……なんて言われてるけど?」

「……ふっ」

 

文句を言い始める不良に対し、猫耳の少女に話を振られたポニーテールの少女は静かに笑みを浮かべる。それを挑発と受け取ったのか、不良の半分が背後の四人組の方を振り向く。

 

「あ、あれ?こっちの方に……」

「いや、そりゃ撃ったから向けられるでしょ」

「いやどうすんのよ!?」

「まあ、やるっきゃないんじゃない?店前で騒がれても迷惑だし」

「ふ……その通り。スイーツを食べたいという意思を邪魔することは誰にも……」

「ごばっ!?」

 

四人のマイペースな会話の最中もケイとモモイによって次々と意識を刈り取られていく不良達。四人組の方を向いていた不良の後ろでは既に半数が全滅しており、それにいち早く気付きかけた不良の頭部がモルフォのフルスイングで吹き飛ばされていく。

 

「「「「……」」」」

 

空中できりもみ回転しながら看板に顔面から叩きつけられた不良。そのまま、ずずずと音を立てながら地面に落ち、ピクピクと腕と手を上に上げていたがそのまま地面に落ち、完全に意識を失ってしまう。

 

「り、リーダー!?」

「覚えてやがれえええ!!」

「くそっ、トリニティめ!その面覚えたぞ!」

「……まぁ、三日経てば忘れるだろうし訂正しなくていいか……」

「いやいいの?」

 

どうやらモルフォが仕留めたのがリーダーだったようで、慌てて残りの不良達が倒れた仲間達やリーダーを担いで逃げ出す。その後ろ姿を見送っていたモルフォの下に、ポニーテールの少女が近づいてくる。

 

「にひ……君とはシンパシーを感じるよ」

「……そう?」

「いや盾持ってるぐらいじゃん」

「そ、それよりケーキだよケーキ!」

「そういえばそのためにあいつらを追い払っていましたね」

 

緑の目の少女の言葉に他の三人も思い出したような顔を見せる。モルフォ達もまた、そのためにケイが襲撃をかけたことを思い出す。

 

「皆さん、ありがとうございます……こちらとしてもどうしたものかと思ってまして……」

「あー、気にしないで」

「そうだ!ここで会ったのも何かの縁だし……一緒に食べない?」

 

銃撃戦が始まり、引っ込んでいた店員が店の中から出てくる。その感謝の言葉と、緑の目の少女の言葉を受け、モルフォ達は頷き合うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「へー、あんたらゲーム開発なんてやってるんだ」

「凄いことやってるじゃない」

「ゲーム開発か……ロマンだね」

「ワクワクするね」

 

その後。ケーキを無事購入することができたゲーム開発部は放課後スイーツ部と名乗った四人組に案内され、彼女たちの部室へと訪れていた。ゲーム開発部の部室よりも広いその内装を見ていると、さすがトリニティだと思ってしまう。

 

「……甘い……美味しい……」

 

隣でケーキにご満悦なケイを見ながら、改めて放課後スイーツ部のメンバーを見ていく。黒髪緑目の少女、栗村アイリ。猫耳少女の杏山カズサ。薄桃色のポニーテールの少女、柚鳥ナツ。ウェーブがかった金髪ツインテールの少女、伊原木ヨシミ。自己紹介を終え、それぞれの活動を話し合ったりしていたが、やはりここも学校の特色が出ているのだろう。本人達としては真剣そのものだろうが放課後にスイーツを食べるという内容の部活が認可されているという事実はまさしくミレニアムの人間にとっては軽いカルチャーショックだった。

 

「TSC2、ダウンロードしてみる?」

「うん、後でやってみるよ、ありがとうね」

「2ってことは前作があるってことよね?そっちはおすすめしないの?」

「……えっと、ちょっとそっちは色々あってね……」

「まあ、特別賞取ったのが2の方だから……」

 

ヨシミの質問に苦笑いを浮かべるモモイ達。仕方ないことであるが、自分達のゲームに触れるならちゃんと実績のある2の方をやってもらいたいと思わざるを得ない。さすがにクソゲーの烙印を押されている方は心を痛めても勧められない。

 

「ふ……深淵を覗きにいくのもまた一興だよ」

「ま、まあやりたいなら止めないけど」

「……」

『ケイ、先ほどから食べ過ぎなのでは……?』

「べ、別にそういうわけでは……」

 

