転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
「そういえば、モルフォちゃんはどういうのが好きなの?やっぱり〇-ルドファッションとか……」
「〇レンチクルーラーかな……というか私だけで食べるなら半分以上それになるけど……まあ、今日は皆にも持ち帰るから程々にしておこうかな……ケイに〇レンチクルーラーを布教してもいいんだけど」
「あはは……まあ、美味しいからね」
D.U.地区を歩くモルフォとアヤネ。シャーレでの当番を終え、ドーナツを買いに来た二人。だが、ある建物の曲がり角を曲がったところで、
「……あ?」
「「こんにちは~」」
ばったり複数人の不良と遭遇してしまう。そのあからさまなスケバンの風貌をした女子たちを見て、変に絡むと面倒になるだけだと即座に判断したモルフォとアヤネは挨拶をしながら何事もなかったかのように横を通り過ぎようとした、その時だった。
「おい」
「なんでしょう?」
スケバン達は二人を睨みつけながら声をかけてくる。その様子に不穏な雰囲気を感じながら、モルフォはアヤネを後ろにしながら聞き返すと、スケバン達は手をぽきぽきと鳴らしながら威圧してくる。
「はっ、そう身構えんなよ、出すものを出せば文句は言わねえからよぉ」
「ま、かるーく財布をくれりゃあたしらだって悪いことはしねえからよぉ」
(いやもう既にカツアゲでは)
アヤネが内心ツッコミを入れる中、カツアゲを受けたモルフォはある意味予想通りの要求に呆れたような表情を見せてしまう。その表情がスケバン達を馬鹿にしていると思ったのだろう、表情に青筋を浮かべ、イラっとした様子になる。
「おい、あたしらを馬鹿にしてんのかおぉん?」
「チビのくせに舐めやがって……!!」
(でも私よりはちょっとだけ身長大きいよね多分……?)
モルフォの実力は知っているため、スケバンが凄んできてもそこまで怖くはない。問題があるとすれば後方でのサポートとして活動している自分の方が足手まといになる可能性があるということだろう。もし戦闘になりそうだったらすぐに逃げる準備はしつつも、モルフォとスケバン達の会話に集中していく。
「はっ、お前病院行き確定だな!」
「もう遅いぜ?私達に土下座してもなぁ!」
スケバン達も愛銃であるアサルトライフルを次々と取り出し始める。もう戦闘は避けられないだろう。アヤネもこの場を離れてドローンを出してモルフォの援護をしようとしていた、その時。
「そこまでです!」
「「「!」」」
突然少女の声が聞こえてその場にいた全員がその方向を見る。そこにいたのは、白髪を編み込んで二本に伸ばしている青い目の少女。白を基調とした制服を着ている彼女の、左腕にヴァルキューレの校章が描かれた腕章が付けられているのを見てスケバン達が少しざわめく。
「おい、あれ……ヴァルキューレじゃないか?」
「ああ、あの……警備局とかいう奴らだっけ?」
「いえ、本官は生活安全局です!……今日は非番ですけど、目の前でこのような問題が起こっていては無視するわけにはいきません!」
アヤネが見ればワルキューレの腕章は今慌てて付けたのかちょっと傾いているようにも見えた。生活安全局、自分を名乗った少女の言葉を聞いたスケバン達は一瞬黙り込んでお互いに顔を見合わせていたが、突然大笑いし出す。
「え、え?」
「なんだよ警備局じゃねえなら雑魚じゃねえか!」
「まあ警備局でもそんなでもないんだけど」
「しかもたった一人!はっ、サツ程度にあたしらが止まるかよ!!」
「ま、待ってください!暴力は……」
「うるせぇ!」
少女の所属を聞き、自分達の障害にはなり得ないと判断したスケバン達がアサルトライフルを構え直す。その現場を見た少女がどうにか制止の声を上げるがもう止まらない。止むを得ないと判断したのだろう、ハンドガンを取り出し、素早い射撃でスケバン達の手を攻撃しようとする。が、
「うおおおお!?」
飛んできた弾を見て慌てて銃を引き抜き、その銃身で弾を受け止めるモルフォ。冷や汗ダラダラで自分を攻撃していた少女を思わず睨みつける。この様子にはスケバン達も思わず唖然となっており、彼女達もモルフォと少女を交互に見てしまう。
「なんだこいつ……」
「……あの、ヴァルキューレなんですよね!?なんでモルフォちゃんを攻撃してるんですか!?」
