転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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ゲーム開発部達とジェスチャーゲーム

 

ロスト・パラダイス・リゾートでの戦いが終わり、時刻も夜に差し掛かっていた。すっかり陽も落ちてしまっており、月と星の光に持ち込まれた大型のライトなどで照らされる中、シズコらお祭り運営委員会主催の下、宴会と称した祝勝会が行われていた。百鬼夜行、アビドス、ミレニアムの生徒らが各々バーベキューを始めとした様々な料理に舌鼓を打っている中、モルフォ達の下にシズコが近づいてくる。

 

「今日はお疲れ様。ごめんね、巻き込んじゃって……」

「あ、シズコさん。気にしないでください」

「そうですよ!私達、今すっごく楽しんでるし!」

「色々ありはしましたが……バーベキューは美味しいですし、今は満足しています」

「ありがとう、そう言ってくれてよかったわ」

 

申し訳なさそうにしているシズコにゲーム開発部は楽しそうな様子を見せて応える。確かに色々あったし、リゾートを満喫したかと言えば正直そうとは言い難いものだが、こうして皆と協力して何かを成し、最後には皆で楽しく食事を取れているのだから、これだけでもこの群島に来た甲斐はあったというものである。

 

「……そういえば、他の人達は来なかったわね……一応連絡はしたけど」

「温泉開発部は普通の温泉は見つけたけど肝心な海洋深層水温泉を見つけられていない、この三日で見つけてみせるって言ってましたし」

「他の使用権を持っていたムシクイーンの大会を開いてた子達はあのまま船ですぐに帰らないといけないって言っていなくなっちゃったからね……」

 

それ以外の、シズコと契約したり協力したりした人たちはそれぞれの理由があってこの宴会には参加はしていなかった。そんなわけで、三校の生徒と先生、そして成り行きで宴会に参加することになったリンとモモカの面々で楽しむことになったのだが。

 

「でも、集まれる面々だけでも楽しく終われるならいいような気がしますが」

「ええ、そうね……無理強いはできないからそこはいいんだけど……ただその……この宴会自体、急でしょ?だから、催し物とかそういうのを用意できてなくて……」

「ああ、なるほど……」

 

つまりはゲーム開発部にこの場でできそうな、大人数で楽しめそうなものを提案してほしい、ということなのだろう。ゲーム開発自体はデジタルが主なのでこの場でそれをどうこうということはできはしないが、道具などを使わないアナログなものならいくらでもある。そういったものを捻りだせばいいのだろう。

 

「何かある?」

「紙があるならお絵描きしりとりとか……一筆書きもあるね」

「トランプとかあるならそれぞれの学校でやってもらって代表者に一番強い人を決めてもらうとか……」

「でもユズ、それだとやってない間暇になっちゃうけど」

「あ、そっか……」

 

一先ずこの場でもできそうなゲームを考えてみるが、いざ言われるとあまり思いつかないものだ。と、ここであるものを思い付く。

 

「ジェスチャーゲームとかどうですか?」

「ジェスチャーゲーム……あー、確かにいいかも?」

 

それはジェスチャーゲームだ。声を出さず、お題に合わせたジェスチャーを取り、それを見た解答者達が正解を出し合う。基本的にお手付きがないタイプで、これなら人数がどれだけいても全員で同時にやることができるはずだ。

 

「と、なると、誰がジェスチャーをやるかだけど……」

「そこはローテーションで……」

「それなら、私がやろうか?」

「あ、先生。いいんですか?」

 

問題はどういう順番でジェスチャーをやる人を決めるか。だが、そこに飲み物を片手に生徒達の様子を見て回っていた先生が近づいてくる。話を聞いていた先生が、ジェスチャーの名乗りを上げる。

 

「うん、確かにこういうのはどっちをやっても楽しいものだけど……折角なら皆で他の人の答えを元に考えたりとかもしてほしいからね」

「じゃあお題を出す人とかはどうします?先生が一人二役でやるより、先生以外の人が出してそれを元に先生が……ってやった方が面白そうですが」

「それなら……」

「ねえねえ、なんか楽しそうな話をしてるけど先生、なんかあった?」

 

と、そこにさらに首を突っ込んできたのはモモカだった。その手にはまだ食材が刺さったままのバーベキューの串が握られている。

 

「あ、モモカ。実は……」

「へー、ジェスチャーゲームね……それでお題を出す人が欲しいんだ?それなら私とリン先輩がやろうか?」

「いいの?」

「平気平気!それにお題を出す側ってことは……むふふ」

「あ、はは……お手柔らかに……」

 