周りの会話に全く参加せずにケイはひたすらケーキを食べていた。思わずアリスが咎め、はっとなるケイ。その様子を皆が微笑ましく見つめる。一心不乱に美味しそうに食べているその姿は見ていて気持ちがいいものである。

 

「……な、何か遊びませんか?」

「あ、誤魔化した」

「誤魔化していません!」

「娯楽……確かにそれもまた、スイーツと同様に人の心を満たすものだね」

「そんな大層なものじゃ……まあ遊ぶのはいいけど」

 

慌てて誤魔化すようにモルフォに視線をやりながら告げるケイ。その言葉を聞いてふっと笑うナツに呆れるカズサ。アイリは興味津々といった様子でスマホを開くモルフォを見ていたが、

 

「人狼とか?」

「「「「人狼?」」」」

「そんなのもあったなあ」

「モルフォの部屋にも置いてました!やったことはありませんが!」

 

モルフォが告げたそのゲーム名にスイーツ部が思わず聞き返し、モモイ達が懐かしそうな表情を見せる。ケイからアリスに代わり、過去の記憶を手繰り寄せているが、四人に驚いたといった様子は見えない。四人も、自己紹介の時に既にアリスとケイは二重人格であることは説明済みだ。

 

「人狼って……なんか物騒そうだけど」

「えっと、プレイヤー全員で成り立つ村で、村を滅ぼそうとする人狼を全員追放したらプレイヤーの勝利、逆に人狼が人狼の人数以下になるまで村人を追放したら人狼の勝ち、っていうゲームかな」

「そうそう、そんな感じ」

 

実際は処刑したり殺したりなのだが、キヴォトス故か追放というマイルドな表現に差し替えられていた。しかしそれ以外は基本的にユズが説明した通りの内容である。プレイヤーたちは昼と呼ばれる時間に誰が人狼かどうかを導き出し、追放するか、或いは人狼はいかに自分達が追放されないかを議論し合う。そして多数決で一人を追放し、夜になると人狼が誰か一人を追放する。こうして昼と夜を繰り返しながらそれぞれの勝利条件を満たす、というものになっている。

 

そして、このゲームをさらに奥深くしている要素が、役職である。村人と役職だけではなく、預言者、霊媒師、狩人、狂人などなど……その役職は多種多様に渡る。

 

「ふむ……面白そうだ」

「役職って大体どれくらいあるの?」

「えーと……アリスとケイは悪いけど一人としてカウントさせてもらって九人だから……そうなると、人狼二人に狂人、占い師、霊媒師、騎士が一人ずつで残り三人が市民って感じかな」

「えー?三人が能力無し?全員役職持ちにしちゃおうよ」

「それやると大変なことになるし……全員慣れてからじゃないと」

 

狂人とは村人の立場でありながら人狼側の人間。勝利条件は人狼の勝利となる。占い師は毎晩、一人を占い、その人物が人狼かそうでないかを判別する。霊媒師は追放された人間が人狼かどうか判別できる。騎士は毎晩一人を選んで守ることができ、騎士に守られている人物は人狼から襲われても追放されなくなるのだ。

 

「ま、なんでもいいわ。とりあえず始めてみましょうよ」

 

ヨシミの台詞を受け、役職をそれぞれ割り振っていく。スマホの画面には自分の名前が表示され、その人物がタップすることで自分の役職を知ることができる。そうして自分の役職と、人狼は仲間を全員が把握したところで、人狼ゲームが開始される。

 

『最初の夜がやってきました』

 

スマホからゲームマスター代わりの音声が流れる。本来ではゲームマスターを務める人間がチュートリアル代わりに人狼に強制的に襲われるのだが、今日はそれはスキップされる。必然的に霊媒師も今日はその力を発揮することはない。残る占い師と騎士がそれぞれ占う相手と守る相手を選ぶことになる。そしてその処理が終わると、

 

『昼の時間がやってきました。制限時間は一分です』

 

一分間という短い時間で人狼を見つけ出す。そのために少女達は、それぞれの役職を明らかにしたりしながら立ち回ることになる。

 

「えっと、どうすればいいの?」

「占い師が名乗り出て占った相手を明かすとか、自分の役職を明かすのが基本になるかな、ただ占い師だとばれたら速攻で人狼に吊られるけど……あ、私は村人」

「私も」

「私もだね」

 