「え!?い、いや、本官は彼女たちの手を……」
「おい、これがヴァルキューレジョークってやつなのか?」
「あたしにはわからん、頭よくねえからな」
これにはアヤネも軽く引き気味に抗議をぶつけるし、スケバン達も困惑する始末。それに対して少女も冷や汗をダラダラと流して弁明しようとするのだが、その言葉からわかるのは、本気で狙ってこれだということだ。
「じゃあもう撃たないでくださいよ……」
「そ、そんな!撃てないのではどうやって……」
「その警棒は飾りですか!こうするんですよ!!」
「ごはぁ!?」
モルフォが勢いよくハンマーでスケバンを吹き飛ばす。そのまま盾でシールドバッシュをしつつ、ハンマーでスケバン達を吹き飛ばしていく様子を見て、我に返った残りのスケバン達も慌てて銃を構えようとする。
「け、警棒で……た、確かに、銃がちょっと不調なのであれば警棒で……!」
少女も慌てて警棒を引き抜く。そしてそれを伸縮させると、少女も共にスケバン達に殴りかかる。その様子を安全圏まで退避しつつ、アヤネは見ていたが、やがてスケバン達は次第に鎮圧されていき、
「お、覚えてやがれえええ!!」
思った以上に主にモルフォが強かったこと、舐めていたとはいえヴァルキューレに所属する生徒がいてはこの後が大変になることを悟ったのか、慌てて逃げ出してしまう。
「あ、待ちなさ……うわっ!?」
慌てて少女が追いかけようとするも、スケバンの一人が持っていたであろうスモークグレネードを投げ込まれ、煙が出ている間に逃げられてしまう。そして、モルフォと少女、アヤネだけがその場に取り残されてしまうのだった。
★
「ふーむ……」
その後、少女、中務キリノと共に近くにあった公園に足を運ぶことになったモルフォとアヤネ。そこで、ベンチに座ったアヤネはじっとキリノの銃を確認していたが、それを彼女へと返す。
「見たところ、おかしいところはなさそうだけど……」
「じゃあ、本当にノーコン……?」
「うぅ……私が銃を撃つとこんな感じで……」
「私よりひでえや」
ショットガンを取り出しながら、モルフォが呆れる。このキヴォトスという銃社会でその命中力は自分が言うのもなんだがかなり致命的である。
「そういえばモルフォちゃんは撃ってる所見たところないけど……」
「人撃ちたくないだけで普通にスラグ弾は突っ込んでるよ。入れてないと重心がブレるから……」
「あ、ちゃんと弾はいれてたんだ……」
ショットガンと聞くと弾は拡散する散弾のイメージが強いが、スラグ弾やサボット弾といった単発式のライフル弾にも似た一発だけの弾もあるのだ。まさしくこれはモルフォがこの世界に転生して初めて知って驚いたところである。
「ひ、人を撃ちたくないとは……珍しいですね。しかし、それではあまり命中精度が良くないのでは?」
「んー、どうだろ」
視線を動かすと、誰かが置いていったままであろう、ジュースを飲み終えたアルミ缶が、近くの木の机の上に無造作に置かれていた。近くの壁と挟むようにアルミ缶から四、五メートルぐらい前に立ち、銃口を構え、呼吸を整えながら狙いをつけて引き金を引くと、アルミ缶の側面を僅かに掠って弾が壁にめり込んでいく。
「うーん、駄目だね!スラグ弾って700メートルぐらい飛ぶとか聞いたけど当てるの無理だ!……こいつそんな重み以外いいものじゃないけど」
「でも、掠ってたし結構狙いはいいのかもしれないよ?」
代わりの弾を突っ込んで重さを補強し直しながら笑って二人の下に戻る。しかし、碌に撃ったこともないのに目標を掠ったのだからむしろ精度は良い方だとアヤネは褒める。それを見たキリノはというと完全に落ち込んでしまっていた。
「わ、私では銃は扱えないのでしょうか……」
「いや撃てないなら殴ればいいじゃん」
「し、しかし……抜き打ち試験などでは銃の腕前が求められるのです……」
「ヴァルキューレそんなことやるんだ……」
ミレニアムやアビドスではあまり評価されない項目である。人を撃てない自分じゃヴァルキューレでは一生生きていけない自信があるとモルフォは確信させられてしまう。
「……まあ、銃の腕前は試験で求められるとはいっても、戦う時は普通に警棒で殴って鎮圧すれば結果的には同じだし……むしろそっちの方が変に弾が飛んで被害が出て傷つく人が出なくて済むからいいんじゃない?」
