探索者が英雄へと至るまで   作:名もなき探索者

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CCB<=3 【戦闘訓練と非殺傷武器】

「今から戦闘訓練を行う!!!」

「「「ヒーロー科っぽいのきたァァァァ!!」」」

 

入学式から数日が経ち、新たな学校の授業に慣れ始めた頃。

過去のコスチュームを身に纏ったオールマイトが教師としてA組に降り立った。

オールマイトのコスチュームは昔にあったスーパーマンよろしく体にぴっちりくっつくタイプであり、その隆々な筋肉が惜しげもなくさらされている。

目測でもそこらの一般人を超越するであろう筋肉量。これを手に入れるのにどれほどの努力があったかが窺える。

 

因みに玲はそこまで筋肉が発達していない。そこそこ鍛えているんだなとわかる程度の筋肉量が関の山だが、実際はゴリラを超える筋肉をしている。見た目ではわからないものの、筋繊維の密度が常人の数倍、数十倍になっているため異常なまでの筋力を誇る。*1

 

閑話休題。

オールマイトが手元のスイッチを押すと教室の壁部分が開く。プシューという空気の抜ける音と共にいくつもの収納が引き出され、そこにはバッグが入っている。

 

「諸君らが事前に考えていたコスチュームが入っている!!さあ、これを着てグラウンドβに集合だ!!」

 

 

グラウンドβ。

入試の会場だったようで建造物が所狭しと並んでいる。現在、玲たちは街がよく見えるモニタールームに集合していた。

各々、個性的なコスチュームを見に纏い、初めてのコスチュームの感触に一喜一憂している。

 

「うわ、エッグ」

「え、なに。なんで俺の服見て口抑えてんの?」

「スタイルやばいですわね」

「なんで中華風マフィアの服装なんだよ!!」

「白髪と相まってすげえ様になってるんだけど」

「えっち」

「やめて!透ちゃんの方がえっちじゃん!!全裸だし!全裸だし!!」

「何故2回言った」

 

玲の服装はノースリーブのチャイナ服にサルエルパンツ。インナーの上から腰まで長い上着を羽織っている。その上着もぴっちり着こなすわけではなく、肩が見えるように着崩している。それ故に上着は足元につきそうになっている。チャイナ服は足元まで長く、右側にスリットが腰あたりまで入っている。靴は中華風のもの、色付きの丸いサングラスに、手には三節棍を持っており、とても様になっている。普段、首に提げているペンダントも相変わらず付けていた。

因みにがっつり作者の趣味と癖である。

 

「なんでこんなにかっけえ奴がいるんだよ!!おいらのハーレムルートが消えるじゃねぇか!!」

「いや、知らんが」

「考えてみろよ。このクラスにはクール系イケメンと俺様系イケメンがいるんだぞ!?その中に更にこんなイケメン出されたら、おいらたちの勝ち目が消えちゃうんだよ」

「へー、俺ってイケメンなんだ。どう?響香ちゃん」

「…っえ?なんでウチに聞くの!?」

「ハッハッハ!!少年少女よ!さぁ、戦闘訓練をしようじゃないか!!!!」

 

オールマイトの鶴の一声によって授業は進行される。

今回の戦闘訓練はヒーロー側とヴィラン側に分かれてのものだそうだ。設定的に言えば、ヴィランが核を持って立て籠っているところにヒーローが突入すると言った感じ。核、核かぁ。現代日本じゃお目にかかることなんて一生ないものだ。アメリカンな豪快さだ。核以上に危険な召喚アイテムや召喚陣を破壊するために敵拠点内を動くことはあっても、核を奪取するために敵拠点に突入することは全くなかったため新鮮だ。そもそも、召喚アイテム云々は生贄として捕まって脱出するために破壊するのが殆どだ。

時間の関係もあって2人若しくは3人1組で戦う。組み合わせは籤引きだそうだ。

 

 