一名を除いて狂人人狼関係なく全員が名乗る。騎士は人狼に優先して狙われやすいし、霊媒師はまだ効果を発揮していない以上、役職名を温存したいと考えてもそれはおかしい話ではない。

 

「はいはーい!私が占い師だよ!えっとねー、ミドリは人狼じゃないよ!」

「……にひ、それはおかしいね。私も占い師なんだけど」

「「「え!?」」」

 

そして、占い師だと明かしたのはモモイであった。彼女はミドリが人狼ではないと占った結果を告げるのだが、なんとそこに対抗してきたのはナツ。この状態に皆困惑してしまう。

 

「え、ど、どういうこと!?」

「つまり……どっちかが偽物ってことに……」

「嘘!?でも私村人だよ!?」

「……いや、それは違う。確かにミドリが村人なのは間違いないんだろうけど……人狼は二人でそれ以外はそうじゃないって出るんだから、あてずっぽうでもある程度は当たる」

「あ……」

「それよりナツ、あんた占い師を選んだのなら誰を占ったのよ」

「それはもちろん……私自身。これにより、私は清廉潔白であると―――」

 

カズサの指摘に、ミドリも納得する。しかし、そうなるとナツは誰を占ったのかという問題が立ちはだかる。しかし、それに対し自分自身を占ったと謎の釈明をするナツ。それについて周りが追及しようとするのだが、ここで一分という時間が終わり、夕方の時間、追放するプレイヤーを決めることになる。

 

(……これで、選ぶの……?)

 

今わかってるのはモモイかナツのどちらかが占い師ということだけだ。だが、ミドリは村人と名乗っていたし、それを占って白と言ったモモイは一応事実を並べている。とはいえ、ミドリの方が先に村人と名乗りを上げているため、怪しさが残る。とはいえ、もっと怪しいのは、占い師と名乗っておきながら誰も占ってないというナツであった。

 

「……」

 

本当に占い師だったらこんなことは言わないだろう、だが村人がわざわざ役職を騙って混乱の下を生み出した結果、本物の占い師であるモモイが吊られる、なんて事態になったら大変なことになる。かといって、人狼が占い師を騙って狙われたことを考えればリスクが高い。となると、ナツの役職は……

 

(狂人……とりあえず吊って、モモイを守ろう……)

 

人狼側ならとりあえず潰すことにする。その結果。

 

『ナツが追放されました』

「……あれ?」

 

ナツは満場一致で吊るされ、追放されてしまう。これはどういうことかと、思わず冷や汗を流してしまうナツだったが、彼女を尻目にカズサが呆れたような表情を浮かべる。

 

「そりゃあんた、あんなことしてたら狂人って言ってるようなものでしょ……」

「擁護できませんね……」

「とりあえず追放されたナツはそのまま観戦しててね……」

「ふ、ふふ……世の流れは残酷だね……」

 

そして夜の時間。モルフォは騎士としての役目を果たすためにモモイを守る。そして、占い師、霊媒師が行動を終え、人狼が誰を追放するかを投票で選ぶ。その結果、

 

『朝の時間がやってきました。ユズが追放されました』

「……嘘ぉ!?」

 

ユズが人狼にやられて追放されてしまう。これで残りは七人。そして昼の時間が訪れる。

 

「……霊媒師は私よ。追放されたナツは人狼じゃなかったわ」

「やっぱり狂人だったね……」

「モモイ、次の占いは?」

「アイリを占ってみたよ。人狼じゃなかった」

「えへへ、私村人だったよ」

「となると……」

 

これで完全に白と判明したのはモモイ、ミドリ、アイリ、カズサ。そして疑惑の判定があるのがモルフォ、アリス(ケイ)、ヨシミの三人。

 

「えっと、ちなみに騎士は?」

「私だよ」

「!やっぱりモルフォが騎士でした!」

「やっぱり?」

「はい!モルフォのジョブはパラディンです!なのでモルフォが騎士なのは納得です!」

「……アリス、それはこのゲームでは何の関係もありません」

「でも、モルフォちゃんも役職持ちだってわかったのは大きいよね。この状況で村人を追放したら……」

「完全に人狼側が有利よね……今は二対五だけど、ここで二人村人側が追放されたら二対三になるわけだし……あ」

 

