転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする 作:popoponpon
その後、海での戦いで濡れたりすることを考慮して水着に着替えたりして準備を終えた後は手分けして使用権を回収することになった一行。情報共有を終えた後、今回の件をセミナーに伝えようかとモルフォが打診もしてみたのだが、
『うーん……気持ちはありがたいけど、陰陽部もできる限りで動いてるみたいだし……多分陰陽部の手に余るってなったらあっちからミレニアムに掛け合うでしょ』
とシズコに言われていた。そして、対策委員会、ゲーム開発部、百夜堂の一行は分かれてそれぞれの場所にいると思われる使用権を回収することになったのだが。
「……温泉開発部かぁ……」
「いやまぁ、幻の泉脈を探す硫黄の鉱夫たちって言われてたけども……」
一番近い島を占領していると言われ、そこに向かったゲーム開発部の面々。何故か目新しい駐車場やら休憩施設やら宿泊施設やらが存在している場所の奥にある密林を越えた先で目撃したのは、しきりに掘り続け、温泉を見つけようとする温泉開発部の姿だった。
「えっと、どうするのモルフォちゃん?」
「……確かゲヘナのテロリストですよね?撃ちますか?」
「いやいや……一応話をしてみようよ……というか私達別に温泉開発の邪魔しに来たわけじゃないんだし……すみませーん!」
「「「はーい!!」」」
モルフォが声をかけると数人が反応してこちらを振り向いてくる。
「……あれー?なんか見覚えがあるような」
「どこかで会ったっけ?」
「えーと、以前会いましたよね?ここで温泉開発してるんですかー?」
「そうだよー!あ、メグ先輩ー!お客さんっぽい人たちがー!」
「ん?あー!えっとー……部長と遊んでた人!」
「モルフォですよメグさん」
「そうそう!」
温泉開発部員達はモルフォを見て過去の記憶が引っかかったのか首を傾げていると、水着姿のメグが走ってきて、モルフォを見つけてくる。彼女はモルフォの事を覚えていたようで、嬉しそうにモルフォに近づいてくる。
「えっと、この人たちが幻の泉脈を探す硫黄の鉱夫たちって名乗ってるの?」
「そうそう!素敵な名前でしょ!私が名乗り出したんだー!」
「ね、ネーミングセンスがいい……!」
「モモイより語彙力がある……」
「さりげなく叩いてこないでー!!」
「お姉ちゃん、このメグさんって人に鍛えてもらったら?」
「ミドリまで!?」
ユズの指摘にメグが胸を張って誇らしげに答える。中々に優れたネーミングセンスにモモイが敗北感を感じていると、奥から水着の上に白衣を着たカスミが近づいてくる。
「おやおや、モルフォにそちらは……ゲーム開発部の面々かな?初めましてだね」
「はい!初めまして!天童アリスです!こちらはモルフォとモモイとミドリとユズです!」
「ははは、元気があってよろしい!私は鬼怒川カスミ、こっちは下倉メグさ!よろしく頼むよ」
「カスミさん達も権利書を手に入れたんですか?」
「ん?ああ、これだな。そういえばリゾート狩りがどうといってヘルメット団が襲ってきていたが、どうかしたのかな?我々はネットで安く売られてるのを買ったんだが」
「普通にネットにばらまかれてるんですか……いえ実は……」
モルフォに聞かれ、権利書を取り出すカスミ。そして、リゾート狩りの実態や、今回のロスト・パラダイス・リゾートに纏わる一連の事件について説明すると、
「成程……そういうことか。襲ってきた奴らを返り討ちにして吸収して温泉開発に還元してはいたが、どいつもこいつも断片的にしか知らないから予想でしかなかったが……これはまた面倒なことに巻き込まれたな」
「それで、その権利書どうしますか?」
「ふーむ、まあ君達との仲だ。君達とは穏便に済ませたいところではあるが……しかし、これを渡すということは権利書を手放すということだろう?つまり、温泉開発ができなくなるということだ」
頭を掻きながら権利書を見つめるカスミ。その意図を理解し、ゲーム開発部の面々も微妙な顔になる。
「……あ、そっか……ライセンス渡しちゃうから駄目になっちゃうんだ」