話を聞いたモモカが不敵な笑みを浮かべる。その様子に先生も、モモカがよからぬ事を考えていることには気付いたが、彼女たちの出すお題にどれだけ自分がついていけるか、自分の体の限界が来るのが先かを考えて思わず体を震わせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで、ジェスチャーゲーム大会を始めるよ!」

「わーパチパチパチ」

「「「いえーい!」」」

 

生徒達が歓声を上げる中、先生とその近くでトランシーバーを持ちながら楽しそうな様子のモモカと、どうしてこうなったのかと困惑気味な様子のリンが椅子に座る中、先生がルールを説明していく。

 

「ルールは簡単!リンとモモカがお題を出すから、私がそのジェスチャーをするよ。それを皆に当ててもらって、当てた学園に1ポイント!一番ポイントを集めたところが勝ちだよ!相談し合って考えてみてね」

「ジェスチャーゲームかぁ。面白そうだねぇ」

「イズナも印には詳しいですよ!」

「動きを分析すれば予想は簡単でしょう」

「いやケイちゃん、科学的に分析はちょっと……」

 

各々が反応を見せ合う中、モモカがトランシーバーを通じて、先生にお題を伝える。それを聞いた先生がモモカにサムズアップをしてお題を確認したことを伝えると、

 

「それじゃあ、早速ジェスチャーを始めるから皆、予想してみてね」

 

そう言うと、先生は右手で細長い物を持つようなジェスチャーを見せる。

 

「「……んー?」」

 

その様子を見て、シズコとウミカが反応する中、先生はそれをグルグルと回転させていく。細い棒を使って何かを回しているようだが、全く見当がつかない。

 

「……なんか、なんか見覚えがあるのよ……」

「え、セリカちゃんわかるの?」

「いや、わかるというかなんというか……引っかかるというか」

「ん……わからない」

 

対策委員会はセリカ以外はピンとすら来ていない。百鬼夜行も、シズコとウミカ以外は頭を悩ませている様子であり、ゲーム開発部に至っては誰も正解に気付けていないようだ。そんな中、先生は左手で何かを掴むとそれを前後に揺らしたりしていき、右手も動かして何かを混ぜたりしていく様子を見せる。左手も時に奥に少し動かしてから手前に少し勢いをつけて引いたり、上下に揺らしたりといった動きをみせる。

 

「いや、本当に見覚えが……」

「……あっ!わかった!調理師でしょ調理師!」

「「「……あー!」」」

 

ここでシズコがその動きが示すものを理解し、指差しながら声を上げる。その声に他の皆も確かに、といった様子で感心した声を漏らしていく中、先生は笑顔を浮かべて、

 

「正解!実際のお題はシェフだったけど……調理師でも正解にしよう!」

 

シズコの答えが正解だと宣言する。先生がやっていたのは調理の動きで、右でやっていたのは菜箸の動き、左でやっていたのはフライパンだった。全員がシズコを称えるように拍手し、シズコが少し気恥ずかしそうに微笑む中、ちゃんとジェスチャーが伝わったことに先生は安堵しながらモモカ達を見る。

 

「おっ、これ結構いいねぇ……楽しくなってきたかも。じゃあ次、先輩やってみる?」

「えっ?わ、私ですか?」

「うん、リンも折角だしやってみなよ。どんなお題でもやってみせるよ」

「……はあ。わかりました……」

 

モモカからトランシーバーを受け取ったリンは少し考え込んでいたが、ふと、その視線が解答者の方へと向けられる。そして、あるお題を思い付いたのか、それを先生に伝えると、

 

「わ、わかった……?」

 

今度は先生の方から困惑したような声が漏れてしまう。それを聞いてしまった解答者達が顔を見合わせる。

 

「えっ、代行って何を伝えたの?」

「イズナ達を見ていましたが……」

「ん……先生も困ってるしやばいの伝えてそう」

「うへー、こりゃ無茶ぶりされちゃったかな?」

「せめて、答えやすいものだといいんだけど……」

「来るかなぁお姉ちゃん……」

 

どう表現したものかと先生が難しい顔をしていたが、やがて先生なりに形になったのだろう。まずは両手を地面につけて四足歩行のポーズを取る。

 

「……動物?」

「わかった、犬!」

「……違います」

 

