転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする   作:popoponpon

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野正レイと超人ベースボールスタジアム

 

ミレニアム自治区内にあるバッティングセンター。客たちが現在進行形で利用しているのか、ボールがピッチングマシンから発射される音と、バットに当たって飛んでいく小気味いい音が響く。

 

「……そもそもなんでここに?」

「そりゃあ、これだよ」

 

そこに連れてこられたモルフォにモモイが一枚のチラシを見せる。そこには、「的に当てたら妖怪MAX新作フレーバーセットプレゼント!!」とデカデカと書かれている。モモイの狙いはこれだった。

 

「妖怪MAXの新作フレーバー……もう出てたんだ」

「そうだよ!ずっと気になってたんだけど、この前通販で買おうとしたら売り切れてて……ハレ先輩もあんまり買えなかったって悔しそうだったし」

「出回るまで普通の妖怪MAXで妥協するしかないんじゃないの」

「そりゃ手に入らないならそうするけどさ。モルフォはあんま飲まないからわかんないんだよ!」

「たまには飲むけどねたまにはね」

 

ミレニアムの生徒達も愛飲しているエナジードリンク、妖怪MAX。様々なフレーバーも出ている人気商品ではあるが、この度新フレーバーが販売されたのだ。しかし、その人気ぶりや品薄状態を引き起こしている有様で、妖怪MAXを人一倍飲んでいるハレも今回の品薄状態には苦言を呈しているほどだ。

 

「でも、こんなの見つけたらそりゃあ、やってみるしかないよね!私だって飲んでみたいし!ミドリ達のためにも手に入れるよ!」

「はいはい」

 

他の面々は用事があってこれなかったが、是非ともこれを飲んでみたいという気持ちはミドリ達も変わらない。皆の為にも、そして何より自分の為にこの妖怪MAXを手に入れて見せると意気込むモモイと共に空いているスペースを探す。席に入って視線を上にあげると、そこには的があり、ホームランを打ち込んで的に当てることで妖怪MAXを商品として手に入れることが可能になるということなのだろう。

 

「早速私がやってみるよ!」

 

早速硬貨を入れて、バットを手に打席に入るモモイ。時には外し、時には当てたりしながらボールが飛んでいくのだが、中々ホームランにはならない。通常の野球のようにピッチャーと相対するわけではなく、機械的な動きなので基本的に決まったポイントに球が飛んでくることもあり、タイミングさえ合えば当てることは容易い。容易いのだが、

 

「うぐぐ……なんかうまくいかないー!」

「ほとんどゴロだよー」

「ほ、本気出せば……本気さえ出せば……!」

「じゃあ本気出してどうぞ」

 

球が上がることはあまりなく、飛んでいっても基本的にゴロばっかりであった。とてもホームランとは程遠いものしか飛んでいかず、上がってもホームランコースとは程遠い。これでは的に当てる以前の問題だ。

 

「だ、駄目だー!」

「うーん、こうなるか」

 

結局、モモイではホームランをまともに撃てずに終了してしまい、トボトボと出てくる。ゲームならともかく現実での野球の経験は残念ながらあんまりない。それ故にモモイでは成果が奮わなかったようだ。

 

「よ、妖怪MAXが……私達の青春が」

「こんなことに青春を見出さないでもらって……」

「こうなったらモルフォの出番だよ!」

「まあ、やるだけやってはみるけどさ……」

 

モモイからバトンタッチされる形でバッターボックスに入るモルフォ。そのまま軽くバットを振ったりしてフォームを確かめていく。

 

「あれ?なんか結構様になってない?」

「気のせいでしょ」

「まあ、普段から銃を振り回してるから慣れてるよね!」

「……ハンマーとバットは全然違うんだよなぁ」

 

あれ、あのゲームってバットとスレッジハンマーってスキル系統一緒だっけ?と一瞬考えながらも、いやゲームはともかく現実でハンマーとバットは別物だよと結論付け、モモイに返す。とはいえ、モモイよりはバットの振り方がしっかりとしている。別にモルフォ自身は野球が心の底から好きというわけではないが、それでも遊びや授業レベルでやっていないわけではなかったのは無駄ではなかったようだ。

 

「……ふっ!」

「……あれ?」

 

一投目がバットを掠る。二投目、三投目と掠ったり、ゴロになったりしていく中、モルフォも徐々に立つ場所を調整したり、踏み込みを調整したりしていく。

 

「なんか段々通るようになってきたような……?」

「……これは……?」

 