「その通りだよ!これは死活問題だ!!」
「ひっ!?」
カスミの大声にユズがビクッと体を跳ねさせてモルフォの背中に隠れてしまう。しかしカスミはそんなことはお構いなしに話を続ける。
「我々温泉開発部はここに深海温泉リゾートを作り上げるんだ!いいか、ここは海辺に隣接した場所だ。この地底にはあるんだ!海底火山を刺激し、この沖合の海洋深層水を温泉と化す秘蔵の地脈があると!私の嗅覚がそう告げている!」
「いやただの勘じゃないですか!?」
ケイがツッコミを入れるもカスミの話は止まらない。
「フッフッフッ、いいか?海洋深層水の温泉は凄いんだぞ?私の推測によると、その効能だけで約365種類以上だ!」
「凄い!?」
「効能だけでそんなにあるの!?」
「お、温泉って奥深いんだな……」
「その中でも特に主な効能を挙げると……体力推進、成績向上、家内安全と至れり尽くせりさ!」
「安全祈願のお守りですか!?」
横でぜーぜーと息を荒げるケイを苦笑して見ながら、モルフォは温泉について一通り語り終えたカスミを改めて見る。
「……うーん、どうしようか?カスミさん達は別にヘルメット団と違って悪いことしてるわけじゃないし……」
「まあ、ここはただの群島だしね……」
「全部吸収して百夜堂楽園リゾートにするとか言ってたわけだし……もう施設先に作ってるし温泉開発と言う名のリゾート開発やってるんだから責任者としてその権利とか保証して守る形で一括してもらった方が早いんじゃ」
「……確かに?」
モルフォの提案にモモイもその手なら?と少し疑問を抱きながらも同意する。それを聞いたカスミはふーむと顎に手を当てて考え込んでいたが、
「確かに我々としては温泉開発の邪魔をしないのであれば構わないが」
「じゃあそういうことで、一旦権利書は預けたままにしますね」
「うむ、仲介は君達に任せよう!」
モルフォの案を受け入れる形でカスミは頷いてみせる。それを受け、モルフォはスマホを取り出し、シズコに連絡を取る。
「はい、ええ、シズコさん……はい、そういうことで……え?そっちでもやってる?成程……わかりました。ありがとうございます」
「ふむ、お祭り運営委員会はなんだって?」
「引き続き温泉開発は続けてもいいということです。どうやら向こうでも別の権利書を持っている団体と新しく契約を交わしてたようで、後で改めて皆さんに正式に温泉開発を認める契約を交わすということなのでその時は対応してほしい、とのことです」
「ハーッハッハッハ!いいだろう!ふふ、やはりゲーム開発部は我らとは気が合うな!温泉開発を咎めるのではなくむしろ後押ししてくれるとは!後でその社長様にも礼儀を尽くさねばな!そのためにも、必ず海洋深層水温泉を掘り当てるぞ、皆!」
「「「「おー!!」」」」
シズコからの許可を得たことで、カスミ達はさらにやる気を出して温泉開発に臨む。その姿を見送りながら、六人は次の目的地へ向かうことにするのだった。
★
「……カイザーPMCって……」
「うわぁ、アビドスで戦った……なんでこんなところに……いや、オクトパスバンクがカイザーの会社だから繋がっていてもおかしくはないか」
その後、皆と一旦通信をして近況を報告することになる。そこでシズコ達からムシクイーンで勝ち抜いてオデュッセイアと思わしき学園に所属しているバニーガールの生徒達と契約を勝ち取ったことや、ぼったくりや詐欺、迷惑行為などをして客を不愉快にさせていた集団から権利書を奪い取ったりしていることを聞き、ヘルメット団を次々と潰しまわっていた対策委員会から今回の一件にカイザーPMCが関わっていることを知らされる。
「カイザーPMCとは?」
「……悪質な連中だよ。とりあえず完全な敵だね」
「成程……」
アビドスでの戦いには存在していなかったアリス達にミドリが簡単に説明する。悪徳企業であることは既に理解していたため、アリスとケイもすんなり呑み込んだようだ。
『カイザーは権利書をばら撒いてリゾート狩りを引き起こしていた……お祭り運営委員会の、百鬼夜行のブランド価値を落とすために!』
『ヘルメット団だけでなく、他にもカイザーから支援を受けていた集団もいたなんて……』