とりあえず先手を打つようにモモイが犬と宣言するも、リンが不正解を告げる。先生はそのまま右手を顔の前に出し、前に指先を伸ばした状態で一ヶ所にくっつけて、そのまま腕を前に出すようにしながら手を広げていく。さながら、鳴いているかのように。

 

「……猫?いやでもあんな泣き方しないような……」

「わかりません委員長……」

「私もわかんないわ……」

「イズナもさっぱりで……ミモリ殿は?」

「え、えっと……先生もとにかく必死っぽいですね……うまく伝えようと」

 

ミモリには読心術がある。優れた洞察力、観察力こそあるものの、肝心の対象となる先生がどう出力するかに四苦八苦しており、ともするとずれた出力がされているかもしれない。本人すらもそう考えているところがあるのだから、いまいち読心術も機能してくれてはいなかった。

 

「……犬でも猫でもないなら動物なのは間違いないんだよね……で、鳴く生き物と」

「……狐?」

「フェレット!」

「ライオンです!」

「えっと、えっと……虎!」

 

ゲーム開発部はというと、完全に虱潰しにいくムーブを見せていた。とはいえ、誰もピンと来ていない以上、これも間違いではないだろう。間違いを潰していったことで他の解答者達にとって逆にヒントになり得るというのは問題だが、そもそも正解を出さなければ何も始まらないのだ。

 

「……そんなに難しいですか、これ」

「まあ……割とジェスチャーむずいかも?というか先生の動き方が違うというか」

「……確かにこれでは別と思われても仕方ない気がしますが。では先生、正しいポーズを……」

「ストップストップ!!」

 

予想以上に難易度が高いことにリンが困惑しながらも、正しいジェスチャーを伝えようともう一度トランシーバーを手に取る。しかし、それをモモカが慌てて止める。

 

「ジェスチャーゲームはそういうのも込みだよ!」

「……そういうものですか……」

「り、リン……何とか、なんとか表現してみせるから!」

「……わかりました」

 

追加の指示が出されそうなのに気付き、先生も止め始めたのを受けて、大人しく先生が奮闘する様子を見守ることにするリン。しかし、先生もこのままではもしかしたら辿り着けないのではと気付き始め、新たな動きを考え始める。と、先生の脳裏に正解に確実に繋がるであろう神の一手が爆誕する。

 

(……これだ!)

「……あのポーズは……」

「遠吠え、でしょうか?勇ましいですね~」

「せ、先生の遠吠え……写真とっとこ」

「ミドリ、何撮ってるんですか……」

 

それは遠吠えだった。先生がいきなり見せたそのポーズの方に戸惑っている中、これがヒントであると現実に戻り始めた生徒達が、そのヒントを元に答えを探し始める。と、そんな中だった。遂に正解に辿り着いた人が現れる。

 

「あ、おじさんわかっちゃったかも?」

「ん!私分かった!先生のそれはお」

「ウルフかー」

「んんんんんん!!!」

 

ホシノが気付き、直後にシロコが答えを口にしようとした瞬間だった。タッチの差でモルフォが答えを口にしたせいでシロコの発言が潰されてしまい、思わず抗議の声が上がる。

 

「まあまあ、先に答えたのはモルフォちゃんだねぇ」

「あはは……シロコ、ドンマイ!まだ問題はあるから大丈夫だよ。モルフォ、正解だよ」

 

項垂れ、狼の耳を倒して落ち込むシロコを宥めるように背中を撫でるホシノ。その様子に思わず苦笑してしまいながら、モモイ達から喜びの拍手を受けるモルフォ。

 

「狼だったんですね……犬じゃないってなった時にあれ?ってなっちゃいました」

「う、うーん……今にして思うと確かに狼のジェスチャーじゃないねあれは……」

「や、やっぱりそうですよね……道理でなんかちぐはぐで全然わからない気がしたんですよね……犬じゃないなら本当になんだろうって」

「変化の術とは難しいものですね……」

 

それからもモモカとリンからいくつかお題を出され、それを答えていく、といった流れが続いていたが、十数分もしてくると、さすがに先生にも疲労が見えてくる。

 

「先生、そろそろ疲れてきたんじゃないですか?」

「それに、時間も良い感じだし……本格的な片付けは明日やるとしても今日はそろそろ休んだ方がいいかも?」

「そ、そうした方がいいかな……」

 

それに気付いたミモリやシズコの指摘を受けて、先生も汗を拭きながら呼吸を落ち着かせながら返す。気付けばあっという間に時間が過ぎていたようで、これ以上はやれても後一回といったところか。

 