モモイの後ろを歩いていた遮光グラスと青い帽子をかぶった少女がモルフォの姿を見て立ち止まる。青と白のウィンドブレーカーを羽織っているその少女は、バッティングをする毎に徐々に動きが良くなっていくモルフォの姿を注視していた。

 

「……あっ!」

 

そして、遂にバットがボールの芯を捉える。高く打ち上げられたボールにモモイと少女の視線が注がれる。そして空を飛んだボールは、的には当たらずにホームランとなる。

 

「ほ、ホームラン……!」

「惜しい!でも当たる!当たるよ妖怪MAX!!」

 

なんとなく、感じを掴み始めてきた気がする。モルフォは最後の調整を行っていく。ボールが大体どこにくるかはわかっているし、見てからでも十分振れる。後は立つ場所を微調整し、足を踏み込む位置、フォームなどを最適化していく。ボールが発射され、それを見てからその軌道を瞬時に予測。そして、勢いよくバットを振り抜いていく。そして勢いよく打ち上げられたボールが、的の中央を捉える。

 

「夢の舞台へ駆け上がれ―――なんてね」

 

的に勢いよく球が当たり、バン!と大きな激突音が鳴る。直後、ファンファーレが鳴り響く。その音には周囲にいた客や店員も驚きの表情をモルフォに向ける。そんな中、モルフォは悠々と残る球を処理するように打っていく。飛んだり、鋭い弾丸ライナーを打ったりしていたが、やがて全ての球を打ち尽くしてバッティングを終えると、モモイの下に戻ってくる。

 

「お疲れー!いやー凄かったねモルフォ!さっすが名リーガー!!」

「そんなんじゃないんだよなぁ。じゃあちょっともらってくるね」

「待ってるよー!」

 

モモイがウキウキ気分でモルフォの肩を叩きながら出迎える。苦笑しながらモモイに返事を返すと、受付の方に行き、妖怪MAXのケースを受け取ろうとするモルフォ。その様子をわくわくした様子で待っていると、モモイに声をかけた少女がいた。

 

「あの……今の子は……?」

「ん?君は誰?」

 

それは、先ほどまでモルフォのバッティングを見ていた少女だ。朱色の髪にピンク色の目の、鼻に絆創膏を付けたその少女は、モルフォの事を聞こうと、モモイに声をかけていた。

 

「あ、私は野正レイです。野球部の……」

「野球部……?あ、そういえばそんな部活もあったっけ……ってことは、レイもミレニアムの?」

「そうですよ、それであの子は誰なんですか?」

「ああ、モルフォのこと?モルフォはねー、我らゲーム開発部の広報とマネージャーをやってる凄い友達だよ!」

「あのゲーム開発部の……成程」

 

レイと名乗った少女もどうやらミレニアムの生徒だったようだ。彼女はモルフォのことを聞き、その所属がゲーム開発部だと知って納得したような様子を見せる。

 

「え、そこ納得するところなの?」

「ゲーム開発部といえば……一年生だけの部活なのにC&Cと同程度の戦闘力を誇るとか、様々な任務もこなしているとか……」

「そんな噂あるの!?さすがにC&Cと戦ったら私達なんてボコボコだよー!この前エリドゥで摸擬戦やった時なんてハンデありでカリン先輩とアカネ先輩落とすところまでしか持っていけなかったし……トキもいるせいで人数互角になってるのが一番きついって!」

「いやそれはそれでおかしいこと言ってないですかね!?」

 

レイが思わずツッコミを入れる。それを聞いたモモイはピタと固まっていたが、やがて、

 

「あれ、やっぱり私達っておかしかったりする……?ただのゲーム開発部なのになんか戦ってたり……」

「おかしいですよ!?いやまぁ銃撃戦は普通にあるでしょうけど、部活単位でC&Cとやり合えるのは十分おかしいですよ!?」

 

改めて考えてみると確かに普通の生徒から見たらおかしいな?と思われても仕方ないという考えに至る。尤も、おかしいと言われても、そのおかしさがなければこれまでの戦いを生き延びることもできないのだからしょうがなかったのである。

 

「モモイーあれ?君は……」

「あ、一年生の野正レイです。モルフォさんですよね?」

「ああうん、私がそうだけど……」

 

レイのことに気付いたモルフォは、彼女に自己紹介されてから、そういえばトレーニングに彼女らしき人物がいたことを思い出す。

 