『うへぇ、全部綺麗にカイザーに繋がっちゃうねぇ』
『ん、でもこれでやるべきことははっきりした』
『じゃあ、次は全員で同じところに向かうことになるね』
皆の話を聞いて、先生は最後の目的地に全員で集まることになると告げる。それを受け、ホシノ達が笑う。
『実はさ、こっちもヘルメット団を攻略するための作戦を立てていたんだよね~きっとうまくいくから安心してよ』
『はい、それに面白そうですし!』
『……その作戦って一体……』
『ふっふっふっ……まだ秘密だよ。ほら、敵を欺くならまずは味方からって言うでしょ?ねー?』
「嫌味ですか!?」
「どうどう……」
いきなりホシノに刺されてアリスの中からケイが飛び出してくる。その様子を宥めながら、ホシノの様子を見てると、先生も乗り気な様子でそれを受けて得意げになっていた。
『私は少し心配ですが……』
『いやいや……何度考えてもおかしいって!やっぱりもう一度考え直した方が……』
『ん、きっといける』
『そうですよ~』
『というわけで多数決で決定だよぉ。それじゃあ皆頑張ろうねぇ』
『なんか大掛かりな準備をしているようだけど……じゃあ、私達はゲーム開発部と合流することになるのかな?』
「そうなりますね。先に行って待機してますね」
『ええ、わかったわ。すぐに行くから!』
一年生達がホシノの作戦に疑問を唱える中、ホシノ達が通信を切る。そして、シズコ達も通信を切り、最後の目的地へと皆が向かう。その途中、ふとモルフォはスマホを取り出し、ある人物へと連絡をかけるのだった。
★
「ここが……あれ?ここはなんか綺麗?」
「最大規模のヘルメット団が使用しているという話だし、手入れも入っているのかも」
「成程、ここがヘルメット団のアジトなのですね!早速攻略を開始しましょう!」
『アリス、他の皆を待ちなさい』
「皆、大丈夫かい?」
「あ、先生」
ゲーム開発部が先にそこに辿り着くと、そこは掃除なども行き届いた清潔な街並みだった。しかし、ここがヘルメット団のアジトなのは間違いない。ゲーム開発部がそこで待っていると先生達も合流してくる。しかし、そこに対策委員会の姿はない。
「ホシノ達は?」
「いえ、見てないです。そればかりか、人の気配も……」
「言われてみれば……」
モルフォに指摘されて気付いたようにミドリが周囲を見渡す。すっかり街の風景の方にばかり気を取られていたが、やはりこれは異常だ。何かあるのかもしれないと警戒していると、チセが奥の方を指差す。
「あ、キラキラテントウムシさん」
「キラキラ?」
「はい?テントウムシ?」
ウミカとイズナがチセの言葉に反応してそちらに視線を向ける。すると、そちらからヘルメット団が遠くからチセの発言を聞きつけたのか走ってくる。その中のリーダーと思わしき赤髪の、素顔を出す黒いヘルメットを被った少女が怒りの声を上げる。
「誰が赤と黒が素敵に調和したテントウムシだ!!」
「なんですかあの地獄耳は」
「しかもそこまで言ってない……」
「というか無駄に良い感じの誉め言葉にしてる!!」
「……って、囲まれちゃいましたよ!?」
その地獄耳にゲーム開発部が困惑している間にもその少女はヘルメット団達を使ってモルフォ達を囲み始める。まるで待ち構えていたかのような行動に、思わずウミカが慌てたような声を上げる。シズコ達の表情にも焦りが浮かぶ中、赤髪の少女が誇らしげに声を上げる。
「ははは!ここは最初からあんたらの墓場として目星をつけていた場所よ!そこに自ら足を運んでくるなんて随分と酔狂なことね!」
「というかなんで私達の事が分かったの!?ここに来るって!」
困惑した様子でシズコが声をあげた、その時だった。
「顧客に対するアフターケアは確実に責任を持つ……それがカイザーコーポレーションの社訓だからだ」
「んん?」
「薄々予感はしてたけれど……カイザー理……事……?」
今回の一件でオクトパスバンク、そしてカイザーPMCが関わっていたことから、先生は既にカイザー理事が関わっていると考えていたようだ。が、そこにいたのは何故かアロハ服を着ているカイザー理事の姿。