ここでまたタイマーが鳴り、話が中断させられる。そしてナツとユズが無言でその光景を見つめる中、投票が開始される。

 

(……アリスちゃんか、ヨシミちゃん……でも、アリスちゃんに腹芸ができるとは思えないし……ケイちゃんもあんまりでてきてないなら……ヨシミちゃんが……)

(まあ、この中だととりあえずヨシミか……)

『ヨシミが追放されました』

「はあああ!?なんでよ!?」

「……いや、さすがに怪しいのはあんただし」

「く、うぅ……!」

「ヨシミ、もう村にいない人が語るのは……」

「わかってるわよ……」

「ふ……君もこちら側にきたまえ」

「ナツ、あんたねえ……!」

 

モルフォに言われ、黙って大人しくあの世側に移動するヨシミ。その日の夜、人狼によって追放されたのは、

 

「……追放されちゃった」

 

モルフォであった。モルフォもあの世に移動し、気になったことを確認してみたのだが、

 

「……」

 

その答えを聞き、思わず表情が引き攣ってしまう。見れば、ユズもヨシミも同様に引き攣っていた。

 

「……ヨシミは人狼じゃなかったわ」

「じゃあ占いの結果だね。といっても後はアリスとケイしか占う人いないわけだけど」

「はい!アリス達は……」

「……人狼だね」

「ええ!?」

「ちょっと待ちなさい!私達はどこからどう見ても村人ですよ!!なんでそんな……はっ!?そうか……モモイ!あなたが人狼だ!!」

「「「え?」」」

 

ケイの抗議の声に、カズサ達の視線がモモイに突き刺さる。だがそれは、すぐにケイへの疑惑の視線に変わる。

 

「……ケイちゃん、さすがにそれは無理が……」

「だってモモイは今の所占いを全部的中させてるんでしょ?」

「私もちょっと厳しいかなぁって」

「く、う……本当の占い師はナツです!彼女は、モモイが占い師と名乗ったことで対抗して……」

「じゃあなんで自分を占ったとか馬鹿なこと言い出したのよ……」

「ぐうううう……」

 

ケイの答弁も虚しく、タイムアップになり、ケイとアリスは残念ながら追放されてしまう。悔しそうにその場から立ち上がった直後。

 

『人狼側の勝利です!』

「「……は!?」」

 

残っているのはモモイ、ミドリ、アイリ、カズサ。この時点で人狼側が二人ということになり、村人側の勝利は不可能になってしまう。

 

「ど、どういうこと!?え、じゃあ誰が人狼なの?」

「えっと……私とモモイちゃんだね」

「ええええええ!?お姉ちゃんが!?嘘!?」

「いや、じゃあ誰よ役職!?」

「騎士だよ」

「……私が狂人だったよ」

「霊媒師は私よ……って、モモイが人狼なら、誰が占い師なの……って、まさか!?」

 

役職の答え合わせをしていく。モルフォが騎士、ユズが狂人、霊媒師がカズサ。人狼がモモイとアイリなら、残る占い師は。それを聞き、ふっと口元に笑みを浮かべながらナツが手を挙げる。

 

「あんた……なんであんな紛らわしいことを……!!」

「ちゃんとあの後占った内容を言おうとはしていたさ……アイリが人狼だとね……ふっ、時の流れは残酷だね」

「ざっけんな!!」

 

怒りの表情をナツへと向けるカズサ。それを尻目に、ケイはふくれっ面を見せていた。ルール上の行為とはいえ、モモイに吊られたのが余程不満げなのだろう。

 

「……こ、こんなの……」

「ケイちゃん、大丈夫?」

「……わかっています。これはルール通りだと、ええ……」

「ご、ごめんね……つまらなかった?」

「いえ、そんなことは……いろんなお菓子、いえスイーツを食べた事や……最後にはあんなことになりましたが、皆で遊べたのは……」

「そう……それこそがロマンだね」

「……混乱の元のあなたがそれを言いますか!?あなたさえちゃんと占いをやっていればこんなことには!!」

「どうどう」

 

ケイの言葉に突然割り込んできたナツ。その声に、思わずケイが怒りの表情を浮かべながら飛びかかろうとする。その体を抱きしめるように止めながら、モルフォは、そしてアイリ達も苦笑することしかできないのだった。

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