「トレーニング部にいた……」

「あ、それは兼部ですね。一応主軸に置いているのは野球部で……」

「野球部か……成程、だからバッティングセンターに」

「そうです!少しでもバッティングをうまくして、ホームランを打てるようになりたいと思っていて……モルフォさん!」

「ん?」

 

どうやらレイは野球部の方をメインに活動しているらしい。おそらく体作りのためにトレーニングの活動もしているのだろう。そんなレイだが、ホームランを打てるようになりたいようだ。まあ野球部をやっているのならバッターとして大成したいと思うものなのだろう。

 

「コツを教えてください!どうすればホームランを打てるようになるんですか!」

「わかんない……」

「そ、そこを何とか……」

「……こいつで戦うようになれば少しは振り方もマシになるんじゃない?」

 

とはいえ、モルフォは野球に関してはにわかも良いところだ。辛うじてルールは知ってるぐらいの人間であって戦術がどうとか言われても全くわからない。そんな自分が偶然とはいえこうやってホームランが打てた最大の要因は何かと言うと、もうこれを普段から振りまくってるから、としか言えないだろう。そう考え、ショットガンハンマーを取り出す。

 

「え、な、何ですかこの銃!?え、ハンマーみたいになってますけど!?」

「エンジニア部に作ってもらったモルフォのメインウェポンだけど」

「……撃った方が早いのでは……いや、でもこういうのを普段から使っていけば……?つまり、戦う時はバットで戦えば……いやいや、それは野球部として駄目ですって!?」

 

モルフォのホームランの秘訣を目の当たりにし、一瞬邪な考えが浮かんでしまう。しかし、野球部の誇りからか慌てて止めるように顔を横に振る。

 

「……まあ、本人に合ったやり方をやってみるとか……後は、良い感じのトレーニング器具とかエンジニア部に作ってもらえばどう?」

「成程……確かにそういうのもありですかね?」

「なんかそれはそれでやばいもの渡されそう」

 

エンジニア部の事だ。何かしらぶっ飛んだものを渡してくれることだろう。それはそれで気にはなるが、それをレイが手にするかどうかは彼女次第といったところだろう。

 

「まあ、でも……参考にはならないだろうけど……打ってるところを見ることぐらいはできるかな」

「そうですか?それなら、お願いしてもいいですか?」

 

とはいえ、頼りにしてきたレイの頼みを無下にするわけにもいかない。できる限りのことはしてあげようと、モルフォとモモイは彼女が打ち始める様子を見守ることにするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「く、ぅぅ……」

「あんま伸びなかったね……ホームランは。ヒットっぽいのは段々打てるようになってたけど」

「でも、バッティングセンターだからねぇ」

 

一時間後。ゲーム開発部の部室で項垂れた様子のレイが、妖怪MAXを飲んでいた。あれから、一時間程レイは奮闘していたようだが、結局その実力がホームランに繋がることはなかった。それでも、ヒット自体は段々打てるようにはなっていたものの、それも相手が基本的に機械的な投球しかしないピッチングマシンだからだろう。これが本物のピッチャーなら勝負の駆け引きもあるし、変化球や細かいコースの調整、速度のずれなども入ってくる。全てを鵜呑みにするわけにはいかないだろう。

 

「まあ、いいんじゃない?数をこなしていけばその内形にはなっていくよ」

「そうでしょうか……」

「ここはさ、折角うちらの部室まで来たんだし気分転換にゲームをやろうよ。なんかやりたいのある?」

「あ、じゃあ野球ゲームとか……」

 

手を叩きながら、モモイがレイをゲームに誘う。レイが短く頷くと、モモイがいいソフトがないか探し始めている。そんな中、モルフォはあるゲームの事を思い出し、3DSを鞄の中から取り出す。

 

「?それは……」

「これはどう?超人ベースボールスタジアムって言うんだけど、キヴォトスの外にある結構滅茶苦茶な野球ゲームだよ」

「め、滅茶苦茶って……」

 

超人ベースボールスタジアム。それは、普通の野球ゲーム……なのだが。普通の野球ゲームとは違うところもあり、それこそが最大の特徴であるといえる。それが、超人ポイントという特殊なポイントを消費することで使える超人スキルである。それを使うことで、まさに超次元ベースボールと言うべき惨状が繰り広げられるのだ。

 

「なんですかこれぇ!?」

 

レイが超人スキルを発動して球を打つ。ハイパーロケット打法と呼ばれるその球を打った瞬間。普通に球が飛んでいくのだが、それをショートが受けとめた瞬間だった。ショートがボールに吹き飛ばされてそのまま一緒に外野まで吹き飛んでいったのだ。