「……なんか結構満喫してない!?」
「オクトパスバンクで会った職員さん!?」
「またお会いしましたね!?」
「しかも担当者だったの!?」
「そう、ここに良い商品があると唆し、取引を提案したのはこの私だ。以前貴様とアビドスの連中に関わってしまったことで大損害を受けた後、理事の座を辞任させられ……今ではオクトパスバンクの営業職員だ!」
「バカな事したからじゃないかな……」
「!?その声……覚えている、覚えているぞ貴様ぁ!!」
「えっ」
が、既に理事はアビドスの一件でオクトパスバンクへと異動させられ、そこの営業職員へと降格させられてしまっていた。とはいえ、そうなった理由もいきなりアビドス、ゲヘナ、ミレニアムに襲い掛かったからだ。その結果こうなったのだからもう救いようはないだろう。が、ここでモルフォの声を聞いたことでカイザー営業職員が突然怒りの声を上げる。
「モルフォ……何かやったのですか?」
「いや……私何かやっちゃいました?」
「やっただろう!?お前が通報なんてしたから……!」
「生徒が助けを求めたのにそれを拒否してあまつさえ陥れようとしたのはそっちだよ。さあ、終わりにしよう」
「……ふん」
しかし先生がカイザーを正論で説き伏せると、カイザー営業職員も面白くなさそうに口を開く。
「まあいい、その通りだ。元よりこちらは勝手に他のリゾートへ赴いて使用権を回収しようとする、横暴なお前たちの越権行為を咎めるためにここにいるのだからな。そのためのボディーガードもいる」
「ケッ」
カイザー営業職員が赤髪の少女を見ると、面白くなさそうに吐き捨てる。どうやら彼女としてもカイザーに雇われているのは不本意なようだ。
「屁理屈ですね……先にシズコちゃん達を騙したのは、あなたでしょうに」
「それに、最初から狙いは……」
「ああ、その通りだ。お祭り運営委員会は良い商品だ、百鬼夜行連合学院で祭りを開催できる権限を放っておくなどもったいないだろう?故に、今回の一件でその名誉を失墜させる。そのために様々な連中を呼び寄せたのだからな。まあ、後は適度に傷つき、満身創痍になった百夜堂を買収すれば目標達成というわけだ。だが、貴様がまた邪魔をするとはな……シャーレの先生」
ここまでくればもう負けはない。そう確信したように計画の全貌を話し、先生を見るカイザー営業職員。しかしここで口を開いたのは、モルフォだった。
「……ちなみにそれ、他の権利書を持ってる人たちもブランドとか名声とか……傷つくのでは」
「まあそうなるだろうな。だがその程度、ちっぽけなものだ。百夜堂と比べればな。さあ、ビジネスの時間だ。百夜堂よ、我らカイザーコーポレーションと―――」
契約を新たに結べ。そう、カイザー営業職員は言おうとしていたのだろう。が、その言葉は最後まで紡がれることはなかった。何故なら、
「「「ぎゃああああ!?」」」
「な、なんですか!?」
「ば、ばば爆発!?」
「何だ!?何が起こっている、ラブ!まさか武器を誤爆させたのか!?」
「違うわよ!?い、一体誰が―――」
「ハーッハッハッハ!!」
大爆発が周囲を取り囲んでいたヘルメット団達を次々と吹き飛ばし、甲高い高笑いと共にカスミとメグが姿を見せたのは。
「お、お前たちは!?」
「我らはゲヘナが誇る温泉開発部!カイザーコーポレーション……まさかお前たちが黒幕だったとはな!まあそんなことはどうでもいい!」
「ならなんでこんなことをする!?」
「決まっているだろう!お前たちが、我々が掘り当てた温泉を奪い取り、独占しようとしたからだ!手柄だけを汚いやり方で奪い取ろうなど……言語道断!温泉とは万人に開かれるものだ!それを冒涜するとは恥を知るがいい!!」
ビシッ、とカイザー営業職員を指差しながら高らかに宣言するカスミ。その横で部長かっこいいーとパチパチと両手を叩いて喜ぶメグと、その後ろに数名の温泉部員が控える中、カイザー営業職員はわなわなと両手を震わせる。
「ええい……お前たちとて権利書を安く買いたたいたくせに……!」
「本当に来ましたね……」
「っていうか温泉掘り当てたんだ……」