「……た、確かに……それはそれで課題ですが、弾が飛んでいかないことを考えれば警棒は凄く合理的ですね……夢見さんの戦い方は様になっていましたし」
警棒を見ながら、物理も案外悪くないのでは?と考え始めるキリノ。しかし、銃の腕前を上げるにはどうしたらいいのか。
「……ハンドガンの使い方ならアヤネが見てあげれない?近くにクレー射撃場とかなかった?」
「確かにあった気がするけど……」
クレー射撃は銃を用いて空中を舞うクレーと呼ばれる素焼き皿を打ち壊していくスポーツ競技だ。前世ではショットガンが使われていたのだが、さすがはキヴォトスと言うべきか、銃についてはグレネードランチャーやRPGといったものを使ってはいけない以外は指定がない。
(……改めて考えると弾をばらまくのが禁止で単発で狙えってのもある意味キヴォトスらしいなぁ)
「クレー射撃ですか……」
「よし、行ってみようよ。なんか非番とか言ってたし今日は休みなんでしょ?」
「そうですね……であれば、ご一緒してよろしいでしょうか?」
「うん、私は構わないよ」
モルフォの提案を受けたキリノの言葉に、二人も笑って頷くのだった。
★
D.U.地区に存在する少し大き目なクレー射撃場。そこで、銃撃音が響き、それと共に何かが割れる音が鳴る。それが何十回か連続で行われ、そして静かになっていくと。
「……あ、はは……」
目の前の結果に、モルフォとアヤネは困惑していた。最初は三人とも、シングルトラップという競技に挑んでいた。これは射手が横一線に配置された五ヶ所の射台を順に移動しながら1ラウンド中25枚のクレーを撃破するルールである。射手は一枚のクレーを二発以内に撃破することを求められ、命中すれば得点となる。その結果は、アヤネとモルフォはそこそこ、だがキリノは散々たる結果で、まさかの命中率ゼロという有様であった。
「こ、これでは……折角、早退にしてもらってまでこの機会を得させてもらったのに……」
「……えっと、キリノ。その……凄く聞きづらいんだけどこの銃、銃口が横についてるってわけじゃないよね……?」
「はい……」
いやそうはならんやろ、なっとるやろがい!そんな光景が目の前にあった。決してフォームが悪いわけではない、むしろ銃口だってちゃんとクレーに向けられているのだ。クレーの移動に合わせた射撃だってできている。なのに撃たれた弾が別の方向へ飛んでいくのである。最早これはモルフォと同じようにそういう能力と考えた方がいいのかもしれない。
「……いや、もう逆に考えよう!」
「逆に、とは?」
「そういう能力だと思ってそれを活かす方向にしよう!もしかしたらワンチャンあるかもしれない、ダブルトラップにいこう!」
ダブルトラップはその名の通り、一つの射台から二発のクレーが同時に放出される。それを、二発装填された銃で同時に射撃するのだ。こちらは一回のゲームで25回、合計50枚のクレーを撃つことになる。
「あ、あの……クレーが同時に出るというのは……」
「まあやってみようよ……万が一があるかもしれないし」
一度に出るクレーが増えるということは、シングルトラップと異なり弾を一発も無駄にできないということ。その緊張感もあってか、どうしてもモルフォもアヤネもミスが増えてきてしまい、記録としてはシングルトラップと比較すると出来が悪いものになってしまう。
「やっぱりダブルトラップむっずいなぁ」
「でも皆普段の戦闘ではクレーじゃなくて何人もの相手をしているわけだもんね……大変だね」
「狙って撃てるカリン先輩みたいなスナイパーってほんと凄いよねー」
それぞれダブルトラップを終えてお互いの成果を見ながら話をしている中、遂にキリノが射手になる。ごくりと息を呑みながら自身の愛銃である紫のグリップを持つ白いハンドガンを手に取り、弾を二発だけ装填して構える。そして、二つのクレーが発射された瞬間、
「「……え?」」
「……あ、当たった?」
何と、二つのクレーが撃ち砕かれ、地に落ちる。これまで掠りどころか近くすら通過していなかったキリノの放った弾丸が、なんと、綺麗にクレーを破壊したのだ。
「命中した?でも、何で急に?」
「……やっぱりそういうこと?いやだとすると本当にまぁ……結構難儀するというかなんというか……」
「……き、きっと私の努力の甲斐が!」
モルフォとアヤネが首を傾げる中、キリノも再び弾を装填して構える。再びクレーが発射され、キリノがまたクレーを破壊することに成功する。