 

「えぇ……?あっ、レフトが……」

「あーレフトも巻き込まれたー!?」

 

それだけではない。ショートとボールを受け止めようとしたレフト諸共一緒に吹き飛び、フェンスに二人纏めて叩きつけられてしまう。通常の野球ではありえない必殺技に、思わず唖然となってしまうレイとモモイ。しかも、超人スキルはこれだけではない。

 

「ビッグボム打法……もう名前からして嫌な予感が」

「あれ?でも球は普通に……あっ!?」

 

外野まで飛び、レフトとセンターの間をすり抜けた球が地面に転がる。それをセンターが取りに行った瞬間に異変が起こる。打球に触れたセンターが突然大爆発に巻き込まれて倒れてしまったのだ。

 

「いや危険すぎるでしょ!?」

「次のバッターが立ってる頃には回復してるからへーきへーき」

「タフすぎません!?」

「キヴォトスでは!!」

「キヴォトスでもこんな状態になったらベンチ行きですよ!!ああでも、ここまで滅茶苦茶やられると逆に面白い……」

 

このゲームで野球をやっているのは超人なので必殺技でも動けなくなるのはそのプレーの間だけだ。故に心配することなく超人スキルをどんどん打ち込むことができる。そして超人スキルには投球や守備にも存在しており、

 

「フェニックスショットは普通だね」

「普通?……いやまぁ、ただの速い球ですから確かに普通ですか」

 

不死鳥の炎を漲らせ、高速の火炎球を投球するフェニックスショットを投げた感想を漏らすレイ。別にバッターが吹き飛んだりするわけでもないので、ただの超速ストレート程度では動じなくなってきていた。

 

「ハイドショットは……見えない魔球って感じですか。まあこの手のゲームだとよくありま……ぶっ、何ですかこの球!?」

 

ハイドショットは見えない魔球、といった技だが、リプレイ視点で見るとその種が分かりやすい。ハイドショットとは三塁側の方までボールが投げられ、そこから大きくカーブを描いてやたら移動しているキャッチャーのミットに収まるというものになっている。そのあまりに滅茶苦茶な軌道に思わずレイの口から噴き出したような声が漏れてしまう。

 

「いやすっごく曲がるね!?キモくない!?」

「いやかなりキモい球ですねこれ……実際に投げられたら実況がキモい球で一色になりますよ」

 

思わずそんな感想が出るほどの滅茶苦茶な超人スキルはこれだけではない。他にも様々な超人投球があるのだが、その中でも一番やばいであろう超人スキル投法が現れる。

 

「じゃあ次は……は、ハイパーバズーカ!?」

「なんかもう見るからにやばい技が見える……」

「……いやいやいや!?普通にバズーカ砲持ち出してきたんですけど!?」

 

明らかにやばめなスキル名のハイパーバズーカ。それを発動した瞬間、ピッチャーが取り出したのはなんと、本物のバズーカ砲であった。ピッチャーは、何の躊躇いもなくそれをキャッチャーの方へと向ける。そして、バズーカ砲から赤く光る弾が発射されてしまう。

 

「ちょっとぉおおお!?」

「あはは……ここまでぶっ飛んだスポーツもありなんだね……」

「もうバカゲーだよね」

 

それを、バッターが打とうとバットを振った瞬間。弾が大爆発し、バッターが吹き飛んでしまう。そのまま地面に転がり、意識を失っているであろうバッターは、いくら待っても立ち上がることはない。そのまま一塁を踏んでアウトにするまで、バッターはそのままであった。

 

「……いやもう……なんでもありですねこの……この……くそ面白いんですけど。シナリオとかそういうのはないですし、ちゃんとした野球ゲームではないんですが……まあバカゲーですよね」

「バカゲーだね……あー笑ったよ。爆発はダメだよ爆発は」

 

一通り試合を終えた感想としては、面白かったけど野球じゃないよねとなるモモイとレイ。無論、いい意味で野球ではない、ということであり、敢えてどういうスポーツなのかを述べるとしたらそれこそ、タイトルでもある超人ベースボールなのだろう。

 

「レイもさ、次なんか時間が合ったらまたゲームしない?」

「あ、いいですよ。そういえば最近セールで買ったゲームがありまして、マルチプレイもできるらしいんですが……」

「あ、これ知ってる!私達も皆持ってるんだよねー」

 

そして、次にやるゲームを楽しそうに話し始めるモモイとレイ。その様子を見ながら、モルフォは追加のお菓子を取りに立ち上がるのだった。

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