「……あーそっか……ここで百夜堂と新たに契約を結んで新たに使用権総取りにしちゃえば他の人達が開発したりしたものも全部カイザーのものに……」
「き、汚い……」
ゲーム開発部からぼろ糞に言われたこともカイザー営業職員のイライラをさらに高める効果になる。そんな中、シズコが口を開いていく。
「温泉開発部……そうよ……確かに、百鬼夜行、そして百夜堂のブランド価値を守りたいのはあったけど……それ以上に、あんたらのお祭りをバカにしているとしか思えないその精神を見過ごせない!そう思ったからここに残ったのよ!あんた達のくだらない私利私欲のせいで一番楽しくあるはずの夏の休暇が壊されているのよ!そんなの、絶対に許せるもんか!」
「おー」
「シズコちゃん……!」
「社長!!」
シズコの決意によって、一切の交渉を打ち切られてしまうカイザー営業職員。温泉開発部によって食い破られた包囲網からゲーム開発部が逃れ、先生達もその後をついていく。
「カスミさん、ありがとうございます。さすがにやばいと思ったので助かりました」
「なぁに、気にすることじゃないさ。あいつらが気に入らないのは我々も同じだからな」
「ええい……どいつもこいつも、これだからガキ共は……!おい、ラブ!体勢を立て直せ!全員を集めろ!」
「!あはは!その言葉を待ってたよ!!全員集合!!……全員集合!!……あれ?」
ラブと呼ばれた赤髪の少女の号令。それと共に、奥から大量のカイザーPMCの兵士とヘルメット団が現れる……はずであった。しかし、誰一人として現れない。カイザー営業職員も困惑した様子で、
「……集合は……集合はどうしたアァァッ!!!」
「いや、なんで!?なんで……ん?」
声を張り上げる。すると、奥から五人の覆面を身に着けた少女達が歩いてくる。だが、その内四つは見覚えがあるし、最後の一人こそ覆面は見たことがないものの、水着から誰かは明白だ。
「集合しました!」
「……ちょっと待ちなさい。五人?え?もっといたわよね?なんで新入り五人だけなの?」
「……だってそりゃあ……」
ラブの疑問に、覆面を外すとホシノの姿が露わとなる。他の四人も覆面を外すと、いよいよラブが顔を青くしながら後ずさる。カイザー営業職員も。
「きゃああああ!?ななななんであんた達がいるのよ!?」
「ば、馬鹿なアビドス!?まさかお前たちも……使用権を手に入れてきた!?あくまで騒動を起こす問題児に絞って使用権を……というか、今にして思えばミレニアム!お前たちもだ!!なんでここにいる!?」
「えっ、今更?」
「……これ、くじで当てたのよね」
「アリスもそうでしたね。なんでもお店の店長さんがヘルメット団からもらったものを景品にしたのを当てました!」
セリカとアリスがどうやって使用権を手に入れたのかを言うと、カイザー営業職員が目に見えてうろたえ始める。
「う、ぐ……だ、大体部隊はどうした!?一体なんで……」
「えーと、後ろからまとめて?」
「もうちょっとタイミングを見るつもりだったけど、突然爆発が起こって皆そっちに夢中になったから……」
「おじさんがこう……ガッ!とね……いやぁごめんねぇ春先よりおじさんほんと絶好調で……ネルちゃんかあの時のケイちゃんが相手じゃない限りはそこそこやるよー?」
「完全に雨雲号の不意打ちが入りましたね……」
爆発のせいですっかり意識がそっちに向いていたが、改めて耳を澄ませるとヘリの音が聞こえてくる。おそらく武装ヘリが大暴れしたのだろう。そこにホシノやシロコ達の大暴れも相まって、まともに戦闘に入ることなく、用意していた部隊はほとんどが沈黙。残ったヘルメット団達は散り散りになって逃げだしてしまったようで、
「……こんなの、もうどうしようもないわ!降りるわよ!!」
「何!?」
「皆、撤退!撤退ー!!何がリゾート使用権よ、もうこれ以上は泥船よ!!」
「お、お、おのれええええ!!」
ラブの一声を合図として、ヘルメット団達は散り散りになって逃げだしてしまう。これにはカイザー営業職員もたまらないと、なんとか対策委員会に仕留められずに脱出できていたPMC職員が煙幕をばら撒き逃げ出してしまう。
「あっ、逃げた!」