第3試合。玲のチームの試合だ。

前の試合は描写しないが第1試合で緑谷と爆豪がガチンコにやり合ったとだけ言っておこう。

玲のチーム葉隠とのペア。ヴィラン側であった。ヴィラン側の勝利条件は時間制限いっぱい核を守り続けるか、ヒーロー側を両方拘束ないし撃破すること。

相手のヒーロー側は轟と八百万。轟は氷を出せる〝個性〟のようで範囲殲滅が可能。八百万は創造の〝個性〟らしく武器武装、あらゆるアイテムを生み出せる万能型。

かたやヴィラン側は、光を屈折させることで常時透明化できる葉隠透。そして、武道の心得はちゃんとある無個性篠宮玲。

もしも賭けれるならヴィラン側のオッズは100を超えるだろう。そんなほどに勝ち目がない。

一応、玲が本気を出せばその評価は一転するだろうが、彼の本気は殺傷能力満載なためこんな訓練で使えない。*2

 

「さて、どうしよう」

「まって、そんなに落ち込まないでよ!また負けたって決まったわけじゃないし」

「そうなんだけどね。まず、お互いを知っておこうか。俺は篠宮玲。無個性。一通りの武器は使える」

「私は葉隠透。見てわかる通り個性は透明化だよ」

 

ヴィラン側は開始前に5分間の時間を与えられる。この間に核の移動や作戦会議をしろとのことだろう。

ビルの最上階の一室で2人は核を横目に作戦会議のようなものをする。玲は何故か存在していたテーブルに腰をかけながら葉隠と会議をする。両者、戦闘特化の個性でないか、そもそも個性を持っていないため、轟の個性で一掃されてしまう可能性が高い。

 

「へぇ、透明化って言っても実体はあるんだな。触れるわ」

「ちょっ、お腹プニプニしないで!!」

「おまっ、いきなりその格好で来るなよ。変なとこ当たったら文句言われるの俺だからな?」

「うへぇ〜ちゃんと腹筋あるんだ。しかもカチカチ」

「…じゃあ作戦な。俺が前衛で2人を引きつける。その間に背後からでいいからそのカフスを付けてくれ」

 

その言葉が出ると同時に試合開始のブザーがなる。

 

《技能》アイデアロール:成功

結果:肌寒いな

 

「肌寒い?………透ちゃん!!ジャンプ!!」

「う、うん」

 

瞬間、建物が凍りついた。

 

 

「寒っ」

「凍えちゃう。凍えちゃう」

 

現在、玲と葉隠の2人は辺り一面氷のオブジェとなった元は普通の一室に立っている。これは十中八九轟の個性であり、一撃でヴィラン諸共拘束するつもりだったのだろう。あそこで気づけたからよかったものの、気づかなかったら部屋の中央の核と同じく氷のオブジェになっていた。

玲はかろうじて服を着ているが葉隠は個性の都合上全裸が基本である。しかし、視認性の問題もあり葉隠はグローブとシューズだけ着用している。それ故に、この冷凍庫よろしくの空間では酷く凍えてしまっている。

 

「あー、ほら俺の上着やるから着な。これで少しは凌げるだろ」

「うえぇ、いいの?…ありがと」

「いいよ。全裸は寒いだろうし。…あー、ちょっと俺行ってくるから。核は頼んだ!!」

「え、まっ」

 

玲はかろうじて凍らなかった三節棍を手に取ると勢いよく走り出す。案の定、階段も凍っていたが玲には関係ない。顔に笑顔を浮かべながら玲は駆け降りる。範囲殲滅が可能な轟ならばまだ動くことが可能だと知られればもう一度同じことをするだろう。それではダメだ。面白くない。できることならドンパチ正面からやり合いたい。故に、玲は駆け降りる。階段を一段飛ばし、二段飛ばし、全部飛ばして降りていく。彼らは今、勝ちを確信してゆっくり1階層ずつ確認しながら登ってきているのだろう。5階層建てのビルのうち、2階層に降りると2人を発見する。

 

「なっ、まだ動けるのか」

「焦凍ちゃん!!さあ、遊ぼうぜ」

 