「点数は……どれくらいでしたっけ」

「それなら、全部同じ点数だね。ちょうどいいし、後一回で終わりにしようか」

「いやぁ時間が経つのはあっという間だねぇ」

「確かに……」

 

最後のお題。それを出すことになったリンが何をお題にしようか悩み始める。最初はモモカと先生に半ば巻き込まれていったような様子ではあったが、段々とこなれてきた様子を見せていた。しかし、これで最後となると、これまでのように当たり障りのないお題というのも味気ないと思ったのか、考え始める。モモカはその様子を見て、一体何をお出しするつもりなのかとにやにやと笑いながら見ていたが、やがてリンがそのお題を伝えると、

 

「……い、いやぁそれは……」

 

思わずモモカも苦笑してしまう。その顔には、これはいけるのか?という疑問が浮かんでいた。そして、それを言われた先生はというと、完全に戸惑ってしまっていた。

 

「り、リン……それは……」

「?えっと……難しいですか?」

「いや、難しいというか……できないよそれ……だって私、その人と会ったわけじゃないし」

「……あ」

 

先生の言葉に、リンも呆気に取られたような呟きを漏らす。どうやら人をお題に出したようだが、一体誰を出したというのか。全員の視線が先生とリンに集まっていく。

 

「先生、一体誰をお題に出されたのよ……」

「それ私達が知ってる人~?」

 

セリカやチセから質問された先生も、苦笑しながらリンを見る。リンもどこかバツが悪そうに視線を先生から外すと、これは問題自体が成立していないと判断したと認識して先生もそれを口にする。

 

「えっと、連邦生徒会長だってさ」

「「「えっ」」」

『あ、はは……』

 

まさかのお題は連邦生徒会長だった。これにはシッテムの箱のアロナも苦笑いであり、解答者達も呆れてしまう。

 

「……代行ってもしかしておもしれー人なのでは?」

「そう……そうなのかな……?」

「いやー、でもこれは……ワンチャンありそう?ありそうじゃない?」

「お姉ちゃん……そんなこと決めつけるのはまだ早い気はするんじゃないの?」

「ただストレスが溜まりまくってるだけかもしれませんが……その行動がこれならどのみちおもしれー人なのかもしれませんね……連邦生徒会長とかいう天上の人を出されても解答できる人なんてほとんどいないでしょうに。少なくとも私とアリスでは不可能です」

「……んんっ」

 

その様子を見て呟いてしまったモルフォの発言を聞き、モモイ達も思わず同意してしまう。その言葉が耳に入る度にリンの耳が思わずピクピクと動いてしまうが、特に一番効いたのはケイのマジレスだったらしい。思わず咳払いをしながら誤魔化すリンだったが、さらなる追い打ちがかかってくる。

 

「うへぇ~、いやぁリンちゃんも苦労してるんだねぇ。連邦生徒会の代行ってずっと色眼鏡で見てたけどおじさんちょっと認識改めたよぉ」

「リンちゃんはやめてください、それに私達は普段から当たり前の業務をこなしているだけです」

 

ホシノからの同情するような視線をどうにか流そうとするリン。しかしその様子にはどこか哀愁が漂い始めている。連邦生徒会長の失踪による混乱の影響はキヴォトス全体に広がってはいたが、その渦中で一番影響を受けていたのはやっぱり連邦生徒会だったのだ。成り行きとはいえこの宴会に参加したこともあって、先生達の前に現れた時よりは表情が柔らかくなっているのはあるが、また明日から仕事に戻るであろうその姿はくたびれたOLのようにも見えた。

 

「リン、全員が退去した後にも確認に来るんでしょ?その時に温泉とか入ってきたらどう?」

「あ、賛成!どうせ皆帰ったかどうかこの目で確かめに来るんだしさー、それに温泉開発部が掘り当てた温泉って純粋に気になるんだよねー」

「……私達はその時も仕事で来るんですが……」

「でも、作られた以上は温泉の管理とかもしなきゃいけないわけだし?じゃあ浸かり心地とか確かめないと駄目じゃなーい?」

「……」

 

その様子を察した先生とモモカが休めるときに休ませようと進言する。その気遣いを受け、リンはじっと二人を見ていたが、やがてはぁ、と溜息を吐くと、

 

「まあ、そうですね……作られてしまった以上は確認などはしないといけませんし……ね」

 

そういい、束の間の休息を取り付けることを約束する。そして、肝心のジェスチャーゲームの方は別のお題を使って決着がつけられることになるのだった。

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