「……あー……」
「うーん、予想通りだった……いやまぁ逆に凄いことなんだけどさ……」
「やった!やりました!!また命中ですよ!今なら全弾命中いけますよ!」
それを見て、二人はあるカラクリに気付いてしまう。気を良くしたキリノは再びクレーを落としていく。飛ぶ鳥を落とす勢いで弾を当てていくのだが、アヤネは果たしてこれを指摘した方がいいのかどうかわからないと言った様子でモルフォを見る。
「……とりあえず終わるまで黙っておこう……」
「そ、そうだね……水を差すのも悪いし……」
モルフォの親切心にアヤネも同意し、その後のトラップを見守っていく。そしてキリノは、なんと全弾命中のパーフェクトを達成してみせる。思わずガッツポーズを見せるキリノを見て、その勇姿を賞賛するように拍手していたアヤネとモルフォだったが、ここで言いづらそうにアヤネが声をかける。
「えっと、キリノちゃん……?」
「はい!なんでしょうか奥空さん!」
「その、ね……弾が……狙ったクレーに当たってない」
「……へ?」
アヤネの声に、キリノの目が思わず点になってしまう。モルフォが苦笑しながらスマホを取り出し、撮っていた動画を再生すると、そこにはキリノが狙っていたクレーではない方のクレーが割れる光景があった。キリノは一つ目のクレーを狙って射撃した直後に次のクレーに狙いを定めて素早く撃っていたのだ。その結果、お互いに狙ってない方のクレーを射撃しているという謎の光景が広がっていた。
「……う、うう……折角、上手になったと思ったのに……」
「いや、でも当たる方法が分かっただけ上出来では?つまりわざと狙いを外せば当たる……逆に相手がちゃんと銃や弾を見て避けるタイプなら逆に相手から当たりに来てくれるから弾を置けるようになると考えると……」
「そ、そういうものでしょうか……」
能力者バトルならトリッキーで嫌らしい能力として使えそうな特性である。むしろ、実力のある人物は相手の銃口などを見て射線を見切って回避したりすることも多い。そういった人物に対しては特に効果的に働く能力であり、キリング性能が高いと考えられる。
「でも……ありがとうございます。正直銃の腕が改善しているとは言い難いのは事実ですが、ちょっとだけ光明が見えた気がします」
「ならよかった。こういう特異な感じのって他人事じゃないし」
「夢見さんもそうなんですか?もしかして銃を人に撃てないと言っていたのって……」
「あ、それはシンプルに性分の問題だから関係ないかな」
「そうですか……」
「それより他の競技もやってみる?ラビットとか」
「ラビット?」
ラビットは兎といった小動物猟の練習を想定した競技となっている。射手は射台の前方に存在する、左右に設けられたトンネルから垂直に転がってくるクレーを射撃するものとなっている。このクレーは地面を転がす都合上、他で使われる皿型のクレーではなく、縁の部分が強化されているI字断面を持つ盆型クレーが用いられる。
「成程、確かに狩りっぽいですね」
「……って、なんか凄い動きにばらつきが……!?」
早速ラビットに挑んだアヤネだったが、クレーの挙動に思わず困惑してしまう。クレーは地面を転がるのだが、その速度は毎回微妙に異なっており、さらに地形によってはクレーが跳ねたり、左右に蛇行することもある。規則正しく転がるクレーではなく、もうこういう一つの生き物と捉えて臨んだ方が早いレベルである。
「うわ、ラビットって名前だけは知ってたけどこんな酷いことになるんだ……」
「でも、こういう予測しづらい動きはある意味一番実戦に近いのかもしれませんね。これは狩りが近いのでちょっと話は違ってきますが……」
空を飛ぶクレーであれば、風などの影響こそ受けて軌道が変わってしまうものの、それでも予測は簡単だった。しかし地面を転がるラビットは空中とは勝手が違いすぎる。しかし、だからこその楽しさというものもあり、
「あっ、外れた……!」
「惜しかったよ、アヤネ」
「あはは、やっぱりそううまくはいかないね」
「今の跳ね具合……ちょっと地面が凸凹してるんでしょうか?」
「かもしれないね、次からは気を付けよう」
「うん、そうだね……っと!」
この難易度の高い競技に対し、どう攻略するか。それを三人で楽しそうに談笑しながら、ラビットは進行していくのだった。