三節棍を振り下ろす。木製の三節棍はその速度や玲の筋力にミシミシと悲鳴をあげながらも仕事を成し遂げようと空を切る。

轟はそれに対して咄嗟に氷を生み出して受ける。ビキビキと氷が割れ、砕け、宙に舞う。同じく三節棍は勢いよく氷にぶつかり粉々に砕ける。

 

「どうやってあれを避けた!!」

「氷出しただけで勝ったと思うなよ」

 

玲はすぐさま壊れて持ち手だけになった三節棍をぶん投げた。それは直線的な軌道で轟目掛けて勢いよく飛ぶも、すんでのところで止められる。

轟と玲の間に氷が生まれ、互いに相手を視界に入れれなくなるが、玲は止まらない。氷を飛び越え、轟に向けて蹴りを放つ。

 

「轟さん!!」

「っ!?」

 

突如、玲の視界いっぱいを真っ白な光が覆う。耳もキーンとなるだけで本来の機能を損なう。

スタングレネード、若しくは閃光手榴弾。莫大な光と音で対象を数秒間行動不能にして鎮圧するための武器。おそらく、八百万の個性によって作られたもの。それをモロに食らった玲はそのまま捕まる

 

「甘いな」

 

咄嗟に玲は回避行動を取る。地面に着地した瞬間、何も見えていない聴こえていないはずなのに、何事もないかのように轟達と距離を取る。

轟や八百万が玲を捕縛するために個性を使うも、実際に見ているかのように避ける。

 

「どうしてですの!?」

「俺がしてるグラサンが普通のものだとでも?」

 

玲のサポートアイテムであるサングラス。格好良さのために入れたというのはあながち間違いではないが、その本質は眼の保護であり視界の補助。度が入っていないサングラスであり、そんじょそこらの攻撃では壊れない耐久。閃光手榴弾並みの光を想定して作られたサングラスは彼の視界を守った。それでも漏れた光は彼の視界を奪っているので、そう考えるとサポートアイテムではなくちょっと高性能なファッションアイテムだろう。更には、耳には何もつけていないので聴覚は殆ど使えない。八百万の声も酷く大きかったから聞き取れただけである。

 

「ちっ、凍れ!」

「破っ!!」

 

玲は地面を踏み抜く。中国武術で攻撃前に行われる震脚である。そして、脚を振り上げ目の前に迫った氷を蹴りで砕く。そこまではよかったのだが、震脚の威力が強すぎたのかコンクリートでできたビルの床を踏み砕いてしまった。崩れる床、気づいた3人は三者三様に驚き目を見開き着地の姿勢をとる。

 

「あ゙あ゙、ようやく治ってきた」

「お前、これで無個性かよ」

「はっ、いいだろ?」

「っ、凍れ!!」

 

またもや轟の正面から氷が生まれ、玲を捕まえんと疾る。玲は拳を握り慣れた手つきで殴り飛ばす。すると最も容易く砕ける。それでも尚、砕いた後からどんどんと新しい氷が来るのを見て玲は攻撃で壊すのではなく、避けることに専念する。

 

「きゃっ」

 

突如、轟の背後で八百万の悲鳴が聞こえる。咄嗟に見た轟はカフスによって捕まった八百万の姿を見た。その後ろには玲のジャケットを着た葉隠の姿があった。

 

「やったよ、玲くん!!」

「上出来だ。焦凍ちゃん、よそ見はダメだぞ」

 

視線を外したその一瞬。玲は縮地によって轟に接近する。そして流れるような動きで轟の腕を掴むと足を振り上げる。

 

「おらぁ、十文字固め!!」

 

プロレスでたまに見る十文字固め。個性ありの現代ではあまり強みがないが、それでも人型相手なら非常に強い。普段から受け慣れていない轟なら想像を絶する激痛だろう。

 

「っ!!ギブギブギブ!!」

「ふっ、勝った」

『タイムアップ!!さあ、みんなはモニタールームに戻ってきてくれ!!講評だ!!』

 

 