「追いかけましょう!悪を成敗しなければ!!」
「いや……追いかけても多分無理じゃないかしら。まあ……あいつらが島から消えたのなら、後の事は私達の仕事じゃないわね……」
「ケイ、降ろしていいよ」
「……わかりました」
その情けない後ろ姿を狙い撃とうとしたケイを制止し、シズコの声に皆は頷く。
「さて、これで心置きなく温泉開発ができるというわけだ。では行かせてもらうよ」
「はい、助けてくれてありがとうございました」
「落ち着いてきたら是非汗を流しに来るといい。君達ならば歓迎するぞ」
「ありがとうございます」
そして、温泉開発部も元の作業をしに戻っていく。温泉開発部も姿が見えなくなったところで、
「これで……終わりでしょうか?」
「一件落着~」
「そうだね、これでもう大丈夫じゃないかな?」
やっと騒動が終わりを告げ、このリゾート地全体を運営できるようになった、そう思われたその時だった。ヘリの音が近づいてくる。
「あれって……」
「連邦生徒会の?」
「えー、連邦生徒会?」
先生がヘリについているシンボルを見て連邦生徒会のものだと気付くと、ホシノが目に見えて不満そうな顔をする。アビドスとしては色々思うところがあるのだろうが、今は触れずに、着陸したヘリから現れた人たちを見る。
「よーし、現場に到着!」
「……あれ?モモカとリン?どうしてここに?」
「?先生こそどうしてこちらに?」
桃色の髪をツーサイドアップにした少女由良木モモカと、長い黒髪に眼鏡をかけた長身の少女、七神リン。二人は先生の姿を見て驚いたような表情を浮かべる。が、リンはすぐに納得する。
「いえ、今回程の騒動ならシャーレの介入があってもおかしくありませんか……」
「え、ど、どういうこと!?」
「うわー、なんか嫌な予感してきた」
「おじさんもだよ~大体こういう時って嫌な予感しかしないんだよねー」
「私達の方でも今回の騒動は把握しています。ですが……そもそもここは、本来連邦生徒会が所有している土地なので……偽の権利書を使った騒動を止めるため、こうして足を運びました」
「……え」
瞬間。シズコの体が固まる。その場にいた全員がシズコを複雑そうな表情で見る中、リンも少し申し訳ないと思ったようで説明を続ける。
「もちろん……横やりに等しい発言であることは重々承知しておりますし、手続きの都合もあります。そのため、すぐに立ち退きを要請することはありませんが……そうですね。後三日以内に退去していただければ助かります」
「……私達が今までやってきたことって全部……」
「む、無駄だったって事!?」
「うへ~権利書自体が偽物だなんてカイザーがやりそうなことだねぇ……でもさぁ、知らないとはいえそのせいでこっちは自分達のものだと思い込んで備品の修理とか手入れとかやってたわけだしその分は何か欲しいよねぇ」
「……わかりました。そういった部分については後で精査しておきます。ですがこれは、やむを得ないことなので……」
数日以内の退去命令に対し、わざとチクチク刺してくるようなホシノの物言いも甘んじて受け入れつつ、仕方のないことなのだと告げる。が、完全にシズコの目からは光が失われており、他の皆から慰められている中、ゲーム開発部はというと。
「はーあほくさ」
「うわーん!アリスの手に入れたレアアイテムがただの紙切れでした!!」
「私達何のためにここまで……」
「これだったら部室でゲームやってればよかった……」
完全に呆れ、疲れた様子で脱力していた。が、ここで復活したのか、シズコが目に光を取り戻す。
「はぁ、こうなったらしょうがないわ!切り替えましょう!退去命令は受けます!ただ……その前に一つだけやらせてほしいことがあるんです!」
「それは?」
「宴会です!折角皆で頑張ったんだし、それぐらいはしてもいいでしょ!?」
「私からもお願い、リン」
「せ、先生まで……はあ、わかりました。それぐらいなら……」
せめて最後に宴会ぐらいやらせてくれ。シズコだけでなく皆から期待するような視線を受けて、リンも仕方ないと諦めるように首を縦に振る。その様子を見ながら、この後の宴会にシズコは思いを馳せ始めるのだった。