「さて、両チーム共によく頑張ってくれた!!!今回はヴィラン側の2人とも頑張っていたが、ベストは葉隠くんだな!」

「えぇ!?私?私より、いっぱい戦った玲くんのほうが…」

「ん、あぁ。無理無理。だってあのまま戦ってたら負けてたし。ほら、見てみ」

 

玲が腕を差し出すその手は赤紫に染まっていた。それは手全体ではなくマダラの様にところどころにできていた。

 

「これは?」

「凍傷の初期状態」

「はっ!?バカ、お前。さっさと保健室行けよ」

「ありがと、金髪くん。講評聴くくらいならできるから。後で行くよ」

 

あのまま戦闘が続いていれば、何処かで玲の拳が壊れていたことだろう。玲ならば拳がなければ脚でなんて言うかもしれないが、それでも持久戦では負けていた。故に、その均衡を破った葉隠がベストなのだ。

 

「だから、ありがとな透ちゃん。透ちゃんがいてあそこでやってくれたから勝ったんだ」

「えへへ」

「それじゃあ、次の試合と行きたいところだが、3試合目で使ったビルが氷漬けアンド2階層目の崩落によって他のところにしないといけなくなった!!困ったものだ!!さあ、気を取り直して別の建物でやろう!!………あ、篠宮少年は凍傷のために保健室に行ってきてね」

 

 

「すみませーん。ちょっと、凍傷になったんですけどー」

 

校舎の中にある保健室に玲は訪れていた。服装は着替える手間を考えてコスチュームのまま。扉を開けると中学の保健室が物置小屋に見えるほど広い内装を眼にする。

 

「うわ、広っ」

「どうしたんだい?」

「うわっ、ババアだ」

「失礼だね。レディと呼びな、レディとね」

 

声がした方を見下ろすと齢80をいきそうな老婆が立っている。

 

「イエス、マム」

「ふっ、上出来さね。で、なんできたんだい?怪我?体調不良?」

「凍傷でーす。ちょっと、冷凍庫みたいなとこで戦ってたので」

「そうかい。患部を見せな。………なんだい。こんなの凍傷じゃなくて霜焼けだね。しかも、軽度も軽度さ。こんなのあたしの個性を使うまでもなく少しあっためてれば治るさ」

「そうですか。じゃあ、授業終わるまで居させてもらいますわ」

「はっ、サボりね。あそこのベッドを使うといいさね」

 

ベチーンとあったかい手袋を霜焼けした手に叩きつけられ追いやられる。5つほどあるベッドだが、そのうち一つにカーテンがかかっている。おそらく、玲よりも先に保健室に行った緑谷がいるのだろう。

緑谷は玲が無個性だと知ってから色々と視線を向けてきていた。玲はその視線には気づいていたものの、無個性が珍しいんだろう。と楽観的に捉えている。玲は緑谷が元無個性で、無個性な玲のことを気になっているなんて知る由もない。いや、知ったところで一ミリも興味を見出さないだろう。

 

「さーて、スマホスマホ…………あれ、ない」

 

玲はコスチュームのズボンの中を弄る。着替え終わった後にスマートフォンをポケットに入れていたはずだ。ポケットはズボンには二つしかついていないためこのどちらかにあるのは明白。ポケットに穴は空いておらず落とすことはない。なら、何故。

 

「……あー、上着だわ。そういや、透ちゃんに貸してから返してもらってねぇわ」

 

記憶を思い出していくと講評の時ですら着ていたような気がする。一応、あの上着は多機能を追求している。数多くのポケット、表面には数多の種類の武器を引っ掛けるベルトやらボタンやらの機能。市販のように見えて実は酷く高性能なものだ。基本的に戦闘時は多種多様な武器を使用する玲にとっては有り難いものであった。

 

「後で返してもらわねぇと」

 

ベッドに横になり天井を眺めていると、いつしか意識を手放した。

*1
キャラの見た目とステータスが違うのはこれが原因だったということだ

*2
クトゥルフの攻撃呪文は基本的に0か100なのだ。殺すか苦痛を与えるか、はたまた後遺症を与えるか

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